聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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64話「異国のナイト・レディ」

数日後、クリスは休憩スペース一人、千花が働く和菓子屋で団子とお茶を啜りながら至福のひと時を過ごしていた。

 

 

川神院の仲見世通りにある和菓子屋は、クリスの行きつけのお店である。店が立ち並ぶ賑やかな通りを眺めながら過ごすこの時間は、クリスにとって何よりの安らぎである。

 

 

「うむ。やはりここで食べる団子は最高だな」

 

 

手作り団子を噛み締めながら人通りを眺めるクリス。落ち着く……これこそ日本たる風習。クリスは日本の文化に浸り、すっかり馴染んでいた。

 

 

ゆるりと流れゆく時間。クリスは目を閉じながらゆっくりとお茶を啜った。

 

 

「…………」

 

 

ふと、サーシャとの決闘が頭に過る。今は忘れようと思いつつも、どうしても離れない。それだけクリスの記憶に深く残っているのだろう。

 

 

サーシャに悪気はないのかもしれない。ただ、対等に見て欲しかった。もういなり寿司の事など、どうでもよくなっていた。

 

 

(サーシャのヤツ……クェイサーだからって……)

 

 

食べ終わった団子の串を握りしめながら、クリスは苛立ちを募らせる。クェイサーだから特別だとでもいうのか。否、そうではない。

 

 

確かにサーシャは全力だったのかもしれない。だが相手であるクリスには不服なのだ……本当の意味で全力で勝負してこそ、騎士が望む本望である。

 

 

今になって急に腹立たしくなった。クリスは店員を呼び、団子のおかわりを催促する。

 

 

「団子のおかわりを頼む!」

 

 

「ねぇクリス、ちょっと食べ過ぎじゃない……?」

 

 

やってきた千花が止めたら?とクリスに話しかける。クリスの側には食べ終わった団子の串と皿の山。相当に食べている……ほぼやけ食いに近かった。

 

 

すると突然、

 

 

「きゃーーーーーーーーーーーーーーー!ひったくりよ!!!!!!!」

 

 

お店の通りに、大きな女性の叫び声が響き渡った。クリスは叫び声の方向に視線を注ぐ。

 

 

その方向からは、全速力で逃走を図るバイク乗り。その手には鞄が握られている。見ての通り、ひったくりである。

 

 

ひったくりは見過ごせない悪。非行は自分が成敗しなければ……クリスが立ち上がろうとしたその時、

 

 

「――――すまないが、借りるぞ」

 

 

「え?」

 

 

近くに座っていた客が立ち上がり、クリスが食べ尽くした団子の串を数本手に取った。黒髪の男性……女性だろうか。どちらとも取れる。顔立ちからしてクリスと同じ外人であろう。

 

 

そして次の瞬間、その女性は団子の串を数本、迫り来るバイク乗りに向けて投擲した。

 

 

投擲した串の標的はバイク乗りだが、串程度ではびくともしないだろう。だが、その女性が狙った場所は、バイク乗りが乗るバイクの車輪であった。串は見事車輪に命中。串は車輪に絡まり、走行していたバイクを強制停止させた。

 

 

「――――うおっ!?」

 

 

同時にバイク乗りが投げ出され、通りをゴロゴロと転がっていく。衝撃でバイク乗りの手から離れた鞄は宙を舞い、それを女性がキャッチした。

 

 

しばらくして、鞄を取られたであろう主婦が息を切らしながらやってくる。女性はその姿を見つけると、

 

 

「この鞄は貴方のですね?」

 

 

奪われた鞄を差し出すのだった。主婦はありがとうございますと何度もお辞儀をしながら感謝の言葉を述べている。一部始終を見ていた周囲の人達からは、歓声と拍手が上がっていた。

 

 

ほんの一瞬の出来事。クリスが出る間もなく事件は幕を閉じた。たった串数本で、全てを終わらせてしまったのだから。

 

 

「ちっ……やりやがったな!」

 

 

転がっていたバイク乗りが立ち上がると、ポケットからナイフを取り出し、ひったくりの邪魔をした女性の背中に向かって突進した。

 

 

今度は自分の番だとクリスは立ち上がり、突進するバイク乗りに向かって、

 

 

「せいっ!」

 

 

「がはっ!?」

 

 

強烈な回し蹴りを放った。蹴りはバイク乗りの首を直撃。バイク乗りは地面に倒れ伏せてそのまま気絶する。

 

 

「往生際が悪いぞ。 人様の物を盗むなど、言語道断だ!」

 

 

ふん、と鼻息を鳴らしドヤ顔するクリス。クリスにも周囲から歓声と拍手が上がった。

 

 

程なくして、警察が到着。バイク乗りは逮捕され、ひったくり事件は終わりを迎える。クリスは今日一日、良い事をしたと満足しながら和菓子屋を後にしようとした時、

 

 

「先程の蹴りは見事だった」

 

 

急に誰かに呼び止められた。振り返ると、そこには先程串を投げてひったくり事件に協力した女性がいた。

 

 

「いや、そちらも良い腕をしている。思わず見とれてしまったくらいだ」

 

 

自分の出る幕は殆どなかったな、とクリス。互いに賞賛し認め合う二人。

 

 

その女性はクリスと雰囲気が似ているせいか、きっと自分と気が合うだろうな……と、そんな気がしてならなかった。

 

 

「その制服……成る程、川神学園の生徒か」

 

 

「そうだ、自分はクリス。貴方の名前は?」

 

 

この女性は、武道を心得ている。そうに違いないと、クリスには興味が湧いていた。女性は快く、自らの名前を名乗る。

 

 

「私はジータ――――――ジータ=フリギアノスだ」

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