Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第23話「災厄の少女」

「ふふ、セイバー♪」

 

 上機嫌にセイバーへダイブする少女、愛歌。だが、その身体はセイバーの身体を擦り抜ける。

 

「む~……」

 

 自身の行動によって生じた結果に彼女は頬を膨らまし、腕を組んで不機嫌を露わにする。一見、彼女のその仕草は可愛らしい物だ。

 

「愛歌……どうして此処に?」

 

「ふふ、知りたいのね?いいわ、教えてあげる」

 

 そういって、誇らしげに胸を張る愛歌。その際、薄緑のワンピースが揺れ、彼女の胸部にある大きな紋様が見える。アレは恐らく、令呪だろう。

 

「月の聖杯戦争が過去に起きた聖杯戦争を幾つか模倣しているのは知っているでしょう?」

 

「あぁ、この学園にいるNPCは殆どがそういう存在らしいが」

 

「私も元はその内の一人なの。学園の中で『異常』という役割を与えられてね」

 

 でも、と彼女は告げる。

 

「始まりは些細な事、いえもしかしたら凄く大きなことかもしれない。けれど、私は何時の間にか自我を持っていたの。後は簡単よ。模倣された私は生前の総てを模倣されていた。当然、今の私は『根源』と繋がっているわ」

 

 そういって、彼女は楽しそうに笑う。

 

「それに気付いたムーンセルは直ぐに私を削除しようとしたわ。けれど、その時既に私はとある役割をムーンセルから奪ったの」

 

「役割……?」

 

 セイバーの疑問に愛歌は両手を顔の前で合わせ、満面の笑みを浮かべる。

 

「それは『スペア』私はムーンセルに何か異常があった際にムーンセルの代わりをする事を義務付けられたの」

 

「君がムーンセルの『スペア』だって……?」

 

 驚くセイバーに彼女はうっとりと表情を変える。

 

「あぁ、セイバー。そんな貴方も素敵よ。でも、まだ話は終わってないの。『スペア』といえど、自由意思は殆ど無い。普通ならね」

 

「成る程、君は既に自我を持っている。その為『スペア』という役割を利用できるという事か」

 

「その通り。とはいえ、私が自我を持ってから数百の戦争を視たけど一度も出番は無かったわ。セイバーが召喚されるまでは」

 

 そういって、愛歌は私を見る。

 

「貴女には感謝しているわ。セイバーを召喚してくれて有難う。後はセイバーを優勝させれば貴女はもう用済み」

 

 そういって、彼女はニッコリと笑う。

 

「セイバーをムーンセルまで案内すれば聖杯はあげる。代わりにセイバーのマスター権を頂くけどね」

 

 そういって、彼女は私の右手。そこに刻まれた令呪を愛おしそうに眺める。

 

「それまでは……癪だけど貴女を生かさなくちゃ。残念だけど、今の私はこの聖杯戦争に関われない。ルールで決められているから」

 

 そういって、悩ましげにため息を吐く。

 

「では、君は何故此処に?」

 

「うん、それはね。この学園にいるNPCを数体使ったわ」

 

 そういって、誇らしげに笑みを浮かべる愛歌。まるで、大好きな人に褒めて貰いたいかの様な笑みだ。

 

「ムーンセルから得た情報でやり方は知っていたんだけど。実際にやるの大変ね。少し手間取ってNPCを数体駄目にしたわ。しかも成功しても私の映像を送れるだけ。これじゃ、少し物足りない。けれど、セイバーに会えたから良しとしましょうか」

 

 そういって、一つ頷く。すると、彼女は何かに気付くと眼を瞑り、数度頷く。

 

「安心してセイバー。今ムーンセルから入った情報によれば貴方の勝率は―――」

 

「愛歌、君に聞きたい事がある」

 

 そういって、セイバーは愛歌と視線を合わせる。言葉を遮られた事より、突然自身と目を合わせる様にしゃがみ、そして真っ直ぐなセイバーに見つめられ愛歌の顔が赤くなる。

 

(あぁ、うん。分かるな~)

 

 自分でもアレは駄目だろう。尤も、私の場合は彼女以上に慌てるだろうが。

 

「君の目的は何だい?」

 

「私の目的?それは貴方と一緒にいる事よ。ただ」

 

 そう区切り、彼女は冷たい笑みを浮かべる。

 

「ソレを邪魔しようとするモノもこれから邪魔しようとする人間もぜ~んぶ、消すけどね」

 

「消す……?このムーンセル内に存在するNPCやAIならまだしも、地上の人間をどうやって」

 

「あら?覚えてないセイバー。ムーンセルに収められた聖杯は地球の過去、現在、未来。そしてifの事象すらも観測できるのよ?そして私はムーンセルと同等の権利を与えられ、更に『根源』と繋がっている。私が地上に降りなくても、可愛い『あの子』がお掃除してくれるわ」

 

 その言葉にセイバーが驚愕の表情を浮かべる。

 

「まさか、君はアレを呼び出したのか?」

 

「えぇ、その通り、私達の聖杯戦争で私が呼び出した番外のモノ。欲望という人間の悪意が貯められた大聖杯から受肉したサーヴァントより高位の存在。666の数字を持つ黙示録の獣をね」

 

 黙示録の獣。それを聞いた瞬間、吐き気に襲われる。が、ギリギリで堪える。名前を聞いただけでコレなんて。実物が地上に降りたら。

 

「しかもね、セイバー。今回はあんな小さな都市で生まれた子じゃないの。ムーンセルの膨大な記憶を利用して造られた子よ。その中に溜まっている悪意は有史以来から世界が滅ぶifの未来まで貯め込んでいるわ」

 

「そんなモノを放てばあの星は死に絶えるぞ……!?」

 

「構わないわ」

 

 彼女は事もなげに告げる。だって、と彼女は満面の笑みを浮かべて。

 

「私はセイバーだけいればいいんですもの。セイバー以外の生物なんて皆死んじゃえばいいのよ」

 

 そう告げた彼女はふと、自身の右手を見る。右手は徐々にその形を保てなくなり、0と1の数字となって消えて行く。

 

「あら、残念。どうやら貴方と会えるのは此処までね」

 

 そう残念そうに告げる彼女は次いで笑みを浮かべる。

 

「頑張ってねセイバー。私、貴方が来るのを待ってるから」

 

 そう告げた彼女は光の粒子となって消える。

 

「ぶはぁ~」

 

 消えたと確認した瞬間、大きく息を吐き、ベッドに倒れ込む。

 

「セイバー、アレが最初のマスター?」

 

「そうだね」

 

 そう答えたセイバーに私は思った事を告げる。

 

「マスターはもう少し選んだ方が良いと思う」

 

「今それを言うのかい!?」

 

 

 

 

 

 

「NPCが自我を持ち、『根源』へと接続しており、更にムーンセルの『スペア』としての役割を持っている……かぁ~」

 

 保健室の話を青子さんに告げると青子さんは疲れた様に教会の長椅子に倒れ込む。

 

「なにそれ、チートもいい所ね。というか、勝算あるの?」

 

「えぇと、初手でセイバーの宝具を最大出力なら」

 

「無駄だろうな」

 

 そう答えたのは橙子さんだ。

 

「相手はムーンセルと同等の存在だ。その愛歌という奴だけならまだ勝率はあっただろう」

 

 だが、と橙子さんはとあるデータが記載された表示枠を投げて来た。それを受け取り、見る。

 

「お前の話を聞いて予測した『ビースト』をステータスだ」

 

「え?冗談……ですよね?」

 

 私の言葉に橙子さんは肩を竦めるだけ。私はもう一度データを見る。ステータスの総てが振りきれている。最早、冗談とも取れるその数値。

 

「有史以来の人間が持つ悪意。それら総てを統括した場合のデータだ。それでも少なく見積もっているから実際はそれ以上だろう。ソレに対抗出来るものがあるなら、そうだな……かつて『世界を斬った』剣が一番の有力候補だろう」

 

 そんな物、手に入れようがない。

 

「まぁ、本人が無理して戦う必要は無いと言っているんだ。戦わず聖杯だけ貰えばいいだろう」

 

「そんな事できません!!だって、アレを放っておいたら地上に下りてくるんですよ!!そうなったら橙子さんや青子さんまで――」

 

 私の言葉は頭を撫でられる事で遮られる。

 

「全く、この子は本当にお人好しだね~」

 

「青子さん……?」

 

 青子さんは優しげな笑みで私を撫で、次いで抱き付く。

 

「ふえ!?ちょ、青子さん!?」

 

「ほう?お前、何時の間にソッチ側になった?」

 

「ん~?別に可愛いからつい抱きしめただけで私はノーマルよ。ま、お互い釣り合う男がいないんだし、女に奔るのも悪くないかもね~」

 

「お前と一緒にするな」

 

「どっちもどっちだと……痛い!?謝るから捻るのは許して~!!!」

 

 たっぷり苛められた後、解放された私は痛み身体を擦る。

 

「まぁ、とにかく。答えはシンプルだ。お前が聖杯を手に入れ、願うだけでいい」

 

「願うって。だからそうすると痛い!?」

 

「話は最後まで聞け」

 

 パチンコ玉サイズの魔力弾が額に直撃する。

 

「お前が何を願うのかは知らんが、そこに付け足せ。『愛歌とビーストが存在しない世界』とな」

 

 それもそうだ。聖杯が万能であらゆる未来から自分自身の思う通りの結末を望めるなら当然、その願いも叶う。

 

「お前がやる事は何も変わらん、唯最後の最後で一つだけする事が増えた。それだけだ」

 

「そう、ですね」

 

 そう言われると何だかさっきまで悩んでいた自分が馬鹿らしくなってきた。

 

「それで、セイバー。あの愛歌って子はどんな性格なの?」

 

「え!?愛歌かい?う~ん、そうだな。純粋……かな。少々、度が過ぎるけど」

 

 アレを純粋で済ませられるセイバーが凄い。

 

「今、ネットで該当する少女像が見付かりました。なんでも、ああいうタイプの女性は『ヤンデレ』という人物像らしいです」

 

「やんでれ?」

 

 聞き慣れない単語だ。『ツンデレ』や『クーデレ』ならまだ私も知っているがソレは知らない。

 

「なんでも、異性を想い、行き過ぎた行動をするそうです。該当するのは異性にすり寄って来る同性を軒並み殺害する事や。その異性を拉致、監禁して二人だけの世界に入り込む様です」

 

「あぁ、なんか納得」

 

「マヤ?何故、僕を見てそう言うんだい?」

 

 それは自分の胸に聞こうか。

 

「まぁ、セイバーも大変だねっと。改竄終了。お疲れ様」

 

「どうセイバー?」

 

「あぁ、どうやら本来の力が出せるようになってきた」

 

 そういって、セイバーが右手をかざす。瞬間、右手から光が溢れ、ソレは形を取り始める。

 

 

 

 

 

 

「んで、こりゃなんだ、マスター?」

 

 ランサーは目の前に鎮座するモノの説明を自身のマスターである少女、凛に求める。

 

「見れば分かるでしょ?」

 

「あぁ、マスターの美的センスが皆無なのは理解できるな」

 

 告げると共に黒い弾丸が飛んでくるも顔をずらして避ける。

 

「図星だってんなら、無理にアリーナに放るなよ。アッチの嬢ちゃんに憐れんで欲しいのか?」

 

「コレ作った理由分かってるじゃない!!!!」

 

 顔を真っ赤にして怒鳴る自身のマスターを見て、ランサーは内心、笑みを浮かべる。

 

(前の奴と違ってからかい甲斐のある奴だな)

 

 とはいえ、どちらかが上かと尋ねられれば彼は答えないだろう。彼はあまり他人を比べる事はしないのだから。

 

「単にコッチの情報を与えたくないだけよ」

 

「無駄だと思うがね」

 

 ランサーの言葉になんでよ、という風に睨みつける凛。その抗議にランサーは小さくため息を吐いて。

 

「いいか?俺とあのセイバー、アーチャーは前に同じ聖杯戦争で闘っている。当然、互いの手札はバレてるし、真名も割れてる。こういうのは時間の無駄だ。ハナから全力で掛かった方がいいだろ?」

 

 ランサーの言葉に凛が暫し、茫然とする。

 

「そういうのは早く言いなさいよ!!!!!」

 

「だから!!!言おうとしたらテメェが必要ねえっつったんだろうが!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「ふむ、我の相手は聖剣使いではなかった」

 

「残念ですか?」

 

 レオの個室で豪奢な玉座に座ったアーチャーはグラスを掲げながら。

 

「半分はな。が、それも良い。聖剣使いとの決着はやはり華々しい物でなければならん」

 

「随分と拘りますね」

 

 対する少年、レオは同じような玉座に座り、頬杖を突きながら問いかける。

 

「ふ、確かに戦いに於いて勝利は何を置いても手にする物だ。だがな、レオ。時に好敵手という存在は黄金よりも価値がある物だ。考えてもみよ。この世に並ぶもののない存在に対して、同等の力を持ち、そして魂の奥底から打倒しなければならん相手なぞ、そうそうおらん」

 

「確かに。そう言う意味ではギルガメッシュの好敵手はセイバーでしょうね。しかし、残念です。僕の好敵手は遠坂凛なので、僕の願いは叶えられそうにありません」

 

「それはどうだろうな」

 

 レオの残念そうな言葉にアーチャーはフ、と笑みを浮かべる。

 

「よいか、レオ。有史以来、凡百の王を打倒したのはなんだ?」

 

「奴隷や立場の弱い、そう『弱者』と呼ばれる存在です」

 

「その通りだ」

 

 レオの回答にアーチャーは我が意を得たり、とでも言いたげに頷く。そしてアーチャーはその真紅の瞳でレオを見る。

 

「良いか、レオ。万物の王たる我に天敵はいない。が、凡百の王であるお前の天敵は弱者だ。何時の世も愚かな王どもは己の慢心を弱者に掬われる。もし、貴様に真の意味で天敵がいるとしたら。それは聖剣使いのマスターよ」

 

「彼女……ですか?しかし、彼女は僕の言葉に揺らぐほど意思が弱いですよ?」

 

「戯け、それはあの小娘が決断しなかったからよ」

 

 レオの言葉を一笑に付し、彼は続ける。

 

「もし、あの小娘が戦う事を恐れず、屍の先にある物を真に求めるならそれはお前以上の強さを身につけるだろう」

 

「僕以上……ですか」

 

 アーチャーの言葉にレオは暫し黙考する。

 

「まぁ、そうなるかは我にも分からんがな」

 

「随分と無責任ですね」

 

「当たり前だ。何故我がたかが民草一人の保障をせねばならん」

 

「気に入っているのでは?」

 

「無論だ。あの野に咲く一輪の花の如き娘。我自ら手折り、我色に染めたいと思うだろう?いやはや、どんな顔をして啼くか想像するだけでも、愉しいではないか」

 

 笑い始めるアーチャーにレオは心の隅で真耶に同情するのだった。

 




今回は幕間です。次回から六回戦が始まります。そして自分なりに考えた愛花の存在理由。でも、実際考えると愛花はいるだけで削除食らいそうな存在だから難しかったかな?とはいえ、自分なりにラスボスを考えたけど……ムリゲーですね。どうやってクリアしろと(汗)まぁ、取り敢えず次回もご期待ください
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