Fate/EXTRA~騎士王との出会い~   作:フィロ

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第9話「騎士王の決闘」

 いよいよ決戦の日となった。その間、シルヴィアとアルトリアとはアリーナで幾度か顔を合わせた。だが、戦闘は行われず、互いに挨拶をして去る、といった状態だ。そしてその間を利用してレベルを上げ、セイバーを強化。少ない情報から蒼崎姉妹(特に青子さん)とラニにアドバイスを貰いながら、彼女に対しての対策を練った。

 

『準備はいいか?』

 

 堅い、確認の声が頭に響く。何時もの優しい雰囲気ではない。気遣われていない。それは彼が私をマスターとちゃんと見ている様で少し嬉しかった。

 

「うん、出来る事は総て終わらせた。後は失敗しないだけ」

 

『なら、僕も君の期待に応えるとしよう』

 

 私は目の前に立つ言峰神父を見る。彼は堂々と、不遜に私を眺めている。その表情は無表情に見えて、私の一挙一動を愉しんでいる様に見える。

 

「覚悟は出来たかね?今回の君の相手は中々の強敵だ」

 

「それは言われなくても分かってます」

 

 そういって、言峰神父に二つのトリガーを渡す。彼は受け取ったトリガーを扉の穴に嵌める。そして扉がゆっくりと開く。

 

「では、進みたまえ。再び、戻ってくるのはどちらか一組。健闘を祈ろう」

 

 言峰神父の言葉を背中に受けながら、私は扉の中へ足を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

「フフ、こうして顔を合わせて話をするのも最後、というのは少々残念ですわね」

 

 決戦場へと向かうエレベーターで向かい合ったシルヴィアはそう残念そうに告げる。

 

「それは貴女が勝つ、という事ですか?」

 

「そう取って貰って構いませんわ。勝利を掴む覚悟が無い者に女神は微笑みませんし」

 

 その言葉と共にエレベーターが止まり、扉が開く。

 

「では、共に悔いの無い戦いを」

 

 優雅に告げながら彼女は決戦場へと足を向ける。アルトリアはセイバーを見た後、決戦場へと向かう。

 

「行こう、セイバー」

 

「了解した」

 

 

 

 

 

 

「始めましょうか。二人の王と二人の魔術師。その決闘を」

 

 言葉と共に私とシルヴィア。アーサーとアルトリアが向かい合う。

 

「アルトリア、いいえ。セイバー、貴女の迷いも願いも私は否定しません。それは人として当然の願いなのですから」

 

「マスター……」

 

 シルヴィアがアルトリアに話しかける。

 

「そして今だけは貴女が正しいと思う事を疑わずに剣を振りなさい。迷いある力に勝利は無くてよ」

 

 彼女の言葉にアルトリアは一度、目を伏せ。そして開くと黄金の剣を胸の前で翳す。

 

「行くぞ、騎士王!!総ては故国を救う為に!!」

 

 その言葉に応じる様にセイバーも黄金の剣を胸の前に翳す。

 

「もはや、語る言葉は無い。我が剣で貴公を討ち倒そう!!!」

 

 言葉と共に互いのサーヴァントから同等の魔力が迸る。が、アルトリアの周りの地面が魔力によって削られる。彼女のスキル『魔力放出』による身体能力のブースト。それの余波だ。これで彼女は男であるセイバーと対等以上に渡り合える事が出来る。

 

「さて、私(わたくし)達も参りましょうか」

 

 言葉と共にシルヴィアが右手を翳す。私も魔術刻印から魔力を生み出し、右手に魔力弾を三つストックさせる。

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!!」

 

 キィン、という甲高い音と共に火花が連続で散る。魔力放出によってブーストされた肉体は僕と同等かそれ以上。更に魔力次第で強化できるときた。コレは止まって打ち合えば、負ける可能性も出て来る。故に動く。それは彼女も理解しているのか。此方に合わせて動いてくる。

 

「迷いの無い剣。これが答えを得た者ですか!!」

 

「この程度で私を知るのは早計過ぎるぞ?」

 

 言葉と共に剣が音を奏でる。そして互いに距離を置く。宝具は使わない。否、使えない。というのが正しいか。僕等は同じ英雄。故に宝具も同じ効果だろう。なら、勝負は宝具と宝具のぶつかり合いだ。その場合、勝敗を決めるのは速さと互いの魔力量。故に宝具を使う時は戦いが膠着した時。もしくは相手の魔力を確実に減らした時。

 

「オォッ!!!」

 

 気合と共に速度を乗せた一撃を叩き込む。

 

「くっ!?」

 

 それを受けながら、身体を前に押し、刃を滑らした一撃が来る。その一撃をバックステップで避け、着地と同時に肩からぶつかる。

 

「くっ」

 

「まだまだ」

 

 笑みが浮かんでいるのが分かる。あぁ、思えばこうやって騎士として互いの名を自らに刻みながら戦うのは何時ぶりだろうか。

 

「我等は王であって、騎士では無かったな」

 

「何が言いたい!!!」

 

 僕の言葉に彼女は剣をぶつける。あぁ、何時の間に忘れていたのだろうか。あの懐かしくも心躍る夢を。

 幼い頃は国の事情も知らず、唯々、騎士として素晴らしい主君に仕え、戦場を駆けようと鍛錬した自分。そして国の事情を理解できる年になり、決意と共に騎士の夢を棄て、王として生きた。

 

「我等は理想の騎士に、理想の王になろうとした。それは間違いではない」

 

「……間違いだったのです。私が、私達が王にならなければギネヴィアもランスロットも」

 

 険しい顔のままに剣を振るアルトリア。

 

「ならば、私が抱いた願いが間違いだと、その剣で示せ。我等に付き従った騎士の想いを踏みにじるがいい」

 

「っ!?」

 

 僕の一撃にアルトリアが揺れる。肩からぶつかり、距離を大きく開き、再び激突する。

 剣をぶつけ、身を引く僕に低く突撃するアルトリア。胴を薙ぐ一撃を、刃を下に向けて受け、そのまま前に踏み込む。だが、それを獣染みた直感で予測していた彼女は踊るようなステップで避け、首を狩りに来る。その一撃を前に屈んで避け、身体で死角になった場所から額を突く。それはギリギリで避けられ、互いに離れる。

 

「中々、女だと侮ったつもりはないのだがな」

 

「貴方こそ、見事な腕前です」

 

 称賛は互いに。告げると同時に接敵。真上からの一撃を受け流し、カウンターで肩口から斬りかかる。ソレを身体の向きを変えて避け。地面に叩きこまれた刀身を踏んで固定し、首を狩る。瞬間、魔力放出で身体の重心をずらされる。結果、ろくに力の入らない一撃は彼女の篭手に阻まれる。更に魔力放出の余波で剣も地面から抜ける。否、魔力放出によって周りの大地を砕いたのだ。その量、威力に寒気が奔る。だが、足は止まらず、逆に前へと足を向ける。

 

「ハァッ!!!」

 

 気合いと共に一撃を放つ。同時に横へ動く。僕がいた場所に振り下ろされる一撃。彼女は僕の攻撃を見ながら防御せずに反撃したのだ。なんと、豪胆だろうか。いや、僕と同じ名、同じ英雄ならばこれくらいは当然か。そう考えながら距離を取る。すると、彼女は剣を真っ直ぐ天へと向けた構えを取る。

 

「確かに埒が明かないか」

 

「例え、私の願いで皆の想いを裏切ろうとも、構わない!!!祖国が……彼等が報われるなら!!!」

 

 彼女の『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を不可視にしていた宝具の魔力が剣に付加される。

 

「何時まで夢を見ている。いい加減に目を覚ませ」

 

 彼女と同じように剣を高く掲げる。同時にキャメロットの13拘束が一つずつ外れていく。そして総ての拘束が外れると白銀の刃と装飾が剥がれた本当の姿が現れる。

 

「行くぞ、騎士王。魔力の貯蔵は十分か?」

 

「貴方こそ、覚悟はいいですね騎士王?」

 

 互いに言葉と。これから互いの必殺の一撃を放つ合図。そして互いの一撃に絶対の信頼を置く笑みを浮かべながら。僕たちはその一撃を放つ機会を探る。

 

 

 

 

 

 

「フフ、粘りますわね。少々、面白くなってきましたわ」

 

「こっちは一杯一杯なんだけど、ね!!!」

 

 言葉と共に雷を魔力弾で相殺する。

 

「それにしても、面白い術式ですわね。オド(自らで作る魔力)を砲身にしてマナ(大気の魔力)を集め、圧縮、発射するなんて。本来ならそこまでに二工程掛かってしまう筈。それを可能とするのが。私の雷を引きつけるコインと」

 

 雷が放たれる。私は小さく、呟く。

 

「後より出でて先に断つ者(アンサラー)」

 

 呟きと共に圧縮した魔力を放つ。雷は目の前まで来て、確実に間に合わない。だが、魔力は雷を突きぬけ、シルヴィアの顔の横。数本の髪を風と共に奪い去る。彼女の顔には嬉しそうな笑み。

 

「因果を歪ませる呪いの呪文。本来なら私の命を奪う筈の物ですが」

 

「習得しているとはいえ、そこまで強力じゃないよ」

 

 この呪文は因果を歪ませる呪文。この呟きと共に相手の攻撃を『相手より後に自らの攻撃を発動』する事で完成する。そして発動した術は先に攻撃した術者を攻撃し、死に至らしめることによって『発動を無効化』させるという物だ。だが、私が出来るのは『相手の攻撃より此方の攻撃が一瞬速くなる』という物。本来の用途から枝分かれした、劣化番といった感じだ。

 

「実力差は知識と発想と行動と心胆で埋めるしかないでしょ」

 

「ふふ、素晴らしいですわ」

 

 そういって、また雷を放出しようとした瞬間。真横から凄まじい魔力が放出される。

 

「セイバー………」

 

 見ると、二人のアーサー王が同じ黄金の剣を同じ構えで睨み合っていた。

 

「美しい………」

 

 ため息の様に漏れる声はシルヴィアだった。彼女は二つの黄金の光を眺めながら。

 

「あれが、あの光が騎士王の象徴。総ての騎士の憧れ」

 

 シルヴィアの言葉に押される様に二人が一歩踏み出す。瞬間、空気が震える。

 

「「――――約束された(エクス)」」

 

 二人が同時に言葉を紡ぐ。二振りの剣はその言葉を待っていたかのように輝きを強くする。

 

「「勝利の剣(カリバー)!!!!!!」」

 

 叫びと共に振り下ろされた剣から金色の斬撃が放たれる。

 

「っ!?」

 

 黄金の斬撃がぶつかり、凄まじい衝撃が私とシルヴィアを襲う。

 

「凄い………」

 

 視界を埋めるのは眩い黄金のみ。そして聞こえるのは鼓膜が破けんばかりの轟音。そして感じるのは。

 

「っ?!」

 

 ギシ、と魔力回路が痛む。その痛みに歯噛みしながら魔力を大急ぎで生成する。

 

「くっ、想像以上に辛いな」

 

 苦笑しながら、なんとか立ち上がる。これでは魔術行使も出来ない。けど、その甲斐あってか、セイバーの黄金が押し始めている。

 

 

 

 

 

 

「くっ!?」

 

 相手の力が上回り始めている!?驚愕と共にアーサーのマスターを見るも、彼女は立っているのがやっとの状態。あんな状態では魔力を生成しても雀の涙程だ。だとするなら。

 

「彼の宝具ランクは私より上なのか!?」

 

 私の『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』はランク『A++』これを上回るとしたらランク『EX』馬鹿な、と思うが彼の剣が真名を解放する瞬間、に見せた本当の姿。あの外れた物が宝具の能力を制限する為の物だったとしたら。

 

「いや、今は考えるべき事ではない!!!」

 

 叫びと共に鎧に回していた魔力を総て剣に注ぎ込む。押され始めた黄金がまた拮抗する。だがそれも一瞬で、拮抗した魔力が逃げ場を求める様に爆発した。

 

「っ!!!」

 

 そして私は黄金の魔力の中に突っ込む。そこは輝かしく、美しい場所でありながら。そこにいるだけで強大な魔力に身を焦がれる地獄だった。そしてその先には私と同じように駆けるアーサーがいた。

 

「「―――――――ッ!!!!」」

 

 私達はお互いを確認した瞬間、叫んだ。そして私は大上段から剣を振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 爆発した光が収まるとそこには互いに背を向け、剣を振りきった二人の騎士王が立っていた。

 

「私の勝ちだ、アルトリア」

 

「はい……そして私の敗北です」

 

 呟きと共にアルトリアが膝をつく。そして私とシルヴィア。アルトリアとセイバーの間に壁が現れる。勝敗が決したのだ。

 

「勝った………」

 

 言葉と共に安堵と疲労で地面に膝をつく。

 

「お見事」

 

 そんな言葉と共に拍手が送られた。見ると、下半身が黒く染まったシルヴィアが拍手していた。

 

「まさか、私が負けるとは。やはり勝負というのは面白い物ですわね」

 

 そう、晴れやかな笑みで告げられた言葉に私は咄嗟に言葉を作ろうとした。この結果は私にセイバー、というサーヴァントがいた事だ。だが、彼女は首を横に振る。

 

「サーヴァントの力だというならそれもまた、違いますわ。何故なら私と貴女のサーヴァントは性別こそ違えど、元は同じ人物ですもの」

 

「あ……」

 

 そういって、彼女は二の腕まで黒くなった腕を眺めながら。

 

「この結果は貴女の粘り強さを浅く見積もっていた私の失態と此処まで魔力を温存させた貴女の作戦勝ちですわ。誇りなさいな。当主ではありませんが、バルトメロイを倒したという栄誉を」

 

 そういうと、彼女は笑みを浮かべ。ろくに動かない腕を動かし、スカートを摘まんで優雅にお辞儀する。

 

「では、さようなら。マヤ・ヒウさん。私に勝って、他の者に負けたら承知しませんから。そのつもりで」

 

「……はい」

 

 短く、ハッキリと応える。その応えに満足そうな笑みを浮かべた彼女は顔の半分を黒く染めていた。

 

「機会があるなら。また勝負しましょう。今度は魔術ではなく、別の物で」

 

 言葉と共に彼女は消え去る。私は彼女が消えた場所を見ながら小さく頷く。

 

 

 

 

 

 

「結局、私の願いは間違っていたんですね」

 

 僕の背後でアルトリアが呟く。

 

「あぁ、我等の願いは歪んでいた。けれど、私は貴公にその願いが間違いだと気付かせただけだ」

 

「え……?」

 

 疑問を上げる彼女に顔だけ振り向いて。

 

「貴公は何れ貴公の為の、貴公だけの答えを与える者が必ず現れる」

 

「何故、分かるのですか?」

 

 彼女の疑問は尤もだ。だが、こればかりは分かってしまう。何故なら。

 

「当然だろう。私(アーサー)に出会えて、貴公(アルトリア)に出会えない訳が無い」

 

 そう意地の悪い笑みを浮かべて告げる。彼女は一瞬、呆けた後、苦笑して。

 

「全く。意地が悪いですね。しかし、確かに納得できます」

 

 そういう、彼女の身体は殆ど消えていた。彼女は最後に笑って。

 

「よき戦いでした。アーサー・ペンドラゴン。貴公がこれから歩む道に幸があらん事を」

 

「こちらも心躍る戦いだったよ。アルトリア・ペンドラゴン。貴公の向かう先に幸があらん事を」

 

 互いに言葉を交わす。そしてアルトリアは笑みを浮かべたまま、消え去る。

 僕はマヤへ身体を向ける。彼女は荒い息を吐きながら地面にへたり込んでいた。正直、驚いた。彼女の魔力量では初めての真名解放、更に同等の宝具による拮抗で魔力が底に着く筈なのに。彼女の魔力はギリギリだが残っている。そして彼女はゆっくりとだが、立ち上がる。

 

「行こう……セイバー」

 

 荒い息を整えながら告げる彼女に僕は頷く。

 

「あぁ。やはり君は凄いよ」

 

 その言葉に彼女は僕を見る。僕は笑って。

 

「感謝するよ。マヤの魔力供給が無かったら本当に負けていた」

 

 素直に告げると、マヤの顔が薄く赤くなる。彼女はそっぽを向いて。

 

「う、うん。どういたしまして」

 

 そういって、早足で歩いて行ってしまう。そんな彼女に苦笑を浮かべながら。

 

「実は僕ってマスターに恵まれているのかな?」

 

 ふと、そんな疑問を口にしてしまう。あぁ、いや。最初のマスターは少し違うか?

 

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