「これが、エレメンタルヒーローの『結束』の力だ!」
「フフン、心が騒ぐ。」
銀の仮面を被った赤髪の男はどこか懐かしむように言う。
「俺もだぜ。すっげぇワクワクしてる。こんな気持ち久しぶりだ!アンタ凄ぇよ!」
対峙している少年は嬉しそうにそれに答える。
「迷いは吹っ切れたか、遊城十代。」
「え。」
「貴様の歩んできたデュエル道など、まだ入口だ。世界にはまだ未知のデュエルがある。
見えるはずだ。果てなく続く闘いのロードが!なのに貴様はここで立ち止まるのか!!」
男は少年...十代に叫ぶ。
「立ち止まるもんかっ!」
十代は男に叫び返す。
「そうだ! 己がデュエルを、おのれのデッキを信じて進め!!その踏み記したロード、それがお前の未来となるのだ!」
「カイバーマン・・・」
「ブルーアイズに恐れを抱かず向かってきた事は褒めてやろう。だが、ここまでだ遊城十代。オレのターン、ドロー。手札から魔法カード『黙する死者』を発動!墓地から、ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴンを守備表示で特殊召喚!更に魔法カード、『融合』を発動!」
『黙する死者』
自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはフィールド上に表側表示で存在する限り攻撃する事ができない。
「融合?」
十代は不思議そうに呟く。
「やはりもう一体。」
『融合』のカードを見た黒マントの少年、万城目準が叫ぶ。
「やっぱりって?」
その言葉にメガネを掛けた少年、丸藤翔が質問する。
「カイバーマンのデッキは海馬瀬人のデッキそのものだって事だ!!」
「三体・・・」
その言葉に十代言葉を漏らす。そして、三体目のブルーアイズが出現する。
「行くぞ、ブルーアイズ三体融合! ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン!」
「えぇ!!」
翔の驚きの声と共にブルーアイズが消えて行き、一体のドラゴンが出現する!
「どうだ、これが至上最強にして究極のドラゴンだ!」
『青眼の究極竜』は十代に向き唸り威嚇している。
「これがアルティメット、すげぇ!」
その姿を見た十代は感嘆を挙げた。
「アルティメットの攻撃力は4500。『エッジマン』が『スカイスクレイパー』の効果でパワーアップしたとしても、越えられぬ壁だ」
「クゥ!」
「行(ゆ)けぃ!!ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン!!『アルティメットバースト』!!」
銀の仮面を被った赤髪の男...『カイバーマン』が叫ぶ。
「トラップカード!!『エッジハンマー』発動!!」
その攻撃に十代が罠カードを発動させる。
「『エッジマン』を発動コストに相手モンスター一体を破壊!」
十代が効果を説明している中も『青眼の究極竜』はそれぞれある三つの口に青白いエネルギーを溜めている。
「破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレーヤーへ与える!」
そして、その攻撃が黄金のモンスター『E・HERO エッジマン』を飲み込み、
『ディャ!!』
その攻撃は掻き消え無傷の『E・HERO エッジマン』が『青眼の究極竜』へ向け突貫して行く。
「これで、4500のダメージ。俺の勝ちだ!!」
《ドォン!!》と言う音と共に大きな土煙上がる。
「十代!」「やったー!!」「まさか!!」
それを見ていた。それぞれ十代の勝利を言葉で確信する。そして、次第に土煙は晴れて行き...
「・・・ふぅん。中々の戦略だったが、詰めが甘かったな。」
そう言うと男は一枚のカードを十代に見せる。
「融合解除!?」
「その通り!このカードによりアルティメットは融合前の姿に戻る。対象を失った『エッジハンマー』は空振りに終わったと言う事だ。」
「あ。」
十代が気付いた時には既に遅し!
「ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴンのダイレクトアタック!!」
三体のブルーアイズは自身の口にエネルギーを溜めている。
「滅びのバーストストリームゥ!!」
そして、その光は壁モンスターがいない十代に無慈悲に放たれる。
「強靱、無敵、最強ぉ!」
「うわぁ!!」
十代は眩い閃光に飲み込まれて行き、《ドォン!!》という音と共に土煙が挙がる。
「粉砕、玉砕、大喝采ィーーーーーーー!ワハハハハハハハハ!!アーハハハハハハ!!」
遊城十代LP 2100→LP 0
◇◆
「己の力で立ち上がれるか?立てれば良し、立ち上がれなければそこまでだ!!」
カイバーマンは十代を見下し聞く。
「立ち上がれるに決まっているだろう!うぐぅ。」
十代は立ち上がるが、さっきのダメージだろうか少し胸を押さえた。
「まだ負けを恐れるか?」
「いや、楽しいデュエルだったぜ。」
「負けを恐れれば立ち止まるしかない。負けて勝て、遊城十代!!」
「あ、お前・・・」
「兄貴―!!」「十ぅ代ぃ!」
翔、隼人が十代に駆け寄り、
「これで、ここから俺達は出られなくなったな。」
後ろから万城目が来た。
「あ゛」
「この世界とお前たちの世界は繋がっている。目を閉じ、強く念じろ。道は自ずと開ける。」
そう言うとカイバーマンは何処かへ消えていった。
■□■□■□■□
「ふぅん!これでアイツも凡骨並にはなっただろう。」
仮面の男こと『カイバーマン』は腰より長い青白い髪をなびかせながら傍らを歩いている女性へ声を掛ける。
「...もぅ!瀬人様ったら急に精霊界に行くって言って聞かないんですもの!!」
女性はちょっと怒こり気味にカイバーマンに言い詰め寄る。
「すまんキサラ。だが、オマエもあの男の力量が見たいと言ってノリノリだったではないか。」
「それはそうですけど...バカンス中にすることではなかったですね。」
「それもそうだな...」
「でも、私は久しぶりに運動が出来て良かったわ。」
「それは良かった。それに、この世界でなら夢に見せかけることが出来、俺達には都合が良い。」
カイバーマンはそう言うと仮面を取り素顔を出し続ける。
「最初は何かに悩んでいたが、奴はたかが数十年生きただけ。この先まだまだ悩む事があるのだ!!こんな所で立ち止まっていては、奴の未来は・・・無い!!」
仮面の男もといカイバーマン...改め『海馬瀬人』はそう言ってのける。
「瀬人様、あの少年を高く買っておられるのですね。」
さっきまでの怒りは嘘だったように瀬人の傍らを歩く女性『キサラ』は嬉しそうに海馬瀬人に話しかける。
「フン!そんな事は無い。・・・馬の骨よりはマシにしただけだ。」
「フフフ、そうは言って可能性を持った者を導くのはアナタの良い所です。...そこは変わってませんね『セト様』は。」
「俺は俺だ!数千年前の神官などと同列にするな!!」
「はい。分かっております。瀬人様。」
キサラは嬉しそうに海馬瀬人に返す。
「フゥン!分かればいい。では、次のバカンスに行くぞ!」
「はぁい!!次は何処に向かいます!?」
「何、バカンスは後三日もある!・・・次は温泉にでも行くか?」
「フフフフッ、こんな時間を作ってくれた宗右衛門さん達にはお土産を持って帰らないとね。」
「フゥン!まぁ、それぐらいはいいだろう。」
海馬瀬人と海馬キサラ夫婦はその場から消えていった。
■□■□■□■□
「ぶぇっくしょん!!」
「宗様!大丈夫ですか!?」
「あぁ、大丈夫だ。...誰か俺の噂でもしているのか?」
宗右衛門とカミューラが今現在居る場所は、企業のお偉方が集まる一種の社交パーティー会場だ。
「...に、してもこのスーツ、俺には似合わないと思うんだが。」
宗右衛門は上下黒のスーツに白のシャツ、そして『ブルーアイズが多く描かれた青白いネクタイ』をしている。
「そんな事はありません!!とっても似合っています!!」
宗右衛門の言葉を否定し、ベタ褒めするメガネ秘書カミューラ。今カミューラは、緑色のいつも後ろに広がっていた髪を後ろで括りポニーテールにしている。そしてその服装は、黒にグレーの縞模様が入ったジャケット、白いカッターに黒のスラックス。所謂『パンツスーツ』だ。
「で、カミューラさん。あの書類はどうしたんですか?」
「ちゃんと終わらせて来ましたよ。あの後、磯野さんも含め三人掛かりで挑み、見事打ち破ってみせました!!」
メガネを《クイッ》っと持ち上げ、得意げに話す。
「それと、何で先に出た俺より先に貴女は此処にたどり着いているのですか?」
宗右衛門が言ったように、宗右衛門が着く前にカミューラが会場の前に着いている事は不思議だ。車に乗せてもらって来た宗右衛門が自分で車のドアを開け出ようする時、車のドアをこの会場でドアマンをしているスタッフの様に開けたのだ。当初、宗右衛門は呆然としていたがカミューラに促されるまま会場入りをした。
「宗様居るところにカミューラ有り!!」
わざとらしくメガネを持ち上げカミューラは宗右衛門に言い放った。
「・・・」
「すみません。冗談が過ぎましたね。何、簡単ですよ。小さいコウモリに変身し、マッハで来ましたから。」
「マ、マッハって・・・」
「桜様の技術で強化して頂きました。桜様からはデイウォーカーにして頂いただけではなく、吸血衝動を極限まで抑えてもらい更に『真祖』に近い力までも授けて下さいました!!そして、その力によりコウモリの姿で飛べば時間制限はありますが音を超えられます。狼になれば人ひとり...無論、宗様達以外は乗せませんが...は余裕で乗せて運べます。速度は車ぐらいでしょうか?」
カミューラは人差し指を口元に付け『う~ん』と悩んでいる。
「いや、俺に聞かれても分からないんだが・・・」
「そうだ!!宗様、今度狼の私に乗って下さい。そうしたら狼の時の私の能力を把握出来ます!」
「...今度時間が空いたときな。」
「はい!宜しくお願いします!!(フフフ、これで宗様に私の有能さをもっともっとアピール出来る!!・・・あれ?これじゃ私宗様に『跨って』頂く事に…キャ!)」
「ありゃ、あの子どっかで見たことあるような...」
カミューラが頬を赤く染めている時宗右衛門は先ほど見つけた人物に近付いて行った。
◇◆
「では、お嬢様。私はこれで失礼します。」
スーツを着た男はピンクの短髪少女に一礼をし去っていった。
「ふぅ、なんでこの僕がこんな事しなくちゃいけないの!?」
さっきまで淑女な対応をしていたとは思えない口調で少女は愚痴る。
「コラ!アカデミアの授業はどうした!授業は!?」
その少女に一人の男が凄い剣幕で声を掛けてきた。
「...なんだよ、僕は親父の頼みで此処に来てるんだ!!アカデミアにもその届けを出してるし!・・・って、カモ先!?」
男に抗議言葉を掛けた少女は声を掛けてきた者が知人だったので驚愕している。
「・・・何ですか?この礼儀を知らない小娘は?」
カミューラは怪訝な顔をし少女を見ている。
「おい!カモ...宗先生!!何でアンタが此処にいるんだ!?ここは企業のトップ達が集まる会食パーティーだぞ!!」
そんなカミューラを無視し話を進める少女。
「それは君にも・・・ん?そう言えば君のお父さんは大手貿易会社の社長だったな。」
「だから言っただろう『親父から頼まれた』って!!それより、カ...宗先生は何で此処に?今週は都合によりアカデミアに出て来れないって聞いたけど?」
「それは「社長代理!ここは私が説明します!!」...あっ、はい。お願いします。」
宗右衛門の言葉を遮り怒気を含めた言葉でカミューラが割って入ってきた。
「...何?アンタ?」
「本当に礼儀知らずね。私は社長代理の秘書!『上浦素子』!」
「僕の名前は『ツァン・ディレ』。デュエルアカデミアのブルー生。」
少女ことツァン・ディレとカミューラ改め秘書の上浦素子が、自己紹介をしながら睨み合っている。
「で、『社長代理』って何?」
「海馬コーポレーション社長、海馬瀬人様の依頼によりこのパーティーに北上宗右衛門様が代理で出られています。…で・す・が、貴女!教師、いえ年上の方に対する態度がなっていません!!」
「宗先生があの海馬社長の代理~?怪しいもんだ。そ・れ・に、僕は宗先生自身にこういう態度で良いって言われたんだ!」
「だからといって『カモ先』と呼んでいいものではないわ!!」
「いいじゃんか、僕が呼びたいように呼んでるんだから!!」
「唯のガキが!・・・宗様!この娘不愉快です!!殺していいですか!?いえ!!今すぐ殺しましょう!!」
「何を!!僕は貴女みたいなおばさんに殺されるほどヤワじゃないよ!!」
周りにいる者たちが『何だ?』『男を巡って女同士の喧嘩か?』と騒ぎ出していた。
「おばさんですって!!いいでしょう!!血祭りにして差し上げます!!」
「逆に返り討ちにして殺る!紫炎から受けている剣術で一刀両断だ!来るなら来「お前ら二人共!!」...え?」
「そ、宗様!?」
ツァンと上浦が声の聞こえた方を見ると、目に見えるほどに出た怒気が黒いモヤを放ち鋭い目をした宗右衛門が二人の間に佇んでおり、
「いい加減に・・・せんかっ!!!!!!!」
《ゴチン!!》という音と共に二人の頭にゲンコツを叩き込んだ。
「「い、痛い(ったー)!!」」
「二人共こっちに来い!!」
「「は、はい!!」」
有無を言わせぬ気迫で二人を人気の少ない別の場所へ連れて行った。
◇◆
「さて、二人共何故怒られたか分かっているか?」
「申し訳ありません!!公衆の面前で大声を出し、注目を集め醜態を晒してしまいました!!あまつさえ宗様は代理の身。依頼をされた海馬社長にも多大な迷惑をかけてしまいます。あそこで止めて頂かなければ、KCにも影響を出していたかもしれません。それで怒られたのですよね?」
「ぼ、僕は...宗先生を馬鹿にした。それだけじゃなくて、海馬社長の代理っていうのも頭ごなしに否定しちゃった。それに、上浦さんに突っ掛っていったし、それで僕を怒ったんでしょ?」
「二人共半分正解。」
「「半分!?」」
「そう、半分。カミュ...上浦さんは俺のことで怒ってくれたのは有り難かったし、俺の立場まで考慮してくれたのは流石秘書だと思う。けど、最後勢いだけで言い過ぎ。ツァンさんは自身で言ったように何でもかんでも突っかかって行きすぎ。」
「申し訳ありません。」「ご、ごめんなさい。」
「そして、二人共に言えることだけど...軽々しく『殺す』なんて言葉使わないでくれ。女の子や女性が使っているのも頂けない。今後出来るだけ使わない様に!!」
二人に語尾を強くし言った宗右衛門の横顔は、怒っているのに少し悲しそうだった。
「「はい!!」」
即座に二人は向き合い、
「申し訳ありませんでしたツァン・ディレ様。私もムキになり過ぎました。先ほどの言葉撤回致します。」
「僕もムキになっちゃたし、僕も悪い。・・・ごほん、私ツァン・ディレも先ほどの言葉を撤回します。上浦さん申し訳ありませんでした。」
二人は互いに非を認め頭を下げた。
「はい、二人共今後は仲良くね。じゃ、俺は食事を持ってくるよ。上浦さんは人が少ない場所取っておいて。」
「かしこまりました。」
宗右衛門はその場を立ち去り、料理を取りに行った。この会食パーティーはビュッフェ形式で、皆立ち近くのテーブルに食事を置き話をしながら食べている。
「はぁ~、ビックリした。宗先生怒ったらこんなに怖かったんだ。」
「あら?ツァン・ディレ様は宗様に怒られたこと無いのですか?」
「ツァンでいいよ。僕の前では一回もないよ。叱る事はあっても今まで『怒る』事は無かったな~。」
「そう、ですか。あの方は…優しいのですね。」
「うん!それに宗先生はちゃんと僕を見てくれる!!みんな『僕』じゃなくてディレ家のお嬢様って感じで見てくるから...何か嫌な感じがしてた。宗先生に初めて会った時は他の皆同じだと思っていたけど、『僕』を一人の生徒として接してくれた。だから、逆に『私』なんて言わなくていいし、宗先生には自分を隠さず気軽にタメ口で話せる。」
「...そうだったの。でも、公衆の場...このようなパーティーでは十分気をつけなさい。公私を分けることを覚えるのも実力者の強みになるわよ。」
「分かった。あだ名で呼ぶのは学校や親しい者が近くにいる時だけにする。...でも変だね。」
「ん?ツァンさん何がですか?」
「さっきまで言い合ってたのに、こうして仲良くなれた。僕たち気が合うのかな?」
「さぁ、それはまだ分からないわ。...でも、宗様のおかげかもね。私は宗様に出会って世界が一変した。孤独で生き敵対していた私に、あの方は普通に接してくださる。自身も私以上に孤独なのに、他人を思いやる『心』を他人より強く持っている。そんな宗様を潰れないよう支えようとお三方と約束したもの。」
そう言うと上浦はどこか遠くを見るように、柔らかい微笑みをした。
「ふ~ん。・・・あれ?宗先生ってお姉さんがいるのに『孤独』なの!?」
「ッ!!」
上浦は『しまった』という顔をしてしまった。
「ちょ、上浦さん!!なんか知ってたら教えてよ!!」
「・・・ふぅ~、他言無用ですよ。」
上浦は聞くまでテコでも動かない姿勢のツァン・ディレに観念し、宗右衛門の秘密を守りつつ家族関係を話した。
「...そ、そんな。宗先生の両親は事故死、それに伴い経営していた会社は潰れ、頼れる親族は居らず、三人の姉も血が繋がってないなんて・・・人の生き死にのことを軽々しく言ったから、僕たちはあんなに怒られたんだね。」
「そして、私は宗様のご両親が経営していた会社のライバル会社で秘書をしていました。しかし、ご両親の死後我が社の社長が追っていくかのように急死され、会社改革でクビになりました。そして、流れ流れてライバル会社の秘書だった私を引き取ってくださったのが宗様です。最初は敵対していましたが、今ではより良い関係を築いていっています。・・・そんな宗様だから『死』という物に敏感なんですね。これからはあの方の前では人の生き死にの発言は控えないと...」
「そ、そんな恩人を僕は『カモ先』って呼んじゃったんだ。ごめんなさい!!そんな大切な人を馬鹿にするような発言は許されない!!本当にすみませんでした!!」
そう言うとツァンは勢いよく頭を下げた。
「いえ、もう怒っていませんし、この話は先ほど宗様が終わらせたじゃないですか。それに、貴女の事も少し聞いてしまいましたしこれでお愛顧です。それと、アカデミアでの愛称ならそこ以外では使わなければいいのです。分かりましたか?」
「はい!分かりました。」
「あれれ?二人共いつの間にそんなに仲良くなったの!?」
料理を持ってきた宗右衛門が不思議そうに二人に聞いた。
「フフフ、私達だけの秘密です。」
「僕たちだけの秘密だよ。宗先生には言えないよ~。」
「「ね~」」
と仲良く二人は相槌を打った。
◇◆
「______では、私はこれで失礼致します。」
「はい、社長には私から伝えておきますので。」
あれから宗右衛門は次々来る大手企業の社長や代理の者に対応し、今しがた来た人物で大体この会場に来場した者に挨拶が出来た。
「ふぅ~、これでこの会場での大体の挨拶は終わったよ。ツァンさんごめんね。こんな事に付き合わせちゃって。」
「いえ、慣れない場所で従者の者と二人きりより、知った方といる方が気が楽ですから。」
「わたくしからもお礼を申し上げます。ツァン様がこういった場所でここまで楽しく過ごされた事は今までありませんでしたので。」
そう言って一礼したのはツァン・ディレに仕えているタキシード姿が様になっている若い男の執事だ。会食の途中ツァン・ディレを探して会場を回っていた執事の『紫炎(しえん)』が合流し...合流後、何故か口調が淑女の様に変わったが...今に至る。
「では、お嬢様我々も退散しますか?」
「ええ、そうね。では、宗先生。上浦さん。これでお別れです。...それじゃ、先生またアカデミアで...」
ツァン・ディレは最後、宗右衛門だけに聞こえるよう小さく言った。
「あぁ、またな。」
「では、宗右衛門様。上浦様。失れ「おぉ!我が愛しの君!こんな所に居られたのですか!!」い...」
紫炎がここを去る為挨拶をしている最中、その男は現れた。
「ディレ嬢探しましたよ。そんな冴えない男なぞ放っておいて私と一曲ダンスでもどうです?」
「...誰です?この礼儀を知らない男は?」
「おぉ!こんな所にも美しい女性が!!」
あからさまに怒りを見せている上浦の言葉が聞こえてないのか、その男は上浦に一礼をし、
「ささ、そんなモブ男の横に居らず、一国を背負って立つであろうこの『サウザー』の横にどうぞ。遠慮はいりませんよ。」
サウザーと名乗った男。髪は銀髪で肩まであり、整った顔、黒ではなく上下白のスーツを着ており大抵の人は見とれてしまう容姿。一般的に二枚目と呼ばれる存在だ。
「いえ、遠慮ではなく拒否します。では、これで...」
しかし、上浦は一瞬見てあからさまに『どうでもいい』という表情をし去ろうとサウザーに背を向け歩き出した。
「フフフ、そんなに恥ずかしがらずに普通にすればいい。なに、その男を気遣っているのだろう。気にすることは無い。僕以外の男は其の辺にある雑草と同じだ。」
この言葉を聞いたツァン・ディレは怒った口調で
「サウザー様!その他人を見下した態度、何とか出来ませんの!?こちらに居られるのは、あの海馬社長の代理の方ですわ!!」
「ほぉ、そうでしたか。失礼しました代理の方。私は『神無月紗雨冴(かんなずきさうざー)』と申します。」
「これは、ご丁寧に私は「社長代理!!ここは私にお任せを!!」...はい。お願いします。(あれ?これデジャブ...)」
宗右衛門の言葉を遮り、上浦が凄まじい剣幕で宗右衛門の前へ出た。
「これは、これは、美しい方。ご紹介して頂けるのですか?」
「いいえ、貴方のような礼儀も知らない下郎に教える事はありません。どうぞ、ここからお引取り下さい。」
この男が発していた宗右衛門に対する数々の言動で、明らかに殺意に似た威圧感を発している上浦。ここでこの男を殺していないことを見ると、以前の彼女とは比べ物にならない成長が垣間見える。しかし、
「ハッハハ、そう照れずともいいのです。私がその男に劣るところは何も無いのですから。」
この一言がいけなかった。
「...その言葉、聞き捨てなりません!!宗様が貴方如きに劣る!?はっ!私が言えた義理はありませんが、相手の実力も分からない三下風情が粋がるんじゃないわ!!」
「…どう言う意味です?」
「言葉通りですわ。この方の隠れた実力が分からないようでは、三下が良いところですわ!!」
「隠れた実力!?はん、そんなもの一流のデュエリストたる僕がすぐ見れば一目瞭然!そして、僕にはこの冴えない男には隠れた実力なんて有る様には見えないね。」
《ブチィ》と何かが切れる音がした。
「...いいでしょう。今貴方にデュエルを申込みます。これで私が勝ったら、先ほどの宗様への数々の暴言!!撤回して謝って頂きます。」
それは、それはいい笑顔で上浦は言い放つ。そして、彼女の心の中ではマグマの如き憤怒が噴火しそうになっていた。・・・静かに感情を表に出さない人の怒りは、普通に怒っているものより数十倍怖い。
「・・・か、上浦さん。」
「宗様!!心配しないでください!こんな男1ターンもあれば倒してみせます!!...それに、さすがにこんな男は殺しませんし、殺す価値もありません...」
最後の言葉は宗右衛門にしか聞こえないよう、小声で言った。
「フフフ、この僕を1ターンで倒す?で、貴女が僕に負けたら?」
サウザーは、もう自身が勝利したかのように聞く。
「何でも言うことを聞きましょう。」
「ちょ、上浦さん!!」
「貴女本当にそんなこと言って大丈夫なの!?」
その提案に宗右衛門とツァン・ディレは驚愕した。
「あんな奴だけどデュエルは強いのよ!!」
そしてツァン・ディレは上浦に注意をする。
「大丈夫です。お三方に強化して頂いたこのデッキは、そんじょそこらの輩には負けません。・・・それに、私は宗様以外には負けませんよ。」
上浦の最後の言葉は何か優しさを含んだ言い回しだった。
「では、これで互の条件は揃ったな。では!!此処に居られる皆様方!!これより、この僕、『神無月紗雨冴』と美人秘書『上浦』さんとのデュエルを始めます!!」
このサウザーの言葉により来場者とこの会場の関係者の視線が此処に集中した。
◇◆◇◆
「宗右衛門様、よろしいですか?」
蚊帳の外だった宗右衛門に紫炎が声を掛けた。
「んぁ?し、紫炎さん!?な、何ですか!?」
全く相手にされなかった宗右衛門は急に声を掛けられテンパってしまった。
「...そ、そう驚かなくても...おほん、彼女、上浦さんは彼に勝てるでしょうか?」
「あぁ、その事?大丈夫。彼女なら問題なく勝てるでしょう。」
「ほう、そこまで彼女を信頼されているのですね。」
「『信頼』って程のものじゃないよ。まぁ、死合った中。ある種の気迫や覇気が何も感じない相手に彼女が負けるとは思えないしね。」
「(死合...?)なるほど、一理ある。」
「二人して内緒話?」
紫炎と宗右衛門が話しているとツァン・ディレが話しかけてきた。
「ひ、姫!?め、滅相もない!!」
「ん?姫?」
「ちょ、今は...」
紫炎の言葉を聞いたツァン・ディレは慌てて紫炎言い寄った。
「ハッ、失礼しました。お嬢様!!」
「ん?」
「な、何でもないわ。・・・で、彼女、大丈夫なの?あんな事まで言って。」
「あぁ、大丈夫さ。」
「なら、いいけど。は~あ、本当にアイツ鬱陶しいんだから!!数ヶ月前の会食で出会ってから僕を見つけては『愛しの君』なんて言って付きまとってくるんだよ!!」
「何!?ウチの生徒に付きまとうだと!」
「それに、『この僕と結婚する運命なんだ』とか言ってくるし、僕が付き纏わないでって言ったら、『ディレ嬢はツンデレだな~』って返してくるんだよ!!鬱陶しいったらありゃしない!!」
「お嬢様、口調が。」
「む・・・私としたことが、感情的になってしまったみたい。」
「嫌がる女子に付き纏うとは、ツァンさんが通っているアカデミアの教師としてちょっと話しをしなければならないかな?」
◇◆◇◆
「「デュエル!!」」
「先行は僕が貰うよ。ドロー!」
神無月紗雨冴 LP:4000
手札:5枚→6枚
「僕は魔法カード『古のルール』を発動!このカードの効果により『エレキテルドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚!」
『古のルール』
手札からレベル5以上の通常モンスター1体を特殊召喚する。
『エレキテルドラゴン』
レベル6・光属性・ドラゴン族・攻2500・守1000
常に電気を纏い空中を浮遊するドラゴン。古代より存在し、その生態には未だ謎が多いものの、古のルールにより捕獲は禁止されている。
「そして、僕にはまだ通常召喚が残っている!!手札より『アックス・ドラゴニュート』を攻撃表示で召喚!!先行の僕は攻撃できない。そして、カードを1枚伏せターンエンド!!」
『アックス・ドラゴニュート』
レベル4・闇属性・ドラゴン族・攻2000・守1200
このカードは攻撃した場合、ダメージステップ終了時に守備表示になる。
神無月紗雨冴 LP:4000
手札:1枚
フィールド:エレキテルドラゴン (攻)2500、アックス・ドラゴニュート(攻)2000
伏せカード:1枚
「さぁ、この僕のドラゴン達をどう退ける?」
「...私のターン、ドロー!!」
カミューラ LP:4000
手札:5枚→6枚
「手札から『手札抹殺』を発動!」
「ん?手札事故かな。まぁ、この僕を相手にするんだ仕方ないよ。」
『手札抹殺』
お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。
「・・・私は5枚墓地へ捨て5枚ドロー。」
「僕は手札に1枚だけだから1枚ドローだね。」
「さて、私が勝ったら『宗様への数々の暴言を撤回して謝って貰う』というのともう一つ追加してもいいですか?」
「ん?いいですよ。この状況で1ターンで勝てる策があるのならね。」
「では、『今後ツァン・ディレ様を付き纏わない』と言うのはどうでしょう?」
「か、上浦さん貴女聞こえて・・・」
その言葉を聞いたツァン・ディレは驚きを隠せない。
「僕が付き纏う?おかしな事を言いますね。だけど、いいでしょう。その条件呑みます。(フフフ、僕が伏せているカードは『ミラーフォース』!!攻撃した途端彼女のモンスターは全滅!そして、この僕の勝利!!)」
「ありがとうございます。...その伏せカードが邪魔ですね。手札の『サイクロン』を使用し、その伏せカードは破壊させてもらうわ。」
「なっ!!」
「そして、墓地にいる『ヴァンパイア・ソーサラー』を除外し手札より『ヴァンパイア・ヴァンプ』を攻撃表示で召喚!!」
『ヴァンパイア・ソーサラー』
レベル4・闇属性・アンデット族・攻1500・守1500
このカードが相手によって墓地へ送られた場合、デッキから「ヴァンパイア」と名のついた闇属性モンスター1体または「ヴァンパイア」と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える事ができる。また、自分のメインフェイズ時、墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。このターンに1度だけ、自分が「ヴァンパイア」と名のついた闇属性モンスターを召喚する場合に必要なリリースをなくす事ができる。
『ヴァンパイア・ヴァンプ(Vampire Vamp)』
レベル7・闇属性・アンデット族・攻2000・守2000
(1)1ターンに1度、このカードまたは「ヴァンパイア」モンスターが自分フィールドに召喚された時、このカードより高い攻撃力を持つ相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをこのカードに装備する。
(2)このカードの攻撃力は、(1)の効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。
(3)(1)の効果でモンスターを装備しているこのカードが墓地へ送られた時に発動する。このカードを墓地から特殊召喚する。
「まさか『手札抹殺』は『ヴァンパイア・ソーサラー』の効果を使うための布石・・・」
「...半分正解です。そして、『ヴァンパイア・ヴァンプ』の効果を発動しこのカードより高い攻撃力を持つ相手フィールドのモンスター1体を対象とし、そのモンスターをこのカードに装備する。そして、装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする!!」
『ヴァンパイア・ヴァンプ』(攻)2000→エレキテルドラゴン装備(攻)4500
「な、何だそのカード!!」
「私が、お三方から頂いた新たなヴァンパイアカード。あと、海馬社長、ペガサス会長よりテストプレーヤーに任命されていますので違法でもないですよ。貴方も今度出るパックに入っていますので購入してみては?」
「・・・くっ」
「そして、『ヴァンパイア・ヴァンプ』のレベルを一つ下げ、墓地より『レベル・スティーラー』を特殊召喚!!」
『レベル・スティーラー』
レベル1・闇属性・昆虫族・攻 600・守 0
このカードが墓地に存在する場合、自分フィールド上のレベル5以上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターのレベルを1つ下げ、このカードを墓地から特殊召喚する。このカードはアドバンス召喚以外のためにはリリースできない。
「まさか手札に『二重召喚』が来ているのか!?」
「ご明察。三流の上ぐらいには見直しましたよ。手札より『二重召喚』を発動!!」
『二重召喚』
このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。
「『レベル・スティーラー』を生贄に『ヴァンパイア・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!!」
『ヴァンパイア・ドラゴン』
レベル5・闇属性・アンデット族・攻2400・守 0
アドバンス召喚したこのカードがフィールド上から墓地へ送られた時、デッキからレベル4以下のモンスター1体を手札に加える事ができる。
「さて、私の攻撃を受けてもらうわ!『ヴァンパイア・ドラゴン』で『アックス・ドラゴニュート』を攻撃!」
『ヴァンパイア・ドラゴン』(攻)2400-『アックス・ドラゴニュート』(攻)2000=-400
神無月紗雨冴 LP:4000-400=3600
「ま、まて。ぼ、僕は次期社長だぞ!僕を怒らせると...」
「そんな事、私は知らない!!宗様を侮辱した罪!その身に味合うがいい!!『ヴァンパイア・ヴァンプ』でダイレクトアタック!!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」
『ヴァンパイア・ヴァンプ』(攻)4500
神無月紗雨冴 LP:3600-4500=0(-900)
「私の勝ちです。」
そう、上浦は高らかと宣言した。