『コンコン』
黄色い独特な制服を着た一人の生徒が寮長の部屋をノックした。
「...どちら様?」
「俺です。三沢です。」
「あぁ、三沢君か。鍵は空いているから入っていいよ。」
「失礼します。あと、一緒に「お~い!宗(そう)先生大丈夫か~。」「ちょ、兄貴!休んでいる先生に悪いッスよ!!」...静かにしないか。友達が先生のお見舞いに来たいと言っていたので連れてきました。」
「ハハハハ、皆元気だな~。彩(あや)姉さん俺はもう大丈夫だから帰っていいよ。」
青い目に特徴のある少しツンツンした黒い髪、少し垂れた眉毛、たまに見せる懐っこい笑顔が印象的。イケメンと呼ばれるには頼りなく、二枚目とも少し違う若い男。この部屋の住人、北上宗右衛門は青いパジャマ姿で布団から上半身だけを持ち上げ生徒が開けた入口の方を眺めている。その隣には、見知らぬ...いや、いま噂になっている青い短髪の女性がスーツを着て宗右衛門の背を支え入口を見やすくしている。
「分かったよ。私はこれで帰るけどアンタ今度無茶したら、昴(すばる)姉さんにお灸を据えてもらうよ!」
「そ、それだけはご勘弁を!!」
「忠告はしたからな。じゃ、今日は休んどけよ~。」
右手を上げプラプラ手を振りながら『彩』と呼ばれたスーツの女性は部屋を出て行った。
「あ、兄貴!さ、さっきの女性見たッスか!!凄い美人だったッスよ!!」
「あぁ、あんなカッコイイ女性見たこと無いな。」
「あ、あの方が今噂になっている宗先生の秘書ッスか!?」
「違う、違う。姉さんは俺の秘書じゃないよ。俺が倒れたって聞きつけて駆けつけてくれたんだ。俺は4人姉弟の末っ子でね、上から昴姉さん、彩姉さん、桜(さくら)姉さんで俺。」
「へ~そうだったんッスか。あっ、僕、丸藤翔って言うッス!」
「ん?丸藤...丸藤、まるふじ~、あっ、オベリスクブルーに同じ名前があったな。丸藤亮、カイザーはお前の親族か?」
「は、はい。お兄さんッス。」
この時宗右衛門は翔が少し顔を伏せたのを見逃さなかった。
「...そうか、まぁあまり良い助言は出来んが、お前はお前だ。あまり深く悩むなよ。」
「え?」
「ちょっとした独り言だ。ハハハ、気にすんな!!」
「??」
翔は何のことか分からず首を傾げている。
「それよりお前たちどうしてここに?自分で言うのもなんだが、俺なんかの所に来ても面白いことはないぞ。」
「いや~、三沢から宗先生が倒れたって聞いて、心配になって来ました!」
「三沢っちも心配してたし、何よりこの学校でどの生徒にも同じように接している宗先生は生徒に慕われてるッスよ。ほかの生徒...大半ラーイエローの生徒からッスけど...栄養剤や安眠枕、元気が出るように食べ物の差し入れもあるッス!!」
そう言って翔は入口からでは見えなかった差し入れの数々を部屋に運んでいった。
6畳一間の一角に積み上げられた粗品の数々を見て宗右衛門は涙を流している。
「う゛ぅ、こ、こんなに生徒から思ってもらえるなんて!!俺は教師になってよかった!!」
『コンコン』
「ちょっと、失礼すルーノ。北上先生、貴男は最近頑張りすぎデスーノ。少し有給を使って休むノーネ。」
「「「「ク、クロノス教諭!!」」」」
「先ほど、貴男のお姉さんにであったノーネ。先日も貴男の書類を持ってきてくれたノーネ。そしてさっきは『迷惑ばかりかけるかもしれないが、弟をよろしく』と言われたノーネ。家族思いの良いお姉さんでスーノ。一人で抱え込んで、家族まで心配させない事ナノーネ。」
「...分かりました。ありがとうございます。」
「私達他の教員も頼ってくれて構わナイーノ。あと、差し入れは許可されてないーノ「ちょ、クロノス先生それは酷いんじゃ...」ドロップアウトボーイ話を遮るんじゃないーノ!!そして、ドロップアウトの貴男達がなぜここにーノ!!」
「それは、先生が心配でお見舞いに。」
「ドロップアウトにしては関心ナノーネ。このクロノス・デ・メディチはここでは何も見なかったノーネ。生徒達、北上先生の邪魔をしないよう早く戻るノーネ。」
そう言ってクロノスはその部屋を去っていった。
「クロノス先生意外といいとこあるじゃん。」
頭の後ろに両手を回し十代が『なはは』と笑っている。
「僕達オシリスレッド生には厳しいのに...ちょっとは僕たちに優しくしてくれてもいいッスよね!!」
翔の方は怒ってはいるが少し笑顔だった。
「ハハハ、それは教員である俺からも一回言ってみるよ。...生徒をあまり炊きつけ過ぎないようにとね...」
宗右衛門は何か思うふしがあるのか最後の言葉をボソっと言った。
「最後なんて言ったんですか?宗先生?」
「ん?三沢君俺なんか言った?」
宗右衛門は三沢に笑顔で答えた。
「...いえ、僕の気のせいでした。では、僕たちも戻ります。宗先生お大事に。」
「え~もう戻るのかよ。」
「兄貴!先生は倒れたんスよ。もう少し休ませてあげないと。」
「あぁ!そうだった!!ごめんよ先生。元気そうだったんで、つい。」
「いいよ、いいよ。元気になったらまたカードの効果や回し方の筆記試験をやろう。」
「「ええ~、それはない(ッス)よ先生!!」」
「ハハハ、まぁ、今度ある試験の予行練習だと思うんだな。」
「「嘘~!!」」
■□■□■□■□
アイツの部屋を怪しまれないように出たのはいいが、精霊界に戻ろうとした途中でクロノスに出会っちまった。その時ちょっと口が滑って『迷惑ばかりかけるかもしれないが、弟をよろしく』と口走っちゃったな~。...私らしくない事しちまった。今思えばよくあんな小っ恥ずかしい事が言えたもんだ。
あっ、ヤベッ。前2回は偶然ヘリや船が来るときと重なったから良かったけど、今回はそんな予定は全く無かったはずだ。アカデミアに上陸出来た理由...ど、どうしよ~
「このまま精霊界に帰って、私がアカデミアから消えたらアイツに変な疑いが掛かってしまう。一旦アイツの部屋にこのまま戻ろう。」
そう言って北上彩は来た道を引き返していった。
■□■□■□■□
「あれ?彩姉さん精霊界に帰ったんじゃ?」
「ちょ、ちょっとね。」
「じゃぁ、今日は夜食って行きなよ。今日は栄養のあるものも一杯もらったからな。後二人の姉さんも呼んで盛り上がろうぜ!」
「ダメ!!それは絶対ダメ!!」
彩は身を乗り出してその提案を拒否する。
(これ以上姉が来て話がややこしくなるのは絶対に阻止しなければ!!)
「私が帰るとき一緒に持って帰るから大丈夫よ!!それにこの部屋では狭いから私達二人で一杯一杯だからね!無理無理。」
「そ、それもそうだな。今度休みの時に誘えなかった事を謝っておこう。じゃ、淋しいけど二人で食べよう。」
「そ、そうだな。二人には私からも誤っておこう。」
二人の夕食はいつもより豪華で美味しい食事となった。
~翌日~
『コンコン』
早朝宗右衛門の眠っている部屋に一人の人物が訪れた。
「はぁ~い、どちら様~。」
宗右衛門は目を擦りながら部屋のドアを開けた。
「北上先生、大変ですよ!!オシリスレッドの遊城君と丸藤君、前田君の三人が昨晩旧校舎に勝手に侵入して問題を起こしたそうです!!」
「なんだって!!それは本当ですか樺山(かばやま)先生!?」
俺の目の前に血相を変えているのは、このラーイエローの前寮長樺山先生だ。カレーが大好物で紙袋?を被ると性格が変わってしまうらしい。俺自身見たことは無いがそれが本当なら、あの空から傘で降りてくる某医者を思い出してしまう。
「は、はい本当です。今校長室で事情を聞いているそうです。あとブルー生の天上院君も一緒に呼ばれたらしい。」
「何!!あの天上院君も!!俺、行ってきます!!」
「ちょ、ちょっと北上先生!貴男はラーイエローの教員ですよ!!」
「そんなの関係ない!!俺はデュエルアカデミアの教員で全生徒の先生だ!!じゃ!!」
そう言うやいなや宗右衛門はいつもの教師の服に着替え校長室を目掛けて走っていった。
「ふ~、若いね~。あたしにもああいう時期があったけど、あの情熱が空回りしないで欲しいですね。」
「同感です。」
「おや、彩さん来ていたんですか?」
「ええ、一昨日倒れたっていう連絡を貰いまして直ぐ来ちゃいました。」
「貴女も仕事があるでしょうに。弟を心配するのはわかりますが、あまり仕事に影響がないように気を付けてくださいね。」
「はい。心得ています。そろそろ、私も仕事がありますので帰ります。ちょっと弟が心配なので校長室を覗いて行きますね。」
「ハハハ、あまり見つからないようにしてくださいね。また、美人な貴女が歩いていたらいらぬ噂が立ってしまいますから。」
「分かりました。では。」
「はい、お気を付けて。」
スーツ姿の彩は宗右衛門の部屋に鍵をかけ『カッカッ』と軽快なヒールの音を響かせ去っていった。
「いいな~、あたしにもあんな美人なお姉さん欲しかったな~。」
~デュエルアカデミア 校長室~
「失礼します!!鮫島校長!!生徒達の処分はどうなってますか!!」
鮫島校長、クロノス実技担当最高責任者、佐藤(さとう)浩二(こうじ)教諭がソファに座って話している所に『ドゴォ』という音と共に信じられない力で扉を蹴り倒し、血相を変えた宗右衛門が校長室に入ってきた。
「お、落ち着き給え北上先生。もぅ、生徒達の処遇は決まったよ。」
扉を蹴り倒した事に困惑するも鮫島は先ほどの宗右衛門の質問に答えた。
「単位の一部剥奪ですか!?」
「いいえ。」
「ま、まさか一ヶ月の謹慎!?...最悪退学にでもなったときは俺は生徒達と共に此処を出ていきますよ!!」
「ちょっと待ってください。何故退学にまで話が飛ぶのです?彼らは2日間の謹慎と反省文2000字の処分ですよ。」
「よ、よかった~。」
宗右衛門はその場にへたり込んだ。
「...『よかった』ではないです!血相を変えて飛び込んで来るからびっくりしましたよ!!あと、今日ここに呼ばれた生徒は貴男の担当のクラスでもないのにどうしたのですか?」
「いえ、遊城十代君、丸藤翔君両名はその日の朝俺...っと、私の部屋にまで来てお見舞いをしてくれました。優しい子達です。遊城十代君は思いがけない行動をする時もあると思いますが、その行動を頭から否定しないで欲しいのです。今回も何か考えがあっての行動だと私は思います。それと天上院明日香君は真面目な子です。天上院明日香君、丸藤翔君も理由もなく夜に旧校舎に入るとは考えにくいので不当な制裁を行われぬよう抗議に来た所存です。ま、杞憂に終わりましたけど。」
「それは、そうですね。...北上先生、闇のデュエリスト『タイタン』と言う名前に聞き覚えはないですか?」
「鯛たん?どこかのゆるキャラですか?」
「ふむ、貴男は知らないようですね。」
「鮫島校長!たったそれだけで『知らない』と言えるのですか!!」
今まで黙っていた佐藤が身を乗り出して講義した。
「ん?佐藤先生どうしたんですか?」
宗右衛門は全く状況が理解できないでいる。
「ここだけの話しデスーけど、シニョーラ明日香の兄シニョール吹雪はあの旧校舎で行方不明になったナノーネ。」
神妙な表情でクロノスが宗右衛門へ口を開いた。
「そ、それは本当ですか!!」
全く知らなかった情報をクロノスから聞いた宗右衛門は驚いている。
「白々しい!!北上先生貴男はそれを知っていて、タイタンを嗾(けしか)けたんでしょう!!さっきはああ言ってましたけど、本当は自分の授業を寝て過ごしている遊城十代君が気に入らなくて、その制裁の為プロのデュエリスト『タイタン』を呼んだのでは?」
声を荒らげて宗右衛門を睨みつける佐藤。
「いえ、そんなことはありません。遊城十代君が私の授業でいつも寝ているのは事実ですが、そんなことで制裁を加えるなどと新人の私が出来ることではありません。プロのデュエリストに知り合いもいませんし私には無理です。...その『タイタン』と呼ばれる人物はプロのデュエリストだったんですか?」
「ああ、そうだ。そのタイタンに運(・)悪く(・・)人質(・・)として天上院明日香君は攫われ、遊城十代君はデュエルを強行された。」
「...プロのデュエリストが?...何故...そう言えば、遊城君達はタイタンに勝ったから無事ここに呼び出されたんですね。」
「そういうことナノーネ。シニョール吹雪が行方不明になって私達教師も旧校舎を何度も捜索のデスーが、何の手がかりも掴めなかったノーネ。シンヨーラ明日香とカイザーは私達の捜索だけでは納得せず、シニョール吹雪を探すために度々あの旧校舎に出入りしていたらしいノーネ。今回はシニョーラ明日香も無事でよかったデスーけど、今後は旧校舎の周りの立ち入り禁止を強化するノーネ。あと一つ解せなイーノが、この島にどうやって侵入したのかナノーネ。」
「そうですね。ここのセキュリティは特定の人物か中からじゃないと解除できないのに...誰か中の者が侵入の手引きをしたと考えられますね。」
「北上先生、貴男が手引きしていない且つ『知らない』のであれば、貴男のお姉さんが怪しいと考えられます。」
「それはどういうことですか!!」
宗右衛門は佐藤が急に自分の姉を犯人扱いした事への驚きと怒りで声が少し荒げた。
「ッ。あ、貴男が倒れて1日しか経っていないのにもうこの学園に入ってきている。こ、これはどう見ても早すぎます。それに、前の2回は船とヘリで来られましたが、今回はそれを使った形跡がない。...前の2回はこの学園に侵入する経路の下見じゃないんですか?これなら、今回の事の辻褄があう。そう、貴男が倒れた事で心配になった姉が、弟を思い出来の悪い生徒をプロに制裁してもらう。...筋書きはこんなところですか?」
「佐藤先生!!そんなことは「サトウとか言ったな?お前。」ッ姉さんどうしてここに!?」
宗右衛門の話を遮ったのは、今犯人として挙げられている北上彩だった。
「何、帰る前に一言言って帰ろうと思ってな。まぁ、それは置いといて...佐藤先生アンタの言い分は分かった。だが、憶測だけで私を犯人に仕立て上げるのはどうかと思うぞ。」
「...初めましてですね北上彩さん。」
「アンタに名前で呼ばれたくないよ。」
「それは失礼しました。...それで、貴女の言い分は?」
「前の2回は下見とか言ってたが、このデュエルアカデミアは一日二日で全箇所、ないし特定のセキュリティの場所を回ることができるのか?」
「そ、それは。」
「それに、何故『タイタン』なる人物は人質が必要になったのだ?デュエルを仕掛けるのなら正々堂々直接挑めばいいだろう。」
「そ、それは...旧校舎にあの男が潜入したとき偶然出会ったため、目撃者を処理しようとした為だと思う。」
「フム、タイタンなる人物は『男』なのだな。校長先生タイタンは今何処に?」
「...まだアカデミアの一室で取り調べ中です。警察も一緒に立ち会っていますから問題はないです。...が、佐藤先生、此処にいる私とクロノス教諭以外まだ『タイタンと会って』はいません。それに、タイタンが『男』だと私は一度も話した覚えはないですが?」
鮫島は今まで見たことのない見定めるかのような鋭い目で佐藤を見ている。
「ッ!!だ、だがこの女が怪しいのは事実だ!!」
苦し紛れの言い訳と誰もが分かる言い分だが、宗右衛門と彩は口を閉ざし言い返せずにいる。
「ほ、ほら何も言い返せないんじゃお前らが主(しゅ)は「ココニいましたか。彩サーン。探しましたヨ。」...は?」
沈黙した空気が一人の男の登場で一気に吹き飛んだ。
「ドーモ初めまして。ミナサン知っているかもしれませんが私、インダストリアル・イリュージョン社の会長をしているペガサス・J・クロフォードと言いマース。そこにいる北上彩サンはワタシの秘書をしてもらっているのデース。」
「「「「「ペ、ペガサス会長!!」」」」」
その場にいた全員が驚いた。無論宗右衛門と名指しされた彩も同様である。
「彩サン、酷いじゃないデスカ。急に仕事をほっぽり出して弟サンの所に行くなんテ。」
「あ、え、えぇっと。」
「それも、私の保有するステルス機能の付いた専用ヘリを秘書権限を使っテ此処まで来るなンテ。優秀な貴女だから許しますけド、今度同じことをやったら減給だけでは済みませんヨ!!」
言葉の最後宗右衛門と彩だけにわかるようペガサスはウインクをした。
「ッ、は、はい!すみませんでした!!今後このようなことがないように致します!!」
それをペガサスからの助け舟だと知った彩は、すぐさまそれに合わせ深々と頭を下げその言葉に続け謝った。
「宜しい。北上ボーイ、ちょっといいデースか?」
「は、はい。」
ペガサスは宗右衛門を近くに呼び右肩に手を置いた。
(北上ボーイ、貴男の事は海馬ボーイから聞いてマス。早く記憶が戻ると良いですネ。あと、貴男のお姉さん方の事も聞きましタ。彩サンは私の臨時秘書としてこれから頑張ってもらいマス。桜サンは海馬コーポレーションと我がインダストリアル・イリュージョンで新たなカードデザイナーとして月1で来てもらうことになりましタ。...今日はこれを伝えに来たのデスが、タイミングが良かったデース。)
(は、はい。今日はありがとうございました。)
「では、北上ボーイ身体に気を付けてクダサーイ。」
「ペガサス会長、今日はありがとうございました。」
「いえいえ、いつも彩サンには助けてもらってばかりデス。では、彩サン会社に戻りますヨ。」
「は、はい!分かりました会長!!」
そう言ってペガサスと彩は校長室を後にしようとした...その時、
「す、すみませんでした!!わ、私がタイタンを呼び十代に制裁を加えようとしたんです!!」
「...どういうことかね佐藤教諭。」
鮫島が佐藤に問いただした。
「...遊城十代らレッド生徒の勉強への怠慢な姿勢を直させようと計画をしました。「アンタさっきまで私に罪を被せようと...」そのことは謝ります!!申し訳なかった!!私がタイタンに依頼した事がバレ、明日香くんを人質した事を私の指示だと思われたくなかった。」
「では、貴男がタイタンに依頼をした事には間違いないと。」
「はい、鮫島校長間違いありません私が依頼しました。ですが、明日香君を人質にしろとは指示はしていません!」
「はぁ、分かりました。では警察の方に今の事を証言してくださいね。貴男は希望退職という事にしておきます。」
「今までありがとうございました。そして、申し訳ありませんでした!」
佐藤は鮫島に深々と頭を下げ、宗右衛門、彩にも頭を下げた。
「君達にも悪いことをしてしまった。許してくれとは言わない。すまなかった。」
「分かりました。俺は許します。姉さんはどうs「あぁ、謝罪は受け取るよ。」...だそうです。」
「ありがとう。では私はすぐここを出て警察の所まで行きます。」
後日、不法侵入者タイタンは逮捕、連行され裁判が行われるまで日本の留置場に送還されることになった。そして今日、佐藤先生は希望退職という名目で日本に戻りタイタンと同様裁判までの間留置場で過ごすことになるらしい。アカデミア生徒にはこのことは知らされておらず、唯の退職ということになっている。
「クロノス教諭。今後共生徒たちをビシビシ指導してくださいね。」
「わかっているノーネ。後のことはこのクロノス・デ・メディチ実技担当最高責任者に任せるノーネ。」
佐藤の手には今まで教えてきた生徒達からの花束や、色紙が持たれており目からは大粒の涙が流れている。
「い、今になって、ようやく自分の教えてきたことが無駄ではなかった事が分かりました。私が快く思っていなかったレッド生からも花束をもらい...ズズ、失礼。わ、私が犯してしまった罪の重さを感じております。...こんな事ならもっと他の方向で怠慢な姿勢を抑制出来ていたかもしれません。」
「まだ、この後の人生で活かせルーノ。今の貴男ならここでの再雇用も考えられルーノ。刑期を終えたらここに一度来るといいノーネ。」
「ありがとう...ございます。」
佐藤はクロノスに深々と頭を下げた。
■□■□■□■□
所変わって、ここはオベリスクブルー専用デュエルフィールド。二人の青年がデュエルディスクを構え向かい合っている。観客は一人も居らずフィールドに二人だけが存在している。
「本当に俺なんかでいいんですか?」
「あぁ、最後に君と決闘(デュエル)してみたかったんだ。」
「じゃあ、今日は社長から特別に許可が下りたので俺のサブデッキでやります。メインはまだ許可が降りないんで使えないんです。でも、強いですから負けても恨まないで下さい!」
「北上先生のデッキ?...まさか君は他人のデッキでデュエルしていたのか?」
「察しがいいですね。流石佐藤先生。今まで負け続けたデッキはここの貸出用のカードで組んだデッキです。そして、今日使うのは俺のデッキです。誰にも言いふらさないでください。」
「「デュエル!!」」
北上宗右衛門 LP:4000
手札:5枚
フィールド:なし
伏せカード:なし
佐藤浩二 LP:4000
手札:5枚
フィールド:なし
伏せカード:なし
「まず、先行私のターン!ドロー!!」
佐藤浩二 LP:4000
手札:5枚→6枚
フィールド:なし
伏せカード:なし
「私は『スカブ・スカーナイト』を攻撃表示で召喚!カードを2枚伏せターンエンド!」
『スカブ・スカーナイト』
星4・闇属性・戦士族・攻 0・守 0
このカードは戦闘によって破壊されない。このカードが表側守備表示でフィールド上に存在する場合、このカードを破壊する。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、ライフポイントを回復する効果は無効となる。相手ターンのバトルフェイズ中に相手フィールド上に攻撃表示モンスターが存在する場合、相手プレイヤーはそのモンスターでこのカードに攻撃をしなければならない。バトルフェイズ終了時にこのカードと戦闘を行った相手モンスターのコントロールを得る事ができる。
佐藤浩二 LP:4000
手札:3枚
フィールド:スカブ・スカーナイト(攻)0
伏せカード:2枚
「俺のターンドロー!!」
北上宗右衛門 LP:4000
手札:5枚→6枚
フィールド:なし
伏せカード:なし
「俺は1枚カードをセットし1枚伏せターンエンド。」
北上宗右衛門 LP:4000
手札:4枚
フィールド:1枚
伏せカード:1枚
「では私のターンドロー!」
佐藤浩二 LP:4000
手札:3枚→4枚
フィールド:スカブ・スカーナイト(攻)0
伏せカード:2枚
「私は『アックス・ドラゴニュート』を攻撃表示で召喚!そのまま伏せてあったカードを攻撃!!」
『アックス・ドラゴニュート』
星4・闇属性・ドラゴン族・攻2000・守1200
このカードは攻撃した場合、ダメージステップ終了時に守備表示になる。
「ここで伏せてあった速攻魔法『月の書』を発動!!アックス・ドラゴニュートを裏側守備表示にする!!」
『月の書』
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする。
「させない!伏せてあったカウンター罠『八式対魔法多重結界』を発動!!『フィールド上のモンスター1体を対象にした魔法の発動と効果を無効にし、そのカードを破壊する』を選び月の書の効果を無効にし、破壊!!」
『八式対魔法多重結界』
次の効果から1つを選択して発動する。
・フィールド上のモンスター1体を対象にした魔法の発動と効果を無効にし、そのカードを破壊する。
・手札から魔法カード1枚を墓地に送る事で魔法の発動と効果を無効にし、そのカードを破壊する。
「クソッ!!だが、破壊される前にセットしてあったモンスターは表になり効果が発動できる!!セットしてあったカードは『魔導書士バテル』!!そして効果発動!!」
『魔導書士バテル』
星2・水属性・魔法使い族・攻 500・守 400
このカードが召喚・リバースした時、デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える。
「俺はデッキから『グリモの魔導書』を手札に加えデッキをシャッフルする!!」
北上宗右衛門 手札:4枚→5枚
『グリモの魔導書』
デッキから「グリモの魔導書」以外の「魔導書」と名のついたカード1枚を手札に加える。「グリモの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。
「だが、君のモンスターは破壊され墓地に送られる。そして、アックス・ドラゴニュートの効果により守備表示になる。そして、ターンエンド。」
佐藤浩二 LP:4000
手札:3枚
フィールド:スカブ・スカーナイト(攻)0、アックス・ドラゴニュート(守)1200
伏せカード:1枚
「俺のターンドロー!!...よし!!」
北上宗右衛門 LP:4000
手札:5枚→6枚
フィールド:なし
伏せカード:1枚
「俺は手札より『魔導法士ジュノン』の効果発動!!(いくよジュノン)手札にある『グリモの魔導書』『ゲーテの魔導書』『トーラの魔導書』を貴男に見せ、特殊召喚!!」
『魔導法士ジュノン』
星7・光属性・魔法使い族・攻2500・守2100
手札の「魔導書」と名のついた魔法カード3枚を相手に見せて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。また、1ターンに1度、自分の手札・墓地の「魔導書」と名のついた魔法カード1枚をゲームから除外して発動できる。フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
『ゲーテの魔導書』(速攻魔法)
自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する場合、自分の墓地の「魔導書」と名のついた魔法カードを3枚までゲームから除外して発動できる。このカードを発動するために除外した魔法カードの数によって以下の効果を適用する。「ゲーテの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。・1枚:フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を選んで持ち主の手札に戻す。・2枚:フィールド上のモンスター1体を選んで裏側守備表示または表側攻撃表示にする。・3枚:相手フィールド上のカード1枚を選んでゲームから除外する。
『トーラの魔導書』(速攻魔法)
フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択し、以下の効果から1つを選択して発動できる。・このターン、選択したモンスターはこのカード以外の魔法カードの効果を受けない。・このターン、選択したモンスターは罠カードの効果を受けない。
『問おう、貴男が私のマスターか?』
ソリッドビジョンで現れたジュノンは魔道書を片手に宗右衛門の方を向き厨二病的なセリフを言った。
「「・・・」」
『...ふぅ』
ジュノンは何事もなかったかのように佐藤の方を向いた。
「き、気を取り直して、手札より『魔導戦士フォルス』を攻撃表示で召喚!」
『魔導戦士フォルス』
星4・炎属性・魔法使い族・攻1500・守1400
1ターンに1度、自分の墓地の「魔導書」と名のついた魔法カード1枚をデッキに戻し、フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターのレベルを1つ上げ、攻撃力を500ポイントアップする。
「そして、手札より二重召喚を発動!これにより俺はもう一度アドバンス召喚できる!魔導戦士フォルスをリリースし『ブリザード・プリンセス』を召喚!!」
「何!レベル8のモンスターが1体の生贄で召喚だと!!」
「これはこのカードの効果で魔法使い1体のリリースで召喚可能!現れろ!ブリザード・プリンセス!!」
『ブリザード・プリンセス』
星8・水属性・魔法使い族・攻2800・守2100
このカードは魔法使い族モンスター1体をリリースして表側攻撃表示でアドバンス召喚する事ができる。このカードが召喚に成功したターン、相手は魔法・罠カードを発動する事ができない。
『・・・』
「っな!!貴女は!!」
ソリッドビジョンより現れたモンスターは、佐藤がこの前罪を被せようとした北上彩に瓜二つだった。
『アンタ、あんときの...確か佐藤だったか?分かっているだろうがこのことは他言無用だかんな。』
「は、はい。」
「佐藤先生続けますよ!」
「あ、あぁ。」
「魔導法士ジュノンの効果発動!手札のグリモの魔導書を除外し、アックス・ドラゴニュートを破壊!!」
ジュノンは魔道書を開き呪文を唱える。唱え終えるとアックス・ドラゴニュートがガラスの割れるような音を立てて破壊された。
「クッ、私のモンスターが!!」
「そして、二体のモンスターで攻撃!!スカブ・スカーナイトの効果により二体共スカブ・スカーナイトへ攻撃!!」
「それに対ししトラップ発ど...ミラーフォースが発動しない!?」
「彩姉さ...ブリザード・プリンセスの効果により、相手はこのターン罠、魔法カードは使えない!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
佐藤浩二 LP:4000→0 4000-2500-2800=0(-1300)
「ありがとう。君みたいな教師は初めて会ったよ。私みたいにならないように、たまにはゆっくり休んでください。」
「分かってますよ!」
「...北上さん弟君に無茶させないようにね。」
『あぁ、もう大丈夫だ。私達とクロノス達がちょっとずつフォローするからな。』
「それは安心だ。ではいいデュエルだったよ。」
「はい。またどこかで。」
「あぁ、またどこかで。」
「「デュエルしよう(ましょう)」」
この日一人の教師がアカデミアを後にした。