ウィズ魔道具店、ポンコツ店主のせいでまともな商品が入荷せずガラクタばかりが並んでいる。
そもそもだ、冒険者に必用なポーションや装備を置けばいいものの、逆三角形のオブジェのネックレスだったり、ピラミッドの置物だったり、はたまた欠陥品魔道具だったりを仕入れてウィズは売れると豪語していた。
結果は、この赤字の帳簿である。
「少なくとも、この炸裂ポーションは使い道がある。その他ウィズが仕入れた一見ガラクタにしか見えない代物にもだ」
カウンターで一人、俺は商品の並ぶ棚を見ながら思考の海に没し、ガンダムバルバトスと言う今の情報処理能力を活かしてガラクタから新たな武器を思考してみる。
だってほら、モンスター図鑑だけじゃ厳しいんだもん。
一冊500エリスじゃ、十冊売れても五千エリス。
百冊売れても売れ行きが好調なんていえないのだ。
「滑空砲の弾頭にして見るのありだな、どの道主な収入源は俺のクエスト報酬だ。ジャイアントトードを倒すために買いに来る客なんて居ないだろうし」
「ど、どうしたの?バル君。今日はずっとカウンターでぶつぶつ言っているけど」
「いや、アイディアを絞ってるんだけど?」
「正直、怖いよ?」
「ファッ!?」
ウィズが微笑みながら言うと俺は素っ頓狂な声を上げた。
一応言おう、ウィズ魔道具店売り上げは自慢じゃないが俺がウィズに変わって店番をしていたり、供に仕入れ業者が持ってくる品を吟味し、売り出す時のみ黒字となる。
そして、変り種の敵モンスターや盗賊団を相手取るときのみ炸裂ポーションだのポイズンダストと呼ばれる空気に触れたら最後、気化してあたり一面を汚染する毒ガスポーションを求めるお客が居る。
「そう言えば、町の近くに廃城あるでしょ」
「うん、あるね」
「魔王の幹部が引っ越したらしいよ」
「え、幹部の人が?バル君見に行ったの?」
「未だだよ、明日行こうと思っているんだけど」
「怪我しないでね?絶対に仕掛けちゃ駄目だよ!?」
「分かってるよ・・・」
「絶対に様子を見るだけだからね!?」
ウィズがしつこく念を押すのには理由がある。
俺は痛覚がない、触覚はあるがこの身体に痛覚はないのだ。
だから、ギルドでダメージを無視する戦い方の無鉄砲と良く最初は言われた物だ。装甲を破損させて帰ればウィズは決まって心配してくれて装甲を取り替えた。
その度に経営危機に陥ることもあったのだ。
「それにしても平和だね」
「そうだねぇ」
ウィズに相槌を打ちながら俺は未だに炸裂ポーションの使い道を模索している。
「バル君、人の身体に戻ったら何するの?」
ウィズに聞かれ、フッと考えていなかった事に気がついた。
この十年、最初こそ近くに魔王居るじゃん!と思ったがレベル差で勝てないと悟るのは直ぐだった。
ベルディアは顔面ストライクで一度倒している。まぁ、不意打ちだからガチンコ勝負なら分からないが。
そう言えば幹部の面子はベルディアと仮面悪魔くらいしか知らないな。
「考えてなかったな、最近まで兎に角強くならなきゃって思ってたし」
「そっかぁ、しつこいかもだけど元の世界に帰るとか考えてないの?」
「いや、過労死した挙句にこの身体だよ?元の世界じゃ死人だから俺。まぁ、人の身に戻れたとしてもこの世界で暮らしていくことになるんじゃないかな」
答えるとウィズが意外と言うような口調で尋ね返してきた。
「あの、もしバル君が良かったらだけど・・・一緒に「すみません!」ひゃい!?」
もじもじしながらウィズが言いかけると突然開いた扉を黒髪のロングヘアーが目に付く女性が飛び込んできた。
その女性は王都検察官の制服に身を包み、端正な顔立ちに青縁めがねの下には鋭い眼光が光る。
職業柄って奴だろうな、素っ頓狂な声を上げたウィズは色白の肌を真っ赤に染めて乱入者を睨んだ。
「いらっしゃい、セナ」
俺がそう言うとウィズも遅れて「いらっしゃい」と言う。
「あ、お邪魔なら後ほど・・・・じゃなくて!バルバトスさん、折り入ってお願いがあります。」
「・・・・・厄介ごと?」
「最近、領主様のお屋敷付近に頻繁に出るという強盗団員達ですが、どうやら高等魔法を扱う冒険者崩れが混じっているようです。この町の騎士には手に余るので・・・・その、私と確保に向かって欲しいのです」
やっぱりかと俺は項垂れた。
五年ほど前になるだろうか、ウィズと供に商談で王都に出向いた時、好き勝手する強盗団が駆け出しだったセナを王都騎士から掻っ攫って売りさばこうとした事があった。
その強盗団の中にアークウィザードが混ざっており、王都にいた騎士は魔法にのされたというのだ。
それで、俺とウィズは余計なことと知りつつ盗賊団を撃退し、セナを救ったことがあった。
最高級茶菓子の包みをお礼として持ってきて、自分を鍛えなおすとか言ってきたセナと去年までパーティーを組んでいた。
いや、正確には幾ら引きがしてもくっ付いてきたんだけね?
因みにセナはウィザード、中級魔法を幅広く習得している。
初級であれば回復魔法もお手の物だ。
俺には無用の長物だけど。
「あ、ウィズさん。告白の邪魔をして申し訳ありません。私としても、ええ!どうしても譲れない訳がありまして!!」
「セナちゃん!告白とかじゃなくて、って言うかセナちゃんもバル君のことをムグッ!?」
「ウィズさん!それ以上はご遠慮願いますか!?」
おお、いつの間にかセナは瞬間移動魔法『テレポート』をマスターしていたらしい。
と言うかテレポートって任意の場所には移動できないのでは?予めした準備的なことをしないと移動先がランダムなのが欠点だとウィズが言っていたような。
ウィズの口を覆う手を引きながらセナが息を切らしている。
うん、魔法じゃないね。だとしたらとんでもない瞬発力だ。
因みに俺は基本クエスト以外受けない。何でか?面倒かつイレギュラーなことが連発するからだ。
去年か、去年の冬なんか冬将軍討伐してたら一撃熊が出てきて挟み撃ちだ。
アレは流石に死ぬかと思った、もう死んでるけど。
「あんまり気乗りしないけど、良いよ。」
「ありがとうございます。報酬はギルドを経由して支払いますので」
「少し出て来るよ、間違っても変な物を仕入れないでね?ウィズ」
「うん。気をつけてね」
別にセナが尋ねてくるのはめずらしくは無いけれど計ったようなタイミングなのは何でだろうか?
魔王さんを倒して、人間に戻る。
それだけのために冒険者になって、クエストをこなしているなら、目的のためだけに行動しているならバル君の周りには他の冒険者なんて寄りつかない。
ギルドの評価もクリスの言う通り「口では面倒くさがっても最後は助けてくれるんだよ」と言うのが本当なのだとセナがはるばる尋ねてくる事が証明しているだろう。
「よしっ!バル君に役立つ物があるなら仕入れてあげないとね」
ぱんっ!と掌を合わせると私は金庫に視線を向けた。
小脇に抱えたセナが抗議の視線を向けてくるが気にしていられない。何でか?
ウィズが変な物を仕入れる時特有の悪寒って言うの?ソレを感じたからだ。
一緒に居る時はあるんだよ、そういう直感的ななんかが。
この身体になってから気配とか過敏になったからなぁ、分かっちまうようになった。
損傷したら直るまでそのままは当然、不便を強いるときもあるので痛みを感じない分絶対回避を心がけている。
「で、どんな奴らなの?」
「お話したアークウィザードらしき冒険者をリーダーに剣や棍棒で武装した一団です。
ニ十人程度と斥候の話では!」
「で、何でセナは単身確保に動いてるの?」
「・・・・・実は、悩みの種でしたので飲み会でつい愚痴ってしまって引っ込みがつかなくなって」
呆れた。
つまり、セナは珍しくポンコツ発言をしたらしい。しかも生真面目な性格が祟って実行、でも一人じゃ心もとないからってことか。
カズマのパーティー程ではないが、俺の周りも十分うっかりさんが揃っているらしい。
「それじゃ、早く終わらせたいからとばすよ」
「まだ速くなるんですか!?」
「良いかい!?こいつ等は大切な商品なんだ。手荒に扱うんじゃないよ!?」
ひょろ長い痩せ型で筋肉質の男が下っ端だろう盗賊風の姿の男たちに指示を出していた。
商品とは何のことだろうか?
俺は最大望遠から視界を戻し、拾った音声の中にあった単語が気になったのでセナに尋ねてみる。
「ねぇ、セナ。奪っていくのって金品じゃないの?何か泣き声とか聞こえたんだけど」
「うっ・・・・そうです。近隣の村から若い女性や子供を攫っているうぷっ!」
あ~駄目だ、セナは完全に酔っている。
まぁ、無理もないか。フルスロットルでかっ飛ばしたし急ブレーキとかしょっちゅうだったからな。
途中で吐かなかっただけセナは耐性があるほうなのだろう。
アレ?じゃあウィズはどうなんだろうか。
出会った当初はダンジョンと街の移動とか俺に乗って移動してたけど終始笑顔だった記憶しかない。
リッチーといえど感覚は人のソレと変わらないだろうし・・・よもや、大物なんだろうか?
メイスを片手にそう考えながら俺は歩を進めようとする。
「まさか、正面から行く気ですか!?」
そんな様子に驚くセナが言う。
「セナは辛いんだろ?なら休んでなよ。」
「そういう訳にも参りません!これでも「何してんだえめぇら!?」あっ」
見回りらしき男がそう言うなら
「お前、少し黙れ」
ゴガ!と男の顔面を俺は容赦なく地面に押し付ける。
「・・・・殺さないでくださいね?」
「死なないでしょ、この程度で」
そうセナに返すと俺は本格的に暴れるため、スラスターを吹かして宙へ飛び立つ。
「てっ、敵襲ー!!」
「煩いよ、お前」
すし詰め状態の折の中で若い女性たちは男の叫び声と悲鳴を聞いていた。
白い悪魔、一人の少女はそう思った。
何せ、魔法をメイスで弾くと瞬く間に山賊たちを地面に突き刺している。
顔面から。
「大丈夫?」
俺は声を掛けると誰かが白い悪魔と呟いた。
「あ~怖いか、そうだよね。この体でこんな事してれば怖いに決まってるよね」
アクセルの街なら誰もが俺を知っているから怖がることは無い。が、この場に居る女性たちは皆故郷から拉致されてたのだろう。
「アンタ、私達をどうしようっての!?」
気丈に振舞う少女が俺にそう言った。
「どうもしないよ、助けるだけ。後から王都の監察官がくるから」
そう言うと俺は火属性中級魔法フレイムアローをメイスで叩き落す。
「たった一人でいい度胸じゃないのさ!」
大将だろう男に俺は尋ねる。
「ねぇ、アンタ。この子達をどうする気?素直に帰せば命は保障するよ」
「あ?状況分かってんのか!?この鎧野郎がっ!」
下っ端が吼えた。
「バカッ!油断するんじゃなっ!?」
「だから、どうるんだって聞いてるんだよ?」
俺を囲むように陣形を取る下っ端と男、俺の後ろには人質の檻があって動けないとふん
だんだろう。
しかし、あまりにもあっけなく下っ端たちの思惑は崩れた。
さっき吼えていた下っ端Aはまともにアッパーを受けて意識を刈り取られて、弧をえがいて頭から地面に落ちた。
頭領も一連の流れで俺の力量を把握したらしい。
ロッドを構え、距離をとる。
「せっかくの商品だ、逃がすわけ無いだろっ!」
「あ、そう。じゃあ抵抗する気がうせる程度に痛めつけるよ」
俺がそう言うと頭領への道を下っ端たちが身を挺して塞いだ。
ああ、時間稼ぎか。確か、上級魔法のせいで王都騎士は返り討ちにされたんだっけ?
「気取りやがって!こうなりゃ商品はまた集めるしかないよなぁ!」
ロッドの穂先が檻に向いた。
「チィッ!」
「インフィニティノヴァ!」
インフィニティノヴァ、炎系上級魔法にして対象に向けて放つ系最速を誇る魔法。
その威力は炸裂魔法に匹敵するといわれているが、放つためには相当の魔力を消費する。
「はっ何が最強だ!!」
頭領・クダルは下っ端もろとも檻に向けてインフィニティノヴァを放った。
眼前には焼けとけた地面と人間だった肉の塊が転がっている。
「あ~あ、下っ端集め直しじゃないのさ。ま、最強って言われている奴を殺したんだ。俺が最強ってことじゃ・・・っ!?」
ズガン!と何かが落ちてきた。
黒い鉄の塊?いや、熱で赤黒く光るソレは先ほどまで“奴”が持っていた。
「ねぇ・・・お前、何してんの?」
その声にクダルはまさか?と視線を向ける。
煙が晴れた先にいたのは、悪魔だった。
「バルバトスさん!お怪我は!?」
「大丈夫、それよりその子たちを解放してあげて」
駆け寄ってきたセナに俺は言う。
確かにアレを連射されたら堪らない、王都騎士じゃどうにもならないだろう。
だが、叩き上げられる範囲内だ。
今度からは両手でやろう、メイスを弾かれてしまった。
「ひっ!」
「難度も言いますが!殺さないでくださいね!?」
怯え、腰を抜かすクダルに向けて歩みだす俺にセナが釘を刺す。
「大丈夫、死にはしない・・・ファーストエイドは必要になるけど」
俺はそう言うとセナの苦言を無視してクダルに歩み寄った。
「ヒッ!ファイヤー!!?」
ロッドを向けたクダルは宙を舞った。
顎に激痛が走るクダルが、アッパーをモロに受けて顎の骨が砕けたと気がつく前に俺は取立ての攻撃スキルを試す事にする。
「ねぇ、暫くベッドの上で後悔しなよ・・・・」
「ダ、だジュけ!!」
「デットリーブロー・・・」
ボコォ!とクレーターが出来上がる。
その中央には、大の字のクダルがいたのは言うまでもない。
次辺りでサイズ等について書こうと思います。