聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

122 / 135
お待たせしました。最新話を投稿させて頂きます。クリス編……思ってた以上に長くなりそうです 


バトルエピソード9「異端者との遭遇」

フランクの前に突如として現れたゲオルグ。ゲオルグはフランクの行く先を阻むかのように立ち塞がっていた。

 

 

「君は、エドガー君の………」

 

 

何故ここに、と問いを投げる前にフランクは理解した。この状況から、部下達を殺したのは恐らくゲオルグであると。

 

 

彼が一般人ならば、この惨状を目にして動揺している筈だ。それなのに、ゲオルグは微動だにしない。このような光景を何度も目にしているのか、死体や血痕には目もくれず、悠々と笑みさえ浮かべている。

 

 

彼のような青年が、一体何故……認めたくはないが、この状況は彼が殺戮者である事を肯定していた。

 

 

「念のために聞いておくが、これは君がやったのか?」

 

 

フランクは感情を殺した声でゲオルグに問いかける。するとゲオルグは心外だなぁ、とわざとらしく肩を落とした。

 

 

「どう見ても僕はパーティーに参加していた一般人ですよ?避難中に兄とはぐれてしまっただけです。仮に、もし僕が彼らを殺したとして……丸腰で武器さえ持たない人間がどうやって?」

 

 

フランクを挑発するかのように返答するゲオルグ。確かに彼の言う通り武器は持っていない。しかも、僅かな時間で数人の軍人を相手に無傷で殺せるのは武器を持っていたとしても不可能である。

 

 

だが、フランクは彼の違和感に気付いていた。彼の身に潜む武器ならざる(武器)の存在に。

 

 

「確かに君の言う通りだ。では聞こう、ゲオルグ君………君の指輪からはレーザーでも出るのかね?」

 

 

フランクの視線の先。それはゲオルグの両手を装飾している指輪である。その回答にゲオルグはあり得ない、と思わず失笑してしまう。

 

 

「いきなり何を言い出すかと思えば……漫画(コミック)の読みすぎでは?」

 

 

「根拠ならある。殺された部下の身体から、レーザーで撃ち抜かれたような複数の小さな穴が見られた。それも急所を正確に狙っている。敵ながら見事なコントロールだ………しかし、詰めが甘かったようだな」

 

 

まだ若いな、と目の前にいる敵を賞賛しつつ失態を指摘するフランク。それに対し、ゲオルグの表情が僅かに歪む。仕組みは分からないが、凶器は指輪だとフランクは確信していた。その理由は、

 

 

「部下が暗号を残してくれていたよ……指輪のレーザーに気を付けろとな」

 

 

部下が残した血文字の暗号メッセージである。ゲオルグによって殺された部下は、絶命する間際に手掛かりを残していた。フランクに知らせる為だったのだろう………心の中で戦死した部下達へ敬意を払うとフランクはゲオルグを睨み付け、改めて彼が敵である事を再認識する。

 

 

するとゲオルグは静かに笑い、参ったねと小さく息をついた。

 

 

「希代の名将……名ばかりだと思っていたけど、恐れ入ったよ」

 

 

ご名答と、フランクに賞賛の言葉を送る。テロリストと言う名の殺人鬼。白いスーツを纏うその容姿は、まるで白い悪魔だとフランクは嫌悪感を抱いた。

 

 

初めて顔を合わせた時は、礼儀正しい好青年であった。しかしそれは、本性を隠す仮面。気づける筈もない。傷一つ負わず部下の命を奪い、悠々と立ち尽くしているこの男は、他のテロリスト達とは明らかに違う。

 

 

恐らく、ゲオルグにはこれまでの常識が通用しない何かを持っている。フランクは警戒心をさらに強めた。

 

 

「各チームに次ぐ。直ちにロベルト公爵秘書官、エドガー=クリストフを拘束せよ」

 

 

フランクの取った行動。それはエドガーの拘束だった。部下に通達して間もなく、エドガーを拘束し事情聴取を始めたとの連絡が入る。念には念を。ゲオルグがテロリストなら、兄であるエドガーもその一員である可能性も考慮しなければならない。

 

 

これで、ロベルト公爵や参加者の身の安全は確保された。後は目の前にいるゲオルグを拘束するのみ。

 

 

「テロリスト、ゲオルグ=クリストフ。非常に残念だが、君を拘束させてもらう」

 

 

フランクは腰のホルダーから拳銃を取り出し、ゲオルグに銃口を差し向ける。すると、ゲオルグはフランクの言動を可笑しく思ったのか突然笑い出した。

 

 

「僕を拘束するだって?ああいいさ、構わないよ。まあ最もーーー」

 

 

ゲオルグの表情が、変わる。殺気ーーそれは獲物を狩る獣のように。その射抜くような鋭利な眼光がフランクを捕らえ、

 

 

「ーーーできればの話だけどなアアァァァ!!」

 

 

荒々しくなった口調と共に、指輪からレーザー状の光線が迸った。レーザーは地面を抉り、フランク目掛けて疾走する。

 

 

(……む!?思った以上に早い!)

 

 

対処しきれない、そう思ったフランクは側にあった棚の影に隠れ身を潜めた。だが、レーザーは容赦なく棚をバターのように切り裂き、無慈悲に破壊。フランクの姿が露になる。

 

 

「隠れても無駄さ。僕のγ(ガンマ)線レーザーに、斬れないものはない」

 

 

γ線レーザー。それが彼の武器の正体。だとするなら、隠れるのは無意味。レーザーの軌道を読み、回避しつつ応戦するしか手立てはない。

 

 

「やらせはせん……!」

 

 

フランクは放たれたレーザーの軌道を掻い潜り、拳銃を構え反撃。ゲオルグに向け銃撃する。如何に強力なレーザーといえども、発射される時間、発射角度、軌道さえ把握してしまえば、避ける事はフランクにとって造作もない。

 

 

「くっ…………!」

 

 

僅かな時間で攻撃を読まれ、今まで優位に立っていたゲオルグの形勢が崩れ去る。銃弾を避けつつレーザーで反撃するも、軌道を読まれフランクに避けられてしまう。

 

 

レーザーによる精密射撃。常人ならば避けられないのが道理。しかしフランクは違った。ただの軍人ならともかく、常人離れした規格外の身体能力を持っているのだ、想定以上に相手が悪い。

 

 

押されている……軍人如きに。ゲオルグは次第に苛立ち始めていた。何の能力も持たない相手にここまで追い詰められている事実が、彼のプライドを傷つけていく。

 

 

あり得ない。負ける筈がない。選ばれた人間ーーークェイサーであるが故に。

 

 

「軌道を読んだぐらいで、僕に勝てると思うなよ!!」

 

 

再び指輪からレーザーが放たれる。フランクは軌道を読もうとした瞬間、異変に気付いた。レーザーは直線ではなく、上下左右に直角移動を繰り返しながら誘導弾のように飛来する。

 

 

今までと攻撃パターンが違う。身体を反らし回避するフランクだったが、避けきれずに右肩を掠め負傷。衝撃で拳銃が手から離れ、円を描きながら地面へと転がっていく。

 

 

攻撃を見誤ったか……フランクは右肩を庇うように抑えその場に膝をついた。ゲオルグは鼻で笑うと、地面へ転がった拳銃をレーザーで破壊しながら、静かにフランクへと歩み寄る。

 

 

「……随分と手こずらせてくれたね。だけど、そろそろ終わりにさせてもらうよ」

 

 

フランクの側で立ち止まり、指輪を翳すゲオルグ。この至近距離でレーザーを放たれれば、いくらフランクでも避けられる術はない。

 

 

これで邪魔者を始末できると、ゲオルグは勝ち誇ったように笑みを浮かべる。同時に指輪の宝石が発光し、標的を撃ち抜かんとエネルギーの集束をを始めていた。

 

 

執行まで、あと僅か。これで終わる……だが、それが間違いだったと気付くのは、少し先の事であった。

 

 

「ーーーいや、まだ終わらんさ」

 

 

突然のフランク言葉に、耳を疑うゲオルグ。しかし次の瞬間、ゲオルグの前からフランクの姿が消えている。どこにいったとフランクを探し出そうと動き出した頃にはもう、ゲオルグの身体は勢いよく吹き飛ばされ、地面へ倒れ伏していた。

 

 

僅かな一瞬の出来事。一体何が起きたのか理解できず、衝撃を受けた身体を庇うようにして立ち上がるゲオルグ。彼のその先にはフランクの姿があった。

 

 

ぼやけていた視界が徐々にクリアになり、フランクがはっきりと見えるようになる。だが、ゲオルグはそれを目にした瞬間、自身の目を疑った。

 

 

「な……何だ……その姿は……」

 

 

あまりの有り得ない光景に、声さえも失う。彼の目の前にいるのは、さっきまで戦っていたフランク自身なのかとさえ思うくらいに。

 

 

驚くのも無理はない。何故なら今のフランクは゛フランクであってフランクではない″のだから。

 

 

「今後の教訓として一つ教えておこう……切り札は最後まで取っておくべきだとな」

 

 

表情の皺が消え去り、肩のしたまで伸びた銀の長髪。そしてより凛々しく、逞しく引き締まった身体。若々しいその姿は、まるで別人だった。

 

 

メフィストフェレス。肉体の細胞を極限まで活性化させる若返りの秘術。それがフランクの持つ最強の切り札である。

 

 

「くそっ……たかが若返ったくらいで……!」

 

 

姿形が変わった所で、優劣が揺らぐわけがない。ゲオルグは再びレーザーを発射した。変則的な動きを見せながらレーザーがフランクに襲いかかる。

 

 

だが、

 

 

「ーーー遅いな」

 

 

発射されたと同時に、フランクはゲオルグとの距離を詰めていた。まるで既にその場にいたかのように、ゲオルグの背後に佇んでいる。

 

 

「なーーーー」

 

 

呼吸すらも許されない、刹那という僅かな瞬間。彼の存在に気付いた時にはもう、ゲオルグの身体はフランクの剛拳をその身に受け、廊下の壁へと激突していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。