前世はバンパイア?   作:おんぐ

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原作九巻までの空白部分(小説版のところ)ちょこちょこと書いていたのですが、当初のものとは別物になったので、投稿やめます。

時間は飛んで六月です。後ほど空白部分も投稿予定です。


42 半年後

 

 「ある男の教導、並びに監視を命ずる」

 

 「名は金木研。しかし、これとは別の戸籍を用意する」

 

 「この男は嘉納明博の手によって、人間のグール化を目的とした手術を施された形跡がある。更に問題は、その赫包がリゼのものであった可能性があることだ」

 

 「しかし、この男には移植されたはずの赫包が存在していない。いや、していたと言うべきか、その残骸らしきものは存在している」

 

 「よって赫子は発現せず、加えて食事も人間のもの」

 

 「ただひとつ顕著に現れたものが、常人からは隔絶した身体能力」

 

 「“半人間”に近い存在であると判断している」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

 

 亜門鋼太郎一等捜査官、あなたを上等捜査官に任命し⎯⎯

 

 鈴屋什造三等捜査官、あなたを⎯⎯

 

 

 

 

 

 

 グール組織⎯⎯アオギリの樹。その組織の十一区アジトを殲滅してから、半年という月日が流れている。

 その時点では、‎本来の狙いと思われる二十三区のコクリアへの襲撃も、少なくない犠牲を払いながらも阻止。そして、以降の警戒体制を強化する体制を整え始めた。

 ‎

 ‎⎯⎯しかしながら、期間を空けずに再度の襲撃が行われる。その構成数から、アオギリの樹の総力を上げてきたのだろう。

 ‎全体数の、おおよそ八割のグールを駆逐。しかし、攻撃の手は地下独房第三層まで及び、結果としてSSレート⎯⎯強個体のグールが数体脱獄した。

 ‎その襲撃以降、アオギリの樹はその鳴りを潜めている。

 

 「エヘヘ。お給料増えますかね」

 ‎「…私語は慎め」

 ‎「ハーイ」

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

 

 昇任式が閉式となり、捜査官達は立食形式の食事が用意された宴会場へと移る。そこでは、情報を交換し合うもの、久々の再会から談笑するもの達など、様々だった。

 

 「そっちでは何か進展はあったのか?」

 「わかんないです」

 「おい…」

 「最近は図書館で、去年の新聞とにらめっこです。僕は、“静かにしてなさい”って言われてお座りしてます。わんわん」

 「…そうか」

 

 一つの卓で、亜門と鈴屋は食事を摘まんでいた。

 

 「ウワサすればです」

 「ん?…あ、篠原さん」

 「や。亜門、ジューゾー」

  

 手を上げて現れたのは、篠原特等捜査官だった。鈴屋は篠原とコンビを組んでいるため、毎日のように顔を合わせている。亜門も同じ二十区の担当だが、顔を合わせる機会が少なく、久しぶりの再会だった。

 

 「ギブスは全て取れたんですね」

 「なんとかね。まだ前のようには動けないけど」

 

 擦り傷、やけどに全身打撲傷。その上、肋骨にひび、複雑骨折をしている箇所もあった。

 ‎しかし、その重症の中、おおよそ常人の半分の期間で治している。これも不屈の篠原という渾名たる所以だろうかと、亜門は尊敬の念を抱いた。

 

 「ところで、真戸さんはどちらでしょうか。ご一緒されていたと思ったのですが」

 

 いくらか言葉を交わした後、亜門がそう切り出した。課も違うためか、日程が重なることもなく、亜門は真戸とも長らく顔を会わせていなかった。

 

 「あ~あいつね。もう帰ったよ」

 ‎「あ…そうなんですね。少し残念ですが、真戸さんらしい。仕事を優先するのは」

 ‎「あ、いやな。真戸はアキラとデートに行ったよ。あいつ今日もともと休みだったし」

 ‎ (ん…?)

 

 予想外の答えに、亜門は思わず眉間に皺を寄せた。

 

 「ハマっちゃったみたいなんだよ。ほら、最近話題の女の子三人組のバンド」

 ‎「…いえ、その辺りは疎くて」

 ‎「まあ、そうだよな。私だって子どもがファンだから知ってるようなものだし」

 「僕は知ってますよー。“ビレイグ”のことですよねソレ」

 ‎「おっジューゾーは知ってたか。まあ、お前はおしゃれさんだもんな」

 ‎「はいです。NanaとEitoのメイクも、Toの眼帯もカッコいいです。でも篠原さん、“つっきー”のこと忘れてますよ。月からやってきた熊の“つっきー”です。ちゃんとベースも弾いてます」

 ‎「…ああ、あの着ぐるみのやつね。マスコットかと思ってた」

 ‎「ほら、右手に刺繍してます」

 ‎「おお、こんなだった」

 

 篠原と鈴屋が盛り上がり出した横で、亜門は皿に乗った料理を所在なさげにつつく。朝のニュース番組を思い返してみても、頭に浮かぶことはなかった。

 

 「あ、亜門悪い。お前は知らなかったんだよな」

 ‎「いえ」

 ‎「ごめんなさい亜門さん。のけ者にしてしまいました」

 ‎「ちょ、ジューゾーっ、お前は正直過ぎるって…って、どこまで話してたっけ…ああ、そうそう。真戸は暁とそのバンドのライブに行ってるんだよ」

 ‎「……ああ。それで、真戸さんは暁に付き添って行ったんですね」

 ‎「ん?逆逆。真戸に暁が付き添い」

 ‎「⎯⎯え」

 

 聞き間違いだろうか。亜門にはまるで想像ができなかった。

 

 「ピアノとかキーボード弾いてる子の…「Nanaです」その子のファンらしい。ピアノのソロを聴いてからなんだったけな。頭がスッキリして疲れが吹っ飛ぶって」

 ‎「おお、僕もですよー。作曲もNanaです。でも、僕のナンバーワンはボーカルのToです」

 ‎「ジューゾー、よく行かなかったね今日」

 

 こいつも真戸と同レベルだったんだと思い至る篠原だ。しかし、そんな鈴屋がなぜライブに行きたがらないのかと疑問が沸いた。

 

 ‎「僕は来週の最前列に当たりました。それに行きますから~」

 ‎「ああ、そういうこと」

 ‎「……」

 

 再び、亜門の心に言い様のない寂寥感が漂う。帰ったら調べてみようかな。そう思った。

 

 「あ、そうだ亜門。お前のパートナーだけど…いや、私から言うのもあれだな。楽しみにしといて」

 ‎「はい…?」

 ‎「それとジューゾー。月曜日にクインケ取りに行くから」

 ‎「本当ですか!ワクワクです~」

 ‎「亜門に改めてお礼言っとけ。二つとも所有権くれるなんてそうそうないことだよ」 

 ‎「ありがとうございますー」

 ‎「いや、真戸さんから頂いたクインケだけでも手いっぱいだったからな」

 

 真戸のクインケコレクションの多くを受け継いだ亜門だ。譲り受けたものは、複雑な操作技術をそれほど必要としない。しかし、未だ慣れていないものが多く、現状では満足に扱えるとは言い難い。今のところ、メインで使っているのは“ドウジマ”と“クラ”の二つだ。

 

 「じゃあ、私はもう行くから。二人とも今日は羽を伸ばして……ジューゾーはホドホドにな」

 ‎「ん…ごくん。はーい」

 

 そして、篠原が去り、まだ見ぬクインケを思う鈴屋の様子に亜門が微笑みを浮かべ始めた頃。二人の卓に近づいていく人影があった。

 

 「亜門、鈴屋。久しぶり」

 「有馬特等…!平子上等…!ご無沙汰しております…什造っ」

 ‎「もがっ…ちょっとー」

 ‎「別に気を遣う必要はないよ。頭を上げて」

 「…はい」

 

 鈴屋の頭に置いた手を離し、亜門は顔を上げる。そこで、有馬の隣にもう一人いたことに気づく。

 

 「…そちらは?」

 ‎「ん?ああ、紹介するよ。部下の佐々木琲世だ」

 ‎

 ‎有馬の隣に立っている人物を前にして、亜門は妙な既視感を覚えた。しかし、よく思い出せない。特徴は、ふわふわとした毛玉を連想させる癖っ毛だろうか。やはり覚えはなかった。

 

 「先月より三等捜査官となりました佐々木です。よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 □

 

 

 

 

 

 

 

 「ではハイセは僕と同い年なんですね」

 ‎「はい、鈴屋二等」

 ‎「什造でいいですよ」

 ‎「あ…はい。えっと、什造くん?」

 ‎「おっけーです」

 

 夕刻。食事を終えた後、鈴屋と佐々木は有馬の勧めによってぶらぶらと?友好を暖めていた。始めは亜門もいたのだが、鈴屋の「なんとなく西に」という発言に呆れ返って先に帰宅してしまっている。

 

 「有馬さんの部下ってことは、地下にも行ったんです?どうでした?」

 ‎

 有馬の担当するものの一つに、二十四区の捜索がある。

 ‎東京の地下には、グールが無数に掘り広げた大迷宮が存在しており、最深部にはグールが潜んでいる二十四区があると推測されている。

 ‎優秀な新人捜査官を更に強化するという目的で、鈴屋もその捜索に参加した経験があった。

 

 「うーん…あ、ちょっと臭いが気になるかな」

 

 鈴屋はその返答に眉を上げる。予想外の答えだったのだ。そして次に愉快そうな表情を浮かべた。

 

 「アハハ、確かに少し臭いましたねえ」

 ‎「次の捜索ではマスク付けて行こうかと思って」

 ‎「それがいいです」

 

 そうやって話ながら、淡いオレンジ色の光によって色づいた歩道を、特に目的もなく進んでいく。二人の間に存在する空気は柔らかだった。

 

 「あっ…」

 

 ふと声を上げて立ち止まる鈴屋。

 ‎何かと思った佐々木だったが、その目線の先にあるものに気づく。

 

 「…行ってみる?僕はそんなに上手くないけど、それでもいいかな」

 ‎「あ、いえ僕もしたことないです。そうですねえ…入ってみてもいいですか」

 「もちろん」

 

 

 

 □

 

 

 

 

 

 「案外簡単でしたねえ」

 「いやいや、什造くんが凄いだけだって」

 ‎「そうですかー?」

 

 くるくると回りながら感想を言う鈴屋に、佐々木は苦笑を漏らす。

 

 「パーフェクトなんて初めて見たよ。周りのお客さんも皆拍手してたし」

 ‎「お菓子いっぱいもらえたのはラッキーでしたね」

 

 自動ドアを抜ける。外はまだ、薄暗。冷気を帯びた風が二人の頬を撫でていく。

 

 「動いたらおなか空きました」

 ‎「あ、じゃあどこかこの辺で食べる?」

 

 でもこの辺りの地理自信ないんだよなー、と呟きながら前を歩く佐々木を、鈴屋は立ち止まってじっと見つめた。

 

 「あれ、什造くん…?」

 

 鈴屋が来ていないことに気づいた佐々木が後ろを振り返ると、心底不思議いそうな目をした鈴屋がいる。

 

 「…ねぇ、なんでハイセはそんな態度なんです?」

 「…え、すみません。馴れ馴れしかったでしょうか…?」

 「違います。そうじゃないです。僕がわからないのはハイセの目です。…なんで?」

 「…ああ、そういう」

 

 佐々木は、鈴屋の言いたいことが何となく理解できた。

 ‎鈴屋の顔を真っ直ぐと見る。そして、鈴屋の顔の“縫いあと”を見つめて懐かしそうな表情を浮かべた。

 

 「ごめん。僕も今気づいたんだけど、その…懐かしかったんだと思う」 

 「これが?」

 

 鈴屋は自身の口元に手を伸ばす。そこには、薄皮に縫い込まれた糸が存在していた。

 

 「うん、大切な友達⎯⎯だった人もそんな風だったから」

 「…珍しいですね。ちょっと気が合いそうかもです」

 「あはは、そうかも。あとはその、什造くんと仲良く…友達になりたかったから……。今日は短い時間だったけど、楽しかった」

 「友達…?」

 「それに、先輩としても色々教えてもらえたら嬉しいかな…とか」

 

 鈴屋は、思いもよらない状況に戸惑う。しかし考えてみれば今日、自分は二等捜査官になっていたのだと思い出した。

 クインケの所持が許されて、給料が上がる。それくらいにしか考えていなかったが、目の前にいるのは自分より新人の三等捜査官である。確かに、自分の方が先輩だ。それに⎯⎯

 

 「……しょうがないですねえハイセは。教えてあげます、僕が先輩として」

 「うん、よろしくお願いします什造先輩」

 「…ぷっ、ふふっ。なんか変です」

 

 歩いているうちに、空はすっかりと暗くなっていく。

 ‎二人の足は、少し遠くで灯る光に向かって進んでいた。

 

 

 

 ‎

 

 

 

 

 

 

 




 仮面ゴスロリ二人(キーボード、ドラム)に黒執事のシエルスタイル一人(ボーカル)。クマ一体(ベース)。ちなみにギターなし。完全に趣味です。なので衣装はあんまり関係ないです。
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