聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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敵サイドのエピソードになります。
クェイサーのキャラのタナー兄弟にスポットを当ててみました。


サブエピソード32「紛争への結末(シナリオ)

平和主義から反旗を翻し、テロリストの首謀者である事を明かしたロベルト。演説を終えて、ゲオルグと共に展示室を後にする。

 

 

斯くして、賽は投げられた。全ては予定した台本通りに。ロベルトは右手に嵌められた指輪を天へ翳す。瞬間、足下に巨大な紋章が出現し、強烈な発光と同時に二人の姿は消失した。

 

 

ーーー空間転移。ウロボロスの輪による移動手段であり、二人は会場外へと転送される。辿り着いた場所は、市内から遠く離れた何もない荒地。そこには予め手配していたのだろう、自家用小型ジェットが待機していた。

 

 

「やれやれ……平和主義者を演じるのも楽じゃないな」

 

 

溜め息混じりに、肩を落としながら笑うロベルト。役に成りきるのは容易い事ではないと、身を以て痛感する。

 

 

「名演技だったよ、公爵ーーーいや、兄さん」

 

 

ゲオルグはロベルト………否、自身の兄であるフリードリヒ=タナーの名を呼んだ。名字のクリストフは偽名であり、本名はゲオルグ=タナー。アデプトに所属するクェイサーの一人。

 

 

「そう言ってもらえると、演じた甲斐があるよ」

 

 

フリードリヒは静かに笑みを浮かべ、指を軽快に鳴らす。すると白髭の老人の姿が小さなブロック状の形へと分解され、ロベルトという″外殻″が徐々に崩れ落ちていく。

 

 

外殻が剥がれ、現れたのは男性ーーー秘書官エドガー=クリストフの姿だった。彼こそが正真正銘、フリードリヒ=タナーその人である。

 

 

テロリストはフランクによって粛清された(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)………これで平和主義を掲げていた連中も、直に争いの火種が芽吹く事だろう」

 

 

フリードリヒの真の目的は、ロベルト公爵を排除する事による紛争の誘発だった。

 

 

しかし、ロベルトを始末しただけでは意味を成さない。それでは平和主義を掲げる人々の心は動かないからだ。その為には、最も最悪な形でロベルトの築き上げた信頼と尊厳を崩壊させる必要がある。

 

 

 

 

 

まずは平和宣言を行うタイミングで会場を襲撃。だが、フランク率いるドイツ軍によってテロリストを制圧される。遠方にある廃墟にもテロリストを配備したが、恐らくフランクに読まれている筈だ。

 

 

程なくしてフランク達の活躍により、参加者の安全は確実なものとなる。全ては計算された一手だった。

 

 

希代の名将………頭の切れる人間程、行動心理は容易に予測できる。その名声に恥じぬ通りの動きをしてくれたとフリードリヒはほくそ笑んだ。

 

 

そもそも、参加者を殺す必要はない。殺さなければならないのは、平和を願う人々の″心″そのものなのだから。

 

 

「そして、僕がドイツ軍を襲撃してフランク中将と接触。あの能力には驚かされたけど、次に会った時は必ず………」

 

 

ゲオルグは憎しみと怒りを露にする。若返ったフランクに一撃を受け、プライドを傷つけられた………次は殺す、とフランクに復讐を誓いながら。

 

 

フリードリヒとは別に行動していたゲオルグ。避難すると見せかけて会場内へと戻り、フランクの部隊を殲滅し、駆けつけたフランクと交戦する………その予定の筈だった。

 

 

「しかし………偶然にもフランクの一人娘が会場に忍び込んでいたとはね」

 

 

嬉しい誤算だったよ、とフリードリヒ。計画にはなかったクリスの存在は、彼らにとって好都合だった。ゲオルグがフランクの部隊を始末した現場に居合わせ、恐怖で動けなくなっている所を拉致したのである。

 

 

彼女こそまさしく幸運の女神。フランクを完全に無力化できる最強の切り札(人質)を手にいれた今、計画は確実なものとなった。

 

 

その後、ゲオルグとフランクが交戦している最中、フリードリヒは避難したロベルトと共に展示室へと転移。ロベルトを射殺し、元素回路(エレメンタル・サーキット)によって秘書官エドガーに姿を変え、自身はロベルトに変装。

 

 

最後はフランクを展示室へ誘導し、テロリストの演説を人々に聞かせ、争いの引き金を引くという完璧な結末で幕を閉じたのだった。

 

 

 

「偽装した遺体も、そろそろ元に戻る頃合いだな」

 

 

言って、腕時計を確認するフリードリヒ。エドガーの遺体が、突然ロベルトに成り代わったのだ………今頃現場は混乱している事だろう。同時に、フリードリヒによって仕組まれた計画だという真実を知る事になる。

 

 

「けど、真相が分かった所であの男には何もできない。秘書官の身体が突然公爵に変わり、全ては偽装だったなんて………誰も信じないだろうからね」

 

 

愉快でならない、とゲオルグは笑う。全ては後の祭。絶望に染まった人々の心に、そんなおとぎ話を鵜呑みにする余裕などない。

 

 

ロベルトの正体はフリードリヒ=タナーで、フランクが彼を討った………そう信じざるを得ないのだから。

 

 

 

 

 

自家用ジェットに乗り込み、荒地から発つフリードリヒとゲオルグ。フードリヒは窓の外を眺めながら、計画成功の余韻に浸っていた。

 

 

(秘書官″エドガー″、か)

 

 

ふと、偽名だったエドガー=クリストフの名前を思い出す。愛着が湧いたのか、奇妙な感覚を覚えていた。

 

 

(………そういえば、肉体制御の仮想人格の名前をまだ決めていなかったな)

 

 

まだ使い道がありそうだーーーそんな事を考えながら、フリードリヒは静かに目を閉じ、束の間の休息を味わうのだった。

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