私カミューラは宗様に敗れたあの日、宗様の従者になった。何故誇り高きヴァンパイアである私が従者になったのかは...精霊のお三方に宗様の事情をお聞きしたからである。
「そ、それでもう話して頂けるのですか?」
『ええ。まず・・・私達はこの世界とは別の世界の者です。』
「そ、それはそうでしょう。あなた方は《精霊》。精霊界に存在す...『いいえ、違うわ。』え゛?」
『私達はこことも、精霊界とも違う世界。そこでは精霊界は無くデュエルで物事を解決しない世界。その世界の私達精霊...いいえ、元の世界で言うとデュエルモンスターのカードは何の力も持たない唯のカード。そして、私達は大量生産されたモノだったわ。』
・・・彼女は、な、何を言っているんだ!?
「そ、そんなお伽話信じるわけが...」
『作り話でも何でもないぜ!昴姉さんが言っている事は全て事実だ。アタシもジュノンも昴姉さんも宗に買われた唯のカードだった。まぁ、元の世界ではモノを大切に長い間使っていると《九十九髪》って言う神になるそうだが、アタシらの存在は精霊よりそっちの方が近いかもな。』
私の講義の言葉に青いショートヘアの女性が答えた。最後は少し苦笑しながらだけど...
「つ、つくも?か、神ってどういう...」
『ブリザードちゃん、話がややこしくなるからそれは後でね。』
私が訳も分からず目を白黒させていると、昴と呼ばれた『青き眼の乙女』が後で説明してくれるらしい。
『っと、悪い悪い。んで、昴姉さん。どこまで話すんだ?』
『ん~、そうね。大体は話しちゃおうと思ってるわ。』
『お、お姉様!いいのですか!?』
赤い髪をした確か...ジュノンと呼ばれていた精霊が昴さんのさっき言っていた事に驚愕している。ジュノンさんが驚愕するのも無理はない。私達はさっきまで敵だったのに、その敵に秘密教えようと言うのだ。誰だって驚愕する。
「そ、それ程重要な話であれば、秘密にしておいた方がよろしいのでは?」
私は思ったことをつい口に出してしまっていた。
『ほら、カミューラもこう言っていますし!!』
『フフフ、なら尚更話さないといけないわね。』
『ッ!!お姉様、どうしてです!?』
『彼女は私達の会話でこれから話す秘密の重大性に気付いた。諜報係に必要なことだわ。』
一瞬昴さんの目が光ったように見え、私を・・・いや獲物を逃がさないよう獣が睨んでいる様な威圧感を放ちだした。
「!!!!」
『あらあら、怯えちゃって可哀想に...』
か、可哀想ならその威圧感を止めてください!!
『ちょ、昴姉さん彼女の精神が壊れてしまいますよ!!』
『っと、ありがとう彩ちゃん。今日は色々合って機嫌が少し悪かったから。カミューラちゃんもごめんね。』
昴さんから威圧感はだんだん薄れていったが、
「・・・」
私は涙目で《コクコク》と首を縦に振るしかできなかった。
『じゃあ、話を元に戻すわね。それで私達は宗ちゃんに購入されデュエルにも使ってもらえ幸せだった。でも、ある日私達は急に真っ白な空間に宗ちゃんと一緒に居た。それも私達は《精霊》として実体のある身体を得て。』
「そ、それは何故?」
『あの方は気まぐれでしたから。あの方は私達を上位精霊まで昇華させこの世界である者に会えと言って私達をある世界に送り込まれました。それが此処です。あの方からはなんの説明もありませんでしたが、私達はこの世界を観てある結論を出しました。私達の世界を《遊✩戯✩王デュエルモンスターズGX》というアニメに似た世界...と考えています。』
「ア、アニメだって!?そ、そんなことはない!!私は此処にいて私という自我があり、決してアニメなどと言う創り物ではない!!」
『・・・そう先程も言いましたが、この世界は先ほど言った遊戯王GX...長いから省略しますね。と《似た世界》。私達がアニメの知識として知っているのは、遊城十代、万城目準やクロノス...そして大徳寺・・・いえ、錬金術師アムナエルと読んだ方がいいでしょうか?は今後大きな事件に巻き込まれて行きます。』
「な、何故アムナエルの事を!!」
『先程も言いましたが、私達はアニメの中での貴方達が行ったことを知っています。貴方方が捜し求めている、アカデミアに封印された《幻魔皇ラビエル》《降雷皇ハモン》《神炎皇ウリア》の三幻魔のカードの事、そして貴女を起こした男アカデミアの理事《影丸》の目的も...』
「あ、貴女方はいったい...」
『私達は《北上宗右衛門》が購入した少し変わった唯のカード。ある方に《上位精霊》まで昇華して頂き北上宗右衛門と一緒にこの世界に送り込まれたイレギュラーな存在。そして、北上宗右衛門に闇のデュエル無しの普通な生活を望んでいる者...かしら?』
「...では、北上宗右衛門とは別世界の人間!!・・・か、彼の目的は平穏な生活なのですか?」
私の質問に昴さんは
『いいえ違う・・・と思うわ。』
首を横に振り少し悲しそうに俯いた。
「そ、それはどう言うことですか?」
『それは、アタシから話そう。...このことは一番重要な点だ。宗の奴はアンタとのデュエル中にも言っていたと思うが、記憶喪失だ。どうして、どこでなってしまったかは分からないが、この世界に来た時既に失われていた。そんな状態でデュエルが主軸になっているこの世界は危険だと判断した私達はアニメからの知識でこれから起こり得る事件...アンタとのデュエルや所謂命を落としかねない《闇のゲーム》から宗の奴を遠ざける事にした。』
「・・・」
『でも、宗の奴は自分が世話になった者や自分が関わった者がピンチになったら、ところ構わず突っ走る事があるんだ。今回も少し世話になったクロノスを助けにここまで来た...と言うところだな。』
「たったそれだけの為に、死ぬかもしれない私との闇のゲームを受けたの...」
『あぁ、そうだ。宗の奴は一言で言うと《義理人情に熱い男》ってやつだ。』
「・・・北上宗右衛門にこの世界で親しい...いえ、親族と言えるものはいますか?」
『アタシ達以外いない...と言うよりあいつはこの世界で本当に《一人》だよ。』
「わ、私と・・・ッ!!いえ、家族がこの世界に《居た》私の方がマシね。」
この日私は自分以上の孤独の中で生きている人間の青年《北上宗右衛門》を知った。そして、私が考えるのはおこがましいが支えたいとも思った。
「しっかり私についてきてね。」
「は、はい!!」
私は今、桜さまに連れられてある場所を目指し歩いている。
「ここ一帯にある本は、全て私の集めた魔導書。見たい本があったら私に声を掛けてね。」
「は、はぁ。」
見渡す限りの本、本、本、本、本、本、本。私達が歩いている空間には本棚がズラリと並んでおり、本達が早く自分を読んでくれと言わんばかりに収められている。
「へ~、魔道書ってかなり厳重に保管していると思ってたから、ちょっと拍子抜け...なっ!!こ、この本は我が一族が探し求めていたワラキア公の秘術書!!デイウォーカーになる方法が記されているはず!!(なんてことだ!我が一族が500年探しても見つからなかった本がこんな所でお目にかかれるとは!!)」
私はその本を見つけた事に興奮し、手に取り開いてしまった。そして、ここが魔道書庫ということを忘れていた。
「あ、馬鹿!!その本を手放せ!!」
「え?こんな貴重な本手放せるわけが...ひぃ!!」
私がその本を読もうと開いたその時、本の中から無数の手が私を引きずり込もうと襲ってきた。
「ちょ、嘘ぉ!!」
私は咄嗟にその本を地面に落とした。その本から出てくる手をよく見たら、シワシワに干からびているが人間とは違い指先の爪が鋭く尖っているヴァンパイア達のものだった。
「私に言ってからって聞いてなかったの!!『アスタロン』!!」
《パタン》という音と共にワラキア公の秘術書は何事もなかったように閉められた。
「な、何今のヴァンパイア達の手は!?」
「あれがこの本の正体。デイウォーカーになりたい吸血鬼達を呼び寄せ本の餌にし、ワラキア自身に取り込むように創り出したもの。・・・言ってみれば自身の食料確保の為に生み出した本だったけど。」
「そ、そんな!?ヴァンパイアがヴァンパイアを食料にするなんて!!」
「・・・ワラキアはある切掛けからヴァンパイアの味をしりそれを求めた。そして、効率よくヴァンパイアを捕獲するため『デイウォーカーになる秘術』と謳った本を世に出し、ヴァンパイア達がその餌にかかるのを待った。最初は上手くいっていたけど、次第に本自体が貪欲にヴァンパイアを求めていき、最後はワラキアまでも取り込んだ。」
「じ、じゃあ、さっきの手は・・・」
「そう、取り込まれたヴァンパイア達の手。あのまま放置していたら、その世界まで食い尽くしかねない歪になった魔法の本。そんな本が多く封印されているのが、この魔導書庫。・・・心配しないで。ここの本達は私達魔導の者が管理、封印している。それに、この程度の本を管理できなければ魔導法士なんてやってられないわ。」
「...私達?」
「っと、言ってなかったわね。ここの責任者はこの私『魔導法士ジュノン』で一応部下・・・なのかしら?『魔導皇聖トリス』、『魔導戦士フォルス』、『ホーリーエルフ』、『リチュア・ノエリア』親子など名立たる魔術師や魔法使いが一冊ずつケアを行っているわ。勿論、あの『ブラック・マジシャン』の師弟も委託という関係だけどたまにこの書庫に来てもらっている。」
「そ、それほどとは・・・」
まさかこんな所で伝説の魔法使い『ブラック・マジシャン』の名前を聞くとは思わなかった。
「そうそう、一つ言い忘れていたわ。」
「な、何でしょう?」
「貴方には嫌でも『デイウォーカー』になってもらうわ。」
「え、ええ!!」
「私達が『精霊』であることは他の者には秘密だと説明したわよね。」
「は、はい!!」
「それで、急に私達姉妹がマスターの周りに出現したりいつの間にかいたりしたら周りの人が不思議がり、最後は私達が『精霊』であることがバレてしまう。そこで、デイウォーカーにした貴方を秘書的な立場にし昼間はマスターの傍で護衛。デイウォーカーになれば比較的普通の人間の様に振る舞えるし、貴方を知っている奴らにはデイウォーカーある事を隠していたと言うけん制になるわ。勿論問題が起きた場合、必要ならそこへ介入し問題を解決してもらう。緊急な報告は貴方のコウモリでその他は週一夜に集まって会議をやっているからそこでお願い。...何故私では無く新参者のコイツが!普通マスターの護衛はカードで待機している私のはず...それもこれも、新カードの開発で時間が取られているから・・・あぁ、もう開発なんて簡単に引き受けるんじゃなかった!!」
「さ、桜様。抑えて、抑えて。」
「・・・大丈夫ちょっと取り乱しただけ。それに、あんなワラキアの秘術書なんて使用しなくても、私の力ならそれくらい容易いし、その上の存在まで昇華させてあげられるわ。」
「は、本当ですか!?よ、宜しくお願いします!!」
その答えに私は深々と頭を下げた。・・・まさかの急展開!!ワラキアの秘術書の正体を知って、落胆してたけれど...これぞ『棚からぼた餅』!!日本語の諺知ってて良かったわ~。桜様には感謝してもしきれない!!
「この一帯は魔道書とは別のもの。私達が居た世界の小説、漫画とその資料が集められています。」
「へ~、えっと何々『マジンガーZ』『ゲッターロボ』『ドラゴンボール』に『ジョジョの奇妙な冒険』これは私の世界にもあるわ。『ジャイアントロボ』『機動武闘伝Gガンダム』『魔法少女プリティベル』『トリコ』に...『遊✩戯✩王』!?」
「見つけてしまいましたね。そう、その本『遊✩戯✩王』という漫画が私達デュエルモンスターズを私達の世界に生み出した原作の本。これを元にアニメ『遊✩戯✩王デュエルモンスターズGX』が作られていき、私達がこの世界に送り込まれる時には、また別の主人の話が作られていたわ。」
「そ、そうですか。」
こうして、原作と言われる漫画を手にとってもまだ私の世界が別の世界のアニメで流れた事に実感は湧いてこないわ。
「さぁ、次に行く部屋が私達の目的地よ。ついてきて。」
「ちょっと、置いて行かないでください!!」
少し感傷に浸っていた私を置いて桜様はドンドン奥に進んでいく。
「ん?あの部屋はなんだろう?」
桜様を追いかけていると一つ気になる部屋を見つけた。
「えっと、『関係者以外立ち入り禁止』ってあからさまに怪しいわね。・・・ちょっと覗くだけ~」
・・・誰しも簡易的に扉の前に置いている『関係者以外立ち入り禁止』の看板を見たら覗いて見て見たくなる。だから、私は悪くない!悪いのはこの怪しい看板だ!
《ギィ》と音を鳴らし扉は簡単に開いてしまった。
「...ちょっと拍子抜けね。でも、この後物凄いトラップが仕掛けられているかも。慎重に、慎重に・・・」
私は慎重に扉を開けるとそこには!!
「こ、これは!!」
「貴女!この『立ち入り禁止の看板』が見えなかったの!!」
「す、すみませんでした!!」
私の後ろにすごい剣幕の桜様が立っていた。私は直様その場で土下座をし謝った。
「ここに出入りする者達は、私達を"畏怖"する所があるから滅多なことじゃここに近づかないけど...貴女には体で覚えてもらおうかしら・・・」
さ、桜様の両手の上に光が集まって行っている・・・そ、そんな!何もないところから魔道書を出現させるなんて!!
「も、申し訳ありませんでした!!この部屋に興味を持ち、少し見てみたいと思ってしまい勝手に部屋を覗いた事をここに謝ります。あの素晴らしい部屋の事は誰にも言いません!!どうか、どうかお慈悲を!!」
「・・・素晴らしい部屋・・・」
「は、はい!!あのような部屋私から見ると羨ましい限りです!!私も好きな物をコレクションしてしまいますけどあの部屋は『素晴らしい』の一言に尽きます!!」
「そ」
「そ?」
「そうよねー!!」
「は、はい!!」
「初めて同じ意見の者に出会えたわ。あの部屋は私のコレクションを置いている私だけの部屋。お姉様達にも秘密にしているから、あの部屋のことは私達二人だけの秘密よ。」
そう言うと桜様は魔道書を消しニッコリと笑いかけてくれた。
「は、はい!!(よ、良かった~。一時はどうなるかと思っていたけれど、私と同じ趣味を持っておられて本当に良かった!!)」
「で、秘密を共有するに当たって貴女には一つだけ私のコレクションを差し上げるわ。」
「ほ、本当ですか!?」
そ、そんなあの素晴らしいコレクションの一つを頂けるなんて!!
「で、では_を...」
「フフフ、貴女も好きですね~。」
「いえいえ、桜様ほどでは...」
「「フフフフフフフフ」」
「さぁ、カミューラさんここが目的の場所です。」
「こ、ここですか。」
私が桜様に連れられてある部屋に着いた。そこにあったのは...
「これは・・・薄いテレビにスピーカーと本の様に棚に置かれているこれは?」
「それは、DVDとBlu-rayDiscです。謂わば記憶媒体ですね。これから数日間ここであるアニメを見てもらいます。」
「あるアニメ?」
「そう、『遊戯王GX』を見ていただきます。」
「ゆ、遊戯王GXをですか!?」
「そう、それをよく観、今後起こるであろう事を頭に入れてもらう。そして、その情報からマスターを危機から遠ざけてもらいます。」
「そ、そんな重要な役目を私に!?」
「私達も人数が限られています。一人でも味方は欲しいですから。無論このアニメのことは私達姉妹と貴女以外他言無用!!」
「その役目、承りました!!」
「あと、この世界がアニメ《遊戯王GX》に似た世界って言うのと、マスターがこの世界の人間じゃない事は秘密ですから。絶対にマスターには言わないでください。自然に記憶が戻るなら良いですが、変に刺激してこれ以上マスターの負担を増やさない為にも、このことは私達姉妹と貴女だけの秘密。いいですね!!」
「分かりました!!このヴァンパイアの末裔『カミューラ』秘密を守り、宗様を一生お守りすることをここに誓います!!」
そうして、私は宗様を様々な災からお守りすることを誓いました。
「そ、それで桜様!例の『モノ』は?」
「フフフ、そう焦らないで。『コレ』よ!!」
今日、私は桜様よりこの前頼んだ『モノ』を受け取った。
「こ、これが『等身大宗様』!!」
「・・・抱き枕ですが、それを使って寝ると桃源郷を味わえますよ。」
「今日からこの抱き枕は私の『家宝』にします!!」
ようやく手に入れた!!あの部屋にあった素晴らしい『モノ』!!写真にベッドカバー、敷布団、更に壁に至るまで宗様一色だった。そう、桜様のあの部屋には宗様を模した数々のコレクションが所狭しと置かれていた。
「さぁ、同志カミューラよ。」
「は、はい!!」
「良い働きを期待してますよ。」
「お任せ下さい!!」