俺はサイコパスではない、完全無欠のサイコパスだ
「お、おぉぉ…!!」
眩い光に包まれた後、開けた視界はまさにRPGの世界といった感じの中世ヨーロッパ風の街並みが広がっていた。
そして何より、行き交う人々が特徴的だ。皆が俺の方を見ていて中には獣人やエルフのような俺のいた世界では到底お目にかかれないファンタジーな住人も…ん?
そこでおれは違和感に気付く。
何で皆俺の方を見るんだ?
しかも変なのが俺の方を見るものは皆、ヤバいものを見てしまったかのように嫌な顔をして去っていく。…何だ?そんなに俺の世界の服って珍しいのか?俺は仕事帰りだったから服装はワイシャツにスーツだったと思うが…
少し気になった俺は何か自分の姿を確認できるものがないかあたりを見回す。すると近くに水が貯めてある桶を発見。桶を除き水に映る自分の姿を見る…。
「こ、これは…!?」
水面に映ったのは真っ黒なコートにフードを被り骸骨のようなマスクを付けている自分の姿であった。この姿は間違いない、オーバーウォッチのキャラクター、リーパーだ。
リーパーは別名死ね死ねおじさんとも呼ばれるアンチヒーロー的キャラクターだが、その見た目のカッコよさと所々面白い言動を放ったりして個人的には一番好きなキャラクターだ。だからこそ俺は迷わず特典としてリーパーの能力を選んだ。
「おぉぉ!!!このコートの中の四次元も再現されているのか!!」
リーパーは二丁のショットガンを使って戦うのだがそのリロード方法が実に特徴的だ。それは使った銃はその場に捨て、コートの中から新しい弾薬の入った銃を取り出すというものなのだ。しかもこの銃、無限に取り出せる為コートの中は四次元空間になっているんじゃないかと勝手に考えていたが、まさか本当に無限に銃を出せるとは…それどころかそのあたりに落ちてる小石なんかもしまえるし、その後取り出せた。
「こりゃあ、めちゃくちゃ便利だなぁ…」
だけど…
「見た目まで完全に同じにしてくれとは言ってないんだがなぁ…」
しかも声まで低くなりそっくりになっている。はっきり言ってこの格好ではじろじろ見られても仕方がないだろう。明らかに不審者だ。せめてこのマスクは外そう。
「…あれ、外せない」
おいおいおいおい、どうなってるんだ?マスクを取ろうとしてもグニョンと伸びるだけで一向に外せる気配がしない。
「ちょっとこれまずくないか?」
死活問題だ。この状態でどうやって食事をとればいいのか。そもそも頭部をすべて覆っているため水分も補給できるか怪しい。
あの女神め…何てことをしてくれたんだ。
「ぬぅ…どうするか…」
少し考えた後、とりあえず飲食について試すために俺は食事がとれそうな場所を探した。
「…ここでいいか」
よくわからないが近場で酒場のような場所を見つけたので入ってみる。
「いらっしゃ…ひぃっ!?」
出迎えてくれたウエイトレスが俺を見て飛び上がる。まぁ無理もないか。
それに気づいた周りの客たちも俺の姿に驚愕し、店内がざわつき始めた。
あぁ、視線が痛い…俺はヒーローとしてもっと尊敬のまなざしで見てほしいのに…。
とりあえず、視線は気にしないようにして目の前で少し震えているウェイトレスに話しかけるか。
「驚かせてすまない。水を1杯貰えるか?」
「は、はい…ただいま…」
話ができるとわかり少し安心したのかウェイトレスはすぐにグラスに入った水を持ってきた。
俺はそれを受け取ると口元にグラスを当て、マスクごしに飲んでみる。
「!!!」
飲める!!何と飲めるぞ!?
原理はよくわからないが自然と水は俺の口に入り喉を伝っていく。
これなら食事も問題なくできるはずだ!
「ありがとう。礼を言う」
俺はにこりと笑いウェイトレスに空のグラスを返す。まぁ伝わってないだろうけど。
これで食事の問題は解決した。ようやくヒーローとして活躍の場を探せるわけだ!
丁度酒場に立ち寄ったことだし、話を聞いてみるか。
「すまんが、魔王を退治しに行きたいのだが何か情報はあるか?」
続けてウェイトレスに質問をしてみる。
「え、えっと、あなた冒険者の方…ですか?」
「冒険者?」
何を言ってるんだこのウェイトレスは?
「あ、えっとここは冒険者ギルドも併設されていて、新規冒険者の方の登録やお仕事の案内なども行ってるんです。もし冒険者登録をするのでしたらあちらのカウンターでできますよ」
「ふむ、そうか…」
この世界のことはまだ全然知らんが冒険者登録なんてものがあるのか。しておいた方が後々役立つかもしれんし、一応しておくか。
俺は案内されたカウンターへと向かう。
「はい、今日はどうされました?」
何と、この金髪ウェーブの受付さんは俺の姿に驚くこともせず平然とした態度で話しかけてきてくれた。この人はプロ中のプロだ。俺はそう確信した。
「冒険者登録とやらをしたい。頼めるか?」
「はい、登録手数料として1000エリス頂きますが…よろしいですか?」
「何だと!?」
おっと、つい声が大きくなってしまったせいか受付さんを少しビクッと驚かせてしまった。
俺はすまない、と一言謝りカウンターを後にした。
手数料…そんなものがあるのか!!くそっ…コートの四次元空間をあさってみるがお金なんてもちろん入っていない。
あの女神…!!少しくらい気を利かせてくれてもいいのではないか…!?
さて、何とか金を稼がなくてはならないが…
「ん?」
四次元空間をあさっていると銃とは別の何かを探り当てた。
「…これは!!」
そう、それは俺が望んだもう一つのヒーローの特典。
黄色と緑のカラーリングをしたヘッドフォンとメガホンのような銃だった。