鬼崎は新しく誕生し、家族へ迎え入れた少女を連れ【断罪の地獄城】へと帰還した。
少女は何処かの物語に出てくる西洋の城に呆然としていたが、それ以前にこんなお城に住んでいる鬼崎はすごいと改めて認識した。
「ね、ねぇ……義兄さん」
「なんだい?」
「義兄さんの名前って……教えてくれるかな?べ、別に私が知りたいだけだし……その義兄さんって言うのもアレかな……って」
「そうだね。せっかく家族になったんだ、教えてあげるよ……僕の名前」
これから家族になるのだから、名前ぐらいは覚えておかないと行けない……少女はそう思いながらも遠慮がちに聞いてみた。
新しくできた妹の様子に鬼崎は少しだけ笑みをこぼし、自分の名を教えた。
「鬼崎 陽太郎。それが僕の名前さ」
「陽太郎……じゃあ "陽太義兄さん" って呼んでもいい?」
「好きにすれば良いさ……ほら、着いたよ」
そう言っている間に城のリビングに到着した。そこは何処にでもある木材製のテーブルと椅子四個とありきたりなモノだけであった。それにテレビやソファー等、一般家庭のリビングとあまり変わらなかった。色々と驚く事があるのか、少女は目をパチクリとしながらたたずむしかなかった。
「な、何か普通だね?」
「まぁね、さてと……僕は義姉さんを呼んでくるから、色々適当に座って待っててね?それとこれがテレビのリモコン、暇な時は見てもいいから」
「う、うん……」
リモコンを渡した後、鬼崎は少女を残してリビングを後にした。何かがずれていると思う少女だが……考えたら負けだと推測し、ソファーに座ってテレビを見始めた。
現在、放映されていたのはパーカーを羽織ったヒーローが怪人と戦っている映像だった。どうやら特撮モノだったらしいが、何か惹かれるモノがあったのか……少女はそれを見る事にした。
特に惹かれたのは、ヒーローが別のパーカーを羽織る場面だった。羽織った途端に色々な能力を使って怪人を圧倒していくのがとても面白かった。
「私もこんな風にやってみたいな……はぁ、なぁんて、できるわけ無いよね…こんな私がヒーローなんて……」
自分もヒーローになって、色々な能力を使ってみたいという願望があったが……自分ができるわけが無いとため息をつき、テレビを消してソファーに寝そべった。
「でも、もしできたら……陽太義兄さんの役に立てるかな?」
見ず知らずの自分を家族として、妹として優しく迎えてくれた鬼崎に恩返しがしたい………
そう思っていたら、ふと…………
ー力が欲しいのか?
「え?」
頭の中で女性の声が直接響いた。少女は身体を起こし、リビングを見渡すと何処にも女性の姿は見当たらなかった。
「気のせいかな?」
ーそこの娘……力を欲するか?
「ッ!?(やっぱり気のせいじゃない、誰かが私に話しかけてる……でも誰が?)」
今度は先ほどまでの声では無く、高貴な振る舞いを思わせる女性の声だった。しかし、見渡しても女性の姿は無く……少女一人だけだった。
気になってリビング一体を探してみるも、やはり女性の姿は見当たらなかった。すると、遠くから足音が聞こえてくる……鬼崎が戻ってきたのだろう。そう思い、少女は一度捜索を中断しソファーに腰をかけた。
そして、鬼崎と赤髪の女性がリビングにやって来た。この女性こそが鬼崎が言っていた義姉さんと呼ぶ人物だとわかった。
「それで……陽?あの娘がアタシ達の新しい義妹なの?」
「あぁ、そうさ」
「ふぅ~ん、けっこう可愛い娘じゃん♪」
「あ、あの……」
「あぁ、ゴメンゴメン……まずは自己紹介ね♪アタシは兵鬼 薫って言うの。よろしくね、新しい義妹ちゃん♪」
「は、はぁ……」
「それで……貴女のお名前は?」
「な、名前……ですか?」
「そ、お名前♪……って、もしかしてわからない的な?」
「…………はい」
薫が少女に名前を聞いてみるが、少女は名前や自分が誰なのかはわからないと暗く返事をする。只でさえ昔の事を思い出せずにいるから、そう簡単には思い出せなかった。すると鬼崎は目を細め、薫を見つめる。
「義姉さん……?」
「わ、わざとじゃないよ!?本当に!」
「そう?ならこの娘の名前ぐらいは考えているんだよね?」
「そりゃもちろ……え?」
鬼崎の威圧感に気圧され、口を滑らせてしまった薫はあたふたと狼狽えていた。先ほどのオ・タ・ノ・シ・ミ☆の最中に鬼崎に新しい妹を連れて来たから挨拶をと呼ばれ、名前の事などこれっぽっちも考えていなかったのだ。
その言葉を皮切りに鬼崎は身体中から紫のオーラを放ちながら、冷たく煌めいた視線を薫にぶつける。それを間近で感じた少女はソファーの後ろへと避難し、対象の薫は冷や汗が滝の様に流れていた。
「まさか……考えてないの…………?」
「ヒッ!?(こんなに威圧感MAXな陽の目、初めてなんだけど!?……って、そんな事より何か……何か良い名前は…………ハッ!)」
このまま鬼崎が爆発すれば……自分はヒドイ目に遭うという本能が先立ち、薫は名前のアイディアを練りに練ると……ふと、ヴラドからもらった【煉王ベルト】と季節が浮かび上がった。
「"
「……夏煉?」
「そうそう!季節の夏に、煉王の煉で……夏煉、鬼町 夏煉って言うんだけど………?」
後頭部に冷や汗を流しながら、少女の名前を提案する薫。何か怪しいと感じた鬼崎だが……ふと少女の方に視線を向けると、少女は薫が考えた名前を細々とつぶやいた。
「夏煉、それが私の……新しい………名前……」
「どうやら、気に入ったみたい♪」
「………その様だね」
「か、薫義姉さん!」
「うわっ!?びっくりしたぁ……」
「そ、その……家族になったばかりの私に……な、名前を与えてくれて本当にありがとうございます!」
「夏煉………くふふ♪構わないよ、だって貴女は……ううん、夏煉はアタシの義妹なんだからさ?そう言うのはお義姉ちゃんのお勤めだと思わない♪」
名前をもらった事にお礼をする少女……もとい夏煉の態度に、薫は笑顔で新しく迎えた義妹の頭を優しく撫でる。それを優しく見ていた鬼崎は少しだけ笑みをこぼした。
その後、夏煉は薫と鬼崎の三人と仲良く食事をとって、お風呂に浸かりながら薫とガールズトークを楽しんだ後に鬼崎の部屋の片隅に布団を敷いてもらい、大好きな義兄と共にゆっくりと就眠した。
夏煉side
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目を開けると、何処か不思議な所に居た………
シャボン玉がフワフワと浮かんだり、戦国時代の旗が地面に刺さっていたり、月が出てたりととても摩訶不思議だった。
ふと、後ろを振り向いてみると……黒髪を白いリボンで結んでポニーテールにし、日焼けをした健康的な肌、黒を基調として赤いラインが入ったセーラー服を身に纏い、背中には七本の刀を背負った少女が佇んでいた。すると、次々と私の周りに変わった衣装を着用した女の子が現れ、数えてみると15人も居た。少し警戒を強めながら最初に目があったポニーテールの女の子に話しかけた。
「あ、貴女達は誰?」
そう警戒しながら聞いてみると、その娘はふいに薄く笑った。
『ふっ、それで良い。他者に直ぐ心を開くのは愚か者のする事だ』
そんな悪役の様なセリフを言うと、隣に腰まで伸ばした長い黒髪と白い肌をし、黒いセーラー服を身に纏った女性が私に近づき、右手を掴むとポケットから黒紫の玉を私に手渡した。
『その手渡した"眼魂"はそなたの命の次に大切なモノじゃ……いずれ妾達の力をそなたが受け継ぎ、それをぶつける好敵手を巡りあわせる事となろう…………その時が来るまで眼魂を手放すで無いぞ?』
「あ、あの……!貴女達は……ッ!?」
私が聞き終える前に、周りの女の子達は消え始めた。そして、私にこの眼魂というモノを渡した人も少しずつ消えて行く。でもその人は両手を私の両肩に優しく置くと、耳元でこう
『案ずるな……直にまた会える…………』
そう言い残して、私の周りにいた人達は光となって消えていった…………
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「ん……あれ?」
ふと目を覚まして布団から起き上がってみると、先ほどまでの空間では無く就眠していた陽太義兄さんの部屋だった。
でも、ベッドには陽太義兄さんは見当たらなかった。何処に行ったのかと思い、部屋へ出ようと思っていたらコロコロと何かが当たり、拾ってみると……目のような黒紫色をした玉で、上には英語で《D00:HERENA》と書かれていた。
「これって、夢でもらった……確か"眼魂"……だったかな?」
でも、何でこれが……?そう思っているけど、その前に陽太義兄さんを探さないと……そう考え、部屋を出て城内を探索すると……一室から一筋の光が漏れ、おそるおそる扉を開けてみるとそこには机に突っ伏した陽太義兄さんが何かの作業をしていた。
「陽太義兄さん?」
「……夏煉、どうしたんだい?」
「起きてみたら陽太義兄さんが部屋に居なかったから探してて……」
「あぁ、心配をかけてすまないね……ちょっと気になった事が……ん?夏煉、それは……」
言い終わる前に陽太義兄さんは、私の持っている眼魂に目を向ける。私は手に持った眼魂を見せると義兄さんは驚いた顔をしていた。
「な、何で君が眼魂を……しかも
「う、うん……夢の中で不思議な女の人からもらったの…………ねぇ、陽太義兄さん。この眼魂って何なの?」
「……そうだね、少しずつ話すからよく聞いてくれ」
陽太義兄さんの話からわかった事は
眼魂は英雄の魂を凝縮した器の様な存在である事。
眼魂専用ベルトを使う事により仮面ライダーに変身したり、その眼魂の力を扱えると言う事。
そして、陽太義兄さんは眼魂に関する研究と開発資格を持っている事だった。
つまり、私が持っている眼魂は後ろにある陽太義兄さんが作った15の眼魂の力を引き出せる力を持っていると言う事になる。
「まさか……君がD眼魂の所有者に成るとは……」
「えっと……その…」
「別に責めている訳じゃないさ……むしろ驚いているんだよ……」
陽太義兄さんは椅子に座りながら、頭を抱えていた。もしかして……これって…………
『私も仮面ライダーに変身できたら……陽太義兄さんの役に立てるのかな?』
あの時の願いが叶ったのかな……?なら、なおの事を頼んでみよう……いずれ現れるかも知れない好敵手との戦いを迎える前にも………そして、私を家族として迎えいれてくれた二人の為にも……
「ねぇ、陽太義兄さん……私、仮面ライダーになりたい!」
「……ッ!」
「こんな私でも陽太義兄さんや薫義姉さんの役に立ちたいし、二人を守りたい!守ってもらうだけじゃダメなんだって思うんだ……ワガママだと思われるかも知れない……でも、だからこそ!私も自分のカラを破って変わりたい!そして、強くないたい!!守るための力が欲しいの!!!」
私は力いっぱいに自分の思いをぶつけてみた。腹から思いを陽太義兄さんにぶつけた……そして、陽太義兄さんは何を思ったのか真剣な眼差しで椅子から立ち上がって私の頭を優しく撫でた。
「やれやれ……まさか君が仮面ライダーになりたいなんてね…正直、驚いたよ」
「ご、ごめんなさい……私……つい勢いで……」
「イヤ……君がそう望むなら、僕は何も言わない。むしろそういう面でも良いからワガママをぶつけても良いんだよ?」
「陽太義兄さん…………」
「ドライバーは少しばかり待っててくれ、確かストックがまだ有ったはずだからね。明日には見つけてみせるよ」
「……うん」
「それと……これは最後の確認だけど、仮面ライダーになると言う事は覚悟が要るんだ…君にその覚悟はあるのかい?もしかしたら人を殺すかもしれないし、戦いの中で死ぬかもしれないよ?………それでも仮面ライダーになりたいのかい?」
「……え?」
「その答えは君が決めるんだ………夏煉」
私が……決める……………
『……僕達の"妹"になって欲しいんだ』
『夏煉はアタシの義妹なんだからさ?そう言うのはお義姉ちゃんのお勤めだと思わない♪』
私は……決めた答えを陽太義兄さんに告げた。
「なりたい……私は、自分の答えに悔いが残らない生きざまを二人に見せたい!!」
「…それが君の答えなんだね?」
そう言うと、私はコクリと頷いた。そして陽太義兄さんは少しだけ笑みをこぼした後、部屋の奥の扉に向かった。
「さてと……ドライバーを探すとするかな?夏煉、先にリビングに行っててくれドライバーを見つけたら直ぐに渡すから」
そう言い残して、陽太義兄さんはその部屋に入っていった。
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キャスト
鬼崎 陽太郎:潘めぐみ
兵鬼 薫:小清水亜美
鬼町 夏煉:原田ひとみ
少女1:喜多村英梨
少女2:能登麻美子