REBORN DIARIO   作:とうこ

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殺し屋リスト

【ここ数日、彼の周りでは色々な出来事が起きた。

 

 というもの、獄寺隼人が色々やらかすのである。

 

 退学クライシスだったり、裸でダウジングをしてグラウンドをまっぷたつにしたり、あの根津という教師が学歴詐称で解任されたりと、それはもう色濃い内容である。

 あの爆弾魔こと獄寺隼人が色々やらかしてくれたりするからそれはもう大変だ。

 

 

 同時に獄寺隼人が忠実に暴れてくれたということでもある。感謝している。

 

 

 しかし、そんな彼らの退学騒動がほんの些細なことに思えるようなとある出来事が、この日私の身に起こったのであった。】

 

 

 

 

 

 

 平凡な学校生活が終了し帰宅する。

 本日も沢田綱吉は転入生である獄寺隼人にしつこく絡まれ迷惑しているようだった。

 ほんの少しまでヒーローだったというのに不良に見初められ、今ではすっかり影も形もない。あるのはクラスの女子からの羨望と殺意を織り交ぜた沢田綱吉への視線だけである。

 

 イケメンとは罪深い。

 

 

 紫乃はしみじみとそう沢田綱吉に同情するのが日常生活の一部のルーティーンとなっていた。

 

 放課後は標的の観察もできなくなり早々に帰宅することにしていたのだが、紫乃は家路へと向かう道を普段より遅いペースで歩いていた。

 

 

 

 ……視線を感じる。

 

 

 振り向かずともわかっていた。例の沢田綱吉の家庭教師だろう。それ以外に他に理由もない。

 態と気配を完全には殺さず跡をつけてくるとは……疑っているのか? 探りに来ているのか?

 

 これくらいは想定内だった。

 行き先を変更し並盛図書館に向かう。

 

 

 あの赤ん坊の考えていることは予想できる。

 彼は沢田綱吉のファミリーとなり得る人材を欲していた。同じクラスメイトから順々に偵察しているだろうことは容易に考えられた。

 

 何もしなくていい。普通を演じていればいいだけのことだ。

 

 彼のことだ。並盛中の全校生徒を候補にしているなら一人の生徒にかける時間はほんの数十分程度だろう。彼ほど優秀な殺し屋なら標的の情報を集めるのにそのくらいの時間があれば十分だ。

 

 それに彼は沢田家の母が振る舞う手料理をとても楽しみにしている。夕食時間には沢田家の食卓についておく律儀な性格だ。余程のことがない限りは、夕食までにこの偵察を切り上げるに違いない。

 

 そうなら何も起こらないこの数十分間……持ち堪えればいいだけだ。

 

 

 

 図書館に着きそこではいかにも勤勉に自習する生徒を演じているところで、紫乃の予想通り夕食時間を気にしてリボーンは数分程度で紫乃の偵察を切り上げた。

 気配がしなくなったところで、張り詰めていた緊張を解く。

 思った以上にアルコバレーノの存在が、平常心を乱していたようだ。

 

 やはり一筋縄ではいかない相手であると再確認するのだった。

 

 

 

 

 図書館をその後出て、紫乃は日がだいぶ西の空に暮れた頃に帰路へと着く。

 茜色に暮れる空を眺めて河原を歩いていた頃、コツンと足に何かが当たる。

 視線を下げてそれが何かを確認すると、手のひらサイズの白い球だ。

 

「すいません――……ってあれ、伊波じゃねえか?」

 

 そう声をかけてきたのは、彼女もよく知る人物だ。

 足元のもともと白かったその球は、何度も何度も的にぶつかってボロボロであった。西日に反射している表面を触れた親指で撫でて、河原の景色を見下ろした紫乃は、河川敷から顔を出したその人物を眼鏡越しに睨む。

 

 放課後の河原で制服姿で練習する山本武だ。

 

「悪いな、またボール転がしちまって」

 

 学校でも他の生徒同様にほぼ話したこともない紫乃にもこんな笑顔で話しかけてくる山本武を見て、紫乃は昼休みにもこんなことがあったと思い出す。

 校庭を歩いているところに、山本武の打ったボールが飛んできたのだ。紫乃の顔を直撃するスレスレのところを横切り校庭の草むらに転がっていった。

 

 

 あの時と同じだ。

 あの時も山本武は会話もしたことのないクラスメイトの自分を覚えていて、今と同じように気さくに話しかけてきた。

 

 山本の方から紫乃の姿は逆光して眩しそうにしている。

 

 あの時と同様に紫乃は何も言葉をかけず、手に拾うボールを投げた。緩くカーブするそれを河川敷の下から山本武がグローブの中央に収める。

 

「サンキュ! 伊波の家ってここから近くなのな」

 

 ほぼ初対面の紫乃にも親しく話しかける山本武が、黒い烏が夕日に向かい飛び立つ頃にもこんなことを不意にこぼした。

 

「ハハッ、ここ最近コントロールが上手くいかねえんだ。だせえとこ見せちまってるよな」

 

 明るく言ってみせたが、山本武の表情には普段のような柔軟さが欠けている。曇る顔で自身のグローブをはめた手を見つめていた。

 

 

 

「……ほぼ初めて君と話す私にそんなことはわからない」

 

 彼女が初めて口を開いたのは冷たい一言だった。

 なのに、山本武の反応は落ち込むどころか、紫乃の顔をほのかな西日の光が差す目で彼女の言葉に向き合おうとしていた。

 

「私ではなく、君のことを本当に理解してくれる人達がそばにいるよ。君は彼らのためにも、野球に打ち込むといい」

 

 

 紫乃にはこれくらいしか言えなかった。生きてくれ、なんて言えるはずもない。本当に導くのは彼ら自身だ。自分は所詮傍観者に過ぎない。

 

 山本武と別れた数キロ先の河原に立ち止まって、水面に反射する並盛の町を眺める。

 

 

 

 

 

【想定していたアルコバレーノの偵察だ。問題なくかわした。

 

 想定外だった山本武と二度の接触。

 二度目の接触はかわしきれなかったが、彼に自分のメッセージは届けられたように思う。

 

 もうすぐ次のことが起こる……。】

 

 

 

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