聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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(・3・)ノノどうも、作者です。
小説を執筆中、色々とスランプがあり停滞しておりましたが……何とか復活しました。

完結を目指して、心を震わせ頑張りたいと思います!
では、最新話をどうぞ。



バトルエピソード8「ダイヤモンド・ストレングス」

子供達、そしてクリスを救う為に工場へと駆け付けたジータ。

 

 

男はジータの姿を見て、ようやくお出ましかと言わんばかりにゲラゲラと笑う。クリスには興味がなくなったのか、踏みつけていた足を離した。

 

 

(子供達は無事か。だが……)

 

 

ジータは子供達が無事である事に安堵したが、今のクリスの状態を目の当たりにし、自分の不甲斐なさを呪った。

 

 

道場へ辿り着いた時には既にクリスの姿はなく、クリスがこの場所へ向かってからだいぶ時間が経過していた。もう少し到着が早ければ、こんな目に合わせる事はなかっただろう。そもそも、こんな事に巻き込まれる事もなかった筈だ。

 

 

クリスは意識を失い動かない。心の中ですまない、と呟くジータ。そしてジータは子供達を攫い、クリスに手を出した男の顔を睨み付けた。

 

 

――――ジータは知っている。この男の正体が、誰なのかを。

 

 

「一体どういうつもりだ………コバルト使い――――ゲオルグ・タナー」

 

 

ジータが口にした“ゲオルグ”という名前。そう、男の正体はかつて同胞だった人物。アデプト12使徒の一人。

 

 

γ-ω(ガンマ・オメガ)の異名を持つ、ゲオルグ・タナーである。ゲオルグはジータに対し、分かり切った事を聞くなと嘲笑った。

 

 

「決まってるだろ……裏切り者の始末さ」

 

 

ゲオルグが道場を襲い、子供達を攫った理由。それはジータを誘き寄せる為であった。

 

 

アデプトを抜けた人間は大罪であり、それは即ち死を意味する。ゲオルグはアデプトの命により、ジータの始末の任務を与えられていた。

 

 

何で僕がお前の始末をしなきゃならないんだと、不愉快に吐き捨てるゲオルグ。だが任務である以上、断る訳にもいかなかった。

 

 

……何れはこんな日が来るだろうと思っていたジータ。だが、不思議と焦りは感じない。今は落ち着いている自分がいる。

 

 

アデプトにいた頃は、感情的になる事が多かった。しかし今は違う。様々な出会いや別れ、そして経験を経て成長した。

 

 

それ故に、ジータには余裕すらあった。目の前にいる敵を、挑発できる程に。

 

 

「成る程、私を殺す為にわざわざ日本へと足を運んだわけだ。そんなボロボロの身体で」

 

 

ご苦労な事だな、とジータ。一瞬、ゲオルグの眉が釣り上がり表情を歪ませたが、すぐ狂気の笑みへと戻した。

 

 

「おかげで僕の身体はぐちゃぐちゃさ……けど、僕の能力は少しも衰えちゃいないよ」

 

 

ゲオルグは以前サーシャ達と戦い、彼らによって退けられた。死んではいないものの、身体は焼け爛れ崩壊寸前。再起不能かに思われたが、見事復帰し現在に至っている。

 

 

そして今、こうしてジータの前に現れている。これも因果か必然か……どちらにせよ、ゲオルグとの決着はつけなければならない。

 

 

「そうか………なら、ここでお前との―――いや。アデプトとの因果を断ち切ろう」

 

 

ジータは決意する。因果を断ち切り、新しい自分として旅立つ為に戦う事を。

 

 

そして、子供達やクリスを救い出す為に……今、彼女は剣を取る。

 

 

「――――我、生の中で死に臨む」

 

 

目を閉じ、精神を集中する。それは彼女が力を行使する、始まりの言霊。

 

 

「――――土は土に。灰は灰に。塵は塵に」

 

 

彼女の両手から、元素が生成されていく。これが、彼女の持つ力。

 

 

「迷い出でし魔女の使い魔よ………我が主の御名の下、塵へと還れ!!」

 

 

生成された元素は形を成し、黒い三日月状の剣へと姿を変えていく。彼女の手に握られているそれは、彼女の起源に他ならない。

 

 

それは――――炭素。如何なる金属よりも高い硬度を誇る、“黒いダイヤモンド”の異名を持つジータの元素である。

 

 

ジータは武器を構え、目の前のゲオルグと対峙した。

 

 

「子供達とクリスは返してもらうぞ、ゲオルグ」

 

 

子供達とクリス。そして、自らの因縁を断ち切る為に剣を取るジータ。その目に憤怒の感情は宿らない。宿すのはただ一つ、大切な人間を守り抜くという信念のみ。

 

 

故に彼女は戦う。クェイサーとしてではなく、ジータ=フリギアノスとして。

 

 

「はっ――――ほざくなよ、第二階梯止まりのクズがああぁぁ!!」

 

 

瞬間、ゲオルグの両手に嵌められた指輪から閃光が迸った。閃光は電光石火の如くジータに向かって高速接近する。

 

 

コバルトによって生み出されたガンマ線レーザー。如何なるものをも切断するそれは、いくら硬化した炭素でも防ぎきれない。

 

 

ジータは閃光の雨を掻い潜り、ゲオルグに接近。近距離で攻撃を仕掛けようと試みた。だが、接近を易々と赦す程ゲオルグは甘くはない。

 

 

「―――――!?」

 

 

ゲオルグに接近した瞬間、ジータは四方から殺気を感じ取った。その場から飛び上がり距離を取るジータ。

 

 

ジータが立っていた地面には、無数の穴が空いていた。

 

 

その殺気の正体。それはゲオルグが放ったガンマ線レーザーであった。レーザーは初撃の時点で回避している筈である。

 

 

レーザーによる更なる追撃。コバルトを操るゲオルグならば造作もないが、ここまで精密に対象を狙える攻撃は難しい。一体何が起きたというのだろう。

 

 

「“反射板”………そういう事か」

 

 

ジータはすぐに理解した。ジータ―――否、建物の空間に鈍く光る硝子の破片は、ジータを囲うように張り巡らされていた。

 

 

反射板――――レーザーを反射、屈折させ対象を焼き払う殺人空間が、既に出来上がっていた。ゲオルグは大正解と歪に笑う。予め仕組んでいたのだ……ジータを確実に殺す為に。

 

 

「完璧だろう?僕の作り出したコバルトの結界は。お前はもう籠の鳥ってわけさ――――だから、大人しく消えろおぉぉ!!」

 

 

もう、どこへも逃げられない。死の宣告という名のコバルトの光が、再びジータに向けて放たれる。ジータは再び迫り来るレーザーを回避する。

 

 

しかし、避けても次なる一手が待ち構えている。更には子供達やクリスにも被弾する可能性もあるのだ……それも考慮しなければならない。

 

 

角度も、位置さえも計算された正確無比な全方位攻撃。切り抜けるしかない……もとより、それしか道はないのだから。

 

 

「―――――炭素よ!」

 

 

ジータの持つ三日月剣が、先端から糸のようにほどかれワイヤー状へと変化していく。何本も生成されたワイヤーは宙を舞い、ゲオルグの周囲を包囲する。

 

 

「バカが!そんな手芸程度の攻撃で、この空間から逃げられると思うなよ!」

 

 

指輪から再び放たれたレーザーは反射板を伝い、ジータに向かって正確に発射される。僅か数秒……一瞬一瞬が命取りとなる。

 

 

「くっ……!?」

 

 

降り注ぐレーザーを退けるも、防ぎ切る事は不可能。身体中にレーザーが掠り肌を抉る。だが致し方ない。これはただの布石なのだ。

 

 

ジータの狙いは最初からゲオルグ本体ではない。ジータは空中へ飛び上がると、ワイヤーを空中へ拡散させた。拡散したワイヤーは蝶の羽根のように広がっていく。そう、あるものを捉える為に。

 

 

それは、ゲオルグが展開しているコバルトの反射板である。

 

 

ワイヤーによる空間掌握……拡散させたワイヤーで反射板を空間ごと抉り出してしまえば、どの場所に隠れようとも破壊できる。一つでも破壊できれば、攻撃に計算に狂いが生じるとジータは睨んだ。建物内に隠された反射板――――これならば破壊するのは容易。

 

 

「まとめて破壊させてもらう!」

 

 

繰り出されるジータの反撃。しかし、その意図を予想していたようにゲオルグは歪に笑った。お前の行動は想定済みだと、そう訴えるように。

 

 

「な――――」

 

 

その時、ジータは言葉を失った。何故なら壁に設置されていた無数の反射板が、意思を宿すかのように突然動き出したからである。

 

 

反射板はジータを取り囲いながら空中を漂っている。そして、

 

 

「焼き消えろ、ゴミ屑が」

 

 

ゲオルグの宣告と共に、獲物を焼き払う光がジータの目に映った。光は反射板を伝いながら何度も行き来を繰り返し、ジータの身体を容赦無く焼き払っていく。

 

 

逃げ場などない。取り囲まれた反射板の中で暴れ狂うコバルトの光を、この狭い空間で止める事は皆無に等しい。

 

 

ジータの悲鳴は聞こえない。廃工場内で木霊するのは、ゲオルグの笑い声だけであった。

 

 

―――――――――。

 

 

しばらくして光の反射攻撃が止み、ジータは身体に傷を負いながらも、倒れ伏せる事なく立ち尽くしていた。衣服は光によって切り裂かれ、額からは流血し、立っていられるのが奇跡なくらいである。

 

 

「ちっ……炭素の防御壁で身を守ったか。だけど、もうお前は終わりだよ」

 

 

往生際の悪い奴だとゲオルグ。無数のレーザーを浴び、仮に戦う力が残っていたとしても既に虫の息であろう。

 

 

とどめを指してやると、ゲオルグは両手の指輪をジータに向けて翳す。

 

 

これで終わり――――否、違う。ジータはまだ負けてはいない。

 

 

「………晒したな。反射板を」

 

 

突然、大気が震え出した。大気中に含まれた二酸化炭素が波動によって渦を巻き、ジータの周囲に漂い形を成していく。

 

 

それは、全てを切り裂く炭素の刃。微粒子によって生成された刃は、ジータを囲っていた反射板を瞬く間にして切り裂いた。

 

 

反射板は移動する間も無く粉々に砕け散り、大気中の散りと消えゆく。

 

 

「な―――――あり、」

 

 

あり得ない……とゲオルグは絶句した。大気中の二酸化炭素……それも、僅かな微粒子を操作するなど第二階梯レベルのできる技ではない。

 

 

ましてや、第二階梯止まりのジータが行使できるとは思えない。

 

 

しかし、ゲオルグは失念していた。ジータはもう“ゲオルグの知っているジータ”ではない。今のジータは階梯を上がり、数多の戦いを乗り越えた戦士である。

 

 

「第二階梯止まりの屑……確かにお前はそう言ったな」

 

 

ゲオルグが動揺した隙をつき、ジータは一瞬にして距離を詰めていた。ジータに纏われた炭素の刃が、ゲオルグの身体を掠めていく。

 

 

だがそれも束の間。避ける反応すらも、攻撃を受けた事も許されない神速の一撃が、ゲオルグを襲う事になろうとは、

 

 

「一体、いつの話をしている(・・・・・・・・・)?」

 

 

当の本人には、知る由もない。

 

 

「が―――――は、」

 

 

ゲオルグの視界が霞む。覚えているのは横切っていったジータの姿。気がついた時には、身体中は炭素の刃で切り裂かれていた。がくりと膝をつき、身体に走る痛みに表情を苦痛に歪ませている。

 

 

苦痛だけではない。ジータに負けたという事実が、受けた苦痛をさらに加速させていた。幸いな事に、致命傷ではないが……戦える程の気力は残っていない。

 

 

「―――――退け。そして二度と、私たちの前に現れるな」

 

 

ゲオルグの背後にはジータの声。ジータは、わざと急所を外していた。殺さずして逃がすというのか……ゲオルグにとってはこの上ない屈辱である。

 

 

しかし形成が逆転された今、返り討ちに合うのは目に見えている……それこそゲオルグには耐えられない。

 

 

ゲオルグは血を吐き捨てゆっくりと立ち上がり、

 

 

「クク………いつか後悔するぞ」

 

 

歪に笑いながら廃工場を後にした。ジータは振り返る事なく、ゲオルグが消え去るのを待つばかりである。

 

 

だが、アデプトはまた刺客を差し向けてくるだろう。裏切り者(ジータ)を始末する為に。

 

 

「……くっ……」

 

 

受けた身体の傷が痛み出す。まだ立っていられるとはいえ、受けたダメージは大きい。いくら階梯を登り強くなったとはいえ、やはりまだまだだなと自分の未熟さを噛み締めた。

 

 

 

 

こうして、かつての同胞との戦いは終わる。またいつ襲撃が来るか分からないが、少なくとも子供達とクリスは無事であった事にジータは安堵の息を漏らすのだった。

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