小此木短編集   作:小此木

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6話 俺の休暇…と昴姉さんの貴重な(?)説教シーン

 

 

「ん~ん?ここは?」

 

朝起きて見慣れない部屋の中に俺はいた。新しい畳の香りとガラス戸から入ってきた朝日が障子を通し俺の顔を照らし眠気を覚ましていく。

 

「あ~、そっか~。鮫島校長や他の教員の有無を言わさぬ笑顔で『君は休みなさい。』と言われ、今日から有給を取って5日間休む事になったっけ~。」

 

この2日前から倒れる以外で初めての休みを取っている。今俺はとある田舎に建てた自宅にいる。海馬社長の計らいで日本家屋が好きな俺の為に、この長屋を建てたらしい。窓にガラスを使したり、地デジ対応の液晶テレビが設置してあったり、と近代的なものも揃えている。無論PCやネット環境も設備されているが近くの川で魚取りをしたり、山で草笛を吹いたりする事が今日俺のプランだ。

 

『トントントントン...』

 

「...ありゃ、姉さんもう起きたのか?」

 

台所のある場所から軽快な包丁のリズムが奏でられている。

 

「宗ちゃん、起きた~?」

 

「あぁ、姉さん起きたよ。今日は精霊界には行かねぇの?」

 

俺こと北上宗右衛門は家族、生徒、近所の人から『宗先生や宗さん宗ちゃん』などと呼ばれることが多い。中々下の名前を全部呼ばれる事は少ない...社長とその奥さんにしか呼ばれていないような気がする。あと、若干一名マスターとしか呼ばない姉がいるが...

 

「ええ、今日は私が美味しい食事を振舞うわよ!」

 

「あ、あぁ、期待してるよ。」

 

青いTシャツに茶色いズボンの私服に着替え台所に入ってみると、昴姉さんが切り刻んだネギをグツグツと煮えたぎった鍋に包丁で流し入れていた。この光景は昔どこの家にもあっただろう朝食の定番、女性が味噌汁を作っているところだ。

 

「ちょっと待ってて、もうすぐできるから。」

 

銀色に輝く腰より長いロングヘアーを頭の後ろで括り、ポニーテールにした我が家の長女昴姉さんがこちらを向き『ニコッ』っと笑う。...凄く色っぽい。こんな仕草が似合うのは姉さんしかいないと思うほどだ。昴姉さんはいつもの茶色いロングスカートに白いエプロンを着け朝食をテーブルに載せていく。

 

「彩ちゃんと桜ちゃんを呼んできて。朝ごはんはみんなで食べましょう。」

 

「あぁ、分かったよ。」

 

昴姉さんに言われ、二人が使っている部屋に向けて歩いていく。この家では俺以外の姉さん達三人は一緒の部屋で寝ている。最初俺は、俺の護衛という事で姉さん達が入れ替わり二人で寝る予定だった。何故、健全な男と一緒に寝ると言う考えが浮かぶんだ...トラップを張るとか他に色々考えられるだろう!少し姉さん達の思考がわからなくなってきた。だが、この『一緒に寝る護衛』はたちまち破綻することになる。最初の桜姉さんの時某怪盗三世の如く服を一瞬で脱ぎ去り飛びかかってきたのだ。俺は身の危険を感じたが、飛びかかってきた所を、昴姉さん彩姉さんの二人がかりで別の部屋に拉t...連れて行った。この事で俺の護衛はなくなり彩姉さんの不可視の氷の結界(俺達のみ分かる出入り口がある。)で守られることになった。そして、別の驚異から俺を守る為二人はその驚異と寝ることとなった。あの時の桜姉さんは怖かった。焦点の定まっていない目で涎を少し垂らしながら俺に襲いかかって...ヤバイ思い出して寒気が...

 

「お~い。朝飯出来たから...ってジュノっ、桜姉さんどうしたらこうなるんだよ。寝相悪すぎ!」

 

俺が部屋を仕切っている襖を『シャッ』と音を立てて開けると二人はまだ寝ており、彩姉さんの頭を桜姉さんの右足が蹴っていた。彩姉さんは敷布団に行儀よく縦に寝ているが顔をしかめ何かにうなされている。青い水玉模様のパジャマがいつもクールな彩姉さんを可愛く見せる。

桜姉さんは名前と同じ桜色の長い髪をボサボサにして全ての掛け布団を蹴り飛ばし敷布団の上に『横』に寝ている。桜姉さんはピンクの縞模様のパジャマを着て...訂正、桜姉さんはおっさんのようにパジャマを捲くり上げ、腹を出し右手で少し掻いていた。俺は美人な桜姉さんじゃなかったら蹴り起こしていただろう。あと、彩姉さんがうなされているのは、おそらくあの蹴りのせいだろう。

 

「はぁ~、桜姉さん腹が出てるぜ。(BE COOL、BE COOL、BE COOL、BE COOL、BE COOL。煩悩よ立ち去れ!!)」

 

煩悩と戦いながら桜姉さんの腹を仕舞い、

 

「はい、はい、足はここじゃないですよ。」

 

足を元有ったであろう位置に戻す。...俺はいつ介護ヘルパーに転職した?

 

そして、優しく肩を揺らし声を掛けてみる。

 

「桜姉さん朝だぜ。昴姉さんの飯が冷めちまう。」

 

「んぁ~。マスターがいる~、おはようございます~。」

 

「おはよう姉さん。昴姉さんが朝食できたって。」

 

「ふぁ~い。」

 

「ささ、隣の部屋で着替えて、着替えて。」

 

寝ぼけ眼の桜姉さんの背中を衣装棚がある隣の部屋へ押してやる。

 

「は~い。ん~、マスターも来る~?」

 

「俺は行かんぜ!?それと、早く着替えないと昴姉さんにどやされるぞ~」

 

「それは嫌だな~。じゃ~また後でね~」

 

「おう。早く起きろよ姉さん。」

 

「んぁ~」

 

寝起きの桜姉さんはオヤジ臭い...というよりほぼオヤジだ。さて、次の眠り姫を起こさなくてはな。

 

「彩姉さん、朝ですよ。」

 

「・・・んん。もう十分だけ~」

 

...遅刻のお友達『あと○○分』が出てきた。桜姉さんのあの蹴りで悪夢を見てあまり熟睡できなかったのかもしれない。

 

「・・・仕方がない。よっと。」

 

俺は彩姉さんの首と膝あたりを持ち上げる。所謂お姫様抱っこだ。

 

 

 

Side 彩

 

(あれ?何か浮遊感がある。でも不安はないし、逆に安心感が...それに暖かい?)

 

「あぁ゛~!!ブリザードだけずるい~!!私もしてもらいたいのに!!えこひいきだ!!」

 

(ん?私が羨ましい?今の私どうなって...え゛)

 

い、今確認したありのままのことを話すわ...わ、私は『宗の腕の中にお姫様抱っこされている』な、何を言っているか分から...

 

「・・・桜姉さんが蹴飛ばすから、変な悪夢にうなされて熟睡できてなかったみだいだよ。...返す言葉は?」

 

「...ごめん。」

 

「宜しい。じゃあ、彩姉さん朝食食べたらまた寝ていいよ。」

 

「うん///(あわわ、私今宗にお姫様抱っこしてもらってる!!か、顔が熱い!!静まれ静まれ!!)」

 

「彩姉さん、降ろすよ?あれ?顔が真っ赤。風邪でも引いた?」

 

「な、何でもない!さ、さぁ朝食にしよう。」

 

私はこの状態をまだ堪能したかったけど、2人に悪いしこれ以上私が耐えれない。名残惜しいけど宗から降ろしてもらった。...まだ、顔は火照っている。

 

「あらあら、彩ちゃん私も羨ましいわ~。」

 

「ね、姉さんからかわないでください!!」

 

「ふふふ、じゃあ、みんな揃ったことだから改めて。」

 

「「「「頂きます!!」」」」

 

私達の朝食は白米に味噌汁、鮎の塩焼きに卵焼きが並んでいる。米は近所(500m以上離れているが)の農家の方から引越し祝いに、味噌は昴姉さんのお手製。いつ造っていたのか個人的に知りたい。鮎は近くに流れている川から宗が獲って来たもの。卵も宗が山で獲ってきた。...アイツ最近野性化してないか?大自然で身体を動かして自身の中の野生が顔を出したのかも。

 

「いや~、今日の味噌汁もいい塩加減だよ昴姉さん。」

 

「ふふふ、お世辞でも嬉しいわ。」

 

「お世辞じゃないよ。アタシも美味しいし!」

 

「マスターとブリザードに同意します。お姉様の味噌汁は絶品です!!」

 

「あらあら。」

 

 

Side out

 

 

■□■□■□■□

 

 

教師になって数ヶ月、土日、祝日を返上してやってきたけど3回も倒れてしまった。右も左も分からない記憶喪失の俺。がむしゃらにデュエルモンスターズの知識を吸収し、この世界?の一般常識を学び自分の考えと兼ね合わせていった。

常識は常識だが、俺が気に食わない...もとい納得ができないことは自分の意思を優先している。この前自分が某財閥の跡取りだとか言うブルー生徒がレッド生を見下し、その生徒のカードを踏んでいた所に出くわし...ゲンコツを叩き込んでしまった。だが、俺は後悔していない。人を見下すなんて事はあまり褒められた事ではない。上には上がいるのは仕方ないが、他人を見下して向上心を失ってしまうとそれ以上何も成長しなくなってしまう。そして、俺は高らかに叫ぼう。『物を粗末に扱う奴は俺が相手になってやる!!』と。

俺は物心ついた時から...あれ?少し記憶戻った?...まぁ、いいや。話を戻すぞ。俺は物心ついた時から物を大切にすることを学んだ。...と思う。どんな『物』でも愛情を持って接すれば何か応答が帰ってくる...と。気に入っていた花瓶をふと見たときにヒビを見つけ修理したとしよう。花瓶に無関心で見ても気付かなかった場合花瓶はヒビが大きくなり割れていたかもしれない。好きでいつも見ていた為ちょっとした変化に気付いた。これが『物』からの応答だと俺は考える。こちらが何らかのアプローチをすれば相手も何らかの変化が起こ...

 

「宗ちゃん!ちゃんと聞いていますか?」

 

「サ、サーイエッサー!!」

 

「何ですかその返事は!」

 

さっきまで他のことを考え昴姉さんの話しを聞き流していました申し訳ありません。今現在俺は昴姉さんに説教されている。

 

「宗ちゃん聞いてますか?こんな時間までどこに行っていたんです!?」

 

「い、いや~、山菜採りに夢中になって...」

 

「夢中になるのはいいで「なら、問題な」...今何時だと思ってるんですか!!夜の8時ですよ。ハ・チ・ジ!!田舎の夜は危険なんですよ!!周りが山に囲まれているから暗くなるのも早いですし、野生の獣...特に猪は夜行性です!奴らに襲われたら骨折だけじゃ済まないかもしれないですよ!!一般的に曲がれないとか言われてますけど、奴らは物に当たり曲がってきます!!ここは都会のような一方通行で周りに隠れる建物が有る道じゃあないんですから十分注意するよう伝えたはずです!!それに最近、熊の目撃情報があります!」

 

「わ、わかったって!悪かったよ昴姉さん。」

 

「全然わかっていません!!宗ちゃんに何かあったら私は...私達『家族』は...どうすればいいのですか!!」

 

「ね、姉さん...」

 

「...そうですね、貴男に怪我を負わせた者共を肉片一つ...いいえ、塵も残らないように消滅させましょう。」

 

(ヤ、ヤバイ!姉さんの目が本気だ!く、口から白い煙まで出てる!!)

 

「あと、私達がいるから考えられませんが、宗ちゃんが誰かに殺されでもしたら、この世界を破壊しつくしても私達の気は収まらないわ!!」

 

(あれ~、俺いつの間にか死んじゃった設定だよ!!わ、話題をなんとか変えないと...そ、そうだ!!)

 

「す、昴姉さん!最近肌がスベスベになったよな!!」

 

「え、ええ!!と、唐突に何を言っているの?(そ、そうなのかしら...)」

 

昴姉さんは自身の身体を見渡している。

 

「あぁ、そうだよ。前より綺麗になったし!」

 

「ま、まぁ!!」

 

「好きな人が出来たのか?女性は好きな人が出来たら綺麗になって行くって聞いたことがあるし...そうだ!俺が全力で応援するよ!!」

 

「...ふ~ん。全力で応援ね~」

 

(あ、あれおかしいぞ!目が座って、だんだん昴姉さんの威圧感が増している!!ど、どこで間違えたんだ!!)

 

「宗ちゃんは今後私に無断で外出しちゃいけませんから!!あと、ここでの門限は6時です!!」

 

「そ、そんな殺生な~!!」

 

その後俺は2時間姉さんの説教に耐えた。

 




皆さんお気付きだと思いますが、魔導法士ジュノン=北上桜(さくら) ブリザード・プリンセス=北上彩(あや) ???=北上昴(すばる)です。
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