REBORN DIARIO 作:とうこ
翌日、いつもの通学路を歩くと、朝から塀をよじ登る不審極まりない女子生徒とすれ違った。緑中の制服を着ていた。
三浦ハル……。
知っていたが、朝から凄い光景を目撃してしまった。
恐らくこの後、沢田綱吉の家庭教師リボーンに告白するもあっさりフラれ、沢田綱吉に八つ当たりしていく展開だろうと予想する。予想するまでのことでもないが。
まあ、順調に事が運んでいくのはいい兆候だ。
彼らにまかせ紫乃は先に学校へと登校する。
クラスの教室を開けると、数名のクラスメイトが既に登校している中、あの男の姿もあった。
明らかにこちらを意識して声をかけようとするが、紫乃は一切視線を合わすことなく窓際席の定位置に着く。
紫乃が言わずとも醸し出す空気に山本武も下手に声をかけることは止め、いつもの日常が刻々と過ぎていくのだった。
【七月十二日
先日に引き続き主要人物の一人である三浦ハルが現れた。登場からキャラが濃い。
今後笹川京子に勝るとも劣らない主人公のヒロインポジションを築き上げるだろう。今後、彼の精神安定剤の役割を見事全うしてほしいと願う。
追記――あの男の視線がずっと気に障るが、少し時間を置けば向こうも諦めてくれるだろう。そういえば彼にはこれと言った女の子がいないのだったな。非常に面倒だ。】
その翌日、通学路の橋を渡ろうとする道中に今度もまた三浦ハルと遭遇した。
昨日に引き続き凄まじい光景を見てしまったと思う一方、順風満帆だと呑気に紫乃は離れた場所からそれらの光景を眺めていた。
獄寺隼人が応戦し、鎧を着た三浦ハルが川に真っ逆さまだ。すぐさま溺れた彼女を助けようと死ぬ気弾が飛び出す。
「死ぬ気でハルを救う!!!」
川に飛び込む裸男という珍妙な光景を前にして、朝から壮絶なものを見たと既に一日を終えたような脱力感がある。
それにしても、あんなので女というのはコロッと落ちるものなのかと、同性としてどこか理解し難い。
既に濃いワンシーンを目撃してあとは家に帰って寝たいと思ったところに、後ろからトンッと肩を叩かれる。
「よっす、伊波」
――――ッ、山本武!?
それは不意打ちだった。朝早くからにこやかな笑顔を見せる山本武が立っていたのだ。思わず思考が固まる。
挨拶をする山本武にそれに言い返す言葉が何も見つからない。
あんな明らかに態度に示したというのに、まさかこんな自然体で挨拶をされるとは紫乃は思ってもいなかった。なんて男だ。
そしてすぐ橋の下には、彼らがいる。
「あっ、山本!」
「よーっ、ツナ、獄寺!」
「げっ、またアイツかよ……」
橋の下から彼らが気づき、手を振っていた。
そして、山本武と橋の上にいる伊波紫乃を見て、沢田綱吉が目を丸くしている。
「あれ? 伊波さんも……」
「っ……」
沢田綱吉が何かを言いかける前に、山本武を振り切り橋を一気に駆け下り通学路を逆走していく。
「あっ、伊波!」
河川敷まで響き渡る山本武の声だが、この時の彼女に届いてはいなかった。
【七月十三日
しくじった。まさかあの男と出くわし、再び干渉するとは……。
二度も失態し、今後巻き返しが利くかどうか……。
もう、手遅れなのか?
いや、怖気づくな。事は期待通りに向かっている。必ず、やり遂げてみせる。
誰も死なせない。そして、彼の未来を守るため……】