Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第13話「少女の戯れ 後編」

「はい。アトラス院からの参加者なら。私で間違いないでしょう」

 

 見事に大当たりでした。でも、彼女も遠坂さんとの闘いが迫っているし、流石に頼めないよね。とか、思いながらも『ヴォーパルの剣』を作成できないかと、聞いてみる。すると、彼女は顎に手を当てる。

 

「恐らく『マカライト』が必要ですね。それさえ、あれば練成出来るのですが………どうかしましたか?」

 

「え?あ~、手伝ってくれるんだ。って、驚いて」

 

 私の言葉にラニは頷き。

 

「確かに私と貴女は敵同士。ましてや、お互いに試合を控えている身。ですが、貴女は私を友として接してくれています。なら、私も同じようにしようかと思ったのです。友達として貴女を助けたいと」

 

 正面から堂々とそう言われて、思わずこっちが恥ずかしくなる。

 

「うん、と。ありがとう。じゃぁ、その『マカライト』探して来るね」

 

 といっても、そんな簡単に見つかる訳じゃ無く。さて、どうしたらいいか。と一階の下駄箱で悩んでいると。

 

「あら、秘羽さんじゃない。どうかしたの?」

 

 遠坂さんに声を掛けられた。駄目もとで聞いてみようか。

 

「『マカライト』?あるにはあるけど」

 

 流石にタダで譲ってはくれないだろう。

 

「その『マカライト』、譲って下さい!!代わりに私に出来る範囲でお返しするから」

 

 私の言葉に彼女は意地悪く笑って。

 

「次の試合負けてくれない?」

 

「お断りします」

 

 笑顔で答える。あれ?何処となく遠坂さんが引いている。なんか、選択間違った?

 

「ま、まぁ期待はしていなかったけど。そうね、売店で特大のルビーを売っているんだけど。それを持って来てくれない?それと交換で『マカライト』を渡すわ」

 

「特大のルビーね。取り敢えず見て来る」

 

 そういって、売店へ行くと、確かに大きなルビーが売っていた。

 

「えぇっと、零が一、二………」

 

 これは高過ぎる。

 

「買えるかな?」

 

『常識的に考えるんだ。君の所持金では到底届かない』

 

 いやいや、まだ諦めるには早い。もしかしたらローンが効くかもしれない。

 

『分割払い……いや、無理なんじゃないか?』

 

「とにかく、お姉さん。このルビー買いたいんですけど」

 

 と、意気込んでいたのだが、どうやらある物を持ってくればタダで譲ってくれるという。そのある物とは。

 

「え?私が作ったお弁当ですか?」

 

「うん、貰えるかな?」

 

 保健室の天使(命名、廊下ですれ違った男子マスター)であり、最初に会ってからマトモに会っていなかった桜の手作り弁当だ。

 

「えぇ、丁度次の試合の為に作っておいた試作でよければ」

 

 そういって、渡してくれたお弁当は中々手の込んだ物だ。なんか、女性として負けた気がするけど。気にしないで行こう。

 

 

 

 

 

 

 その後、売店で桜の弁当と特大のルビーを交換し、ルビーと『マカライト』を驚きの表情を浮かべていた遠坂さんと交換した後、ラニに頼んで『ヴォーパルの剣』を作ってもらった。そして今私達はアリーナの奥。ジャバウォックの目の前にいる。が、その巨体は膝をつき、かなり弱っている『ヴォーパルの剣』が粒子となってジャバウォックに吸収された影響の様だ。

 

「ハッ!!!」

 

 鋭い息と共にセイバーがジャバウォックを両断する。

 

『―――――――ッ!!!!!』

 

 断末魔の叫びを上げながらジャバウォックが粒子となって消える。私達は周囲を警戒しながら奥へと進み。トリガーを手に入れる。

 

「ほんとに『ヴォーパルの剣』を手に入れるなんて。お姉ちゃんは凄いね」

 

 感嘆の言葉は後ろから聞こえた。振り向くと、ありすがもう一人のアリスと笑顔で会話していた。

 

「ね、言ったでしょ。今度は今までよりもっと遊べるって」

 

「うん!!ねぇ、お姉ちゃん。今度もありすたちと遊んでね」

 

 そういうと、二人はアリーナから消える。私は端末を取り出し、画面を確認する。特に連絡事項は入ってない。という事は。

 

「ありすのサーヴァントはジャバウォックじゃない」

 

「もしくは、あのジャバウォックは何らかの復活効果を持っている、という事かな」

 

 その後、問題なくトリガーを入手した翌日。アリーナの第二層へ入る。

 

「やはり、いるか」

 

 アリーナに入ると、目の前にはありす達がいた。そして彼女達が踊りながら何かを呟くと。

 

「………え?」

 

 世界が変わった。無職の空は白く、白かった風景は黒く。

 

「これは、固有結界か!?」

 

 セイバーの驚きの声に私も驚く。

 魔術の中でも最高峰の大魔術。空想具現化の亜種であり、術者の心象風景で世界を塗り潰し、世界そのものを変えてしまう結界だ。

 

「やっぱり、そっちのアリスがサーヴァントだったのね」

 

 理性の無いバーサーカーに固有結界は不可能。出来るとするならば魔術師のキャスターが妥当だろう。ならば先日のジャバウォックは宝具の一つだろう。

 

「取り敢えず、捕まえないと」

 

 そういって、隣を見る。

 

「あれ?」

 

「どうした、マヤ」

 

 疑問の言葉に隣に立つ『青年』が訝しげに聞いてくる。

 

「あ……ごめん……セイ…バー」

 

 ゆっくりと思いだしながら彼を呼ぶ。何故、咄嗟に彼を忘れていたのか、その答えは目の前にいる少女達が教えてくれた。

 

「成る程、時間と共に存在を削る固有結界か」

 

 セイバーの納得した声と共に私は抱きかかえられる。少女達は既にアリーナの奥へ進んでしまった。

 

「しっかり捕まっていてくれ」

 

 言葉と共に彼が加速する。その速度に驚きながらもしっかりと彼に捕まる。

 

 

 

 

 

 

 結論から言えば、今回は惨敗だった。相手の術中に嵌まり、手も足も出ずに、個室へ戻ったのだ。

 

「でも、収穫はあった」

 

 寝起きの様な曖昧な意識を頭を横に振る事で吹き飛ばし、情報を整理する。

 

「先ず、ありすのサーヴァントはあの黒い少女で間違いない。そして黒いアリスは固有結界を展開できる程の英霊だ」

 

 セイバーの言葉に頷く。

 

「彼女達が呼びだしたあのジャバウォック。アレはアリスの宝具か、何かを媒体に召喚した存在。そして厄介な固有結界は時間と共に敵対者の存在を削り取る」

 

 簡単に言えば、記憶の欠落から始まり、自己の存在が認識できなり、最終的に魂ごと世界から消滅する。

 

「一見、無敵に見える魔術だけど。必ず欠点という物は存在する」

 

「それがこれだね」

 

 そういって、アリーナで拾った紙切れを見る。

 

『あなたのなまえは』

 

 一見、何の意味も無い文だが。真っ先に名前を失う、あの固有結界では重要な物なのだろう。

 

「もしかして、自分の名前を言えば、結界が外れる仕組み?」

 

「だろうね。真っ先に名前を忘れる結界内にその名前を尋ねるメモ。後は自分の手か何かに名前を書き込んでおいて、アリーナでそれを読めば、大丈夫だろう」

 

 セイバーの言葉に頷く。

 

 

 

 

 

 

「なんとも、呆気ないね」

 

 アリーナに入ると同時に手に書いてあった自分の名前を言うと、アリーナを覆っていた固有結界が消え去る。そして現れた二人のありすは楽しそうに喋った後、消えてしまった。

 

「名無しの森……」

 

 ありすが告げた固有結界の名前。心当たりはある。『ヴォーパルの剣』『ジャバウォック』そして『名無しの森』これは総て創作物の中にある物だ。共通しているのは作者が同じな事と、総て子供の為の物語だ。

 

「取り敢えず、トリガーを手に入れよう」

 

 セイバーの言葉に頷く。ここで立ち止まっても仕方ない。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、時間と共に存在を削る固有結界か。そして名前は『名無しの森』と来た。特定は出来るものの、そこから連想する英霊はいない筈だが」

 

 ふむ、と足を組み直し、新しい電子煙草を咥える。

 

「他に特徴的な所とかは?」

 

 セイバーの強化を行っている青子さんが聞いてくる。私は顔を横に振る。

 

「今、話した事で全部です」

 

 そういって、私は顎に手を当てる。今までの情報で相手の真名は分からない。そもそも、その情報から得られた物は英雄の物語ではないのだ。

 

「あの、橙子さん」

 

「うん?」

 

 私は自分の推測を正直に言う事にした。

 

「多くの人間に愛されたモノは生き物だろうと物だろうと『英雄』という概念になる事ってありますか?」

 

 荒唐無稽にも程がある、だが、私の言葉に橙子さんは驚いた様に目を開いた後、クスクスと笑う。

 

「君は本当に飽きないな」

 

 そう言って、真面目な顔に戻る橙子さん。

 

「そうだな。あり得なくないだろう。長い年月を経て意思を持つ存在もあるからな。成る程、物語のジャンルである『ナーサリーライム』が英霊となったか。さしずめ『子供達の英雄』といった所か。ならばマスターである少女と瓜二つなのも説明が付く」

 

「物語故、カタチが無いからですか?」

 

 聞くと、彼女が頷く。

 

「そのサーヴァントは固有結界を操れるのだったな?」

 

 橙子さんの言葉に頷く。すると、橙子さんは一人でブツブツと小さく呟いている。

 

「まぁ、なんにせよ。相手の真名に近づいたのは良いことじゃない。後はどうやって勝つかね」

 

 青子さんの言葉にゆっくりと頷く。私はあの子を倒すことが出来るのだろうか。勿論、キャスターとセイバーの優劣じゃない。幼い少女を殺すことが本当に出来るか、という事だ。

 

「はぁ~」

 

 深いため息と共に横になる。天井を見上げながら気持ちの整理が付かない自分にイライラする。

 そしてそんなイライラを抱えたまま、決戦当日を迎えてしまった。

 




少々駆け足気味で申し訳ありません。次回は決選です。前の二試合より地味になるかもしれません。では次回もお楽しみに
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