夏煉side
仮面ライダーになりたいと陽太義兄さんに告げた後……私は言われた通り、ソファーに座って陽太義兄さんが来るのを待っていた。
思えば……さっき陽太義兄さんに言った言葉に若干後悔をしていた。
ただでさえ妹である立場の私が、義兄さんを困らせる様な事を言っちゃったんだ……
義兄さんの役に立つ処か…………邪魔をする行動を取るなんて……私は最低だ…………
そう思い詰めていると、ポタポタと涙が出てきた。
情けなくて、出てきたんだろうな…………
「……私は…………どうすれば良いの?」
「夏煉?」
そんな事を考えてたら、薫義姉さんがリビングに来ていた。寝起きだったのか、髪の毛に寝癖がついている。
「夏煉、泣いてるの?」
「え……いや…………これは……その…………」
「もう……何かあったんならお義姉ちゃんに相談する事!そして溜め込むべからず!……さっ、教えてくれる?」
「…………うん」
言い訳を述べようとしたら、薫義姉さんに嗜められて先ほどまでの出来事を話した。
私が夢の中で大勢の女の子に出会い、眼魂をもらった事。
陽太義兄さんに眼魂の事を聞いて、役に立ちたいと思い仮面ライダーになりたいと懇願した事。
………そして、懇願した事に後悔し泣いていた事を全部話した。
すると、薫義姉さんはしかめた顔をしながら私の頭に軽いゲンコツを入れた。……少し痛い。
「夏煉?責任って言葉を知ってる?何かに対して最後までやり遂げる事を責任って言うの……陽はね?責任感が人一倍強くてね……それが例え困難だろうと、己の身体が朽ち果てようと最後まで……義理堅くこなそうと頑張ってたんだ………夏煉は陽にこう言ったんだよね?『自分が悔いが残らない生きざまを二人に見せたい』……って、それを後悔してたら責任なんて言えない………ただの嘘になっちゃうの」
「………嘘」
「そう、だからさ……一度決めた事はやってみなよ。ヤる後悔よりも……ヤらない後悔の方がもっと苦しいよ?誰にでも失敗はあるんだから……その失敗をバネにして越えてみなよ、自分の限界をね♪」
薫義姉さんはそう言うと笑顔でウインクをした。
……そうだ、何を迷ってたんだろう。私は二人に失敗した自分を見せる為に言ったんじゃない……成功して、自分の限界を越えた私を見てもらう為に仮面ライダーになるって言ったんだ。
涙を拭い、私は決意の視線を薫義姉さんに向けると、義姉さんは笑顔のまま私を優しく抱き締める。
「どうにか吹っ切れたみたいだね?」
「うん……ありがとう、義姉さん…………私、頑張ってやってみる!」
「うむ、その活きや良し!なら私も頑張らないとね♪」
「え?薫義姉さん、何処に行くの?」
「ん?あぁ……ちょっと、散歩にね。大丈夫、夕方頃には帰って来るから♪」
薫義姉さんは抱き締めるのを止め、そう言い残すとリビングから出ていった。
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薫義姉さんが出ていった数分後、陽太義兄さんがドライバーを持ってリビングに来た。
義兄さんが持っているドライバーは、クリアグレーの不気味なバックルがついたモノで"妖怪・一つ目小僧"の様な顔をしていた。
「夏煉、待たせてすまない……なかなか見つからなくてね。最後の一個だったのがせめてもの救いだったよ……」
「陽太義兄さん……それが変身に使うドライバー?」
「そうさ、名前は "ゴーストドライバー"。これさえあれば眼魂の力を十分に発揮する事ができるんだ。はい……今日から君のモノだよ」
陽太義兄さんがそう言うと、ドライバーを私に手渡した。
……今日から私のモノなんだ……そう思うと嬉しく感じてしまう。
「よろしくね、ゴーストドライバー……」
嬉しくてドライバーに声をかけてみると、キラリ……と答える様に光った。
「さてと、じゃあ夏煉、先ずはドライバーを腹部に装着してくれ」
「こうかな?」
そうしてドライバーを腹部につけると、ベルトが出現しギッチリと装着した後、スーっと消えた。
「心配ないよ、装着した状態だから消えただけさ。出したい時は両手をかざせばいつでも顕現できるよ」
「そ、そうなんだ……」
ドライバーが突然消えた事に少しだけ驚いたけど……陽太義兄さんの説明で納得し、安堵した。
そして、私と陽太義兄さんは仮面ライダーの実践訓練の為に城の地下にあると言う訓練施設へと向かった。
「さてと、先ずは実際に変身テストと模擬戦をする流れだけど……何か質問はあるかい?」
「あの……模擬戦って事は、陽太義兄さんが相手なの?」
「いや、君の相手は彼等だ………」
陽太義兄さんはそう言うと、上着から私の持っているのとは別の眼魂を幾つか地面にばらまく。そしてばらまかれた眼魂は黒い霧に変化し、身体中が黒く、顔がのっぺらぼうの様なパーカーを纏った怪人達になった。
「そして……」
《刀!》
そして、またさっきのとは別の眼魂を取り出してスイッチを押した後に声が響き、投げ捨てた…………そしたらまた黒い霧が眼魂を覆い、霧が晴れるとさっきのとは別の怪人になった。
それは青と白を基調とした着物のパーカーを纏ってて頭と肩にはツバメを模したパーツがついた怪人で、特徴的なのは右腕が巨大な刀に変化している事だった。
「この人達が……私の模擬戦の相手?」
「そうさ、同じ眼魂でも眼魔眼魂と呼ばれるモノで生み出した【刀眼魔】と【眼魔コマンド】だ。心配無いさ、僕が命令を与えない限り襲ってくる事は無い」
「う、うん……」
刀を持った怪人ー刀眼魔とのっぺらぼうーコマンド達に少しだけ身構えてしまったけど、陽太義兄さんが言うなら心配は無いみたい。
「さっ、先ずは変身からだ。夏煉、あの眼魂は持ってるね?」
「一応持ってるけど……」
そう言いながら、あの時もらった黒紫色の眼魂をポケットから取り出した。
「良し…次はドライバーを顕現させて、眼魂の横のスイッチを押すんだ」
「わかった」
陽太義兄さんの言うとおりに腹部を両手にかざすと黒い霧が発生し、ドライバーが現れた。本当に出てくるんだ……そして、眼魂の横のスイッチを押すと、絵柄が変わりアルファベットの『H』のマークが映し出される。
「次にドライバーのバックルを開いて、そこに眼魂を装填した後にバックルを閉じる」
「こ、こう?」
そしてバックルを開いて、スイッチを押した眼魂をドライバーにセットした後にバックルを閉じて元の状態に戻すと………
《アーイ!》
「えぇー!?何でパーカーが!?」
ドライバーから聞こえた音声と共に、そこから黒地に紫の縁取りのパーカーが出てきた。私はドライバーから出てきたパーカーにすごく驚いたけど、パーカーはそんな事を気にせずドライバーから聞こえる音楽にあわせてグルグルと私の周りを飛び回る。
《バッチリミトケー!バッチリミトケー!》
「夏煉、そのままドライバーの右側にあるレバーを引いた後、そのまま押し込むんだ」
「わ、わかった!」
言われた通りにレバーを引いてそのまま押し込むと周りに黒い霧が発生し、私の身体を紫のラインが入った黒いボディースーツに包まれ、パーカーを羽織ると何もなかった顔に紫と黒で顔が描かれ、額には炎の様な紫色の二本の角がついた。
《カイガン!ヘレナ!!デッドゴー!覚悟!!キ・ラ・メ・キ!ゴースト!!》
羽織った瞬間にドライバーから音声が流れた後、フードを取って自分の身体をよく見渡す。これが仮面ライダー………やった!やったやった!!
「なれた…陽太義兄さん!私、仮面ライダーになれたよ!!」
「おおっと!?ははっ…おめでとう夏煉……」
私は嬉しくて陽太義兄さんに抱きついちゃったけど……本当になれてとても嬉しかった。陽太義兄さんは苦笑しながら背中を優しく叩くと同時に引き離す。
「さて、変身は問題無いとして……ドライバーに手をかざしてごらん」
「えっと……うわっ!?何か出てきた!」
ドライバーに手を近づけると、そこから黒い両刃の剣と右腕を模した青くて長い武器が現れた。
「その剣は"ガンガンセイバー"4つのモードに変形する武器だ。そっちは"ガンガンハンド"、ロッドモードとガンモードの2つのモードに変形できる武器だよ」
「へぇ……」
「さて、それじゃあ……先ずはコマンド達と戦ってみるか」
陽太義兄さんは指を鳴らすと、眼魔コマンド達がゾロゾロとやって来た。
「さぁ、君の力とその可能性…見せてもらうよ」
「うん……貴方達!私の生きざま、たっぷりと見せてあげる!!」
そう言った後、私はガンガンハンドをドライバーに戻しガンガンセイバーを装備してコマンド達に突っ込んだ。
ここからが、私が変わる為の一歩だ!!
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キャスト
鬼崎 陽太郎:潘めぐみ
兵鬼 薫:小清水亜美
鬼町 夏煉:原田ひとみ