REBORN DIARIO   作:とうこ

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放課後の刺客

 放課後も近い授業中のこと。

 席に着く沢田綱吉の異変に気づいた紫乃は、注意深く観察していた。

 沢田綱吉の首筋に見覚えのあるドクロがある。

 

 

 ――死に恥をさらす病と言われる通称ドクロ病だ。

 

 

 ついに主役が死す時が来てしまったんだな……沢田綱吉……とおふざけを軽く叩いて、紫乃はドクロが喋る死に恥をさらす内容を盗み見る。

 

 『近所の外で飼われている犬が怖い(チワワ)』とある。そういえば初日に近所で飼うチワワに吠えられて腰を抜かしていた。ダサいな、沢田綱吉。

 

 校舎に終業の鐘が鳴り響く。

 主人公に死んでもらうのは当然避けてもらいたい。だがこればかりはあのヤブ医者に診てもらう以外他に方法もなさそうだ。あの家庭教師がイタリアから呼び寄せているだろうから、心配には及ばんだろう。

 

 紫乃は、これまでの彼のダメツナっぷりを舐めていたと思った。しかし、これまで事が忠実に運ばれていたのは、他でもなく彼のダメツナっぷりのお陰である。

 今回のことがいい例になるだろう。彼のダメツナっぷりが今回彼自身を救うことになるのだ。いや、そもそも死ぬ気弾がなければ何も克服できない彼のダメさがドクロ病という不幸を招いてしまった。……やはり彼はダメツナだ。

 

 

 結局のところそう結論づけた紫乃は、空気感染するやもしれないその恐ろしい奇病を避け早いうちに下校しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

【九月五日

 

 放課後を迎える前にもドクロ病の症状が発症する。

 タイムリミットは一時間だが、大丈夫だろうか。記憶には校舎を出たところで発症に気づいていたが、無事生還することを祈っている。それに……】

 

 

 

 

 先に校舎を出てまだ付近を歩いていた頃、紫乃の前を華麗に白衣の裾を翻す人物が道を塞いだ。

 

 

「お嬢さん、学校帰りかい? ちょいと道に迷ってたとこなんだが、よかったらおじさんと放課後は制服デートでもどうだい? こう見えてもおじさん医者だぜ?」

 

 ……この場にいるべきではない男がいた。

 学校帰りの女子生徒をナンパしている暇があったらやるべき仕事をしろこのヤブ医者!!! とダンディズムに気取る髭面オヤジに無性に苛立つ。しかしここは感情を抑えてさっさと沢田綱吉の家の道を教えてやることにする。

 この中年女タラシに何を言っても無駄だ。こんなのを相手にするより沢田綱吉の生存率を上げてやる方がいいと結論づけた。それに医者なら女子学生のナンパにコネを使うなよと言ってやりたい。

 

 ……と、紫乃の僅かな良心で沢田綱吉の家まで誘導しようとするのだが、このヤブ医者本来の仕事よりも紫乃のナンパの方にしつこく絡んでくる。しかも昼間から強烈に酒臭いこのオヤジ。

 

 うぜえぇ!! それにこいつにあまり顔を覚えてもらいたくもない。挙動不審になりながらも沢田綱吉の家の住所を説明していると、察しのいいこの男がふと紫乃の顔をまじまじと見る。

 

 

「うん? ちょっと待てよ。お嬢さんの顔、そういやあどっかで……」

 

 ――――ッ!と条件反射で、紫乃は男から顔を逸らす。

 

 以前から要注意人物としてマークはしていたが、まさか向こうがこちらに面識があるとは……! さすがに女タラシと自負しているだけはある……。

 

 

 Dr.シャマルに顔を見られた。記憶がぶっ飛ぶほど殴ってやろうか。

 その時重い鉄槌が振り落とされる。ハガッとその場に崩れ落ちたDr.シャマルの背後で、完全に気配を殺した刺客が、この状況下で身動きがとれない紫乃を前にしてその姿をさらす。

 

 

 

「大丈夫?」

 

 

 悠然とそこに佇み紫乃に声をかけた人物を認識し、紫乃は思考が止まった。

 

 

「っ……!?」

 

「……この不審者に絡まれて怪我はないのかと訊いているんだけど」

 

 不審者呼ばわりされた医者に思わず同情する。

 

 ――あの鬼の風紀と名指される雲雀恭弥がいたのだから。

 群れていたとかいう理不尽な理由でもいいから紫乃もいっそのこと意識を飛ばしてやりたかった。これはどういう事態だと錯乱する一方で、彼の握る鈍器に滴る血を見て、冷静さを保つ。

 

「っ、はい……ありがとうございます」

 

 ひとまずは相手に合わせて様子を見る。

 慎重に事を運ぶことを重点に置き、紫乃はおもむろに雲雀恭弥の目を見た。

 まるで冷たい瞳……何の躊躇もなく人を殺める目だ。

 

 こんな人物が何故自分なんかを助けたのか甚だ不思議な話だ。

 いや、彼なら風紀がどうとか言ってこのナンパ男に制裁するだろう。それでも偶然ナンパから助けた娘に慰めのような態度はとらない。

 彼の認識では、あくまで風紀を守った行為であるのだから。

 

 

 ……なら、なんだ。この男は何を考えて自分に話しかけたんだ。思考が読めない。

 

 それに一番まずいのは、Dr.シャマルが倒れたことで沢田綱吉のドクロ病を治す医者がいなくなったことだ。

 このままでは沢田綱吉が死に恥をさらすまま死んでしまう。非常に最悪な展開だ。

 

 

 

 

 

「伊波紫乃……」

 

 

 ――! 名前までこの男は調べたのか、やはり……雲雀恭弥が∥紫乃《じぶん》に用があるから声をかけたのだと確信した。

 非常に厄介な相手に目をつけられてしまった。

 細心の注意を払って動いていたつもりだったが、この風紀を語る鬼の目には見透かされていたというのか。

 

 

「明後日、昼休み、応接室に来なよ。待ってるから」

 

 来なければ咬み殺すまでだけど、と紫乃の耳元でそれを残して、牙を隠した男は再び校舎の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【雲雀恭弥と放課後に接触してしまう。あの場でかわしきれなかった。不覚だ。一体私の行動の何が彼の気に触れてしまったというのか。

 このダメージは自分の身体で受け止めよう。活動に支障は出るかもしれないが、彼らを守るには仕方ない。

 

 雲雀恭弥に後頭部の打撃を受けたDr.シャマルだが、あの後に酔いが醒めたのかすぐに起き上がり沢田綱吉の家に向かってくれたのでギリギリ間に合ったようだ。

 少し心配だったので沢田家の前まで尾行したが、外までポイズンクッキングの異臭が漂ってきたのですぐに撤退した。

 思えば主役がそうすぐに死ぬこともないだろう。既に何度も蛹から羽化した男だ。私が彼の監視を放棄したわけではない。ここぞという時こそ死ぬ気を見せろ、沢田綱吉。】

 

 

 




今回はオチがご都合主義になってしまいました。
シャマルなら酔いどれでも初期の雲雀さんの気配は察しそうなんですよね(花見回がそうですし)。

山本武親衛隊のフラグがあったのでそっちにしようかとも思いましたがそれなら雲雀さんより山本にケリをつけてもらう方がいいかと思いましたので結局シャマルで伏線を張りました。まあ日常編ということで大目にお願いします。出直します。

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