それではスタート!!
一輝side
僕は生まれた時から魔力が低い性で父さんや母さん、兄さんに妹、他の親族皆から無視をされ続けて……一度は絶望し、心が折れそうになった………だけど、ひいじいちゃんの励ましで何とか立ち直って、ひいじいちゃんの様に強くなろうと魔導騎士を目指した。
僕は実家を出てから、各地で道場破りや途絶えた剣術に関する資料巡りをしながら必死に自分を鍛え続けた。そして伐刀者養成学校の一つである『破軍学園』に強引に入学した。
でも、破軍学園に入っても実家の圧力がかかり、授業を受ける事すらできなくなり…先生や同級生に嫌がらせを受け続けた結果、学園を留年になってしまった。
そして街中で謎の仮面の男に襲われて、僕がしてきた全てを否定され……踏みにじられて……いたぶられ、蹴られて、斬られて、身体を貫かれ………………
朦朧とする意識の中で……僕は死を悟りながら………これまでの出来事を振り返りながら思った。
この《黒鉄》と言う姓の呪縛がある限り……僕は……僕の努力は報われない……………
そして、仮面の男が弓を振り下ろすと同時に僕は……ここで……黒鉄の恥じさらしとして死ぬのだと思った……
そう思っていた……あの人達と出会うまでは………
「ん…………んん………」
僕は目を覚ますと、古い列車の中で椅子に横たわっていた。ゆっくりと起き上がろうとすると身体中にあったあの仮面の男につけられたダメージが無くなっていた。僕は起き上がった直後に不意に身体を動かしてみると完全に治っていた。
その前に此処は何処だろうか?そう思っていたら…………
「まったく、珍しく帰って来たと思ったら…瀕死状態の一般人を此処まで運んで来て………」
「良いじゃん。あともう少しだけ遅かったら、あの子あの世行きだったんだよ?それに助けた方が何かとご利益があんじゃん♪」
「はぁ……本当に義姉さんは自分勝手なんだから…」
そんな会話が聞こえると同時にドアが開くと、長い赤髪の女性と白髪の男性がやって来た。
「おっ、意外と元気じゃん」
「当然さ、僕にかかればどんなに瀕死の状態でも傷一つ無く元の健康状態に戻せるからね?」
「さすがはアタシの可愛い義弟♪それでどうよ、気分は?」
「え?あぁ………はい、この通り大丈夫ですけど……貴女方は…………」
「あぁ、まずは自己紹介ね?アタシは兵鬼 薫。アンタの命の恩人って所かな?そんでもってこっちがアンタを治療したアタシの義弟の…………」
「鬼崎 陽太郎だ……よろしく」
「そうだったんですか、僕は一輝……黒鉄 一輝です」
「そう、よろしくね♪所でさ、その様子だと怪我が無くなってるから家まで送ってこうか?またあの仮面みたいな奴に狙われるよりマシだし、事情はアタシ等が親御さんに話すからさ…………まぁ、大事な家族が殺されると知ったら親御さんも必死こいて守ってくれるよ」
「親……ですか…………」
「……どしたの?暗い顔をして…」
「………」
女性……薫さんは心配そうに見つめてくる。だけど、男性……鬼崎さんは何か気づいたのか僕に声をかけた。
「何があったかは知らないけど…………その理由を聞かせてもらえるかい?」
「まぁ、溜め込むよりはマシだしね。てなわけで話してくれる?」
「はい……」
そして僕は実家から受けて来た親の存在無視、学園や同級生に受けたイジメや迫害………全てを話した。すると二人は眉間に皺を寄せ、思い切り睨んでいた。僕は2人から放たれる怒りを肌で感じ、冷や汗をかいた。
「腐ってるね?魔力の低さから見下して、陥れて…………屑転生神の上層部……いや、愚者共と同類ぐらいか…………」
「許せない………魔力が低いってだけで、そんな下らない理由で……!自分達の息子を……一輝を虐げて、罵って、挙げ句には無視するなんて……!!それに、他の奴等もよ!一輝は一生懸命に夢叶える為に必死こいて頑張ってんのに……それを嘲笑って………陰で姑息なマネして…………一輝がテメェ等に何をした!!悪いのは、これまで一輝を虐げてきた家族……黒鉄の一族だろうが!!!」
鬼崎さんは身体から紫のオーラを放出し……薫さんに至ってはそれよりも凶悪でどす黒い怒気を表したオーラを室内中に蔓延させながら憤慨していた。
こんなに膨大な魔力量は見た事が無い……そしてその魔力を纏うこの人はいったい…………
「一輝」
「は、はい!」
薫さんから急に声をかけられた僕は、少しばかり驚いていた。薫さんはさっきよりも少しは落ち着きを取り戻して、どす黒いオーラは鬼崎さんと同じ紫色に変色していた。
「アンタ……アタシ等の"弟"になりな」
「え?」
薫さんから、意外な言葉が出た事に僕は理解できなかった。
義弟に…………なれ?
「あの……それって…………」
「そんなの決まってんでしょ?アンタをアンタとして見ようとしない
薫さんはそう言いながら僕を優しくも、強く抱きしめた。最初は恥ずかしそうに感じた。
でも、不意に僕も眼を閉じながら……薫さんの温もりを感じた…………とても、温かくて……優しい感じだった。
「でも……良いんですか?僕は黒鉄家の恥さらしと言われてきたんですよ………お二人には迷惑がかかってしまうかも………」
「別に迷惑とは思わないさ……それにその姓が気に入らないなら、黒鉄の名を捨てれば良い」
「え?」
「君を縛ってるのは、その黒鉄と言う忌まわしい姓の鎖……それなら、その元凶である黒鉄家と決別して名前を変えれば…………そうだね。
「鬼鉄………ですか?」
「そうさ、多少黒鉄に近いがそれが君らしい名だと思うよ。でも、これは君が決める事だ……僕等と共に《鬼鉄》として新しく歩むか……それとも《黒鉄》として恥さらしの鎖を背負いながら一生を終えて後悔するか……だけどね?」
鬼崎さんから突きつけられた2つの選択に、迷いは無かった。僕は薫さんから離れて鬼崎さんの所まで歩み寄り……その場で頭を下げながら、選択の答えを告げて懇願した。
「お願いします…………僕を………僕を貴方達の弟にしてください!!」
「ふっ……合格だよ」
「これからよろしくね、一輝♪」
「ありがとう……義姉さん、義兄さん………」
こうして僕は黒鉄 一輝から……鬼鉄 一輝として生まれ変わり、義姉さんと義兄さんの家族として迎えられ、そして新しくできた家族と共に生きる一振りの刀になった瞬間だった。
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キャスト
鬼崎 陽太郎:潘めぐみ
兵鬼 薫:小清水亜美
鬼鉄 一輝:逢坂良太