Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第22話「無名の侍と騎士の王」

「結局、何も進展しないで決戦になったね」

 

「面目ない。あれから三度も手合わせをしたのに、あの男の剣筋が全く読めないとは」

 

 七日目の決戦日。個室で呟いた私の言葉に何時になく元気のないセイバーが返す。

 

「いや、セイバーも凄いよ。剣筋が分からない相手に一度とはいえ優勢だったんだし」

 

「アレは少々、小細工しただけだ。恐らく、二度目はないよ」

 

 私のフォローもセイバーの言葉に撃墜する。そして二人同時にため息を吐く。

 

「……まぁ、悩んでいてもしょうがない!!取り敢えず当たって砕けろで行きましょう!!!」

 

「時に君のそのポジティブさが羨ましいと思うよ」

 

 言葉と共に立ち上がった私を何か眩しい物を見る様に告げるセイバー。

 

 

 

 

 

 

「おぉ!?中々言い面構えだ」

 

「野原に咲く一輪の花と思っていたが。中々どうして。私の眼も少々曇っていたかな?」

 

 決戦場へ続くエレベーターで対面した対戦相手二人に何故か称賛された。

 

「アサシン。我がマスターを口説くのは止めて頂こう」

 

「安ずるな、セイバー。花は愛でる方が好きでな、手折る無粋はせんよ」

 

 セイバーの言葉も笑みと共に返される。セイバーも何処か微妙な表情をしており、アサシンが人間的に苦手なのだろう。

 

(まぁ、セイバーは生真面目だからしょうがないか)

 

 あんな柳みたいにのらりくらりなタイプはやり辛いだろう。そんな事を考えているとエレベーターが決戦場へ着く。

 

「では、行くとしようか」

 

 そんな言葉と共に彼等が歩き出す。私はセイバーと顔を見合わせ、頷く。

 

 

 

 

 

 

「さて、漸く心おきなく死合えるな、セイバーよ」

 

 向かい合うアサシンは嬉しそうにそう告げる。ソレを見る自分も自然と笑みが浮かぶ。

 

「あぁ、貴公の剣は終ぞ分からなかったが、それもまた良しとしよう。行くぞ、侍よ!!」

 

「いざ……!!」

 

 呟きと共にアサシンが駆ける。

 

「ハァッ!!」

 

 滑る様に駆けるアサシンの脳天目掛け、振り下ろした剣はしかし、横にステップしたアサシンに避けられ、無防備な首に刀が来る。

 

「くっ!?」

 

 その刃を、身体を逸らして避ける。

 

「おっと」

 

 同時に身体を反転、顎を蹴り上げようとしたが、寸前で避けられる。そして反転し、顔を上げた瞬間、銀の閃光が目に写る。

 

「っ!?」

 

 顔を逸らし、突きを避ける。頬に一筋、刀傷が出来るが無視する。

 

「オォッ!!!」

 

「苛烈だな。いやはや私には無い物だ」

 

 楽しそうに一撃一撃を丁寧にいなし、返す刀で首を狙ってくる。だが、来る場所が分かるなら、対処できる。

 

「むっ……!?」

 

 剣から響く僅かな衝撃を身体に染み込ませながら前に出る。首を狙う刀を剣で受け、そのまま前へ。そして相手の剣が使えない場所で斬りつける。確かな手応え。だが、相手は笑みを浮かべる。

 

「驚いたな、いやはや血沸き肉踊るとはこの事か」

 

 楽しそうに笑うアサシンは斜めに斬られた傷から血が滲んでいる。

 

「では、そろそろ取りに行かせて貰おう」

 

 言葉と共にアサシンが構えを取った。今まで構えという構えを持たなかった彼が背を見せ、顔と同じ高さに長刀を上げる独特の構えだ。

 

「行くぞ、セイバー。我が秘剣、受け切れるか?」

 

 その言葉と共にアサシンが前に出る。どんな剣技でも捉え、返す。その意気込みは。

 

「秘剣―――」

 

 目の前の一撃に容易く破られる。

 

「燕返し……!!!」

 

 

 

 

 

 

「ぬぅ……!?」

 

「くぅっ!?」

 

 軋む頭にブレる視界。そして身を裂かれる様な痛みを堪えながら、私は相手の剣を紙一重で避け、弱い部分に攻撃を集中する。

 不得手である接近戦の相手をする為に私は自らの礼装を使う事を決めた。礼装を通して、相手の動きを視て、防御の薄い所を見極め、決戦前にラニから受け取ったナイフで攻撃する。服を裂き、肉を切る感触に怖気が、礼装を使う度に自身に降りかかる反動の痛みに声が漏れる。

 

「くはは、何をしているか分からぬが、どうやら拙者の動きは見切られているようだ」

 

 身体の数カ所を斬られ、血を流しているにも関わらず相手は笑みを浮かべる。そして腰に刺したもう一本の刀を抜く。

 

「さぁて、二刀同時ならどうなる?」

 

「……っ!!」

 

 ギリ、と奥歯を噛みしめる。一本だけでも精一杯なのにもう一本追加とか無茶だ。

 

(けど……)

 

 視界の端ではアサシンの一撃を受けたであろうセイバーが片膝を突いて、荒い息を吐いている。

 

「此処で投げだしたって意味ないよね」

 

 だから、もう少しだけ我慢しよう。そう祈り、礼装を起動する。瞬間、視界に罅が入る感覚に襲われる。

 

(あぁ、これは拙いかも)

 

 自嘲の笑みを浮かべながら私は前に出る。同時に相手も動く。相手の動きはゆっくりと残像を作って私を襲う。残像は彼が行う未来の行動。故にその男の行動を視て、一太刀目を避ける。続く一撃に身を捻って避ける。その際、足がもつれる。

 

(あ、これは詰んだ)

 

 そう感じた瞬間、背後から突風が巻き起こる。その風がどうやって起きたのか気付いた私は知らず笑みを浮かべ。

 

「行け……」

 

 その風に押されるようにナイフを突き出す。ゾブリ、という音が聞こえる様な感触に吐きそうになるが、無視する。

 

「流石に分が悪い……か」

 

「見事……」

 

 相手の声と後ろで聞こえるのはアサシンの呟きに勝ったのだと分かった。赤い壁が目の前に現れたと同時に私は電源を切ったかのように意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 窓から見える海とその上空を飛ぶ海鳥。ソレを横目に二人の男女が向かい合って談笑している。一人は私がよく知る男性、セイバーだ。もう一人は誰だろう?親しげに話す彼女は幼い。

 

(あれ?なんで、私此処にいるんだろう?)

 

 そこまで考え、あぁ、コレはセイバーの記憶なんだ。と理解する。前にもあったな、そういえば。そんな事を考える。つまり、彼女はセイバーのマスターなのだろう。という事はアーチャーが言っていた『アヤカ』という人だろうか。

 

(多分、違う……かな)

 

 何となく、アーチャーの好みに合う様な感じではない。では、『アヤカ』より前のマスター。つまり、セイバーはマスターを鞍替えしたか、私と出会う前に最低でも二度、聖杯戦争を経験した事になる筈だ。

 

「聖杯は血を注ぐ物じゃない。本来は形として観測できない奇跡。人々の願いを貯める為の物だと聞いた。ソレが満ちた時、主の威光が満ち溢れるのだと」

 

 セイバーの言葉に少女が笑う。

 

「それじゃ、まるっきり反対ね。願いが溜まらないと聖杯が起動しないなんて」

 

 少女の言葉にセイバーが小さく頷く。

 

「君の言う通りだ。聖杯は人の想念によって造られる。だが、嘆かわしきかな。多くの人間が望むモノは善意ではなく、欲望という名の悪意だった。聖杯はその発端からして狂っている」

 

 セイバーの悲しげな言葉と共に視界が白く染まる。

 

(え……?)

 

 視界が、世界が変わる。今まで平和的な風景は地獄へと変わっていた。

 地獄、そう表現するしかないその場所では幾人もの少女がフラフラとある一点に向かって歩いていた。暗示を掛けられているのだろう。身体の自由を奪われ、声すら奪われた少女達は虚ろな表情で涙を流しながら崖へ向かい。一人、また一人と崖から落ちて行く。

 

「いやぁ!!!離してぇ!!!!」

 

「~~♪~~~~♪」

 

 悲鳴と上機嫌な鼻唄が聞こえる。視線を向ければ一人の少女が自分より少々幼い少女の髪を掴んで歩いて来ている。

 

「皆は順番を守っているけど綾香は特別。貴女は直ぐに落としてあげるから。だって、ほら」

 

 天使の様な笑顔で彼女は少女、綾香に告げる。

 

「凡人にはそれしか価値が無いでしょう?」

 

 まるで我が侭を言う子供を窘める様な言葉に綾香は狂ったように叫び。身体を振る。その際、彼女の身体が揺らぐも、そのまま掴んだ綾香を利用して独楽の様に廻る。

 

「愛歌!!!」

 

 楽しげな彼女の行動を止めたのは男性の怒声だった。それを聞いた少女、愛歌は驚いた様子もなく、振り返る。

 

「あら、お父様」

 

 どうしたの?と告げながら自身の後ろで立っている少女の背を押す。背を押された少女はそのまま、ゆっくりと崖から下へ落ちる。崖の下は今まで落ちた少女達の血と肉と臓物と泥の様なナニカがスープの様になっており、その中から何か『恐ろしいモノ』が生まれようとしている。

 

(あれは……ナニ?)

 

 私は崖の下を見ようとするが、本能が視る事を拒否している。

 

「お父様、もしかして聖杯が何でも叶える様な、そんなふわふわした物だと本気で思っているの?」

 

「それは事実なのだ。我ら魔術師は根源へ到達する為に聖杯を使うのだ」

 

 愛歌の父親はそう告げる。だが、愛歌はクスクスと笑って。

 

「根源へ到達?そんな事、する必要なんて無いわ。だって」

 

 彼女は嗤う。

 

「私、最初から根源と繋がっているんですもの」

 

 それが、合図だった。父親の足下。崖の大部分と傍にいる少女達を巻き込んで肉塊が競り上がり、父親と押し潰す。

 

「ふふ、あはははは」

 

 その光景を楽しそうに見る愛歌とその光景を見て遂に限界を迎え、気絶する綾香。笑い続ける愛歌を止めたのは今まで静観していたセイバーだった。

 

「あれ?セイバー、なんで私を貫いているの?」

 

 愛歌の胸部。そこから黄金の剣が伸びていた。

 

「僕の願いも君自身も間違っていた。そう、それだけなんだ」

 

「あぁ、セイバー。痛い!!痛いわ!!!それに暗いの!!!どこ!!セイバー!!!一人にしないで……」

 

 悲しげな言葉にセイバーは聖剣を引き抜く事で答える。愛歌はその場に倒れ、最後にセイバーの名を呟くと息を引き取った。

 

「さよなら、愛歌」

 

 死体の愛歌を崖下に放り投げたセイバーは気を失った綾香を抱えてその場を後にする。そしてまた、視界が白く染まる。

 

(此処は……?)

 

 そこは庭園の様な場所だ。月光が降り注ぐ中、そこにセイバーとメガネを掛けた少女、綾香がいた。

 

「僕はセイバー」

 

 彼は告げる。私と初めて出会った時と同じように相手を安心させる笑みを浮かべて。

 

「君を守る……サーヴァントだ」

 

 

 

 

 

 

「ん……?あれ……?」

 

 ゆっくりと目を開ける。視界に移る白い天井に薬品の臭い。恐らく此処は保健室なのだろう。

 

(そっか、礼装の使い過ぎで倒れたんだ)

 

 世界を観測する事が出来る礼装は人が使うには不便すぎる代物。今回は仕方なかったとはいえ、これ以上使えば危険な事は分かる。

 

「セイバー……?」

 

「あぁ、此処にいるよ」

 

 私の呼びかけに実体化したセイバーは優しく頭を撫でてくれる。

 

「勝ったの……?」

 

「あぁ、君はその時、倒れてたけどね。あれは驚いた」

 

 はは、と小さく笑うセイバーに少しだけ恥ずかしくなる。

 

「ねぇ、セイバー。セイバーは私と会う前に聖杯戦争を何度経験したの?」

 

 私の質問に小さく驚いたセイバーは真面目な顔を浮かべる。

 

「二度だね。どちらとも、同じ都市で行われた戦争だ」

 

「じゃあ、その時のマスターが愛歌さんと綾香さん?」

 

 その言葉にセイバーは驚くも頷く。

 

「そうか、君は僕の記憶を」

 

「うん、見ちゃった。あの儀式も」

 

 そういうと、セイバーが悲しそうに顔を俯かせる。

 

「セイバー、アレはセイバーの所為じゃないよ?」

 

「いや、愛歌を止められなかった時点で僕の所為さ」

 

 そういって、自嘲するように笑みを浮かべるセイバー。

 

「そうよ、セイバーは何にも悪くないわ」

 

 突然の声に私とセイバーが固まる。視線を向ければそこにいたのは。

 

「ふふ、久しぶりねセイバー。そして」

 

 スッと目を細めて私を見る少女、愛歌。瞬間、悪寒が背中を駆ける。

 

「初めまして『今の』セイバーのマスターさん」

 




随分待たせたうえに短い内容で申し訳ありません。そしてアサシン戦を期待していた人もすいません。今回は五回戦の終了とラスボスとの対面です。次回は六回戦前にラスボスとの話し合いです。では、次回もお楽しみに
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