聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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サブエピソード16「約束」

風間ファミリーに任命されたサーシャ達と忠勝は、早速秘密基地へと案内された。

 

 

百代と一子の決闘まで後少しだと言うのに、こんな時に時間を潰している暇はないとは思う。

 

だがこんな時だからこそ、大和達はここに集まるのだ。いつも通りに。一子がいつ帰ってきてもいいように。暖かく出迎えよう……そんな思いを胸に秘めて。

 

 

 

 

「――――――」

 

基地の廃ビルの屋上で、百代は静かに夜空を眺めていた。一子との決闘を控え、緊張を冷ますように夜風に当たっている。

 

「…………」

 

首にぶら下げたホイッスルを手に取る百代。これを吹けば10分以内で一子が駆けつけてくれる……そう一子は大和達に躾けられていた。

 

「…………」

 

百代はそれ口に加え、息を吸って勢いよく音を鳴らした。夜空にホイッスルの音色が響き渡る。

 

もしかしたら、一子が来てくれるかもしれない。またあの元気な笑顔を見せてくれるかもしれない。そんな淡い期待を、百代は抱いていた。

 

―――――――。

 

しかし、一子が駆けつける事はなかった。ホイッスルの音色が虚しく木霊するだけである。

 

「やっぱり………こない、か」

 

何やってるんだろうな、と自分で自分を笑う。もう何度も笛を鳴らしているが、結果は変わらない。分かっているというのに、諦めきれない自分がいた。

 

しばらく夜の光景を眺めていると、

 

「――――来たか」

 

気配を感じ取り、百代は背後を振り向く。そこにはサーシャとまふゆの姿。百代は2人をここへ呼び出していた。

 

「……モモ先輩、用って何なんですか?」

 

早速まふゆが呼び出した理由を尋ねる。察するに、一子の決闘についてだろう。百代はサーシャとまふゆをしばらくじっと凝視した後、静かに口を開く。

 

「お前たちに頼みがある」

 

「頼み……?」

 

急な話だな、とサーシャ。その表情はいつになく真剣だった。

 

「もし………もしもだ。私がワン子と戦って倒れたら――――後は、頼む」

 

万が一、自分が倒れたら一子を止めてくれ……そうサーシャ達に思いを託す百代。

 

「俺はお前が負けるとは思えないがな」

 

と、サーシャ。ビッグ・マムと互角にやりあえるような人間がやられるとは到底思えない。百代は言ってくれるな、と苦笑いする。

 

「まあ、もしもの話だ。それに、ワン子についてる元素回路とやらを取り覗けるのは、サーシャ達にしかできないんだろう?」

 

確かに、元素回路はまふゆの剣の生神女の能力でしか取り除く事はできない。百代はサーシャ達を信用していた。だからこそ、彼らに託したのである。

 

本当なら大和達にも協力を仰ぐべきだろう。しかし、大和達を危険な目には合わせられない。ましてや自分達の大切な仲間である。戦うのは、自分1人で十分だとサーシャ達に告げる。

 

それに。一子がああなってしまった責任は、自分にあると感じている――――その事は、あえて口にはしないが。

 

「私が隙を作る。その間にワン子から元素回路を取り除いてくれ」

 

一子が百代との決闘に集中している隙に、サーシャが一子の元素回路を狙って攻撃を仕掛ける……それが百代の作戦だった。単純だが、それ以外に方法はない。

 

「……無理、しないでくださいね。モモ先輩」

 

まふゆは百代を心配していた。今の一子は、鉄心を倒せる程の戦闘力がある。そう簡単に止められる相手ではない。だが百代は笑って、まふゆの肩を抱く。

 

「私を心配してくれるんだな。じゃあ、無事に戦いが終わったら私とイイ事しような」

 

「なっ!?……も、もう。からかわないで下さい!」

 

顔を真っ赤にしながら、頬を膨らませるまふゆ。怒るな怒るな、と笑う百代。それを見て呆れ、サーシャは溜息をつくのだった。

 

しばらくして時間が経ち、

 

「そろそろ下に戻るとするか」

 

大和達が寂しがってるだろうからなと上機嫌に笑いながら、屋上を去っていく。人を呼び出しておきながら、結局何がしたかったんだろうと思いながら百代についていくまふゆ。

 

百代が屋上の扉へ向かう際、すれ違い様にサーシャに呼び止められる。

 

「百代」

 

「ん、どうした?」

 

「死ぬなよ」

 

「…………」

 

ほんの一瞬だけ、沈黙が訪れた気がした。だが百代は、お前も心配性だなぁと笑って、

 

「私は死なないぞ。お前とも戦いたいからな」

 

約束する、とサーシャに言った。サーシャはそうかと言ってそれ以上は何も言わず、百代とまふゆと共に屋上を後にした。

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