REBORN DIARIO 作:とうこ
昼食休憩を終えたグラウンドでは遂にメインイベントの棒倒しが行われていた。
紫乃の組の総大将は沢田綱吉、敵チームの総大将にはあの雲雀恭弥がいる。これはこれで面白い光景だが、観覧席が熱いのやら冷めてるのやらつくづく微妙な空気であるが、審判の開始の合図が秋晴れの空に響き渡る。
紫乃は一人、応接室の窓際で、棒倒しの行方を見守っていた。
順調なはずだが、紫乃の顔色は暗い。言い知れない何か不安の種があった。
午前中にあった出来事を振り返る。
山本武に引っ張られ借り物競争に出場し、その後の応接室での雲雀恭弥との密着した会話……。
窓に添えていた手に、僅かな力が込められた。
ここまで、二人の重要人物と関わりすぎていた。ただ傍観すると決めていた紫乃だが、既に取り返しのつかないところまで来ている。
今後はもう彼らの前で今までの"伊波紫乃"を演じるのは厳しい状況になるかもしれない。
ならば作戦変更である。
「ちゃおっス」
どこからか、そんな声が聞こえる。
まだ舌足らずな子供の声だ。
「伊波紫乃だな」
グラウンドを眺めていた視界をずらすと、いつの間にか開け放たれていた窓枠に、その黒い影がいた。
――――――最強の殺し屋だ。
気配もなくそこに腰を据えていた赤ん坊に、紫乃は警戒する一方、直に対面するその凄腕の赤ん坊の細部の指の動きにまで注目した。少しの気の緩みも命取りだ。
まさかここで接触を図ってくるとは……予感が的中した。隙は見せないよう上手くやってみせる。
さあ、どう出るんだ。アルコバレーノ。
「……でもまだその時じゃねえぞ」
その殺し屋は、でたらめにそんなことを言う。殺し屋にとって標的を狙うタイミングとは重大な要点だ。呼吸ひとつのズレでミッション成功の確率を大幅に増減させる。
今はまだそのタイミングではないと彼は判断した。まだこうして標的との接触を図れただけで満足だ。
紫乃は肩透かしを食らうように難色を示していた。
ここまで警戒していたのに、相手があっさり引き下がろうとするとは意外だった。そして紫乃は少し落胆していた。
「借りるぞ」
その言葉の意味は、応接室の窓枠からグラウンドにいる標的を狙う絶好のポジションを確保するという合図。
その証拠に紫乃がまだ許可していないにも関わらず、彼はスコープ付きのライフルで見事沢田綱吉を仕留めた。
棒倒しで盛り上がりを見せるグラウンドは、裸に額の炎を灯した沢田綱吉によりさらに戦況は掻き乱されていた。
次に紫乃が、彼のいた窓枠を振り向くと、そこには白いカーテンがふわりと彼の面影の余韻を残しているだけであった。
【散々だった一年の体育祭は、しかし終盤にも意外な結末を見せてくれた。
イタリアの殺し屋との最初のコンタクトは、見事に空振りだった。こちらの思うところを察したのか?
つくづくその甘いマスクに隙を見せない感じの悪さが目立つ男だ。愛人なんて御免だ。
予期していたことだが、ここはやはり戦況を変えなければならないだろう。上手くあの男を利用する。】
書くか悩みましたが追々絡んでくるのかな……?