聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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2話「波乱の幕開け」

その頃、2-F。

 

Fクラスの生徒達は、HRまでそれぞれ雑談をしながら過ごしていた。

 

「でさ、チカリン。そいつがあの女と付き合ってた系で……」

 

「うんうん、それでそれで?」

 

チカリンこと小笠原千花と、羽黒黒子は恋愛絡みの話題で持ちきりだった。

 

「ねぇ、スグル。○○の新作どうだった?」

 

「地雷確定。あんなものはクソゲー以外の何物でもない。ストーリーも演出も××のパクリ。新作が聞いて呆れる」

 

オタクの大串スグルと卓也はPCゲームの話で討論中。

 

「さっきの競争はアタシの勝ちだわ!負けを認めなさいよクリ!」

 

「いいや、僅かに自分の方が早かったぞ。負けを認めるのはお前だろう、犬!」

 

一子とクリスは登校途中での競争で、勝ち負けを言い争っていた。

 

皆それぞれ他愛のない話に花を咲かせている。変わらないいつも通りのFクラスの日常である。

 

しばらくして、HRを知らせる予鈴のチャイムが鳴る。

 

「おーい、もうすぐウメ先生が来るぞー!」

 

Fクラスの生徒の一人が全員に告げる。すると、今まで雑談していた生徒達は自分の席に戻り、教室内は何事もなかったかのように静まり返った。

 

梅子は厳しい……もしお喋りをしようものなら、鞭による教育的指導が待っている。

 

廊下からカツカツと厳めしい足音が聞こえ、梅子が教室に入ってきた。

 

「起立!礼!」

 

委員長である甘粕真与の号令と共に、クラスの生徒達が元気よく挨拶をする。

 

「おはよう諸君!着席して良し」

 

全員が着席すると、梅子は早速話を切り出した。

 

「朝のHRを始める」

 

いつものように、梅子のHRが始まった。

 

「突然だが、今日付けでこのクラスに転入する事になった生徒達がいる」

 

梅子の突然の朗報に、クラス全員がざわめき始めた。

 

「静粛に!」

 

梅子の鞭が床を叩き、ざわめきが一気に消える。梅子は続けた。

 

「これから諸君に紹介しよう。よし、入っていいぞ」

 

梅子が教室の扉に向かって声をかけた。クラス全員の視線が扉に集中する。

 

「「し、失礼します!」」

 

扉がゆっくりと開く。最初に入ってきたのはまふゆと華。2人は緊張しながら、黒板に自分達の名前を書き、これからクラスメイトとなる生徒達に振り返った。

 

「あの、聖ミハイロフ学園から転校してきました、織部まふゆです。よろしくお願いします!」

 

「お、同じく桂木華です。よろしくお願いします!」

 

まふゆと華が自己紹介を終えると、クラス中の生徒……特に男子が騒ぎ立て始めた。

 

「うおおっ、マジ可愛くね!?」

 

岳人が鼻の下を伸ばしながら、まふゆたちを見て興奮している。

 

「こりゃ嬉しいサプライズだぜ!あ、やべぇ、勃ってきた………」

 

福本育郎は彼女らを眺め、妄想に耽っていた。

 

「ふん、また女子が増えたか……」

 

不機嫌そうにまふゆ達を一瞥するスグル。反応は皆様々だったが、とりあえず歓迎はされていた。

 

「こら、静かしろ貴様らっ!」

 

また鞭を床に叩きつけ、ざわめきを鎮める梅子。このやり取りに馴染めるのだろうか……まふゆは少し不安になった。

 

「実はな、もう一人いる。織部と桂木と同じく、聖ミハイロフ学園からの転入生だ。アレクサンドル、入れ」

 

梅子がもう一度、教室の扉に向かって声を出す。

 

「…………」

 

サーシャは無言で教室に入ってきた。クラス全員がサーシャを見て目を丸くする。

 

黒板に自分の名前を書き、緊張していないのか、表情を変えずに淡々と自分の名前を告げた。

 

「アレクサンドル=ニコラエビッチ=ヘルだ」

 

自己紹介を終えるサーシャ。変わって、梅子が代弁してサーシャの説明を始める。

 

「彼はロシアから飛び級で留学してきた実力のある生徒だ。勉強で分からない事があれば、彼に教えてもらうといい」

 

サーシャがよほど珍しいのか、クラス全員がサーシャに釘付けだった。

 

「急な話だが、みんな仲良くしてやってくれ。3人の席は先程伝えた場所の通りだ。以上、朝のHRを終了する」

 

HRが終わり、サーシャ達が席に座ったのを確認すると、梅子は教室を後にした。

 

それと同時に、

 

 

「お…………男の子キターーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 

千花を筆頭に、一部の女子(殆ど)が歓声を上げた。一斉にクラス中の生徒達がサーシャ達によってたかる。

 

「ねぇねぇ、アレクサンドル君だっけ?あたしは千花。小笠原千花よ。チカリンって呼んでね♪」

 

「あたいは黒子。ってかアレクサンドル君、マジ美形~。あ~ちょ~抱かれてぇ!」

 

「まふゆちゃん、彼氏は!?彼氏はいるの!?」

 

「桂木さん、よかったら川神市内を案内しようか!?」

 

Fクラスの生徒達に囲まれ、怒涛の質問攻めが始まり、戸惑うサーシャ達。

 

「こ、こら。3人とも困ってるじゃないですか!ここは順番に……」

 

真与が生徒達を纏めようと試みる。しかし誰もがサーシャ達に夢中で、その声は届かなかった。

 

その一方で、彼らを観察する大和とキャップ。

 

「な?だから言ったろ?面白い事が起きるってよ!」

 

キャップの勘は当たっていたが、今日まで転入生が来るという情報は一切なかった。大和はそれが気がかりになっていた。

 

(……まあ、いいか。こういう事もたまにはあるさ)

 

深く詮索しても仕方がないので、大和はあまり気にしない事にした。

 

その後もクラスメイト達の質問攻めは1時限目の授業が始まるまで続き、初日早々、大変な思いをしたサーシャ達なのだった。

 

 

 

1時限目の授業終了のチャイムが鳴り、サーシャはすぐに教室から出ようと席を立ち上がる。これ以上、クラスメイトの質問攻めに合わない為である。

 

「あ、待ってよアレクサンドル君!もっとお話し聞かせてよ~!」

 

千花や他の女子達を無視し、サーシャは教室を後にした。

 

 

 

「…………」

 

教室を出たサーシャは壁に凭れ、疲れを吐き出すかのようにふぅと溜息を洩らす。

 

(……思った以上に、騒がしいクラスだ)

 

元々賑やかな雰囲気が嫌いなサーシャだが、ミハイロフに転入してからは徐々に慣れつつあった。

 

しかし、このクラスはそれ以上に賑やか過ぎる。任務が終わるまでの間、このクラスの生徒と付き合うのだと思うと先が思いやられる………と、サーシャは肩を落とす。

 

しばらく壁に凭れて休んでいると、生徒が数人、サーシャに近づいてきた。

 

「――――お前が例の転入生か?」

 

話しかけてきたのは、着物を着た女子生徒の不死川心。その隣には葵冬馬、井上準、榊原小雪と他数名。全員、2-Sの生徒達である。

 

「……何の用だ?」

 

「2-Fに転入してきた生徒がいると聞いたので、どんな方なのか気になりましてね……ああ、私は葵冬馬。2-S所属です」

 

冬馬が自己紹介を始める。1時限目の授業で、既に噂は流れていた。

 

「わ~、銀髪だ。銀髪だ~!」

 

まるで珍しい物でも見るかのように、小雪がサーシャをジロジロと観察し始めた。サーシャはあからさまに鬱陶しいという表情をする。

 

「こら、ユキ。困ってるからやめなさい……悪いな。こいつ、留学生があんまり珍しいもんだからはしゃいでんだよ」

 

準は詫びを入れながら、うーうー言いながら駄々を捏ねる小雪を連れ戻した。

 

「それにしても変わった奴じゃのう。飛び級で留学してきたと聞いたが、何故このようなFクラスにいるのじゃ?」

 

心の質問に対してサーシャは、

 

「俺がどこに行こうが俺の勝手だ。お前には関係ない」

 

目もくれず、淡々と答えた。そのサーシャの態度が気に食わなかったのか、心は食ってかかる。

 

「ふん、生意気な奴じゃ。高貴な此方がわざわざ足を運んでやったというのに、随分と偉そうな態度じゃのう」

 

「お前を呼んだ覚えはない」

 

「ぐっ……お前、此方が誰だか分かっておるのか?」

 

「知ったことか。お前が誰だろうと興味はない」

 

「い、イラつくのじゃ~!」

 

サーシャと心が言い争い(心が一方的に振った上、サーシャは全く相手にしていない)をしていると、戻ってこないサーシャが気になったまふゆと華が教室から出てくる。

 

「サーシャ、どうかしたの?」

 

「別にどうもしない」

 

と、サーシャ。まふゆと華は周囲の状況を確認する。どう見ても何もないわけがなかった。

 

「なんじゃ、お前たちも転入生か。ふん、見るからに野蛮な顔立ちをしておるのう」

 

サーシャでは相手にされないと分かると、今度はまふゆと華に因縁を付け始めた。華は舌打ちをすると、心を睨み付ける。

 

「何だお前、やんのかよ?」

 

「おお、怖い怖い。これだから2-Fは野蛮な山猿が多くて困るのじゃ」

 

扇子を広げ、口元を隠しながら嘲笑う心。冬馬と準、小雪以外のSクラスの生徒達も小馬鹿にするように笑っている。

 

するとまふゆ達に続いて、Fクラスの生徒達もぞろぞろと見物しにやってきた。

 

「関わらない方がいいよ、まふゆっち。あいつは2-Sの不死川心。学園中の嫌われ者よ」

 

心は名家に生まれたSクラスの生徒の一人。名家に生まれたが故、偏った選民思想を持ち、周囲の人

間を庶民として見下す嫌な奴だと千花が話す。

 

もちろん心だけではない。2−Sの生徒達は皆2-Fを見下していて、Fクラスの殆どがよく思っていなかった。どうやら2-Sと2-Fは対立関係にあるらしい。

 

まふゆは、2-Sに志願しなくてよかったとホッと胸を撫で下ろした。

 

「2-Fの山猿どもがゾロゾロと……あ~、嫌じゃ嫌じゃ。馬鹿がうつるわ」

 

ここぞとばかりに心は嫌味を放ち、2-Fから反感を買っている。

 

「言いたい事はそれだけか?馬鹿がうつるならさっさと教室に戻ったらどうだ?」

 

黙っていたサーシャが顔を向けず、視線だけを心に向けて言い放った。

 

「ふん、身の程を弁えよ。此方は不死川家の息女。やんごとなき身分なのじゃ。たかが飛び級して留学したくらいで、いい気になるでないわ!」

 

散々嫌味をぶつけて機嫌の良くなった心は余裕の笑みすら浮かべ、サーシャを見下した。

 

そんな心の姿を見てまふゆと華は、

 

(なんか、昔の美由梨を思い出すわ……)

 

(なんか、昔の美由梨を思い出すぜ……)

 

同じ学園のクラスメイト――――辻堂美由梨の事を思い出していた。今でも、あの高笑いが聞こえているような気がする。

 

しかしサーシャは心の言葉に動じることなく、

 

「――――見苦しいな。他人の威を借るしか能がないのか」

 

かつて、辻堂美由梨に放った言葉を口にした。

 

「な……なんじゃと!?」

 

思わず動揺を隠せない心。今の今まで、そんな言葉で返されたのは初めてだった。

 

「自分では靴一つ磨けない無能者が、偉そうな口を叩くな」

 

「……い、言っておくがの、Sクラスに入ったのは、此方の実力じゃ!」

 

今のクラスにいるのは家の銘柄だけではない、と心は言い張る。意外に努力家だった。

 

「お前のクラスには成績一つで威張るような連中しかいないのか。特進クラスが聞いて呆れる」

 

「な、なななななななな…………!」

 

心はとうとう言葉を失ってしまった。プライドを傷つけられ、ショックを隠せないようである。それも、相手が2-Fの生徒ならば尚更だ。これ以上の屈辱はない。

 

Fクラスの生徒達から“いいぞー、アレクサンドル!”と、エールが送られた。

 

これ以上反論しないと分かると、サーシャは自分の教室へと戻っていく。

 

「……とうじゃ」

 

ふと、心が小さく呟いた。サーシャの足が止まる。

 

「何?」

 

「……決闘じゃ!此方はお前に決闘を申し込む!!!」

 

心は懐からバッジを取出しサーシャに突き付け、高らかに宣言した。

 

決闘………学生の間でいざこざがあると、学生同士で戦って決着をつけるという、生徒の自主性・競争意識を尊重した川神学園独特のシステムである。

 

「ちょ、ちょっとサーシャ。まさか受けるの?もし受けたりしたら……」

 

まふゆが耳打ちをする。当然、決闘を受ければさらに目立つ事になるだろう。ただでさえ留学生という理由で有名人扱いなのに、これ以上目立てば任務に差し支える可能性がある。

 

「くだらん。お前の相手をしている暇はない」

 

サーシャは申し出を拒否した。面倒を起こせば任務に影響が出る……当然の判断だった。

 

「なんじゃ、怖気づいたか?あれだけ威勢のいい事を言っておきながら、所詮は口だけじゃったか。ほっほっほ、とんだ腰抜けじゃのう」

 

心はサーシャを罵り、嘲笑う。他のSクラスの生徒達からも笑い声が聞こえる。

 

ここまで馬鹿にされては黙っていられない。流石のサーシャも頭に血が上り、心に振り返った。

 

Вы можете либо дрожь?(お前は、震えた事があるか?)

 

サーシャが感嘆してロシア語を口走り、心に敵意の眼差しを向ける。

 

「その決闘、受けて立つ!」

 

サーシャもバッジを突き付け宣戦布告し、決闘を受理した。

 

「決まりじゃな。場所は校庭、時間は昼休みじゃ。逃げ出すでないぞ」

 

時間と場所を指定し、心とSクラス一行は自分達の教室へと戻っていった。

 

「おい、聞いたか?アレクサンドルと不死川が決闘だってよ!」

 

「マジかよ、こりゃ見物だぜ!」

 

「どっちが勝つんだろうね!」

 

「あたしはアレクサンドル君に勝ってほしいわ!」

 

決闘が決まり、2-Fの生徒達が盛り上がり始めた。これで、サーシャ達の事が一気に学園中に知れ渡る事になるだろう。

 

「お、おいサーシャ。いいのかよ!?」

 

心配そうに尋ねる華。しかし受けてしまった以上、もう後には退けない。

 

「すぐに片づける、問題ない」

 

「そういう問題かよ……」

 

「目立たなければいいんだろう?」

 

言って、サーシャは教室へ戻っていく。

 

「あの馬鹿……何考えてんのよ、もう」

 

予想だにしない事態が起きてしまったと、まふゆは肩を落とした。この決闘で任務に影響が出ない事を、ただ祈るしかない。

 

 

結局、勢い余って決闘をすることになったサーシャ。こんな調子で、無事に任務を終える事ができるのだろうか。まふゆと華の不安は、さらに高まるばかりだった。

 

 

――――不死川心との決闘まで、後数時間。

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