Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第7話「青い魔術師と青い騎士」

目的のない旅

 

海図を忘れた航海

 

誰しも始めは未熟な航海者にすぎない

 

骨子のない思想では聖杯には届かない

 

2回戦開幕

残り64人

 

 

 慎二との戦いから一日が経った。私は校舎を歩きながら少なくなったマスターを見る。ある者は勝利の笑み。ある者は生き残った事の安堵。ある者は次の試合の為の準備。そしてある者はこの戦争をゲームだと勘違いし、一回戦で現実を見せつけられ敗北を恐れる表情。

 

『迷っているかい?』

 

「迷ってる。でも、それは相手を殺す事じゃなくて。こんな私が生き残ってもいいのかな、っていう事」

 

 私の呟きにセイバーは。

 

『なら、願いを決めてみたらどうだい?』

 

「願い?」

 

 思わず、聞き返す。

 

『うん、この戦争は勝ち残った者が願いを叶えられる仕組みだ。けど、君は生き残るという事に精一杯で。願いを決めてない。この際、生き残る目安として聖杯に願う望みを考えてみるのはどうかな?』

 

 確かに。何でも願いが叶うのならそれを目標にすれば迷いも少しは無くなるだろう。そう考えていると端末が鳴る。

 

『2階掲示板にて、次の対戦者を発表する』

 

 どうやら2回戦の幕が上がる。私はゆっくりと掲示板へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「あら……」

 

 掲示板の前には既に一人のマスターが立っていた。淡く透き通った金の長髪に動きやすさを重視した紫のドレスを纏った少女だ。そして全身から醸し出されるオーラというか、威圧感に気圧される。

 

「貴女も対戦者を知りに来たのかしら?」

 

「あ、はい」

 

 そう答えて彼女の隣に立ち、掲示板を見る。掲示板にはまだ何も書かれていなかったが、ゆっくりと文字が浮かび上がる。一つは自分の名前。

 

マスター:シルヴィア・バルトメロイ

決戦場 :二の月想海

 

「シルヴィア・バルトメロイ……?」

 

「あら、では貴女がマヤ・ヒウさんかしら?」

 

 私の呟きに隣の少女が聞いてくる。驚きながらも頷く私に彼女は薄く微笑むと、スカートの裾を軽く持ち上げてお辞儀する。

 

「初めまして。シルヴィア・バルトメロイですわ。といっても、当主ではありませんが」

 

「あ、秘羽真耶です。初めまして」

 

 慌てて自己紹介してお辞儀する。その対応に彼女はクスリと笑って。

 

「あまり、緊張なさらなくて結構よ。貴女も一回戦を勝ち抜いたマスター。そういう点では私(わたくし)と対等ですから」

 

 対等、という言葉に思わず驚いた。そんな反応に気付いたのか、シルヴィアは笑って。

 

「今この場では私と貴女はサーヴァントを従え、聖杯を手に入れる為に戦うマスター。確かに魔術師として個々の実力は違うでしょう。それでも聖杯を望んで戦う者として私と貴女は対等です」

 

 確かに彼女の言葉は納得出来る。けど、それを踏まえた上で私を対等と見るのが驚いた。悲しいけど、人は優劣を付けたがる生き物だ。

 

「えっと、ありがとうございます」

 

 つい、お礼を言ってしまう。シルヴィアはクスリと笑って。

 

「素直な方ですね。出来れば、貴女とはこういう形で会うのは惜しいと思ってしまいます。ふふ、ではまたいずれ」

 

 そういうと、歩き去る。私は茫然とシルヴィアの後姿を見るしかなかった。

 

「ふ~ん、変わり者のバルトメロイって言われるだけあるわね」

 

 突然、後ろから声を掛けられる。見ると、凛が立っていた。

 

「ご愁傷さま。一回戦はラッキーだったけど、今回は相手が悪過ぎね」

 

「そんなに凄い魔術師なんだ」

 

 私の言葉に彼女は呆れる。

 

「あのね~、バルトメロイって言ったら現代の魔術師でトップの名家よ?確かに彼女、シルヴィア・バルトメロイはその人柄がバルトメロイの人間とは違うけど。実力は本物よ」

 

「人柄って?確かに私を見下したりしなかったけど」

 

「そこは魔術師としての実力を聞く所でしょ!?」

 

 何というか、質問の仕方を間違えたようだ。だが、凛は、まぁいいわ、と前置きして。

 

「いい?バルトメロイの人間は常に自分以外の魔術師を下に見るの。それは『ロード』と呼ばれる同じ名家達も例外じゃないわ。けど、彼女は何故か、他人を見下さない。まぁ、腹の中は分からないけど。そういう意味で彼女は『変わり者のバルトメロイ』と呼ばれているのよ」

 

「へぇ~、でもなんで私にそんな事教えるの?」

 

「あら、だって教えた所で私には損なんて無いもの」

 

 そういうと、彼女は去って行った。そんな彼女の背中を見送っていると端末が鳴る。見ると、トリガーが生成されたようだ。

 

「取り敢えず、トリガーを取りに行こう」

 

 気持ちを切り替え、アリーナに。

 

「ごきげんよう」

 

 向かおうとして、声を掛けられた。見ると、メガネを掛け、露出の激しい服を纏った褐色の少女が立っていた。

 

「あ、初めまして」

 

 思わず、返事をしてしまう。すると、彼女はニコリと笑う。けど、その笑みが何処か作り物めいて見え、少し怖かった。

 

「こうして、人間らしく対話するのは初めてですね。私はラニ。貴女と同様、聖杯を手に入れる使命を負った者」

 

 そういうと、ラニは私を真っ直ぐ見る。やっぱり怖い。私を見ている様でその実、彼女の瞳には何も映ってない。

 

「やはり、貴女は他のマスターとは違う。貴女の星は靄に隠れた存在。どうか答えて欲しい。貴女は何者でしょうか?」

 

 いきなりの質問。けど、それは私も知りたい。未だ記憶は蘇らず、自分が何者なのか分からない。けど、何故か私の答えは決まっていた。

 

「私は私だよ。他の誰でも無い。秘羽真耶。それが私の名であり、私である証明だから」

 

 私の言葉に彼女はキョトン、とした表情を作る。それはさっきまでの作り物めいた表情ではなく。ちゃんとした人間らしい表情で、少しだけ安心した。

 

「そうですか。私は貴女を自らが曖昧な人間だと思っていましたが、どうも違うようですね」

 

 当たってる。しかし、彼女はそういうと、笑みを浮かべる。

 

「貴女に興味が湧きました。師は言いました。人を学べと。しかし、この場所はそれを行うにはかなり不適切だと判断できます。けれど、貴女は他の方たちより違うのでしょう」

 

「えっと………?」

 

 なんか、話が色々と進み過ぎている様な。けど、彼女の師は人との触れ合いを彼女に望んだのだろうか。だとするなら。

 

「私と友達になる………?」

 

 私の言葉にラニはハッとした表情を作る。

 

「トモダチ………それは人と触れ合う。第一歩と聞きました。しかし、どうしましょうか。私はトモダチとはどういうモノか分からないのです」

 

 そういって、頬に指を当てながら思案する彼女が少し面白かった。

 

「そう難しい事を考えなくていいよ。友達は喧嘩したり、遊んだり、助けあったり。同じ時を一緒に過ごす仲間みたいなモノだよ」

 

「仲間………ですか」

 

 私の言葉にラニが呟く。そして彼女は笑みを浮かべて。

 

「成る程、人を学ぶにはとても良いでしょうね。ではマヤ。私とトモダチになってくれますか?」

 

「私でよければ」

 

 彼女の言葉に私はラニの手を取って答える。

 

「しかし、困りました。いきなりトモダチになったので、何をしたらいいのか分かりません」

 

 本当に困った様に告げるラニ。

 

「じゃぁ、手始めに明日のお昼一緒に食べない?」

 

「昼食を共にする、という意味ですか?」

 

 頷く。ラニは少し考えた後。

 

「分かりました。では明日の昼食を楽しみにしています」

 

 そういって、彼女は去って行く。

 

 

 

 

 

 

 アリーナは一回戦とは違い、壁や床は緑で形成されていた。森でもイメージしているんだろうか?

 

「マヤ。どうやら相手のマスターは既にアリーナに入っているようだ」

 

 実体化したセイバーが教えてくれる。だが、彼は少し怪訝な表情を作る。

 

「マスターの気配は動いていない。どうやら僕達を待ち構えているようだ」

 

「そっか。でも此処で居座っても仕方ないし。行こう」

 

 そういって、歩き出す私。

 

「全く、逞しいな君は」

 

 そう、苦笑しながらセイバーも付いてくる。そうして邪魔になるエネミーを倒しながら進むとやや広い場所に出た。

 

「御機嫌よう。それが貴女のサーヴァントですか」

 

 優雅にお辞儀するシルヴィア。そして彼女の横では一人の少女が立っていた。金髪碧眼、そして青のドレスの上に白銀の鎧を着た少女だった。その佇まい、雰囲気は見事な物で。性別以外、セイバーに何処か似ていた。セイバーも驚いた様に少女を見ている。

 

「あぁ、紹介しますわ。私のサーヴァント。真名を紹介できないのが残念ですが。これもルールですので」

 

 彼女の言葉と共に二人の騎士が構える。だが、両方ともその手に得物は無い。

 

「「………」」

 

 両者ともに無言。そんな二人を見ていた私の耳に火花が散る様な音が聞こえた。

 

「っ!?」

 

 急な悪寒が背中を駆け、本能的に横に跳んだ私の上を青い雷が奔る。

 

「フフ、中々勘が好いみたいですわね」

 

 見ると、彼女は右手を突き出していた。何の魔術か知らないけど、こっちはこっちで集中しないと駄目みたいだ。

 

「あら、中々面白い魔術礼装ですわね」

 

 起動した『ザフィエルの瞳』を見た彼女がそう告げる。私はゆっくりと立ち上がる。

 

「では、一つ。勝負と行きましょう」

 

 言葉と共に三つの雷が放たれる。咄嗟にポケットに入っている硬貨を前に二つ投げる。二つの落雷は硬貨に当たり、もう一本はその一瞬で狙いを定めた魔力弾で相殺する。

 

「フフ、一回戦を勝ち抜いたのはマグレでは無さそうですわね」

 

 楽しそうに語りながら放たれる雷を手持ちの硬貨による疑似的な避雷針と魔力弾で相殺する。だが、それでもこちらが不利。

 

「このままじゃ、ジリ貧………」

 

 どうする?

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!!!」

 

 気合いと共に来る斬撃を受け流す。

 

「オォッ!!!」

 

 返す様に斬撃を放つが、容易く受け流される。何度、同じ事をやっただろうか。相手は自分と同じ得物を見えなくしているのにも関わらず、自分は獲物の長さが分かる。それは相手も同じ事だ。

 

「くっ!?」

 

 だが、それでも体格差でこっちが有利。なのだが、拮抗している。

 

「ハァッ!!!」

 

 その理由は彼女の身体から放出される魔力のお陰だろう。全く、羨ましい能力だ。

 

「オォッ!!!」

 

 雄叫びと共に得物をぶつけ、互いに離れる。知っている互いの剣技。知っている互いの剣の間合い。だが、これは同じ戦場を共にした騎士の物ではない。自分はこの剣を知っている。何故ならコレは自分の剣なのだから。

 

「考えられるのは一つ………」

 

 呟きと共に構えを解く。僕の行動に怪訝な表情を浮かべるサーヴァント。そしてそのマスターも気付いたのか、攻撃の手を止める。

 

「その動き、セイバーのサーヴァントと見たが?」

 

「………如何にも。そういう貴公もセイバーとお見受けする」

 

 少しの沈黙の後、彼女が頷き。自分も頷く。

 

「なっ!?」

 

「あら?」

 

「え?」

 

 相手のサーヴァント、そのマスター、マヤから驚きの声が上がる。当然だろう。僕は今、自らの剣を隠している風の魔術を解いたのだから。そして現れるは黄金の剣。その剣を地面に刺し、両手を柄の上に置く。

 

「我が名はアーサー・ペンドラゴン。此度の聖杯戦争でセイバーのサーヴァントとして招かれた。問おう、貴公の名を」

 

「………」

 

 本来なら致命的な情報公開。だが、これは意味のない物だ。彼女は呆気に取られた後、隠された剣を晒す。その剣もまた黄金。細部で違う物の、アレは同じだ。自分が持つ剣と同じ。ならば、彼女に対して自分の真名をバラす事はデメリットにはならない。何故なら。

 

「我が名はアルトリア・ペンドラゴン。セイバーとしてこの聖杯戦争に招かれました」

 

 

 

 

 

 

輝ける彼の剣こそは

過去 現在 未来を通じ戦場に散っていく全ての兵(つわもの)たちが

今際の際に抱く 悲しくも尊き夢

その意思を誇りと掲げ その真偽を貫けと是(ただし)

今 常勝の王は高らかに 掌(て)に取る奇跡の真名を謳う

其は………

 

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