Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第11話「暗殺者と英雄王」

生存の為の搾取

 

繁栄の為の決断

 

その行為は野蛮ではあるが――

 

否定する事もまた出来ない

 

……死の淵でこそ、得る物もあるだろう

 

 

 二回戦が終わり、個室に戻ろうと階段を上がった時だ。二階の踊り場に数人のマスターが倒れていたのを発見した。なんだ、と思った瞬間。

 

「っ!?」

 

 何時の間にか、私は校舎から別の場所に立っていた。驚きはそのままに、私は考える。誰かが私を此処に転移した。恐らく、先の倒れていたマスターも同じ方法で此処に来たのだろう。そう考えた瞬間、身体が固まる。

 先に対戦した二人とは逸脱した純粋な殺意。一部の隙も見逃さない視線と共に晒される死の気配。気付けば、目の前に一人の男性が立っていた。

 

「脆弱にも程がある。魔術師とはいえ、ここまで非力では木偶にも劣ろう。鵜をくびり殺すのも飽きた。多少の手応えが欲しい所だが……」

 

 中華風の服を身に纏い、鮮烈な赤い髪の男はゆっくりと構えを取る。

 

「小娘。お主はどうかな?」

 

 その言葉と更なる殺気を浴びせられ、私は全力で両足を強化し、弾けるように後ろに跳んだ。空いた距離は五メートル弱。

 

「ほう……!!」

 

 感心と嬉しさが混じった声を上げて、男が近づく。たった一歩で一メートルを進むのは反則だ。

そう思いながら、私は魔術回路を起動。右手に砲身を作成、マナを集める。男が二歩目を踏み終え、三歩目。狙いを合わせる。この短時間じゃ、一発が限度。

 

「フッ!!」

 

 四歩目と共に拳を突きだす男。ギリギリで間に合わない。が、一言位の感覚はある。分の悪い賭けだが、迷っている暇は無い。

 

「後より出でて先に断つ者(アンサラー)!!!」

 

 叫びと共に魔力弾を射出。

 

「む………?」

 

 男は疑問の声を上げながらも、発射された魔力弾を弾く。そして拳が私に届く。

 

「済まない、マスター」

 

 前に目の前に現れたセイバーの剣に当たる。男はセイバーの一撃を後ろに跳んで避ける。そして自らの右腕を見た後。

 

「クッ!!ハッハハハハハハ!!!!面白い術を使うのう、小娘。今の一撃、確実に儂が速かった。が、先に届いたのは貴様。なにやら先の言葉にカラクリがあると見えるが、時間切れでは分からず仕舞い。いやいや、存外楽しめた。舞台裏ではこれが限度。ではな、小娘とそのサーヴァントよ」

 

 言葉と共に何時の間にか私は二階の踊り場に立っていた。

 

「はっ、はっ………!!!」

 

 殺気は未だあるものの、先程よりかなり薄くなり、私は荒く息を吸う。咄嗟に動けたのは凄まじい殺気の所為で私の神経が麻痺した事。そしてシルヴィアとの闘いのお陰だろう。

 

「その体たらくで、どうやって生き延びた?」

 

 言葉は後ろから。振り返ると、そこには幽霊の様に不気味な男が立っていた。確か、学園生活では葛木という教師だった筈だ。そして今の言葉は彼があの男のマスターと言う事だ。

 

「お前の相手はバルトメロイだった筈だ。そして彼女では無く、お前がいるという現実。ふん。存外、やるようだ」

 

 言葉と共に彼から殺気が溢れる。まさか、ここでやる気か!?

 

「ふうん。やっぱり、貴方が放課後の殺人鬼だったのね」

 

 言葉は男の更なる後ろ。壁に背中を預けた少女は凛だ。

 

「遠坂凛、か……」

 

「あら、光栄ね。私も貴方にマークされる程有名なんて誇らしいわ。ねぇ?叛乱分子対策の大本、ユリウス・ベルキスク・ハーウェイさん」

 

 ユリウス。その名が彼の名前なのだろう。ユリウスは薄く笑って。

 

「敵を助けるとは。気が多いな。この女を味方に引き込むつもりか?」

 

「まさか、ソイツは私の仕事とは無関係よ。けど、あのバルトメロイを倒した程の実力者なら勝手にしたら?」

 

 助けが来たと思ったら更なる追い打ちだった!!!!泣きたい衝動に駆られながら何とか逃げる算段を考えていると。視界の端に黄金が現れた。

 

「全く、騒がしいと思い、来てみれば。なんの催しだ?我(オレ)を興じさせたければもう少し趣向を凝らせ」

 

 言葉はレオのサーヴァントであるギルガメッシュだ。

 

「ふん、暗殺者と薄汚い鼠が寄ってたかって雛鳥を嬲るか。此処まで来ると、もはや哀れだな」

 

 本当に憐れんだ目を向けながら言葉を放つ英雄王。

 

「用が無ければさっさとレオの所に戻れ。マスターを護るのがサーヴァントの務めだとセラフから告げられているだろう?」

 

「ハッ!!!たかが、記録者如きの言葉に我が耳を貸すと思うか?それにだ、我とレオは主従では無い。お前達に分かりやすく言うなら教育者と生徒だ。それと……分を弁えろ。暗殺者」

 

 言葉と共にソレだけで人を殺せそうなほどの殺気を身体から発する英雄王。

 

「万物の王である我の拝謁という栄誉に与りながら、その物言い。本来なら斬首すら生温い!!だが、暇潰しとはいえこの茶番に参加した以上。我はこの戦争のルールに殉じよう」

 

 言葉を終えると共に殺気を霧散した英雄王は何時の間にか私の手を引いてユリウスから遠ざける。

 

「だが、この雛鳥とサーヴァントはこの我の好敵手。手を出すというならそれ相応の報いは覚悟せよ」

 

 低い言葉と共に英雄の背後の空間が歪む。ユリウスはソレを見て驚愕する。

 

「貴様……ペナルティを受ける気か………!?」

 

「無論、奴との決戦には万全がいいだろう。だが、貴様が強行するならそれも止む無しだ」

 

 本気だ。このサーヴァントは私と、否。セイバーと戦う為なら自らペナルティを受ける覚悟も辞さない。

 

「……いいだろう。此処は下がるとしよう」

 

 言葉と共に私を見てから、ユリウスは階段を下りていく。

 

「さて……後ろで機を窺っている鼠よ。その手に持った石を王に投げる気か?」

 

 首だけ振り向き、凛を見る。凛は右手にルビーを二つ指に挟んで此方を睨んでいた。

 

「此処でやりあうのはいいが、そこの狗程度では我には勝てんぞ?それでも来るなら仕方ないが」

 

「ランサー!!!挑発に乗っちゃ駄目!!!」

 

 英雄王の言葉に凛が叫ぶ。どうやら彼女のサーヴァントが実体化しようとしたのを止めたらしい。

 

「こっちとしてはレオとその子がペナルティないし、怪我でも負ってくれると嬉しいんだけどね」

 

「その代償に我ともう一人のサーヴァントを相手にするか。いやなに、中々度胸があるではないか!!見所があるぞ、小娘」

 

 鼠から小娘に変わった。どうやら評価を改めたようだ。対して凛は宝石をポケットに仕舞い、優雅に髪を払って。

 

「でも、その為に私もペナルティを受けるなんて割に合わないわ。今日は引き下がるとしましょうか」

 

 言葉と共に凛は階段を下りていく。敵がいなくなった踊り場がやけに静かだ。

 

「さて、怪我は無いか?」

 

 いきなり、ギルガメッシュが身体を触り始めた。しかも、丹念に。

 

「………ッ!!!!」

 

「おっと」

 

 反射的に強化した張り手を叩きこむが簡単に掴まれる。しまった、と思ったが。ギルガメッシュの顔にあるのは笑みだ。

 

「ふむ、中々に反応がいいな。よいぞ、そうこなくては。初心(うぶ)は久しいからな。もう少し見せよ」

 

 そういうと、空いた手で私の頬を擦る。やっている事はセクハラ。だが、相手は超美系であり、私は男の免疫殆ど無し(失くした記憶ではどうだったかしらないけど)故に私の顔はどんどん熱くなる。はたから見れば熟れたトマトの様だろう。

 

「遊びも程々にしろ。英雄王」

 

 言葉と共に現れたセイバー。来るの遅い!!!!

 

「なんだ、聖剣使い。助けてやったのだ。これくらいは勘弁しろ」

 

「助けてくれた義理で今の今まで実体化しなかったのだが?」

 

 言葉と共にセイバーがギルガメッシュの手から私を解放する。そして互いに睨み合う。なにこの少女漫画!!

 

「そう睨むな。先も言った通り、我は貴様と万全の状態で決したい。故に此処で戦うつもりは無いが?」

 

「私も望む所だ。いや、なに。かの英雄王に二度も泥を被せるのは私が初めてだろうな」

 

 セイバーの言葉にギルガメッシュがムッとした顔になる。

 

「先の勝敗をとやかく言うつもりはない。アレは我の油断と貴様の底力故の結果だ。だが、此度の我は一切、慢心と油断を捨てよう。故にソレは早計だぞ?」

 

「ほう、望む所だ」

 

 言葉と共に二人の英霊が笑みを浮かべて互いを牽制する。あれ?この二人って実は仲好いのかな?

 

「さて、そろそろ我も行くとしよう。あぁ、そうだ」

 

 思いだしたかのようにギルガメッシュが私を見る。

 

「雛鳥、名を名乗れ。特例として我が覚え、呼んでやる」

 

「……秘羽、真耶」

 

 物凄く偉そうな言葉を無視して、名乗る。

 

「マヤ……か。覚えておくぞ。ではな、聖剣使い。くれぐれも我と当たるまで負けるなよ?」

 

「それは此方のセリフだ。英雄王」

 

 セイバーの答えに満足したのか、英雄王が去って行く。そして残ったのは私とセイバー。

 

「ねぇ、セイバー」

 

「なんだい、マヤ?」

 

「いい加減、離してくれないかな?」

 

 今の私はセイバーに抱きかかえられている状態。誰もいないからいいものの、誰かに見られたら悶絶並だ。

 

「あぁ、御免」

 

 そういって、ゆっくりと離してくれるセイバー。

 

 

 

 

 

 

死を悼め

 

失ったものへの追悼は恥ずべきものではない

 

死は不可避であり

 

争いがそれを助長するなら

 

死を悼み 戦いを憎み

 

死を認め 戦いを治めるがいい

 

 

 

3回戦開幕

残り32人

 

 

 

『二階掲示板にて、次の対戦者を発表する』

 

 アサシンの襲撃から翌日。個室でゆったりしていると対戦者が発表する連絡が入った。

 

「よし」

 

 呟きと共に個室を出る。人間とは慣れる物で三回目となれば緊張もしなくなる。

 

「やっぱり、人がいないのは寂しいな」

 

『………』

 

 思わず零れた呟きにセイバーは無言。そして掲示板の前に着くと掲示板に名前が浮き上がった。

 

マスター:アリス

決戦場:三の月想海

 

「こんどの遊び相手はお姉ちゃん?」

 

 ふと、背中に声を掛けられる。振り向くと、そこには白く可愛らしいドレスを纏った、まだ十歳くらいの少女が立っていた。

 

「もしかして、貴女がアリス………?」

 

 尋ねると、少女はとても嬉しそうに笑みを浮かべ、何度も頷く。

 

「お姉ちゃん………あたしのこと覚えてる?もしかしたら知らないかもしれない。あたしはただ、見つめてるだけだったから」

 

 アリスの言葉に私は少し、動揺した。もしかしてアリスは私の過去を知っているのだろうか?答えは直ぐに否と分かった。

 

「もしかして、ちょっと前に此処とは違う学校で会った?」

 

「うん!!!覚えてたんだ!!!!」

 

 嬉しそうに告げるとアリスが抱きついてきた。いきなりの事で、更に屈んでいた事もあって尻もちをついてしまった。

 

「あたしね。お姉ちゃんなら、お友達になってくれそうな気がしてたから、見ていただけだったの。だからお姉ちゃんが行っちゃったときは……かなしかったし、さびしかったの」

 

 少しだけ目を伏せるアリスに思わず、その頭を優しく撫でてしまう。アリスは嬉しそうに目を伏せてから。

 

「でもね……ここに来るとちゅうで、あたしはアタシに出会ったの。アタシはあたしのただ一人のお友達。

 やっと出来たあたしの、あたしだけのお友達。だからお姉ちゃんのことはもういいの。あたしの思った通り、優しくて、あたたかいお姉ちゃん。おねがいだからすぐに消えないでね。あたしはかなしいし、アタシはつまんないから」

 

 その笑みはとても無邪気で、無垢で純粋な子供のソレだ。アリスにとって対戦相手は自身の遊び相手であり、この戦争は巨大な遊園地なのだろう。慎二とはまた違った子供だ。私はただ、笑顔で走り去るアリスの後姿を眺めていた。

 

『マヤ………』

 

「大丈夫……大丈夫だから」

 

 セイバーに、自信に言い聞かせながら、私は歩き出す。向かう先は教会。

 

 

 

 

 

 

「ふぅん、今度の相手は子供か~。これはまたヘヴィ~、な感じね」

 

 何時もの笑みを引っ込めて、神妙に青子さんが言葉を作る。

 

「まぁ、バルトメロイを倒した君なら問題ないだろう。だが、相手も此処まで勝ち残った相手だ。努々、油断はしないようにな」

 

 だが、対照的に橙子さんの言葉はアドバイスだけだ。思わず、橙子さんを見てしまう。

 

「うん?もしかして、慰めて欲しかったのか?期待させてしまって悪いが。私にとっては他人事だからね。変に何か言って君を迷わせるのはよくないだろう」

 

「それは………そうですよね。結局は自分で決めなきゃ駄目ですよね」

 

 言葉と共にため息を深く吐く。けど、胸の中に溜まるこの何とも言えない感覚は消えてくれない。

 

「よしよし♪」

 

「青子……さん?」

 

 いきなり、頭を撫でられる。見ると、青子さんの笑顔が視界一杯に広がる。

 

「悩め、悩め。悩むのは正常な人間の特権だよ。だからこそ思う存分、悩みなさい。もう、私やそこの姉貴位になっちゃうと、相手が誰であろうと邪魔なら問答無用で消し飛ばすレベルだから。アドバイスは上手く思い付かないもんなのよ。だけど、君はまだ正常な思考が出来る。だから君は悩んで、悩んで、そして悩みきって出した決断を躊躇しちゃ駄目。これは絶対守りなさい」

 

「その先に何があっても……ですか?」

 

「えぇ、何があろうと、何であろうと。悩んで出した決断は決して間違いじゃないんだから。それに一人で悩もうとしない」

 

 そういって、コツンと頭を小突かれる。

 

「君には頼りになるサーヴァントがいるじゃない」

 

「あ………」

 

 言われて、気付く。先程からセイバーが心配そうに私を見ていた事に。

 

「マヤ。君も辛いだろうけど、一人で抱え込まないでくれ。水臭いじゃないか」

 

 そう言われ、思わず苦笑する。そうだ。私にはセイバーがいるじゃないか。全く、一人で悩んでいた自分が馬鹿らしい。そう思い、一度大きく息を吸いこんでから両手で両頬を叩く。パァン、と高い音が教会に響く。

 

「助言、ありがとうございます。まだ自分でもどうすればいいか分かりませんけど、セイバーと一緒に考えます」

 

「おっし、何時もの君に戻ったね。まぁ、頑張んなさい。私は勿論、あの姉貴が興味を持つなんて結構、凄い事なんだから。負けたら駄目よ?」

 

「はい……!!」

 

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