決戦の地は電子の海。その中にある荘厳なる闘技場。
向かい合うは二組の影。
金の髪と赤い服の少年。黄金の鎧を纏った世界最古の王。
青の長髪、黒のドレスを纏った少女。白銀の鎧に紅のマント。背には見事な大剣を背負った剣士。
「ふぅむ。我(オレ)の初陣としては及第点といった所か。まぁ、所詮竜一匹倒した程度の剣士などどうでも良いが」
黄金の王は何処までも不遜に告げる。対して、マスターである少女は自らの英霊の真名が気付かれた事に驚く。告げられた剣士は不動。
「ふん、喋れぬか」
「しかし、彼の高潔さは目を見れば分かります。初陣でこのような相手に出会えたのは幸運でした」
と、王のマスターは上機嫌に告げる。黄金の王は彼を一瞥すると前に出る。
「本来ならレオ。貴様は王の器ではない」
黄金の王はマスターに背を向けたまま告げる。彼はその言葉に疑問を投げる。
「僕は王とはどうあるべきか、というのを熟知していますが?」
「戯け。知識として知っていようとも。貴様には思想が、理念が、なにより己が無い。そんな者は王ではない。唯の『王という名の偶像』だ。故に我が見せてやろう」
言うや否や、彼の身体に彫られた刺青が光る。これこそ、彼が持つ宝具の一つ。かつて世界を支配した際、世界のあらゆる宝が収められた宝物庫を開ける鍵『王律鍵バヴ=イル』彼の後ろの空間に金色の波紋が広がり、多種多様な武器が現れる。
「この我が教えてやろう。そして学ぶがいい。王とはこういう物だ」
それは聖剣、魔剣、宝槍、呪槍。世界のあらゆる歴史、神話、伝説に語られる武器ばかりだった。相手のマスターは驚き、圧倒されている。だが、サーヴァントの剣士は無言で背の大剣『バルムンク』を構える。この武器を見て、尚戦意を衰えない剣士に王は満足げに笑う。
「その意気やよし。盛大に足掻くがいい。竜殺しの剣士よ」
言葉と共に聖剣が二本、射出される。王であるギルガメッシュのクラスは『アーチャー』彼が参加した前回の戦争と同じクラスである。
「………」
剣士は無言で、二本の剣を弾く。自らの背と同等の巨大な大剣を軽々と扱う姿に常人なら恐怖を覚えるだろう。だが、此処にいる者達にソレは当て嵌まらない。
続く、斧と鎚を横に跳んで避ける。だが、突然死角から飛んできた剣の一撃が足を斬り裂く。
「………ッ!!!!」
「そら、座っている場合ではないぞ?」
言葉と共に赤の槍が射出される。
「………!!!」
回避は不可能と判断したのか、自らの大剣で赤の槍を叩き落とす。
「………!?」
だが、大剣がぶつかる瞬間、あり得ない軌道で槍が彼の心臓を貫く。
「そういえば、貴様は不死だったな。心臓を貫いた程度では死なぬか」
感心したように王は告げる。剣士は槍を抜き、立ち上がる。
「まぁ、いい。さて、次だ。今度は我も行くぞ?」
言葉と共に王の背には八つの宝剣、宝槍。そして手には一振りの剣。
「………!!」
対する剣士は真っ直ぐ、王に向かう。不死による防御を捨てた特攻である。
「中々潔いな。嫌いではないぞ?」
真上から降ってくる大剣に持っていた剣で受ける。本来なら折れる筈の剣は刃毀れ一つない。
「……ッ!?」
砕けない剣を見た剣士の表情が驚きに変わる。彼の剣と打ち合っているのは禍々しい造形の剣。自身の剣と同じ竜殺しの異名を持つ『最強の魔剣』
「ジッとしていていいのか?」
言葉と共に八つの武器が剣士を貫く。だが、剣士はそのまま王を両断せんと力を込める。
「ふむ、力比べも悪くない」
言葉と共に大剣を押し退け、真正面から鍔迫り合う。
「クク、どうした?その程度か?」
身長、体重、得物の重量で勝っている筈の剣士が徐々に押される。それは剣士の身体を貫いている武器もあるが、王が半神半人なのが理由だろう。そして大剣を横に弾かれた剣士の右目に短剣が突き刺さる。
「油断大敵、というものだな」
言葉と共に剣士の真上から数十を超える剣、槍、斧が降り注ぎ、剣士の身体を地面に縫い付ける。それでも、死ねない剣士は尚も戦おうと身体を前に動かす。
「見事……といいたい所だが。往生際が悪いぞ?」
その一言と共に金色の短槍が剣士の背中。菩提樹の葉によって竜血を遮られた生身の肉体へと突き刺さる。
「見たか、レオ。王とは先ず、絶対的な力を以って敵対者を殲滅する。そしてその様を臣民に見せ付ける。まぁ、貴様の理想とする王は戦を良しとしないか」
そう告げ、王は剣士に背を向ける。同時に剣士と王との間に赤く透明な壁が現れる。勝敗が決したのだ。
「お見事ですね。ギルガメッシュ」
「ふん、このような遊びを褒められても誰も喜ばんぞ」
レオの賛辞をそう言い捨てる王。
「しかし、学ばせて貰いました。貴方の言う王とはああいう物なのですね」
「ほう、中々覚えが早いな。だが、まだまだ覚える事は沢山あるぞ?」
「望む所です」
対戦相手の事など、もはや眼中になく、二人は笑みを浮かべて語り合う。
二人の間に主従など無い。召喚された時、王は少年の空虚な心に落胆し、少年が掲げる王に憤りを覚えた。故に最初は少年を殺そうとした。貴様の王など所詮、理想なのだと。だが、少年は王に対してこう問うた。
「では、王の中の王である貴方が教えてください。王とはどういうものか」
生前、王は教える、といった事を全くしなかった。そも、王にとって他人とはただの率いる物だ。故に王は興味が湧いた。教える、といった行為を。故に王は少年を殺さない。王とはどうあるべきか、それを教え切るまで、もしくは教育に飽きるまで。
▽
「む~………」
「ふむ………」
今日の夕飯を何にしようか考えながら、食堂に入ると奇妙な光景を目にした。
「やっぱり、カレーがいいと思うんだけど」
「此処はやはり、麻婆豆腐だろう?」
「なにしてるの?」
ため息を吐きながら、目の前でNPCである言峰神父と口論(?)している秘羽真耶に声を掛ける。
「あぁ、遠坂さん。いや、夕飯どうしようかなって思って。食堂来たんだけど、なんか、カレーと麻婆豆腐しかないみたいで」
「へ?」
見ると、食券の欄には見事にカレーと麻婆豆腐以外のメニューが売り切れになっていた。
「それで、どっちにしようか悩んでいたんだけど、そしたら神父が麻婆にしろと」
「それじゃ、麻婆にしたら?私はカレーにするけど」
そう告げて私はカレーを買う。
「確かに食べたいんですけど、カレーも捨て難くて、両方だと量が多過ぎるんですよね」
そう悩みながら告げる彼女にイラッと来てしまった。丁度、空腹だったのも手伝ったのだろう。
「だったら、両方合わせて食べなさいよ!!!!」
そういって、私は彼女を置いて歩き去る。この言葉がまさか、あんな事になるとは。
▽
「成る程、麻婆とカレーを合わせるとは。流石は凄腕ハッカー。言う事が違うな」
「ですね。これはやってみる価値はあります。いざ『マーボーカレー』の作成です!!!!」
『マーボーカレー………どんな料理なんだ』
まぁ、やることは食堂のNPCに頼むだけなんですけどね。そして待つ事、五分。出来上がった『マーボーカレー』を以ってテーブルに向かい合う私と言峰神父。
「では………」
「うむ……」
「「いただきます」」
そう静かに告げ、私達は同時にスプーンでカレーを掬い、口に入れる。
「む!?」
「こ、これは?!」
意外と美味しい。少し辛みが薄いけど、これは甘辛なのだろう。
「これなら言峰神父の好きな『超激辛』も出来そうですね」
「ふふ、まさか麻婆の新しい可能性を見付けられるとは。遠坂には感謝しなくてはな」
言峰神父はそういうと、一心不乱に『マーボーカレー』を食べる。私も続く様に食べ始める。
『マヤ。それは美味しいのか?』
「ん?食べる?」
いきなりセイバーが聞いてきた。どうやらセイバーも興味があるようだ。
後日『マーボーカレー』が学食に追加され、一部のマスターから大好評を受けた時の言峰神父の笑顔はとても嬉しそうだった。
今回は短めです。後、評価で0を貰いました。出来れば、評価だけじゃなく、感想に何処が悪かったのか教えてほしかったです。評価だけじゃ、直せるものも直せませんし。では、次回もお楽しみに