聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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まじこいヒロインのエピソードが、ようやく終わりを迎えました。物語は最終章に突入………といきたい所ですが、その前に。
ここからはクェイサーとまじこいの各キャラクターの短編エピソードになります。
更新は相変わらずの鈍足ですが、見て頂けると幸いです。


幕間「サーシャと大和達の日常編」
一子エピソード①「地平を駆ける稲妻、歌う聖剣 Ⅰ」


一子は今、窮地に立たされていた。

 

 

身体中に傷を作り、息を切らしながら、眼前に立ちはだかる刺客に苦戦を強いられている。

 

 

一子の前にいるのは、フードのついた漆黒のコートを身に纏った小柄の大剣使い。素性はフードに隠れて見えず、性別さえも判断できない。

 

 

ただ、この大剣使いは凄まじい闘志と殺気を放っており、少なくとも敵である事だけは理解できた。その振るう身の丈以上の大剣は包帯が巻かれ刀身は見えないが、一撃でも受ければ無事では済まされないだろう。

 

 

何故このような状況に陥ったのか。それは数分前に遡る。大和達と別れ下校中だった一子の前に突然現れ襲撃に合い、攻防を繰り返しながら逃走。そして現在に至っている。

 

 

「はぁ、はぁ………!いきなり、何なのよ!?名前くらい、名乗りなさいよ!」

 

 

「ーーーーーーー」

 

 

一子の問いに、大剣使いは答えない。ただ沈黙を守るのみである。一体何者で何が目的なのか………考えていても始まらない。

 

 

 

状況を整理する。一子は今不利な状態にある。体力と気力は削られ、得物である薙刀も持ち合わせていない。大剣使いの攻撃は単調ながらも隙がなく、間合いに入る事も難しい。

 

 

(………一か八か、だけど………)

 

 

だが突破口ならある。あの大剣使いの猛攻を切り抜け、隙をつく方法が。しかし、今の自分の身体は元素回路による後遺症で気力の消耗が激しく、迎え撃つには限度がある。それ故に、チャンスは一度きり。

 

 

「ーーーーーーーー」

 

 

集中し、呼吸を整える一子。全身に気を巡らせながら、身体の中に眠る力を呼び起こす。

 

 

程なくして、一子の周囲に青白く光る電撃が迸り始めた。バチバチと音を上げるそれは次第に大きくなり、全身が電気を帯びていく。

 

 

「ーーーーーーー!?」

 

 

一子の急激な変化に、大剣使いは身の危険を察知し僅かに後退する。それを一子は見逃さなかった。攻め入るなら、今しかない。

 

 

(お願い耐えて、アタシの身体ーーー!)

 

 

瞬間、大剣使いの視界から一子の姿が消える。動揺した大剣使いは周囲を見回しながら一子を探すも、彼女の姿はどこにもない。

 

 

だが、

 

 

「ーーーーー後ろよ!」

 

 

「…………!?」

 

 

大剣使いが振り返った時にはもう、一子の蹴りが背中に入っていた。衝撃が走ると同時に、身体が吹き飛ばされそうになる所を寸前で踏み止まる。しかしそれも束の間、一子の姿は大剣使いの眼前に回り込み、

 

 

「ーーーーーもう一撃!」

 

 

さらなる一撃を与え、大剣使いの身体を大きくよろめかせた。まだこれでは終わらない。倒すには最後にもう一撃………決定打と成り得る一撃が必要だ。気を緩めれば、待っているのは敗北しかない。

 

 

故に、一子は詰めを誤らない。

 

 

「ーーーーーこれでラストオォォ!!!」

 

 

再び大剣使いの背後を取り、渾身の一撃をその背中へ叩き込んだ。大剣使いはバランスを崩し、宙を舞いながら地面を転がっていく。

 

 

 

"雷脚"ーーーそれは一子が編み出した戦術の一つ。身体に蓄積された電撃を利用して爆発的に速度を上げる事で、超速移動と連撃を可能にした攻防一体の技である。

 

 

視覚では捉える事のできない、人間の限界を超えた加速力。その疾さは、電光石火の如く。

 

 

 

「はぁ………はぁ………はーーーーうっ!?かはっ、ごほっ、げほっ!?」

 

 

呼吸を整えようとしたと同時に、全身に激痛と強烈な吐き気が襲った。胃液が逆流し、身体中の骨という骨が砕けるような感覚が一子を蝕む。一子は苦痛に表情を歪ませながら、その場に膝をつく。

 

 

加速による反動で重力負荷がかかり、身体が耐え切れず全身から悲鳴が上がっていた。力を行使した代償は、あまりにも大きい。

 

 

(………ダメ………こんな事で根を上げてたら、前になんか進めない………!)

 

 

弱気な自分を押し殺し、一子は立ち上がる。残留する痛みに耐え、消えそうな意識を保ちながら、倒れ伏している大剣使いへと視線を向けた。気を失っているのか、大剣使いは動かない。あれだけの連撃を一方的に受け続けたのだ………仮にまだ動けたとしても、そう長くは戦えない筈である。

 

 

 

程なくして、大剣使いは地面に大剣を突き立てながらゆっくりと立ち上がる。

 

 

「けほっ、けほっ…………君は、強いね。ボクが思ってた以上だ」

 

 

長い沈黙を破り、大剣使いがようやく口を開いた。幼さが残るその甲高い声は、少年か少女なのかは分からない。その賞賛の言葉からは、一子の攻撃を受けてなおも、まだ戦える余裕さえ感じ取れる。

 

 

まずい、と一子は唇を噛んだ。今の自分では長期戦は圧倒的に不利。戦えたとしても、残り数分程度。あの雷脚はもう使えない。これ以上は身体も意識も持たないだろう。

 

 

(何か………何か方法はないの………?)

 

 

いくら思考を巡らせても、答えは出てこない。考えれば考える程、冷静さを欠いていく。

 

 

 

ーーー不意に、カーチャとの模擬戦闘を思い出す。敗北はしたものの、傷を負わせる所まで追い詰めていた。しかし今は状況がまるで違う。相手が初見である上、得手となる武器もない。そして何より、傍らで見守る仲間達がいない。

 

 

そう、これは一子たった一人の戦いなのだ。自分自身で切り開かなければ、負ける所か命を落としかねない。ビッグ・マムの言葉が蘇る。生きるか、死ぬか………身を以て体感した筈なのに、何一つ変わっていない自分に腹が立つ。

 

 

これは模擬戦闘ではない。学園の決闘でもない。戦いと言う名の、命の削り合い………一子は自分に言い聞かせながら、眼前の大剣使いを睨みつけた。

 

 

戦闘続行。この命ある限り、決して倒れない。一子の不屈の闘志が伝わったのか、大剣使いはそうこなくちゃと大剣を振るい、その剣先を向けた。

 

 

「ーーーそれじゃあそろそろ、本気で行くよ!」

 

 

胸元を掴み、勢いよく黒いコートを脱ぎ去る大剣使い。素顔を隠していたフードも外れ、容姿が顕になる。

 

 

その姿はーーー少年のようで、少女とも言えるような中性的な風貌。どこか力強さを感じる、燃えるような赤い眼。金色に輝く髪を無造作に束ね、黒のタンクトップにボトムスを身に纏う、野性味の溢れる戦士だった。年齢は一子よりも少し下だろうか………しかし外見とは裏腹に、滲み出る闘気は幼さを微塵も感じさせない。

 

 

 

そして彼の者は告げる。ここからが本番だ、と大剣を振りかざしながら。

 

 

「"歌え"ーーーーーエクスカリバー」

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