戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
4月にクリスは音楽大学で音楽を学ぶことにした。彼女の夢を叶えるために父と母が通っていた大学に進学を自ら選択したのだ。最初はあまり自分の夢を叶える機会に関して実感が薄かったが動いてからの彼女はあっという間に特待生としての入学が叶ったのである。
しかし、暗雲はそんなことを待ってくれなかった。
「司令!大変です!!」
藤尭の報告とともにモニターに映されたデータで弦十郎は狼狽した。
「なんだと!?」
それから緊急ミーティングが開かれた。
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「みんなこれを見てくれ。」
モニターに写っていたのは破壊された施設と国連の旗だった。
「国連の旗!?」
「ああそうだ、弦十郎たちが今朝知ったことではあるがここ最近、急激に各国政府の首相官邸が何者かの襲撃にあったのだ。ドゥフトモンたちが駆けつける間も無くなぜか複数が同時に侵攻されていたのだ。」
「それがどう問題なんだ?」
「現場に落ちていた旗は国連、つまり攻められた側は攻めた国が国連において発言力を持った国に侵略された他の国と捉えられているんだ。事実犯行はいずれも各国に登録されたテイマーのパートナーデジモンを使ったものだ。」
藤尭がさらに周辺の様子の画像を表示した。
「それに伴い、各国政府では揉め合いが続いて自分らの無実を証明しようと頑なに外交を避けてるんですわ。」
テントモンが全員に現場で見つかったとされる国連の旗を見せた。
「そしてさっき、日本政府も今回の事件を受けて今後SONGの動きを制限させろという命令が入ってしまったのだ。」
「そんなどうして!?」
「どうにも各国は国連の正義の名の下に本土を蹂躙されるのを恐れてるみたいなの。迂闊に目立つ行為を取ればそれこそ諸外国に攻撃されかねないからじゃないかしら?」
友里も不安な表情を浮かべていた。
「誰もかれもが疑心暗鬼か…しかしこの錬金術師の組織的犯行はやはりリコリスの仕業か?」
拓実もミーティングの画像を見ていた。官邸もほぼ瓦礫だらけになっておりとても簡単に直せるものでなかった。
国会もリコリスの影響で大破したため修復が今も進められていた。さらには正月ののちに都市部の人口が離れつつあった。理由としては何度も襲撃を受ける町に彼らは住んでいられないようだ。
「違いないな、水琴。奴は配下を多く引き連れ、都市壊滅および国家転覆まで狙っていた。ここに来てようやく本気になったと言うことだな。」
「僕たち諜報部も調査を続けたところここ最近パヴァリア光明結社に変わってヒンリヒと名乗る組織の錬金術師たちが次々とフュージョンレボリューションやデジメモリ、アルカノイズを駆使して政府や他の錬金術師の一団に次々とアタックを仕掛けているそうです。」
緒川は現在国連本部に赴きながら、エージェントたちと共に各国の動向を探っていた。
「対策が必要なのに動かしてもらえないなんて一体何を考えているんだ?」
クリスが不信感を抱くと弦十郎がハッとしたが首を横に振った。
「ひとまず、今は警戒は必要だな。動けない今情報は俺たちが仕入れるから待っててくれ。くれぐれも各員は襲撃に備えておくように!」
「…」
響が浮かない表情を浮かべたが誰の目にも止まらなかった。
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SONGはひとまず国連の命令で日本にてしばらくの謹慎を命じられて動けないまま数日が経った。世間では各国のいがみ合いが増えていき、あらぬ噂も飛び交い、事件の真実を知る者が居なくなっていた。しかし、世界にはただ1人その真実を知るものがいた。
「ふん、小倅め。貴様がここまで儂のために働くとはな。」
「ハッ、醜く老けこむだけの老いぼれに言われたくはないね。だがあんたの望み通り各国から奪った聖遺物ならびに龍脈を流れたシャトー残骸から回収したエネルギーの残りカスを集めることには成功した。あとは、神の力ならびに箱舟の完成を待つだけだ。」
「そうか、しかし我が国を守護するのは儂だ。いいな?」
「はいはい、風鳴訃堂。あんたの野望と俺の野望は同じようで違う。だが目障りな連中を葬るために今は協力を結ぼうじゃないか。」
「それでまずはどうするのだ?」
「あんたは日本政府のデータベースを改ざんしてシャトーの一部をひっそり回収したらしいじゃないか。ならすることは一つ。
シャトー関連で生き残った奴いや、張本人をSONGから連れて洗脳でもなんでもして利用するんだろ?」
「…」
「ついでにあんたンとこの息子をやっちまうかもだぜ?」
リコリスが水球から弦十郎の顔を浮かび上がらせた。
「構わん、あんな出来損ないなど如何様にも誅殺して構わん。」
訃堂はそっぽを向いて歩き出した。
「おーお、血も涙もねえな!取り敢えずお前ら!俺たちの目的を言うぜ、エルフナインの誘拐および司令の抹殺だ!」
リコリスたちは歩き去った。
「ギリシアの神話にあった箱舟アルゴ、これと神の力を手にすれば強大な兵器となるは必定。アヌンナキを抹殺し儂がこの国の永遠にして唯一の防人となるのだ。」
拳を握りしめ老いた体で訃堂は歩き去った。
リコリスは部下を引き連れて歩き出した。
(ふん、これもてめえとSONGをまとめて滅ぼすための策、全ては順調だ。サンジェルマンよ、お前のやり方では時間がかかりすぎたのだ。俺が見せてやろう、お前に代わってな。)
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その夜、響は浮かない表情を浮かべていた。
「未来、どうしてみんな手を取り合わずに争い続けちゃうのかな?」
響はニュースで世界各国が疑心暗鬼になっていると言う話題のニュースで心を痛め、表情を曇らせていた。その中には泣いている子供も見られた。
「なんかさ、今まで人を助けてきたのに政府の人っていうのはどうして自分たちだけを考えちゃうのかな?そりゃ司令や一部の人は違うけど…こうやって泣いてる子がいるのに助けてあげることが許されないっていうのは悲しすぎるよ…」
「分からないよそんなこと。でもね、これだけは信じて。世界がどんなに荒んだりしても私たちは最期まで響を信じてる。
きっと、みんなが手を取り合えるような世界は響のようにちっぽけでも作れると思うの。だから負けないでね。」
そっと不安な響を抱き寄せて未来は頷いた。
「それに、響はいろんな国の人たちを助けてるじゃない。その人たちも前に進む勇気を生き生きとしてる響から学んだはずだよ。」
「そうだね。未来、アグモン…」
すると通信機から連絡が届いた。
「響くん!カディンギル趾地、東京湾埠頭さらにはシャトー跡地においてアルカノイズとデジモンが一斉に発生した!直ちに東京湾に向かってくれ!すでに拓実くんが東京湾に向かっている!」
「はい!!」
「響、頑張って!」
「うん!」
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カディンギル趾地____
カディンギル趾地では調と切歌が錬金術師達と戦っていた。
「でやああああああ!!」
「デエエエエエエエス!!」
アルカノイズが二人の攻撃で消えると今度は地中からギズモンが現れた。
「こんな奴!」
切歌が攻撃を仕掛けるがすぐさま修復された。
「嘘!?修復された?」
「ならもっと刻むまで!スパイキングフィニッシュ!!」
スティングモンが続けざまに技を放つが再び修復を許してしまった。
「これじゃあキリがない!!」
「全くデス!」
「けど先に進ませない!ダブルスピリットレボリューション!ジェットシルフィーモン!!」
爽谷がジェットシルフィーモンに変化してギズモン軍団を吹き飛ばした。しかし倒すたびに数は増えていた。
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シャトー跡地____
「オラオラ!」
「どうやらアルカノイズとギズモンからしてヒンリヒはここを主に狙ってたみたいね!」
「食い止めるぞ!マリア、雪音!」
「ああ!ムゲンドラモン!!」
「ムゲンキャノン!」
アルカノイズとギズモンが前進する中、ムゲンドラモンが放った一撃で一部が消滅したがそれでも数は減る気配を見せなかった。
「行くわよ!」
マリアと翼が一緒のバイクに乗って突撃を開始した。
「激しく行くぞ!」
「了解!」
<走断†ACCEL>
バイクの速度を上げながらマリアはアームドギアを蛇腹に変化させて左右を攻撃した。そしてバイクで正面を切り裂いた。
「荒っぽい運転だな!だがこっちも派手に行くぜ!!」
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東京湾____
「はあああっ!」
すでに拓実が1人で数十体を倒していた。
「また襲撃か、何回攻めて来るつもりなんだよ…」
海からも飛行タイプのアルカノイズが接近してきた。
「こいつら、次から次へとキリがねえ!!」
敵を倒し続ける拓実の前にヘリが到着した。
「うおおおおおお!!」
既にギアをまとった響がヘリからの急降下で敵を潰し海に落ちた。
「来たか!海からの援軍は読めてた!シードラモン!!」
「ああ!」
浮上したシードラモンの頭部から響が敵を一体ずつ殴り飛ばしていた。
「おらあっ!てやっ!はあっ!!」
響の攻撃で一体ずつ撃沈させ拓実もシードラモンの背に乗りながらアルカノイズを捌いていった。
「よし!東京湾エリアは順調だな。」
「司令、以前襲撃してきた時からそれほどの時を経ずしてなぜまた攻めてきたんでしょうか?」
「わからん…しかも東京湾を除けばいずれもシンフォギアが関与した場所が主になっているが敵はそこで何かを狙ってるのか!?」
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「あらら、ほとんどやられてるよ。」
順調に殲滅する中、いくつかの影が各地に散らばっていた。
「リコリス様の命のため行くぞ!」
「「フュージョンレボリューション!!」」
「こ、これは!?」
「各地の装者たちの元にギズモンMKが!」
「ヒャハッハハハハハ!!」
「ぐあっ!」
「久しぶりだな、暁 切歌ァ!お前の全身をズタズタにして火炙りにしてやるよ!」
ギズモンMKの声に切歌はハッとした。
「エクストラ!?」
「その通りだよぉっ!その程度で俺に勝てると思うなよ!」
油断した調に目をつけると走り出して頭部を握りしめた。
「ほぉらよ!」
調を人質に取りながらギズモンが切歌を攻撃しようとしたがジェットシルフィーモンが現れ、調をつかんでいた手を切断した。
「させないよ!」
「この野郎!」
各戦場にいたアルカノイズに気を取られていた響たちは気づかなかった。別の刺客が既に迫っていることを…
「けけけ…目標は頂くぜぇ…」
「イミラ、エルフナインの捕獲が目的だ。やり過ぎるなよ。」
「へい、リコリス様!」
「さあて…お前ら、頼んだからな。」
悪意が響たちの背後で動いていた。