カズマside
「ほら、行くぞ!」
冒険者ギルドへの行き方を教えてくれたおばさんに礼を言い、アクアと道を歩いていく。
「ねぇ、なんでそんなに手際よく道が聴けたわけ?ヒキニートのくせに」
「ヒキニートはやめろ、クソ…ん?何か人が集まってるな」
見れば冒険者ギルドの少し前の通りで何やら催し物が行われているらしく人が集まっているようだ。
「俺の曲を聞きなああああああ!!!」
ライブか何かをやっているようでノリのいい音楽と歌が聞こえてきた。聴衆もかなりノリノリで熱狂している。
「路上ライブまでやってるなんて、活気がある街なんだな。ここは」
「もう、こんなところでライブなんて邪魔臭いわね。一体何様よ」
ブーたれているアクアは放っておく。
それにしてもいい曲だ。テンションの上がる、心の内側から元気になるような曲だ。
「一体どんな人がやってるんだ…?」
人混みの隙間からライブの主を見てみる。
「なんだあれ…?」
おかしな光景が目に入った。
全身黒のロングコートを着込みフードを被った骸骨マスクがカラフルなヘッドフォンをしてメガホンのようなものから曲を流して踊っている。
「どうしたの…っ!?」
アクアも気になったのか隙間からライブ主を覗き見る。
すると、突然アクアは俺の手を引き猛スピードで人混みを掻き分け冒険者ギルドへ向かっていく。
「おい!いきなり何するんだよ!」
「い、良い!?私たちは魔王を討伐するっていう使命があるのよ!さ、早く急ぎましょー!」
「何なんだよ一体…」
まぁとにかくこの世界には変わったやつが多いということだけはよく分かった。
ヒーローside
「これで終了だ。集まってくれて感謝する」
演奏を終えた俺はヘッドフォンを外し深く一礼する。
予想外に集まった聴衆からはブラボー!と拍手喝采と共におひねりが飛んでくる。
俺はすかさずそれをコート内側の四次元空間にしまい込みその場を後にする。
今使ったのは俺のもう一つのヒーロー能力、ルシオの能力だ。
ルシオは世界をまたに掛けるスーパーミュージシャンで音を使った戦法をとる。ルシオの音楽は基本的に2種類あり、スピードをアップさせるものと徐々に体力を回復させるものがある。この2つを使い分けて戦うのが基本的な戦術だが、能力の応用次第ではこのように即興でライブを行ったりもできるのが良いところだ。ありがたいことに今の俺にはルシオの音楽センスも受け継がれているらしい。
酒場、もとい冒険者ギルドに戻ってきた俺は空いているテーブルに座る。
テーブルに着くまでの間、酒場にいた連中から
「お前見た目によらずいい演奏するじゃねぇか!」
「あの演奏とステップ、痺れたわー!」
「何だ、骸骨仮面っていい奴じゃん!!」
などと称賛され、俺がいるだけで暗くなっていたギルドの雰囲気も少し明るくなった。
ふふふ、気分がいいな。やはりヒーローの周りは明るくなくては!
俺はコートからおひねりを取り出し数える。
「4000、5000。初めてにしては上出来だな」
おひねりはざっと5000エリス。十分だ。
それを確認した俺は金髪の受付の元に急ぐ。
「あら、先ほどは見事な演奏でしたね」
「それほどでもない」
そういって1000エリスを差し出す。
「登録を頼む」
「かしこまりました。それでは冒険者の説明をさせていただきます…」
説明によればこの世界の冒険者は自分の能力を映すカードに経験値を溜めていき、成長するらしい。項目にはレベルや筋力、知力がありまさにRPGといった感じだ。
俺はそこに自分の名前、身長や体重といった項目を記入していく。名前はこの格好で元の名前はちょっと違和感があるのでリーパーにしておいた。…見た目は、もうこのままでいいか。
「…はい、ありがとうございます。それではリーパーさん。このカードに触れてください。これであなたの能力値がわかります」
そうか、楽しみだな。どうなるか…。
「おお!魔力と体力の数値が少し低いですがそれ以外の能力値は平均より高いです!これなら魔力を使わない職業なら何にでもなれますよ!」
流石ヒーローといったところか。
俺はふふんと得意そうに鼻を鳴らす。
「弓を使うアーチャーなんてどうでしょう?他には盗賊系も…あら?この職業は…」
受付が少し不思議そうな顔を見せる。
「どうした?」
「いえ、上級職に見慣れない職業があって…ヒーロー?一応これにもなれますね」
「それで頼む」
「え、いいので「それで頼む」は、はい!かしこまりました!」
これだこれ。この展開を待っていたのだ。
やはりヒーローたるもの、職業はヒーローでなくてはならない。
まさかこうも都合よく、ヒーローの職業があるとは…やはり天はこの俺に味方してくれているのだな!
「はい!これで登録は完了となります!冒険者ギルドへようこそ!リーパー様!スタッフ一同、あなた様の活躍を期待しています!」
「あぁ」
こうして、俺のヒーロー生活は幕を開けた。