ブラック鎮守府に配属されたので、頑張ってみる(凍結中)   作:ラインズベルト

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第1話

俺は九条愛斗(くじょう まなと)。日本海軍所属で階級は中佐だ。今俺は呼び出されて大本営の会議室にいる。何か悪いことしたっけな……。身に覚えの無い呼び出しに、若干ヒヤヒヤしてるけどな。これが処罰なら俺は確実に消されるな………。

 

「九条中佐、君に頼みたいことがあるんだ」

 

「私に頼みたいこと、ですか」

 

「ああ、そうだ。君が適任だと思う」

 

俺に頼みたいこと?いったい何なんだ?いままでのことを振り替えってみたが、俺は思い当たることがなかった。言い忘れていたが、今話している相手は角田(すみだ)中将。海軍司令部トップクラスのお偉いさんだな。

 

「九条中佐には来週からトラック泊地に着任してもらう」

 

「トラック泊地ですか。構いませんが、何故私なんですか?」

 

「ブラック鎮守府、と言えばわかるな?」

 

あーなるほど。艦娘を非人道的に扱った奴がまた罰せられたのか。ああいう奴らはいつになってもいなくならないな、ああくそ。『日本陸海軍軍規 第八条 艦娘 艦娘への権利を認め、尊重すること。』とある。破ればもちろん軍法会議行きになる。

 

「しかし、何故自分に?」

 

「優秀で、人身把握に長ける九条中佐ならば彼女らの傷を癒せると判断したまでだ」

 

「分かりました。是非やらせていただきます!」

 

「頼んだ。必要があればすぐに連絡しろ」

 

「はっ!では失礼します!」

 

そう言って俺は退室した。来週には着任かぁ。頑張らねぇとな。俺はいつになく意気込んでいた。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

九条中佐が退室した後、私は海軍元帥である、あの人に電話を掛けた。数回のコールの後、元帥が自ら電話に出てきた。

 

「角田です、元帥」

 

『角田か。何用じゃ?』

 

「九条中佐が無事にトラック泊地に着任してくれました」

 

『そうか、それは良かったのぅ。あの子なら大丈夫じゃろうな』

 

「ええ!…それで、トラック泊地にいた"ヤツ"は?」

 

『今頃は豚箱じゃろうな』

 

「そうですか、それは良かったです。あのような差別主義者を蔓延らせるわけにはいきませんからね」

 

『全くじゃの。強硬派の連中でさえ顔をしかめておったわい』

 

私は安心した。艦娘を非人道的に扱うことは軍規違反だ。処罰されて当たり前だ。あんな奴等は私は許さないぞ。差別的な連中は我が軍には必要ないからな。

 

「では、これで」

 

『うむ、また連絡せい』

 

角田は受話器を置いた。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

翌日、俺はトラック泊地に着いた。高速艇で移動したので、割りと早く着いた。しっかし、鎮守府の見た目は随分汚いな。これは改装が必要になるな。捨てられた館みたいな見た目をしている。

 

「さて、まずは艦娘の招集かな」

 

俺はとりあえず鎮守府に入ることにした。今思い出したが、警備詰所には憲兵がいるはずだ。後で挨拶に来よう。前任に買収された奴らとは入れ替わっているはずだから。今は彼らはのお陰で治安は守られているからな。

 

中はあまり汚くない。恐らくは艦娘達が掃除をしたのだろう。これならちょっとした改装で済みそうだな。あとは設備の問題か。

 

「地図を貰っておいて正解だったな、広い鎮守府だ」

 

鎮守府は元々居た奴が少将だったこともあり広い。地図が無ければ迷ってしまうくらいには広い。案内板もあるようだ。

 

「ここが執務室だな」

 

俺は地図で確認し、執務室へ入る。中には艦娘が2人居た。

 

「あなたが、提督ですか……?」

 

「ああ。本日着任した九条愛斗中佐だ」

 

俺は自己紹介をした後に敬礼をした。相手も敬礼をし、自己紹介を始めた。

 

「大本営との通信係をしています、大淀です」

 

「提督代理を務めていた長門だ」

 

2人は敵意があるようだった。不穏な気配が放たれている。マジかよ……。これはしんどくなりそうだ。だが、投げ出すわけにも行かないな。

 

「今この鎮守府の艦娘で今すぐ万全に動けるのは2人を合わせて何人なんだ?」

 

2人はこちらの意図がわからなかったのか一瞬「?」を浮かべたが、理解したのか長門が教えてくれた。

 

「4人だ」

 

たった4人……。資料だとまあまあいるはずなんだけど……。マジかぁ……。

 

「分かった。大淀、呼んできてくれ」

 

「分かりました」

 

大淀はそう言って執務室を後にした。長門はしばらく無言だったが俺を見て聞いてきた。

 

「…………何をするんだ?」

 

「運営方式は後で伝える。今伝えるのは1ヶ月の休暇だな」

 

「1ヶ月の休暇だと?」

 

「そうだ」

 

俺が資料を見ながら言うと、長門は直ぐに反論してきた。

 

「私達は兵器だ!1ヶ月も休暇をとらなくても戦える!」

 

「兵器は涙を流さない。喜びもしなければ笑いもしない。ただただ無機質に、使われるだけなんだ、艦娘のように意思なんてない!!」

 

「!!」

 

俺はついカッとなって強く言ってしまった。長門は驚いた様子でこちらを見ていた。

 

「だからさ、兵器だなんて言わないでくれよ」

 

「………」

 

長門は俯いてしまう。彼女に少しでも伝われば良いが………。それから少しして、大淀が帰って来た。

 

「提督、呼んできました」

 

大淀と共に入ってきたのは明石と陸奥だった。陸奥は不穏な感じはしないが、明石は怯えているようにも見える。あの明るい明石ここまでになると最悪な状態だと思う。

 

「本日より着任した九条だ。とりあえず鎮守府運営は1ヶ月後、それまでは休暇だ」

 

俺の発言にいちいちビクついている明石。長門と大淀は以前警戒したままだな。陸奥は……よくわからん。休暇については理解をしてもらえた?ようだ。

 

「この鎮守府の資材の残量が知りたい」

 

「……これだ」

 

長門はファイルから1枚の紙を出し、渡してきた。それを受けとり内容を見てみると、資材の残量が記されていた。

 

燃料200、鋼材200、弾薬400、ボーキサイト10。めちゃめちゃ少ないな!?大丈夫か!?

 

「…………何とかするしかないか。工廠や入渠ドックはどうなってる?」

 

角田中将の渡してきた資料だと入渠ドックは使用が出来ないほど荒れているらしい。

 

「修理改装しなければ使えません」

 

大淀が答えてくれた。資料通りか、最悪だなぁ……。まずはカウンセリングしないと修理とか改装どころじゃないんだけど。

 

俺はこれからしなければならないだろうことを考えた。憂鬱だ。

 

「それじゃあ、まずは休暇だな。カウンセリングはその後だ」

 

そう言って俺は長門達を見た。


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