Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第14話「少女との決闘」

「どうしたのかね?浮かない顔をして」

 

 決戦当日。私の顔を見た言峰神父が訪ねてきた。

 

「決心が鈍ったかね?よもや、今更相手の命を奪う事を拒否するのかね?」

 

 私はゆっくりと首を横に振る。そんな事を拒否しても意味が無い事は分かっている。

 

「準備は出来ています」

 

 そういって、私達はエレベーターに向かう。

 

 

 

 

 

 

 目の前では二人のありすが楽しそうに喋っている。これから彼女達と私は戦う。そして彼女達の命を奪うのだろう。

 

「ねぇ、セイバー」

 

「なんだい?」

 

 私はゆっくりと吐きだす様にセイバーに告げる。

 

「出来るだけ、苦しませないで」

 

「………分かった」

 

 私の言葉にセイバーは小さく頷いてくれた。そして重い音を響かせながらエレベーターが止まる。

 

 

 

 

 

 

「ありがとね、お姉ちゃん。あたし、お姉ちゃんと遊ぶのとっても楽しかったよ」

 

「ええ、いままでの誰よりも楽しかった。ありがとう。アタシも嬉しいな」

 

 笑顔で告げるありす達は本当に楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「でも、お姉ちゃんとはいいの。あとはアタシとだけ遊ぶね」

 

「お姉ちゃんはもういらない。なごりおしいけど、さよならのじかんなの」

 

 そういうと、ありすは小さく首を傾げ、ん~、と可愛らしく唸る。

 

「こういうときは……なんて言うんだっけ?」

 

「忘れちゃったの?こういうの」

 

 そういうと、アリスはありすに耳打ちする。ありすは二度、頷くと笑みを浮かべ、左手を、アリスは右手をそれぞれ私とセイバーに向け、声を合わせて。

 

『あわれで可愛いトミーサム、

いろいろここまでご苦労さま。

でも、冒険はお終いよ』

 

 二人の少女は楽しそうに告げる。

 

『だって、もうじき夢の中。

夜のとばりは落ちきった。

アナタの首もポトンと落ちる』

 

 笑みを深くする二人は何処か絵本に出てきた怪物の様に言い様のない恐怖を覚える。

 

『さあ―――。

 嘘みたいに殺してあげる。

 ページを閉じて、さよならね!』

 

「お願い、セイバー」

 

「了解した」

 

 言葉と共にセイバーが動く。

 

「せっかちな騎士様ね」

 

 アリスが炎の鳥をセイバーに放つ。だが、セイバーは冷静に炎の鳥を一閃、だが、炎の先に雷と暴風が襲いかかる。

 

「残念」

 

 呟きと共に襲いかかってきた攻撃は消え去る。大魔術すら無効化する『対魔力:B』の恩恵である。

 

「冷たいのはお好き?」

 

 その言葉と共に巨大な氷柱が幾つも降ってきた。

 

「風よ」

 

 その氷柱を剣に纏った風を解放する事で動きを一瞬止め、駆け抜ける。だが、セイバーの目の前には既に赤黒い巨体が聳えていた。

 

「――――――――ッ!!!!!!」

 

 叫びを上げ、駆け抜けるセイバーを叩き潰さんと拳を振り上げるジャバウォック。セイバーは小さく笑みを浮かべる。

 

「前回とは違い、本当の真っ向勝負。行くぞ、巨人よ!!!」

 

 叫びと共に振り下ろされる赤黒い拳を軽く身を捻って避け、黄金に輝く剣で胴体を一閃する。

 

「子供は寝る時間だ」

 

 振り抜いた状態から流れる動きで、驚き固まっていたアリスの左肩から右のわき腹まで一息に切り裂く。

 

「あ………」

 

 一瞬、何が起きたのか、分からなかったアリスだが、ジャバウォックがゆっくりと地面に倒れるのを見て自信の敗北を悟った様だ。同時にセイバーとアリスの間に赤い壁が生まれる。

 

「あれ……きえていくよ………?そっか、もう終わりなんだね……」

 

 何処となく不満げに告げる言葉は遊び足りない子供のソレだった。

 

「……なんで?」

 

 消えるありすの手をアリスはしっかりと握りしめ、悲痛な声を上げる。

 

「ありすはずっと一人で。だれも見てなくて。居場所がなくて。さびしくて。ずっと、ずっと」

 

「やっと見つけたのに。

 アタシだけのあたしを。

 居場所を。幸せを。

 それだけで良かったのに。

 ずっと、このままで、ずっと、ずっと。

 それだけで良かったのに」

 

 まるで駄々をこねる様に首を横に何度も振りながらアリスが声を上げる。

 

「なんで終わっちゃうの?どうして、こんな小さなしあわせも、待ってられないの?」

 

 その言葉に私は赤い壁に頭を当てる。軽い衝撃が頭から全身に響く。これでよかったのかな?

 

「どうして……」

 

 どうして……私は二人を殺さなきゃいけなかったのだろう?死にたくない、なのに生きる為には他の人間を殺さなくてはいけない。戦争だから仕方ない、なんて言い訳が出来る程、私は強くない。気付けば、視界が霞んでいる。あぁ、私は泣いているのか。相手が消えるのを悲しんでいる。なんて、偽善だろうか。

 

「いいんだ……もう」

 

 ありすの声に顔を上げる。ありすは微笑んでいた。身体も殆どが黒く消えているのにも関わらず、満足したような笑みを浮かべていた。

 

「あたし………わかってたよ、きっと………なにもかも、なくなっちゃうって。だって……よく覚えてないけれど、あたしはたぶんもう死んでいるもの……。あのびょういんに、あたしの体はないの。ここにいるあたしは、最初からぬけがらだから。………さいしょからなにもなかったんだ。

 ううん、もっとずっとはじめ……あのびょういんにいたころから、あたしにはなにもなかった………。だれもあたしを見てくれなかった。一人だった。いたかった。誰も、あたしを人間として扱ってくれなかった。ふしぎなせかいに来てもずっと同じ………あたしは一人で、さびしくて」

 

 違う、と叫びたかった。でも、ありすを何も知らない私は声を上げられなかった。きっと、声を上げても届かない、数日しか会ってない私に語れるのはこの電子の海でのありすだけだ。だから何も言えないし、何を言っても彼女に届きはしない。

 

「だからね、わかってた……アタシも……居場所も……きっとすぐなくなっちゃうって……。でもね………。ねぇ、お姉ちゃんはわたしのこと……見てくれた?」

 

 強く、頷く。見ていたよ。初めて会った時、私に抱きついてきたありすを……とても甘えん坊で寂しがり屋なありすを私はちゃんと見ていたよ。

 

「やっぱり……お姉ちゃんなら、見てくれると思ってた」

 

 ありすは安心したように笑みを浮かべる。

 

「お姉ちゃんはあたしに似てるから。……あたしとちがって、ちゃんと居場所があるけれど……」

 

 そういうと、アリスに向き直って満面の笑みを浮かべる。

 

「ありがとう、アタシ……いつもいっしょにいてくれて。友達になってくれて……。

 それにありがとう、お姉ちゃん……。あたしと遊んでくれて……。あたしのことを見てくれて……」

 

 もう殆ど黒く消えて尚、ありすは笑みを浮かべていた。

 

「ほんとは……もうちょっとだけ遊んでいたかったけど……………バイバイ」

 

 そう言い残すとありすはまるで煙が風に吹かれて消える様に。嘘の様に消え去る。

 

「ねぇ………お姉ちゃん」

 

 ありすが消えた後、アリスの体も黒く消えていく。

 

「アタシ、凄く眠たいの。眠るまで一緒に居てくれる?」

 

「うん………いいよ」

 

 震える声で、涙で濡れた顔で肯定する。アリスは嬉しそうに横になる。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。今度起きたらあたしと一緒に遊んでくれる?」

 

 それは叶えられない願いだろう。だが、今の私に出来る事はアリスが安心して寝ることが出来る様にするだけだ。

 

「うん……、起きたらありすとアリス。私とセイバーの皆で遊ぼうね」

 

 そういうと、アリスはとても嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「約束………だよ」

 

 言葉と共にアリスが消える。私はそれを見て、視線を地面に向ける。

 

「マヤ………」

 

 私の横に立ったセイバーが声を掛ける。

 

「此処には僕と君しかいない………だから我慢する必要なんて無いんだ」

 

 その言葉を聞いて、私はありすの為に声を上げて泣いた。

 

 

 

 

 

 

「死を悼んでいるのですね」

 

 アリーナから戻った私を出迎えたのはレオだった。私は泣き跡を隠さず頷く。

 

「命が失われるのは悲しい事です。それが、このような無慈悲な戦いであれば尚のこと」

 

 その言葉は暖かく、こちらの胸にするりと入って来る。

 

「言い訳は幾らでも出来る。でも、私が彼女を殺した事に変わりが無いのなら、逃げずに向き合う」

 

 それが私なりの償いなのだから。けれど、もし。もし、死者を生き返らせる奇跡があるのなら。

 

「ありますよ」

 

「っ!?」

 

 レオの暖かい言葉に反応してしまう。

 

「聖杯ならば可能です。運命を変えられます。例え、死ぬしかない人間も、死なない運命に変えることが出来ます。聖杯にはそれだけの力があるのですから」

 

「でも、それは……」

 

 それは許されない事だ。死者の冒涜以前に、死者が残した想いすら踏み躙る。

 

『ありすと一緒に遊んでくれる?』

 

 アリスとの約束を思い出す。自分は彼女の約束を了承してしまった。けれど、それはアリスを安心させる為の物だ。けっして、決して。

 

「何を我慢している真耶。いい加減、その偽善的な考えを脱ぎ捨てよ」

 

 レオとは違う、断言する様な力強い声が聞こえる。

 

「少しでも可能性があるならそれに懸けるのも一つの生き方だ。そしてお前は目の前に現れた可能性を捨てるほど、強くは無い。そうだろう?」

 

「英雄王。私のマスターを惑わすのは止めて頂こう」

 

 ギルガメッシュにセイバーが声を上げる。だが、ギルガメッシュはセイバーの言葉に耳を貸さず。

 

「我はそこのレオの様に強制はせん。決めるのはお前自身だ。だが、いいではないのか?誰もが笑って過ごせる世界。実に幸福ではないか」

 

「貴公らしくない言葉だな。そんなにマヤが気に入ったのか?」

 

「ふん、アヤカとは違ってまだ何色にも染まっていないからな。言い換えればこれから我好みに染める事も出来る」

 

「それを許すと思うか?」

 

「いい顔だ。だが、ここでは事を起こさん。これから雑事が控えているのでな」

 

 そういうと、ギルガメッシュはセイバーの横を通り過ぎ、私の肩に手を置き。

 

「先の物とは違い、此度の聖杯は万能だ。我が保証する。どのような願いにするか、決めておく事だな」

 

 そういって、レオとギルガメッシュはエレベーターへと乗り込んだ。そして扉が閉まると同時に私は地面へと力なく座る。

 

「ねぇ、セイバー」

 

 セイバーに声を掛ける。私は顔を両手で隠して。

 

「私、ありす達を生き返らせたいって、思ってる。教えて、セイバー。この願いは本当に間違っているの?」

 

 縋っているのは分かっている。けれど、聞く以外に私が出来る事なんてありはしない。セイバーはそんな私に失望もせず、私と目線を合わせる。

 

「マヤ、君の願いは―――――」

 




これにて三回戦終了です。戦闘よりも会話が多い話でしたが、対魔力もちのセイバーが魔術主体のキャスターに苦戦するはずが無いので速攻で終わらせました。まぁ、戦闘よりもその後の真耶の心情が書きたかったので、戦闘を期待していた読者の方々は申し訳ありません。次回は戦闘が多めなので期待してください。では、次回もお楽しみに
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