REBORN DIARIO 作:とうこ
【九月二十一日
体育祭当日。私は応接室でお留守番組だ。もともと体育祭に出る気はなかったが、あの男の言いつけだ。校舎からなら存分に標的の観察に徹底できる。不服だが、初めてあの男の暴挙が役に立った。流行りに乗るなら"暴君は胸糞だが役に立つ"というところか。くだらん御託はよそう。】
土埃舞うグラウンドでは、体育祭の種目の真っ只中であった。
男子100m走で、山本武が陸上部のホープを破り一位でゴールする場面だった。ゴールした直後の山本武の周りには溢れんばかりの人だかりができる。チームで山本武を応援する女子達の歓声は勿論、他チームながらも山本武の活躍に鼻息が荒い親衛隊の女子達、中には興奮のあまり倒れる数名も……。
イケメンとは罪深い。
なんて、その活躍を校舎内の応接室で高みの見物をしていた紫乃だった。
いい眺めだ。誰にも干渉されない絶好のポジションで、山本武が囲まれている体育祭の光景を校舎の一角から眺めていると、群衆に囲まれながらも山本武が紫乃のいる校舎の方面を見上げているようだった。
ここからではあのバカに話しかけられることもないので、応接室の窓際に寄りかかり引き続き沢田綱吉の観察に回ることにする。
ぴょんぴょんしている沢田綱吉がビリになり、安定の情けなさを露呈している。ダメツナだな、沢田綱吉。
そんなのでは棒倒しで落とされても、あの天然系ヒロインを落とすのは難しいぞ、と余計なお世話を焼いて、次にある男子の借り物競争のアナウンスを聞いていた。
今回も彼女の思惑通り事が運んでいる。
気になることといえば、今朝校内で偶然目撃したDr.シャマルが、朝から女子生徒を口説いて回っていたことだ、奴には細心の注意を払っておこうと心に誓い、紫乃はその時グラウンドのノイズから意識を逸らしていた――――――。
完走後、チームメイト達に囲まれながら、山本武はふと並盛中の白い校舎を見上げた。真っ青に澄んだ空の下に聳え立つ白亜の建造物を見上げ、彼女の姿がそこにないか探していた。自分の活躍を、あの校舎のどこかで見ていないだろうかと……。
校舎の窓の一角に、人影を見た。女子生徒のようだ。
ほぼ直感的に、彼女だと確信した。
彼女を見つけると思わず親しんだ名前を呼びたくなるが、すぐに次の種目に移動することとなった。
次の種目は借り物競争とアナウンスする放送を耳に入れて、山本武も競技に出場した。後方に並んで位置につき、着々と出番が来る。合図とともに一番に駆け出し、すぐそばに落ちていたカードを手に取りめくった。
借り物の内容を見て、彼の脳裏に最初に浮かんだのは、伊波紫乃であった――――。