REBORN DIARIO   作:とうこ

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あの娘の印象調査

【七月後半になり、学校は夏休み。

 しばらく彼らと会うこともなく安定した生活を送る。

 

 一年の夏休みに起こる主なイベントはふたつある。

 

 期末テストで成績が悪かった生徒は補習に出るようだ。成績が特に悪い二人は無論出席し、その後沢田家で提出課題を一緒に解くのだろう。

 こちらはノーマークだ。私が介入しない方が上手く事が運ばれるだろう。

 

 そして、こちらがやはり本命だ。10年前の入江正一……しばらくは、彼を見張ることにする。】

 

 

 

 

 

 沢田家に集まった者は、皆課題に出されたとある問題に苦戦していた。問7の問題に難関エリート緑中に在籍する三浦ハルを加えた四人で問題を解こうと四苦八苦していたところだ。

 ふと、沢田綱吉の家庭教師リボーンが、こんな口を挟んだ。

 

 

 

「ところで山本」

 

「うん?」

 

「お前、伊波紫乃のこと、どう思ってるんだ?」

 

 

 突然の質問に山本武より聞いていた沢田綱吉の方が妙に焦り出したが、山本武はあっけらかんとそれに答える。

 

 

「伊波のことか? イイヤツなんだぜ、この頃はちょっとなんかあるみてえだけど……」

 

 少し照れくさそうに頬をかいてそう語る山本武。

 ここ最近の山本武が、クラスでもおとなしい女子の伊波紫乃にご執心であるのは誰の目にも明らかであることだった。

 沢田綱吉はそんな簡単に話していいものかと他人事なのに頬を赤らめながら、ある意味山本武を賞賛するのであった。

 

 しかしそう話す語尾は煮え切らないようであった。

 

 

 

「はひっ? どちらさまですか?」

 

「ん、ほら、この間俺と一緒に橋にいた女子だよ」

 

「あのグラースィズのガールですか! ハルはほんの少ししかお会いできませんでした! 是非今度ご挨拶したいです!」

 

 先日のことを思い出した三浦ハルは、クールな印象の伊波紫乃を思い浮かべ今度また会う機会があれば是非ガールズトークに花を咲かせたいと思うのであった。

 

 

「獄寺はどうなんだ?」

 

「そうッスねえ……転入した日に一瞬目が合いましたが、なんつーか地味な女ッスね」

 

「地味ってなんだよ獄寺、お前はまだ伊波とそんなに話したことがないだけだろ」

 

「あん?」

 

 急に突っかかってきた山本武を獄寺は睨み返し、間にすぐさま沢田綱吉が入るとなんとか大事には至らなかった。獄寺がさっぱりわけがわからないようにしているが、わからなくていいだろうと沢田綱吉はお茶を濁した。

 

 

「何笑ってんだよ、リボーン?」

 

「ニッ、決めたぞ」

 

 

 二人の返答を聞いて考えていたリボーンは、その後に満足げに微笑んでいたのを沢田綱吉に突っ込まれたが、食い下がる前にさっさと問7を解けと誤魔化したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 問7を無事に解き終え、とうに深夜九時を回る時刻だった。三浦ハルや獄寺隼人と解散し、闇に落ちた家路を歩く山本武は、ひとつの曲がり角で印象的な人物と出会った。

 

 

 

「……っと、伊波じゃねえか。こんな時間にどうした……」

 

 

 曲がり角で偶然会った伊波紫乃に声をかけようとしたが、途中で無視され彼女は一人深夜の住宅街の道を進んでいく。

 

 ひとつ溜息をこぼし、山本武は彼女の後ろを付いて歩く。

 数歩歩いたところで前にいた伊波紫乃が、ピタリと足を止めた。

 

「……やめてくれないか?」

 

 暗闇で振り返り際に睨まれたようだが、山本武は臆せず彼女に言った。

 

「こんな時間に一人じゃ危ないだろ?」

 

 彼が一歩、近づこうとすると住宅街に怒号が響き渡った。

 

 

「それ以上近づかないでッ!!」

 

 

 

 張り詰めた緊張に、脊髄までピリリッと電気が走ったようであった。

 落ち着いた印象の彼女だが、その語尾には動揺が明らかだ。無言で立ち止まる山本武は、フッと彼女に笑って見せた。

 

 

「……わりぃな。そいつァ無理なお願いだぜ」

 

 そう話す最中にも彼女との距離を縮める彼は、俯く彼女の頭を自身の胸に抱き寄せた。

 思いのほかあっさりと、彼女は身をまかせてくれた。

 

 

「どうしたんだよ? いつもの伊波らしくないだろ、俺でいいんなら聞くぜ?」

 

 

 

 胸に顔を埋めるその隙間からは、か細い泣き声が聞こえる。初夏の晩に、帰り道で泣き止まない紫乃を、落ち着くまではしばらく胸を貸してやることにした。

 

 

 

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