Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第12話「少女の戯れ 前編」

 教会で青子さんと橙子さんから励まし(?)を受けた翌日。端末からアリーナでトリガーが生成された事が教えられた。そしてアリーナに向かうべく、一階に下りると。

 

「お姉ちゃん、遊ぼ!おにごっこがいいな」

 

 白いフリルのドレスに身を包んだ少女、ありすが笑みを浮かべながら無邪気に、無防備に近付いてきた。

 

「ね、いいでしょ?」

 

「うん、いいよ」

 

 思わず、返してしまった答えに内心で後悔する。お姉ちゃんが鬼だからね、と告げた彼女はそのままアリーナに向かってしまった。

 

『マヤ………』

 

「じょ、情報収集!!!」

 

 セイバーの呟きに意味不明な言葉を叫んで、周囲のマスターから奇異な視線を受けながら、アリーナに向かう。

 アリーナは透き通った緋色の壁と床で構成されていた。

 

「道が無い………?」

 

「ううん、見えないけど、ちゃんとある」

 

 礼装を通してアリーナを見回しながら私は目の前の壁に手を当てる。すると、壁は何の抵抗も無く、私の手を受け入れ、道を作る。それを見たセイバーは感心したように頷きながら。

 

「君の魔術って派手さに欠けるけど、役に立つよね」

 

「どうせ、私の魔術は地味ですよ~」

 

 そういうと、セイバーが苦笑する。

 その後もアリーナを進みながら襲いかかるエネミーを駆逐していくと、視線の先にありすを見付ける。ありすも私を見付けたのか、嬉しそうに手を振る。

 

「お姉ちゃんが鬼だからね?ありすのこと、捕まえられたらお姉ちゃんの勝ちだよ」

 

 そういうと、ありすは走り出す。私はセイバーを見てから走り出す。セイバーは何も言わず、進行方向にいるエネミーを手早く片づけていく。

 そしてアリーナの奥。少しだけ広い空間で私は追い付いたありすの両肩を優しく掴む。

 

「捕まえた」

 

「捕まっちゃった~……」

 

 私の言葉に少しだけ残念そうに呟く少女。けれど、直ぐに嬉しそうに笑うありす。

 

「ねぇ、お姉ちゃん………ありすのお話聞いてくれる?」

 

 私の手から離れ、向き合った彼女はポツリ、ポツリと自分の事を話し始める。自分はこことは違う場所にいたのだと。瞬間、彼女の横に黒いドレスを纏ったもう一人の少女が現れた。

 

「サーヴァント!?」

 

 驚く私に構わず、彼女は自分の身の上話をもう一人の少女と話し合う。

 

「これは……」

 

「ありすが二人?」

 

 セイバーと私の困惑の声と同時に二人の少女は同じ手を上へ向ける。すると、アリーナの空間が振動する。途轍もない『力』が現れたのだ。ソレは彼女達の背後で具現化する。

 

「くっ!?マヤ、下がるんだ!!」

 

 焦った声でセイバーが前に出る。そして視線の先。ありす達の後ろにいたのは赤黒い肌に羽の無い翼を携えた巨人だった。アレは何だ?サーヴァントなのか?

 

「あはっ。すごいでしょ。この子、ありすのお友達なんだよ」

 

「ねぇ、お姉ちゃん。この子とも遊んであげて」

 

 ありす達の言葉と共に巨人が一歩前に出る。私は即座に魔術回路をフルに稼働させる。

 

「セイバー!!!」

 

「分かった!!」

 

 私の言葉を聞いた瞬間、答えと共にセイバーは駆ける。そして答える様に巨人もゆっくりとした動作で動く。セイバーが一瞬で接敵。巨人はセイバーを叩き潰さんと右手を振り下ろす。だが、セイバーは振り下ろされた手を紙一重で避け、そのまま巨人の背後に移動。

 

「ハァッ!!!!」

 

 無防備な背中に不可視の剣で切りつける。だが、背中の皮膚に触れる寸前、見えない壁に阻まれる様に剣が弾かれる。それを見たセイバーが舌打ちしながら、巨人のバックブローを屈んで避ける。

 

「セイバー!!」

 

 私はセイバーを呼ぶ。同時にセイバーがこちらに動き、巨人の顔もその動きを追う。そしてアリーナの床に固定した砲身を通して見えた巨人の顔に照準を合わせる。

 

「行け!!!」

 

 叫びと共に魔力弾を発射。だが、巨人はその巨大な右手で魔力弾を防ぐ。

 

「今!!」

 

 ポケットに入れていた『リターンクリスタル』を使う。あの巨人に勝つなんて考えていない。最初にセイバーを突っ込ませたのはあの巨人の能力を少しでも知る為。そして魔力弾で巨人の視界を完全に隠してから安全に離脱。即席で考えた作戦だが、上手く行ってよかった。

 

 

 

 

 

 

「あぁ~、死ぬかと思った~」

 

 個室に戻った私はソファーに深く沈む。それを見たセイバーは苦笑しながら。

 

「無事に切り抜けられて何よりだ」

 

「うん」

 

 答えて、私は座り直し、セイバーを見る。セイバーも真剣な表情で私と向きあう。

 

「さて、突然現れたあの怪物だけど」

 

「うん。やっぱりアレがありすのサーヴァント、なのかな?」

 

 セイバーは顎に手を当てる。

 

「どうだろう。魔力の質からして、確かにあの怪物はサーヴァントだとしても可笑しくは無い。けれど、突然現れた黒い少女はどう説明するんだい?」

 

「……魔術による幻覚。だとすれば私の礼装で分かる」

 

 可能性は幾つかある。その中でも候補は三つ。

 

「私の礼装でも見抜けない程に高度な幻覚魔術を扱える。もう一人のありすもマスター。最後はもう一人のありすがサーヴァントであの怪物はそのサーヴァントの宝具」

 

 一番可能性が高いのは最初だ。

 

「情報が少なすぎる。相手のマスターとあの怪物の対処法が分からない内はアリーナに入らない様にしよう」

 

 セイバーの言葉に私も頷く。取り敢えず、明日は情報収集に努めてありすとの接触は避けよう。

 

 

 

 

 

 

 翌日、図書室に情報を集めようと向かった時だ。

 そこは緊張に支配されていた。

 馴染みのある空気。対戦相手が発表される時に自分もこんな感じに緊張する。

 けれど、その緊張感を放っているのは私ではなく、視線の先で向かい合っている二人の少女だ。

 赤い服の少女。遠坂凛。

 褐色の少女。ラニ。

 彼女達は静かに向かい合った状態からそれぞれ違う方向へ歩き出す。一方のラニは私に気付くと小さく会釈して階段を上がって行った。

 

「……遠坂凛にラニ=Ⅷ.実力伯仲だな。このレベルの敵が潰しあってくれるとは都合がいい」

 

 背後からの声に身体を強張らせる。この声はユリウスだ。だが、不思議な事に敵意はあっても殺気は無い。もしかしてギルガメッシュの言葉が効いているのだろうか。

 

「勝者も手の内が隠せる闘いではないだろう。見ることが出来れば有益な情報になるな」

 

 他人の試合を見る?もし、そんな事が出来れば勝者に対して大きなアドバンテージを得ることが出来る。だが、出来るのだろうか?そんな疑問を浮かべながら振り返ると既にユリウスは去っていた。

 

「取り敢えず今は置いておこう」

 

考えなければいけないのは対戦相手の事だ。そう考えながら、私は図書室に向かう。

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、今日も遊ぼう。今日は学校でかくれんぼがいいな」

 

 結局、図書室ではなんの情報も得られず、さてどうしようか、と考えながら一階に降りるとありすに出会った。

 彼女は私の悩みもどこ吹く風の様に満面の笑みで遊びに誘ってきた。何となく、真剣に悩んでいる自分が馬鹿らしくなり、息抜きも兼ねて彼女の誘いを受けることにした。彼女は嬉しそうに跳びはね。鬼となった私が彼女を探すことになった。

 

「アレって………アレだよね?」

 

『あぁ、アレだね』

 

 私の言葉にセイバーが苦笑気味に答える。ありすを探す為、先ずは一階から虱潰しに行こう、と考え探し始めたのだ。そして探し始めて十分、アリーナへ向かう所の角で特徴的なフリルが見え隠れしている。

 

『頭隠して尻隠さず………だったかな?』

 

 セイバーの的確な言葉に苦笑しながら角を曲がる。

 

「見ぃつけた」

 

「あ、みつかっちゃった。残念……ありすの負けだね」

 

 そういって、笑みを浮かべるありす。機嫌がいい、今なら色々と聞きだせるかも。

 

「ねぇ、ありす。私のお願い聞いてくれる?」

 

「う~ん、いいよ」

 

 笑みを浮かべて頷くありす。

 

「アリーナの巨人。アレを退かしてくれない?」

 

「ありすのお友達の事?それはあの子に聞かないと分からないわ。じゃぁ、特別にヒントをあげる。『ヴォーパルの剣』を見付けたらあの子も退いてくれるわ」

 

 そういうと、彼女は右の人差し指を口の前で立て、肩目を瞑りながら。

 

「でも『ヴォーパルの剣』はアリーナには無いの。それは架空の存在なの。さぁ、どうやって見付ければいいでしょう」

 

「………見つけ方は教えてくれないんだ」

 

 楽しそうに語るありすに小さく呟く。多分、コレも彼女の遊びの一つなのだろう。ならば、自分で見付けるしかない。

 

「よし。じゃぁ、直ぐに見付けてあげるんだから」

 

「ふふ、頑張ってね。お姉ちゃん」

 

 そういうと、彼女はアリーナに向かって行った。さて、先ずは『ヴォーパルの剣』についてだ。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、ヴォーパルの剣ときたか。『鏡の国のアリス』とはまた懐かしいな」

 

 そういって、小さく笑みを浮かべたのは橙子さんだ。

 

「ナーサリーライム……でしたっけ?」

 

「そうだ。特に有名なのは『マザーグース』だな。まぁ、これはおいといて。ふむ、君は実に面白い相手と戦うな」

 

 そういって、組んだ足を逆にし、顎に手を置いて、軽く身を前に倒す。

 

「一回戦は女性のフランシス・ドレイク。二回戦は自身のサーヴァントの並行存在。そして今回の相手。実に興味深い」

 

「いや、そう言われても………」

 

 当人としては面白くもなんともない。取り敢えず、情報を集めないと。

 

「それでありすが言っていた『ヴォーパルの剣』ですけど、橙子さんや青子さんはご存じないですか?」

 

「ふむ、伝承としては知っているが。実物は見たことが無いな。そのありすの言葉が真実ならば、この世に存在しない物なんだろう」

 

「うぅ~」

 

 ヒントかと思ったら全然違った。落ち込む私に橙子さんは小さく笑うと。

 

「なに、無いなら造ればいい。君は錬金術も出来るのだろう?」

 

「初歩の初歩です。そんな空想の存在を作れる程、技量は高くありません」

 

 精々、砕いた石やガラスを違う形に返る程度だ。

 

「なら、姉貴が作ったら?一応、得意でしょ?」

 

「私は私でやることがある。それに、そこまでしてやる義理も無い。そうだな、確かアトラス院の参加者がいた筈だな」

 

「アトラス院?」

 

 聞き覚えの無い単語に首を傾げる。

 

「簡単に言えば、錬金術師の時計塔みたいな所かな」

 

「運が良ければ、まだ生き残っているだろう。あそこは変人ばかりだから君のその要望に答えてくれるかもしれないぞ」

 

「行ってきます!!」

 

 シュタ、と擬音が出る位の勢いで手を上げた私は全力ダッシュで教会を出る。変人……かぁ~、ラニかな?

 

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