聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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サブエピソード20「集う異端者」

川神市内、某地下研究所。

 

薄暗い大きな部屋の中に、カプセル装置がいくつも立ち並び、カプセルを照らすライトがより一層不気味さを演出している。

 

その部屋で1人の男がパソコンに向かい、誰かと連絡を取っていた。

 

「――――そうですか。では、引き続き頼みます」

 

そう言って男は通信を切ると、デスクにあったコーヒーを啜り、ニヤリと笑う。

 

白衣を羽織った眼鏡の男……尼崎十四郎。彼は九鬼財閥の研究員である。

 

武士道プラン――――九鬼財閥が現代の人材不足を解消する為に提唱された、偉人クローンを生み出すという計画。尼崎は武士道プランの研究員の1人だった。

 

「――――計画は順調のようですね、ドクター尼崎」

 

尼崎の背後から男が一人。アデプト12使徒を統括する人物、フール。フールはタロットカードを眺め、壁に寄りかかりながら不気味に笑う。

 

「ええ。結局は破壊されてしまいましたが、意外なデータが取れたので良しとしましょう」

 

尼崎はパソコンの画面を眺めながら、マウスをスクロールしてデータを確認している。

 

「武士道プラン……ドクターの技術には驚かされます」

 

「いや、貴方の資金援助のおかげですよ。こうして私は私自身の研究ができる……マープルの提唱した武士道プランなど、もはや茶番でしかない」

 

尼崎は正規のプランには興味がない。偉人クローンを生み出した所で、何が変わるというのか……それでは時代は動かない。変わらない。だからこそ彼はアデプトと手を組んだのだから。

 

「ドクターの技術は、我々の計画に必要です。もちろん――――彼女もね」

 

言って、フールは彼女のいる方向へと視線を向ける。その先に“彼女”はいた。ブロンドの長い髪を靡かせ、コツコツと靴音を立てながらフールと尼崎の前へやってくる。

 

「ご気分はいかがですか?クイックシルバーの魔女――――いえ、エヴァ=シルバー」

 

フールが声をかけた人物、それはかつてサーシャによって倒された、水銀を操るアデプト12使徒の一人。エヴァ=シルバーであった。エヴァはふふ、とフールに微笑みかける。

 

「悪くないわ。それにしても、まさか生きていた記憶ごと蘇らせるなんて……日本の技術も捨てたものじゃないわね」

 

と、日本の技術に感心を持つエヴァ。そう、エヴァは武士道プランの技術によって蘇っていた。

 

1つは、フールの持つ元素回路。

 

”再生怪人”の異名を持つ能力によって、意思の宿らないエヴァのクローンを精製。

 

もう1つは、サーシャとの戦いでバラバラになったエヴァの身体の一部を精製していた水銀の一部を、フールが回収。

 

最後は武士道プランの技術。尼崎との協力によって、エヴァのクローン体に水銀の一部にある遺伝子情報を取り込み、欠陥した部分を補填。さらに肉体の強化。

 

これにより、記憶と能力を完全なものとし、エヴァを現世に舞い戻したのである。

 

もはやエヴァはクローンではなく、“エヴァ=シルバー”そのものであった。

 

「私の――――いえ、我々の計画には貴方の技術が必要なのです」

 

尼崎にはエヴァの技術が必要不可欠だった。より強く、より完璧なクローンを作り出す為に。

 

エヴァの持つ、第三帝国のクローン技術――――パラケルスス機関。彼女はその技術を使い、自らのクローンを作り出し、自分の身体に取り込み若さを90年以上保ち続けている。

 

「勿論生き返らせてくれた以上、協力はするわ。武士道プラン――――なかなか興味深いわね」

 

エヴァは武士道プランに興味を示していた。

 

自らの技術と武士道プランの技術――――これを利用しない手はない。

 

「協力はするけど、それ以外は私の好きにさせてもらうわよ?それに……あの坊やとも久しぶりに会えるのだから、楽しまなくちゃね」

 

エヴァの表情が冷たく、殺意を帯びた笑みを浮かべる。

 

エヴァを倒した鉄のクェイサー・サーシャ。その感情は復讐の色に染まっていた。そして殺戮、解体、虐待……エヴァの持つ芸術と言う名の感性が、自身を震えたたせる。

 

するとそこへ、

 

「――――全てはお母様と、ご教団の皆様の為に。私たちは身も心も捧げる、なのです」

 

「――――裂かれて、焼かれて、嬲られて………皆様に喜んでもらう為に、私たちは存在しているのでございます」

 

エヴァの背後に現れた、桃色の髪の少女が二人。彼女らも、エヴァが生み出した物である。

 

(テー)と、そして(ユー)。エヴァの技術と尼崎の技術で生まれた、エヴァの作品クローン。何度殺されても蘇る再生者(リザレクター)

 

そして、やがてエヴァの一部となる存在。今まで作られた(アー)から(ペー)(クー)(エル)(エス)のように。

 

「早速研究所の施設を使わせてもらったわ。もうじき、この子達の妹も生まれる事だし……」

 

と、エヴァ。彼女が復活した今、尼崎の計画は新たな段階に突入する。

 

最強のクローンを生み出すという、尼崎の計画が。

 

「これで役者は揃った、という事ですか」

 

フールはタロットカードを懐にしまい込み、静かに笑う。彼もまた、尼崎とは別に目的があった。それはフール自身しか知らない、彼自身の計画。

 

 

 

こうしてフール、尼崎、エヴァの3人が集結した。尼崎は眼鏡を指で持ち上げ高らかに告げる。

 

「さて、我々も動き出すとしましょう―――――“プロジェクトQ”成就の為に」

 

陰謀が蠢く川神市で、さらなる闇が動き出す。

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