「バグ探し………ですか?」
翌日、心機一転してアリーナへ向かおうとしたら入口に言峰神父が立っていた。神父は私の言葉に頷く。
「どうやらアリーナの二層目にバグが発生した様でな。君達にその除去を頼みたいのだ」
「それって、私たちじゃなくてそっちでやった方が速いんじゃ……?」
私の言葉に神父は頷く。どうやら何か訳ありの様だ。
「これは一つの試練と考えてくれ。バグ事態の除去はそこまで難しい物ではない。故に私はバグを使ってマスター同士の競争を思い付いたのだ」
うわ、迷惑。表情にも出しながら神父を睨むと、神父は薄く微笑み。
「断っても構わないが、この競争に勝った者には報酬が配られる」
「報酬?」
さて、何だろうか?真名や宝具についてはもう知っているので必要ないのだが。そう考えていると神父は笑みを深くして。
「勝った者には令呪の一画を譲渡する」
「はぁっ!?」
仕事に対して法外過ぎる報酬に思わず悲鳴を上げてしまう。
「無論、競争に勝てばだ。そしてこの内容は既に相手マスターにも告げている。どうするかね?」
「受けるに決まってるでしょ」
令呪は既に一画消費している。増やしてくれるなら増やして貰おう。私の言葉に満足したのか、神父は身体を退かし、アリーナへの道を譲ってくれる。私は無言でアリーナの入り口に手を掛ける。
「アリーナの何処かに私のメル友がいてな。もしかすれば、手を貸してくれるかもしれんぞ?探して見るといい」
神父の言葉を背に受けながら。神父のメル友、という謎な人物について、考えてしまう。
▽
「ふぅ~。これで20XX年の春アニメは総て視聴し終わったな」
長く画面を見つめていた眼を瞑り、軽く伸びをする。
「いやはや、録画が必要なく、更に何時でもアニメが見れるとは……迷い込んだとはいえ『セラフ』万歳。吾輩、もしや幸運EX?」
すると、入口に置いてあった来客用の装置が動き出す。
『お帰りなさい♪』
ふふ、まさか電子音に悶絶させられるとは。吾輩は椅子ごと振り向き。来訪者である少女と騎士風の青年と対面する。
「ようこそ、吾輩のスゥイートルームへ。何も無い所だが、ゆっくりしていきたまえ。あ、コーヒーはインスタントでいい?」
▽
なんだろうコレ?
私は目の前で回転いすに座る『物体』について思考する。見た目は……猫でいいのだろうか?人ではないだろう、間違いない。もし、アレが人なら世界は滅んでいるだろう。かといって、猫でも猫に失礼の様な。しかし、本当になんだろう、コレ?
黒い耳に黒い体毛。眼は細めで頬には髭がある。だが、身体はよれよれの服とズボンで、足は優雅に組んでおり。PCが置かれているテーブルに肘を付いている。
そして極めつけは部屋。アリーナの中をアレンジしたのか、基本はアリーナと同じ透明な薄緑の壁である。その外には電子で出来た魚が泳いでいた。だが、その壁の殆どには大きなポスターが飾られていた。どれ一つとっても可愛い衣装を着た女の子が際どいポーズを取っている物ばかりである。更に奥にある棚には漫画とかラノベとかDVDとか、フュギアとか置いてある。更にベッドにはこれまた女の子の抱き枕。
「令呪によって――――」
「待て、マヤ。早まるな」
咄嗟に呟いた言葉に本気で焦っているセイバーが止める。
「離して、取り敢えずアレは生かしておいちゃいけないってのは確認出来たから」
「いや、それは早計過ぎるぞ。アレが神父のメル友かもしれないじゃないか?」
それもそうか。一応、納得して胸元まで掲げた右手を降ろす。
「ん?神父ってキレイの事?だったら、吾輩がそうだが。にゃるほど、君等がキレイの話していたマスターか」
「チィッ!!!」
「…………何故、そこまで悔しがるんだ?」
私の舌打ちにセイバーが軽く引く。
「ふむ、どうやら汝らはアリーナに現れたバグを片づけてくれるようだな?」
「まぁ、そうだけど。で?手を貸すならさっさと貸しなさい」
「なんか、えらく上から目線なのは何故?」
腰に手を当てて告げた私に謎の物体は椅子から降りる。
「ふむ、まぁ吾輩もあのバグには困っていたからな。除去してくれるなら喜んで手を貸そう。付いてきたまえ」
そういって、物体は部屋からアリーナへ出る。因みにこの部屋は『ザフィエルの瞳』で見付けたので普通なら見える事は無い。
「シュワッチ!!!」
奇声と共に跳び上がる物体は下半身からジェットを噴き出して飛び始めた。帰りたくなってきた。
▽
「で?アレが、バグ?」
アリーナのとある行き止まりに何かが浮かんでいる。
何と言えばいいのだろうか?強いて言うなら黒い染みが宙に浮かんでは消えている。
「そう、アレがバグだ。名前は確か『アイドゥア』ふむ、何か色々とアウトな名前と思うが、どうかね?」
「変な話を振らないで下さい」
まぁ、アレがバグなら消すだけだ。とはいうものの、アレに物理的な攻撃は効くんだろうか?取り敢えず、魔力弾を形成する。瞬間、ただ浮かんでいたバグが真っ直ぐ突っ込んできた。
「マヤ、下がって!!」
セイバーの言葉と共に私とバグの間に割って入り、バグを切り裂く。だが、斬り裂かれたバグは直ぐに元に戻る。
「このっ!!!」
バグに向かって魔力弾を放つも、バグは放たれた魔力弾を吸収し、一回り大きくなる。
「無駄だ。あの『アイドゥア』には物理攻撃はおろか、魔術の類は効かない」
尊大な口調で言われると腹立つな~。
「じゃぁ、どうすれば?」
「アレは物質と融合する性質を持っていてな。その状態なら除去は可能だ」
成る程。私は納得して物体に近づく。同時に念話でセイバーに指示を出す。セイバーは苦笑しながら念話で。
(なんで君はそんなにイキイキしているんだい?)
そんなの、私にも分からない。
「手近なエネミーと融合させればいいだろう。………お嬢さん?吾輩を掴み上げて何をする気かな?」
物体の問いに私は満面の笑みを浮かべて、思いっきり振り被る。
「ふふ、全く冗談はその辺にしておいた方が―――」
「屍は……残ってたら拾ってあげるわ」
言葉と共に物体を投げる。バグは物体が近づくと同時に物体と融合する。
『ムハハハハハハハ!!!!!』
すると、物体の身体が変質する。手の爪は鋭さを増し、目付きは鋭く、怪しく光る。体毛にはバグの染みが浮き出るようになり、声にもエコーが付いた。
「セイバー……」
「済まん皆、こんな相手に使う事を赦してくれ。受けろ!!!約束されし勝利の剣(エクスカリバー)!!!!!」
だが、変化はそれだけだ。そして変化した瞬間放たれたCランク、対人宝具の力によってバグは物体諸共消滅した。
「終わったね」
「あぁ、呆気ない程に……」
目の前には焦げた床と壁が徐々に元に戻っている。物体もバグも消えてなくなっていた。
▽
「おめでとう。この試練を先にクリアした君に報酬を与えよう」
言われ、本当に令呪を受け取った。嬉しいのだが、なんか釈然としない、というか妙に疲れたというか。
「疲れているのは宝具の所為だよ」
苦笑を浮かべたセイバーに頷き、個室に戻る。
「ま、居る訳ないよね」
「当たり前だけどね」
そういえば、序でにトリガーも手に入れちゃったけど、後の日にちはどうしよう。
「まぁ、それは明日考えればいいか~」
そういって、横になる。あぁ、なんか今日はぐっすり寝れそう。
オチは無いよ!!!!
はい、短くてすいません。短編兼四回戦のサバイバルの代わりです。丸々同じことをやっても面白くないので、こんな感じです。相手サーヴァントのヒントも必要ないので、報酬はあんな感じです。ネコアルク・カオスについては………何となくです。
では次回もお楽しみに