REBORN DIARIO   作:とうこ

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バースデー

 放課後のことだ。

 紫乃は、気分転換と言って応接室を抜け出し校庭を歩いていた。澄んだ空を見上げていると、ほんの少しだけ落ち着いた。校庭の芝生を踏みしめて、懐かしい景色を思い出していた。

 

 

 

「伊波」

 

 彼女のその名前を呼ぶ人間はここでは数限られる。

 ここ最近はやけに絡んでくる男の顔を思い浮かべた。紫乃が振り返ると案の定、クラスメイトの山本武がいた。

 

「あまり校内で関わると風紀の鬼がすっ飛んでくるぞ」

 

 多少大袈裟に脅してみたが、ヘラヘラと笑って紫乃に近づいてくる。この脳が野球玉の男には紫乃の脅し文句はスリ傷程度のようだ。

 

 仕方なく手短に話を聞いた。

 

 

「実はな、ツナんとこの小僧の誕生会をやるんだよ。伊波も来ねえか?」

 

「……私が?」

 

「ああ。小僧も喜ぶと思うぜ!」

 

「君は何もわかっていない」

 

 その棘の刺す台詞を吐き捨て、暗い影がかかる自身の顔を紫乃は逸らす。

 

「んだよ、伊波、何がわかってねえんだよ」

 

「君はバカのひとつ覚えみたいに野球だけやっていればいいだろ。何故私に構う。体育祭でも言ったはずだ。いい加減にしてほしい、君と関わるとまた私は惨めな気持ちに……」

 

 雲雀恭弥をダシにして、彼にこちらの警告を示したが、当分は大丈夫だと踏んでもこの男が関わると事がどうなるかはわかったものではない。できる限り今の彼とは距離を置いておきたいのだ。

 

 

 

 

「伊波、怒るぞ」

 

「っ……」

 

 咄嗟に腕を掴まれ何かと顔を上げれば、割と真剣な顔つきの山本武と視線が絡み合う。続けようとした言葉は喉奥の辺りで詰まる。

 

「俺は、伊波みてーに頭がいいわけでもねえ、お前の気持ちだってロクにわかってねえかもしれねえよ。でもな、自分のことを惨めだなんて言う奴は俺よりバカだ。伊波と仲良くしたいって奴をバカにしてるみてえだろ」

 

 なんだそれ、とバカの理屈に説教された気分はそこそこいいものではない。紫乃は、真剣な眼差しの彼の目をしばらく見つめた。殺し屋として秀でた才能を潜める男のそれとはあまりにも思えない、純粋でまっすぐな眼差しは紫乃を見据えていた。

 

「……その、話したくないこともあるんなら、それは別にいいんだ。ただよ、もう少し向き合ってくんねえか? 惨めとか言われちゃ、俺だって……」

 

 そこまで言うと、山本武は視線を彼女より下にずらして口籠る。

 彼の言葉の続きを待たずして、紫乃はかれこれ10分も話し込んでいたことを、山本武に引っ張られる腕の時計の文字盤が指す針を確認して知った。このまま戻るのが遅れれば雲雀恭弥が探しに来るかもしれない。見つかれば最悪山本武にまで危害が及ぶ。

 

「……悪い。もう行かないと。どの道君が言う誕生会には行けそうにない。雲雀に目をつけられるからな」

 

 それとなく、山本武に警告しておく。紫乃なりの気遣いのつもりだった。

 けれど、その余計な一言は、彼には地雷でしかない。

 

 

「またヒバリなのかよ……」

 

「山本……?」

 

 気づけば、小さく抵抗されるくらいに彼女の腕を掴んでいた。あまりの痛みに彼女の表情が歪んでいた。

 彼女にはすぐに謝ったが、不信感を抱いてしまっただろうか……。

 

 初めて彼女に自分の名前を呼ばれたのが、こんなに複雑なものになるなんて、思いもしなかった。近くにあった校舎の壁に、このやるせない気持ちをとにかくぶつけてやりたかった。

 

 

「あー、くそっ。なんでこうなっちまうかなあ……」

 

 

 

 

 その後の誕生会でも、山本武がどこか上の空でいるのを、沢田綱吉は気にかけつつも、そっとしておくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

【十月十三日

 

 あのイタリアの殺し屋のバースデーパーティーに誘われた。

 

 いい気なものだ。君達は。今はまだ何も知らない。

 あのニヒルな笑みを浮かべて、君が今思うことは何だ?】

 

 

 




目標は今月に日常編完結!
もう今から本腰据えていきます。

最近花沢類のモノマネが好きなんですが、山本にも「いーなみ♪」とか言わせたら面白いでしょうか。白蘭ぽい。
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