ブラック鎮守府に配属されたので、頑張ってみる(凍結中)   作:ラインズベルト

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第7話

前任の青葉の評価は"不服従で、火力、耐久の無い役立たず"だった。今回は青葉の密告により、前任の悪事が発覚した。しかし青葉は密告したものの、大本営の対応の遅れで前任に暴力を受け、心が抜けたようになったらしい。

 

「提督、大丈夫だよね……?」

 

「任せてくれ」

 

蒼龍は不安そうだ。仕方がない。2年もの間、彼女等は前任から暴力を受けてきたのだから。心配するのも無理はないだろう。

 

「提督、着いたよ」

 

俺達は青葉の部屋に着いた。俺にはずっと疑問だった。密告した青葉がそう簡単に心を折られるのだろうか?青葉は信じる力が強い艦娘だと知っている。だから、疑問に思う。

 

「青葉、いるか?九条だ。入れてくれないか?」

 

少しの間をおいて、中から返事が帰ってきた。それも、かなり意外な返事が。

 

「どうぞ、『司令官』」

 

「!…………蒼龍、少し部屋の前で待っててくれ」

 

「えと?うん。わかった」

 

蒼龍は一瞬戸惑ったが、俺を信じてくれたようだ。俺は一呼吸おいて、部屋に入る。扉を閉めると突然、青葉が抱きついてきた。理解が追い付かない。

 

「なっ、え……?」

 

「お久しぶりです。九条さん、いえ、『司令官』。青葉、ずっと、ずーっと、待ってました」

 

青葉型重巡洋艦一番艦青葉。5年前、俺がまだ海軍少尉だった頃、大湊警備府の工廠担当をしていた時に建造で初めて出会った艦娘。

 

彼女は新人だった俺のところによく取材に来ていた。何でも大湊勤務の軍人の記事を書くことがその時の目標だったらしい。俺が一番親しかったと思える艦娘。俺のことを司令官と呼んだりもしていた(※気まずいからやめてもらった)。でも3年前の大規模作戦で友軍の撤退を支援して轟沈してしまったんだ。

 

だから、彼女は俺を知らないはずだ。しかし、俺を司令官と呼んだ。轟沈した艦娘は帰ってこない。これが当たり前だ。しかし、青葉は俺を知っている。これはもしかすると…………。

 

「まさか、お前は大湊にいた青葉か……?」

 

「はいっ!」

 

そう言うと青葉は俺を強く抱き締めた。それからしばらく、青葉は俺に抱きついていた。そこに、確かな温もりと共に。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「司令官にまた会えて、青葉感激ですっ!」

 

「…元気だな」

 

「元気で良かったよ〜」

 

俺と蒼龍は青葉を見てそう呟いた。彼女は心が抜け落ちたようになっていたと聞いたが、そんな様子はない。安心した。何かあったら大変だしな。

 

「にしても青葉、お前無事だったのか?」

 

「実は青葉は一度沈んだはずなんです。でも、気付いたらこの鎮守府にいまして。自分でもびっくりですよ」

 

うーん。となると青葉は一度沈んだけど、魂が今の青葉に入った?みたいな感じなんだろうか。よく分からなくなってきたぞ。妖精さんの力?うーん…?

 

艦娘は人間であり兵器であるとされている。それがよく分かりにくいが、最適な言葉なのだ。人と同じ身体の構造をしていて、艤装を使える。よくわかんねぇな。

 

「それにしても元気で良かった…」

 

「司令官のおかげですよ。司令官が直接来てくれたから、青葉は青葉に戻れたんです」

 

青葉は満面の笑みを浮かべる。つられて俺と蒼龍も自然と笑顔になる。青葉が青葉として、真っ直ぐ進めるように、俺は全力を尽くす。そう確かな決意を誓う。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

今は執務室。青葉のケアが終わったところで、妖精さんが部屋を改装することになった。また書類作業だ。もうやだー!めんどくさいー!あ、ちなみに長門が手伝ってくれています。

 

「なぁ、長門」

 

「どうしたんだ?」

 

「休んでも良いんだぞ?」

 

長門が手伝っている理由は大淀を休ませるためらしい。大淀は提督がいない鎮守府をやりくりしていたようだ。そりゃ休ませないといけないよな。


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