この素晴らしい世界にヒーローを!   作:不死身の決闘者モル

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アポカリプスへようこそ

「ふー、いい湯だったわー!」

 

鼻歌を歌いながらアクアがギルドへ戻ってきた。

 

あの後カズマ達が受けているクエスト対象である残り4匹のジャイアントトード討伐を手伝おうとしたのだが、アクアが体の粘液を落としたいと駄々をこねたため俺達は一度町へ戻ってきた。

 

恐らくクエストが終わればカズマが俺とパーティを組みアクアが捨てられる恐れがあるから少しでも長引かせようという考えだろうが…。

 

「おう、お帰り。あ、俺達パーティ組むことになったから。さよなら」

 

カズマは無慈悲にアクアへと告げる。

 

…アクアが大衆浴場へ行っている間、俺はカズマに色々と詳しい話を聞いた。何故、アクアと共にいるのか、なぜジャージなんて来ているのかなどだ。

 

そこでカズマが語ってくれたのは同情せざるを得ない悲劇的なエピソードの数々だった。

 

転生特典としてアクアを選んだものの全然使えなかったこと、この世界に来てから馬小屋で寝泊まりし、土木作業などで生計を立てていたことなど…さすがの俺も寝泊りは宿でしている。選んだ特典によっては同じ転生者でここまで違ってしまうものか。

 

そして彼の話で一番興味をひかれたのが前世での彼の死因だ。

何と、彼もいたいけな少女を車から守るために身代わりとなり死んだのだという。

 

この話を聞いた時点で俺は彼とパーティを組むことを決意した。

そう、彼も俺と同じヒーローの魂を持っている者だったのだ。彼とは話も合いそうだし、まさしく運命。思わず組まずにはいられなかった。俺も自分のことをある程度打ち明け、共に世界を救おうと申し出た所2つ返事で了承してくれた。ありがたい。

 

ちなみに俺も転生者であり特典としてオーバーウォッチヒーローの能力をもらったことも話した。俺が同じ世界の転生者であることに対してはかなり驚いていた。だが残念なことに彼はオーバーウォッチを知らなかった…。あんまりFPSには興味がないのだろうか…。面白いのに。

 

それはともかくだ。しかしまぁわざわざアクアとコンビ解消する必要もない気がするのだが…

 

カズマからコンビ解消を告げられたアクアは石になったようにしばらくフリーズした後、目に涙を浮かべカズマにしがみついた。

 

「いやあああああ!何で!?何でそんなこと言うの!?私たちこれまでうまくやってきたじゃないの!!」

 

「どこがだ!悪いけど別のパーティで頑張って」

 

カズマは席を立とうとするがアクアがやだやだやだと駄々っ子のようにカズマの服を引っ張りそれを阻止する。

 

「お願いよぉ!私を捨てないで!!何でもするからぁ!!」

 

アクアが大声で懇願する。

それを聞いた周りの女性冒険者たちがカズマへ痛い視線を向ける。

 

「おい!誤解を招くようなことを言うな!!」

 

「私たち、あんなに相性も良かったのに、ポイ捨てなんてひどすぎるわ!!うわああああん!!」

 

大声で泣き始めるアクア。

更にカズマへの周囲からの視線がきつくなりカズマはさらに慌てる。

 

うーむ、どちらもちょっと可哀そうになってきたな…。

 

「ぐすっ…ヒデオも何か言ってよぉ!見捨てないでぇ!」

 

「おい、その名前で呼ぶな!」

 

それを聞いたカズマ含め、ギルドにいた他の冒険者たちが俺の方を見てヒデオって?と首を傾げた。

 

この格好で斎藤英雄は流石に恥ずかしいからリーパーと名前を変えるつもりだったのにこいつ…!

 

これ以上放っておくと更に何を言われるかわからん。仕方ない、少しフォローするか…。

 

 

 

 

 

 

 

「ごくごくっ…ぷはー!一仕事終えた後の一杯は最高ね!!」

 

その日の夜、特に何もしていないにも関わらずアクアはやり遂げた顔でシュワシュワを飲み干すと倒してきたジャイアントトードの唐揚げをフォークに刺し美味しそうに頬張った。

 

結局、俺が仲を取り持ちパーティ解散の話は無くなった。そして俺が正式に2人のパーティに加わることとなった。ルシオの能力はピンチの時以外使わないという条件付きで。

アクア曰く、「あんたのせいで私の存在意義が脅かされてるのよ!新参者なら先輩を気遣いなさい!」とのことだ。自分以外に回復役がいると困るらしい。

 

パーティを組んだ俺達はそのまま残り4匹のジャイアントトードを狩りに出かけ速やかにクエストを完了した。もちろん俺がすべて倒すのではなく、ある程度弱らせたところでカズマに止めを刺してもらった。この世界の経験値システムがどのようになっているかは知らないが、こうしておけば皆に経験値が回り俺だけが育つ心配もないだろうと考えたのだ。その最中、アクアはというと無謀にも単身カエルに挑んだりして何度かカエルに食われそうになっていた。

 

「お前は何もしてないだろ。ヒデオさんに感謝しろよな!」

 

…アクアが大勢の前で俺の本名を暴露してくれたおかげでカズマもヒデオと呼ぶようになった。実際カズマだけではなく金髪の受付はもちろん、このギルドにいるもの全員がヒデオと呼ぶようになっていた。骸骨さんやリーパーよりヒデオの方が呼びやすいかららしい。ちょっとショックだがまぁ…いいか。それより、俺には一つ考えたことがあった。

 

「ところでカズマ。一つ提案があるんだが」

 

「え?何ですかヒデオさん?」

 

うーむ、先程からそうなのだがどうにも敬語を使われるのは落ち着かんな。

 

「カズマ…さん付けはよしてくれ。俺達は仲間だろう?敬語もいらん」

 

「え…本当に?そ、それじゃあ。ヒデオ、どうしたんだ?」

 

これだこれ。このほうが落ち着く。と俺は考えていることを話す。

 

「このパーティにもう少しメンバーを募集しないか?」

 

それを聞いたカズマは少し驚く。アクアはというとまた自分が外されるのではないかと狼狽え始めた。

 

「ヒデオ!!あなた何企んでるの!?また私をのけものにする気でしょ!呪ってやるううう!!」

 

「いや、そんなことは考えていない…おいやめろ!フォークをこっちに向けるんじゃあない!」

 

フォークをこちらに向け刺そうとしてくるアクアの腕を掴みながら押し戻す。

ふぅ、と一息ついてカズマに確認をする。

 

「どうだ?カズマ」

 

「メンバーか…でもヒデオがいれば当分先まで何とかなりそうな気もするんだけど」

 

「いや、そうはいかんだろう。俺はお前が思っている程強くない」

 

カズマは俺がジャイアントトードと戦っているところしか見ていない。だから強く見えるのだろうが、あれは単純に俺の武器と相性がいいから楽に倒せているだけで、実際の所、他のクエストを受けている時は結構苦戦する事が多い。特に素早い相手、的が小さい相手は逆に相性が最悪なので集団で纏わりつかれて殺されかけることもしばしばあった。

 

それを聞いたカズマは少しうなだれ頷く。

 

「あんなに強いヒデオでも苦戦する敵がゴロゴロいるのか…タハハ、確かにメンバー増やした方が良いかもしれないなぁ」

 

「あぁ、その方が良いと思う。アクア、良いか?」

 

「いいんじゃない?仲間なんてこの最強のアークプリーストことアクア様がいるんだから募集かければ一瞬で集まるわよ。あ、なんなら今やってきてあげるわ!ちょっと待ってなさい!!」

 

アクアは得意そうに胸を張り掲示板へ小走りで向かっていった。

 

数分すると、アクアが戻ってきた。

 

「よし!オッケーよ!!あと数分もすれば誰かしら来ると思うわ!」

 

ドカッと椅子に腰かけたアクアは再びシュワシュワをごくごくと飲み始めた。

その様子を見て俺とカズマは不安げな顔で互いに向きあった。

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