REBORN DIARIO   作:とうこ

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日常編 - Ⅰ
親愛なるXの者へ


 

 

 

 

 

 

 

 

【これから私が見届けるこの世界で起こる一連の出来事を、この日記に詳細に綴っていくことにした。】

 

 

 

 四畳半の湿気臭い畳部屋、木造建築物二階の一室で胡座をかいた人物が、明かりに頼らず暗がりに慣れた目を凝らし、その文字を綴る。

 

 まだ夜が明けない外は、風がカタカタと立て付けの悪い窓を叩いている。

 暗室の角に荷物を詰め込んだキャリーケースや昨晩九時頃に業者に届けさせた厚紙の箱が乱雑に山積みにされていた。

 一切それらには手をつけず、人ひとり暮らすにも狭い部屋の中央にはピーナッツ型の小型テーブルが置かれているのみで、寝静まる夜の重苦しさに息が詰まりそうになりながら彼女が書き殴る内容は、日記と言うには秘めたる覚悟と意志が綴られていた。

 

 

 

 

【これが、今の私にできることのすべてだ。】

 

 

 

 彼女自身の半生を振り返り、この日までどれだけ心を潰して耐えてきただろうと、血が通うこの心臓に投げかける。

 ずっとそばで見てきたから、その人が、残酷な真実を手にして破滅していくのを見ていられない時もあった。

 止められなかった。運命には、逆らえなかった。

 こうするしかないとわかっていたけれど、私はただ見ていることしかできなかった。

 

 筆を握る手が、ふと止まりそうになるのを、押し寄せる感情の波とともに奮い立たせる。引き攣りそうな痩せたその左手で、空白の紙面にこの想いを埋めていく。この手だけは、止めてはいけない。

 

 

 

 

 

【どこまでできるのかはわからない。それに、私のこの決断は彼らを裏切ったということだ。

 

 詫びなら死んで償える。でも、私にはこれしか他に思いつかなかったんだ。もう後悔したくないんだ。】

 

 

 彼らの怒りの表情が容易に浮かんだ。

 この世界がシナリオ通りに向かうなら、構わないことだ。今すぐこの暗闇が彼女の意識を飲み込もうとも――――。

 

 

 

 テーブルの上に立てかけたスクエア型の腕時計が、六時を回る。秒針はカチカチと規則的に音を刻み、空が日の出を迎えようとする。

 

 

 

 

 

【四月三日、第一月曜日、入学式当日、九時開式、新入生は八時半までに登校すること、校内掲示板に貼り出された各クラスの教室で十分程度HRをした後に式入場。

 

 彼は、まだ眠り続けているだろうか。】

 

 

 

 誰よりも、あなたの未来を願っているから。

 

 

 

 

 

【標的、沢田綱吉。

 

 ボンゴレⅩ……十代目後継者候補。】

 

 

 

 パタンと【DIARIO】の表紙を閉じる。

 赤みがかった茶表紙の、辞書ほどの厚みの紙媒体。

 

 しばらく眺めて、それに小さな南京錠をかける。

 

 

 

 暗がりに目が慣れた彼女は視線を上に仰ぐと、すきま風にカタカタと震える窓には、東の空に鮮やかなオレンジ色がかかる頃だった。

 

 

 




【】が日記内容部です。
地の文は基本三人称です。
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