Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第8話「答えを得た王」

 驚きで言葉が出ない。それは目の前のシルヴィアも同様だ。セイバーの真名がアーサー王だったのも驚きだが。

 

「まさか、女性の私に出会えるとは。これも聖杯戦争の醍醐味、というやつか」

 

 そう、苦笑交じりに告げるセイバー。対する女性のセイバーは苦い顔を浮かべる。

 

「これは一体、まさか貴公は……本当に」

 

「然り。我等は同じ『アーサー王』という英雄だ。我等はそれぞれ並行した歴史でそれぞれ名を刻んだ存在の様だ」

 

「では、貴方もやはり」

 

 何処か縋る様な声に違和感を覚える。セイバーは無言で頷く。

 

「そう……ですか」

 

「やはり、貴公も私なのだな。聖杯に託す願いは故国の救済か」

 

「無論です。私が王にならなければ、あの悲劇は起こらなかった。ならば運命を変えれば―――」

 

「アルトリア・ペンドラゴン」

 

 彼女の言葉をセイバーが静かに遮る。

 

「貴公も本当は気付いている筈だ。誰が王になろうとも、あの悲劇は起こり得た」

 

「そ……そんな事は―――」

 

「ならば、貴公は捨てるのか?貴公(アルトリア)に付き従った臣下を。貴公(アルトリア)に忠誠を誓った騎士達を。貴公(アルトリア)に騎士としての憧れを抱いた少年を。貴公(アルトリア)に一輪の花を手渡した少女を」

 

「っ!?」

 

 セイバーの言葉に彼女は顔を俯かせる。毅然と言い放つセイバーは無表情。だが、何処か痛みを我慢している様にも見えた。

 

「貴公が運命を変えるという事は。貴公(アルトリア)と共に歩んだ。総ての騎士を、臣下を、民を捨てるという事だ。確かに他の者が王になれば救われる人間は多くなるかもしれない。だが、貴公(アルトリア)が救った人は死ぬかもしれない。もう気付け、アルトリア。我等の国は滅んだのだ。それは私の罪であり貴公の罪だ。だが、貴公の願いは贖罪どころか。唯の逃げだ」

 

 告げた言葉にアルトリアは答えられない。彼女も気付いていたのだ。だが、認めてしまえば、彼女は壊れてしまう。では、どうすれば良かったのか、と。それに気付いているからこそ。セイバーは胸の前に自らの剣『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を掲げる。確か、決闘の合図だった筈だ。アルトリアも気付く。

 

「それでも、貴公が故国の救済を願うというなら。七日後の決戦場で雌雄を決しよう。依存はあるか」

 

「………ありません」

 

 アルトリアも構えを取る。そしてシルヴィアはクスリと笑って。

 

「決闘……マスターを無視するのは頂けませんが、此方は構いませんわ」

 

「わ、私も大丈夫」

 

 というか、大歓迎だ。騎士の決闘は絶対だ。しかもそれを行うのが『騎士王』なら尚更。彼女達は最後の日までアリーナや校内で仕掛けては来ないだろう。その間にどうにか攻略の糸口を探さないと。

 

「では、男の騎士王。私(わたくし)達はこれにて失礼いたします」

 

 言葉と共にシルヴィアとアルトリアが消える。多分『リターンクリスタル』を使ったのだろう。そして私とセイバー、否アーサー以外いなくなったアリーナで私は一度ため息を吐く。

 

「セイバー?」

 

 静かな、自分でも驚くほど静かな言葉にセイバーの肩が大きく震える。心なしか、彼の頬に伝う汗が見えた気がする。

 

「まさか、セイバーの女性がいるのは驚いたし、真名を言ったのも驚いた。その後で決闘の申し込みは私個人だと嬉しい事。けど、念話で確認位欲しかった」

 

「ご、ごめん。つい、熱くなっちゃって」

 

 そういって、頬を指で掻く顔は何処か晴れやかな顔だった。ムカついたので魔力弾を放つも『対魔力:B』は伊達じゃないようだ。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、なんかスッキリした感じみたいだけど?」

 

 私はアリーナを進みながらセイバーに問いかける。

 

「まぁね。僕としてももう一人の自分が英霊として参加しているのは驚いているし。その彼女がかつての僕と同じ願いを持っている事も想像できた」

 

 襲いかかるエネミーを斬り裂きながらセイバーが告げる。

 

「己だからこそ、彼女の苦悩は分かった。同時にかつて抱いた己の願いがどれだけ身勝手で歪んでいたのか再確認出来た」

 

 セイバーは無表情。無理矢理、表情を殺している様に見える。

 

「だからこそ、理解出来た。だからこそ許せなかった。同族嫌悪なのは自覚している。だが、それでも彼女(ぼく)の願いは間違っているんだ。そしてその願いが間違いだと気付かせるきっかけを作れるのは僕だけなんだ」

 

「きっかけ?」

 

 思わず、疑問を投げる。アルトリアの願いは間違っていると分からせるのではないのか、という理由も含めて。セイバーは静かに頷く。

 

「あぁ、僕はきっかけを与えるだけだ。彼女に答えを与えるのは僕じゃない。もっと相応しい者がいずれ、彼女の前に現れる」

 

 断言する彼はだって、と前置きし。涼しげな笑みを浮かべながら。

 

「僕(アーサー)に出会えて、彼女(アルトリア)に出会えない道理なんてないのだから」

 

 

 

 

 

 

「悩んでいるね。暇なお姉さんなら相談位、乗ってあげようか?」

 

 第一のトリガーを入手した翌日。教会でセイバーの強化を眺めている最中、青子さんの茶目っけたっぷりな言葉に思わず苦笑してしまう。

 

「いいんですか?」

 

「勿論、最初はどうでもいいマスターの一人だったけど、貴女、中々面白い子だから。それぐらいはサービス、サービス♪」

 

 そういって、笑みを浮かべる青子さん。

 

「じゃぁ、相談しちゃおうかな。実は対戦相手の魔術がよく分からなくて」

 

「ん~、どんな魔術かな?」

 

 青子さんの言葉に感覚ではあるが、シルヴィアの魔術を説明する。青子さんは難しい顔をしながら腕を組む。

 

「ふむふむ。殆ど呼び動作無しの雷かぁ~。相手の名前は?」

 

「シルヴィア・バルトメロイです」

 

 告げると、青子さんが口を開けたまま硬直する。

 

「ほぉ、それはまた大物と当たったな」

 

 言外に嫌味を含ませた発言は橙子さんだ。

 

「まぁ、バルトメロイならその魔術も可能だろうな。青子、お前の得意分野だろう?」

 

 橙子さんがそういうと、青子さんはムスッとした顔をして。

 

「失礼ね~。私は基本的な事しかやってないわよ!!ただ、まぁゲマトリア数秘紋による高速詠唱なんて。普通、誰も使わないけどね~」

 

「そうなんですか?」

 

 問うと、橙子さんが頷く。

 

「魔術としては正統派だよ。ただ、地味だ。極めるとなるとかなりの時間が掛かる。といった、典型的な魔術だよ」

 

「強化の魔術と同じと思えばいいんじゃない?習得するのは簡単だけど、使いこなすには相当の時間が必要な感じ。まぁ、バルトメロイは魔術師の中じゃ、かなりアレだから。使いこなす人がいても可笑しくないわね」

 

「ふん、お前も充分にアレだろう」

 

「鏡見ていいなさいよ。生き物やめてる他の四人はともかく、私はれっきとした人間よ」

 

 私としてはどっちもアレな気がする。だが、これを言えば、確実にBADENDな気がするので黙る。

 

「まぁ、私に言える事は一つ。覚悟を決めなさい♪」

 

「うわぁん!!!!!」

 

 結局、分かったのは彼女の扱う魔術のみだった。打開案は自力で考えよう。そう考えながら教会を出る。

 

 

 

 

 

 

「相手サーヴァントの情報を探ろうと思ったけど、実際、セイバーに聞けば早いんだよね~」

 

「といっても、僕と彼女では伝承の食い違いや解釈の違いで宝具にも差異が出るだろうね。ただ、気を付けるべき宝具は」

 

「うん『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』だね」

 

 言葉と共に端末から音が聞こえる。見ると、宝具の欄に『約束された勝利の剣』が追加されていた。更に驚くのはそのランクである。

 

「嘘!?何このランク!?」

 

「まぁ、かなりメジャーな宝具だからね。ただ、これは宝具の真名解放に条件がある所為でこんなランクになっているんだ」

 

「条件……?」

 

 彼が頷く。

 

「簡単に言えば、剣を通して円卓の騎士達に許可を貰うんだ。この剣を使うに値するかどうかの確認をね。それを通さなければランクはCくらいまで下がるだろうね。しかも『対城』から『対人』にまでランクダウンするだろう」

 

「それって、かなり厳しいね」

 

 私の言葉にセイバーが頷く。

 

「けど、さっき許可が下りた。どうやら円卓の騎士達は僕の行動に賛成しているようだ」

 

 何処か誇らしげに語るセイバー。

 

「けど、相手のセイバーも同じ宝具なんだよね?」

 

 私の言葉にセイバーも頷く。

 

「だから、僕が宝具を解放する時は彼女も宝具を解放する筈だ。その時はマヤも気を付けてくれ。余波だけでもかなり危険だ」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

「昼食を共にする、という事柄は初めてです。これはどういった作法が必要でしょうか?」

 

 お昼休み。屋上にて、購買で買った焼きそばパンを食べようとした瞬間、隣でカレーパンをジッと見つめていたラニが呟いた。

 

「いや、別に作法は必要ないよ?」

 

「そうなのですか?」

 

 そう、首を傾げながら聞いてくる。なんか、子猫みたい。

 

「うん、単に世間話とか……は無理だね。まぁ、色々と話しながらお昼を過ごす。って感じかな」

 

「成る程」

 

 そう納得すると、黙々とカレーパンを食べ始める。小さく、小刻みに食べる姿はリスの様で可愛らしい。っと、見惚れてる場合じゃない。彼女を納得させたなら実践しなくては。でも、実際、何を話そうか。

 

「そういえば、私の対戦相手なのですが」

 

「ん?うん」

 

 すると、いきなりラニが話しだす。なんか、お昼の話題にしては血生臭いが。贅沢は言えない。

 

「キャスターのクラスで呼ばれているのですが。どうやら『魔術師』ではなく『召喚士(サモナー)』の様なのです」

 

「アリーナに入ったら仕掛けられたの?」

 

 その違いを認識しているという事はアリーナで一戦あったのだろう。彼女は頷くと。

 

「はい、形状はタコの足に鋭い牙が無数に生えた『海魔』の様でした。それがアリーナ全域、至る所にいたのです」

 

「ま、待って!!その話、ご飯時にするものじゃないから!!!」

 

 慌てて制止する。彼女は、はて?といった感じに首を傾げ。

 

「そうでしょうか?私はその焼きそばが『海魔』の足の様に見え。このカレーが『海魔』を斬り裂いた際、見えた臓物に酷似していたので話をしてみようと――――」

 

「聞こえな~い!!!」

 

 彼女の言葉を耳を塞ぎ、声を上げて聞こえない様にする。そしてその後、お昼時に話す内容を細やかに説明した私だった。因みにセイバーは必死に笑いを堪えている。焼きそばパンはこれ以降、買わない。そう心に堅く誓う私だった。

 

 

 

 

 

 

「アッハハハハハ!!!お昼時にグロ生物の話って何それ!!!!」

 

「クク、お前の友達も変な奴だな」

 

 お昼の事を夕方。教会のお二人に告げると。案の定、笑われた。青子さんは腹を抱えて、橙子さんは口元を隠して。好き勝手笑う。ふと、セイバーを見ると。

 

「………っ!!!」

 

 実体化してまで笑いを我慢してやがる。物凄くムカついたので思いっきり蹴ってやる!!

 

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