聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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こちらのエピソードも戦闘描写を大幅にリメイクしました。


バトルエピソード1「swallow’s encount」

模擬戦が終わり、しばらく時間が経ったある夕暮れ時。

 

 

一子は夕暮れの砂浜で一人座り込みながら、海へと沈む太陽を眺めていた。

 

 

後に聞いた話だが、模擬戦はカーチャの勝利に終わったらしい。

 

 

一子の放った最大の技、建御雷神(たけみかづち)の一撃はカーチャに擦り傷を負わせただけで、決定的なダメージを与えるには至らなかった。

 

 

その後は一子が意識を失い敗北。大和達は一子を賞賛していたが、正直な所喜べなかった。

 

 

気絶していた所為か、細かい事は覚えていない。ただ分かっている事は、自分が負けたという事実だけである。

 

 

「………ぐすっ」

 

 

悔しい。悔しくて悔しくて、涙が止まらない。一子は涙を腕で擦りながら、悔しさを誤魔化すように夕日をただ眺め続けていた。

 

 

すると、

 

 

「ここにいたか」

 

 

聞き覚えのある声が、一子の背後から聞こえる。振り向くとサーシャが立っていた。一子は慌てて残った涙を拭う。

 

 

「さ、サーシャ……?」

 

 

「大和達が心配している。そろそろ戻るぞ」

 

 

そう言って、サーシャは手を差し伸べた。迎えに来てくれたのだろう、そんなサーシャの気持ちが、一子は嬉しかった。

 

 

「あ……うん。ありが、と」

 

 

サーシャの手を取り、立ち上がる一子。そして直ぐにサーシャは一子に背を向けて歩き出した。一子も黙ってその後を追う。

 

 

「――――一子」

 

 

突然サーシャが立ち止まり、背を向けたまま一子に話しかける。

 

 

「お前の戦いは、俺の心を震わせた。だから――――」

 

 

サーシャはゆっくりと振り返り、一子に向かって言った。

 

 

「今度は俺とも戦ってくれ。もちろん、手加減なしでな」

 

 

それは、サーシャが一子を戦士として認めてくれた瞬間だった。一子は途端に嬉しくなり、嬉し涙でいっぱいになるも、サーシャに向かって微笑むのだった。

 

 

「……うん!アタシ、負けないわよ!」

 

 

「その意気だ」

 

 

大和達の待つ旅館へと戻っていく二人。一子は思う。今はまだ未熟だとしても、認めてくれる人達がいる。それが支えになるから、歩いていけるんだ、と。

 

 

 

 

 

その一方、サーシャと一子の動向を観察する一人の少女がいた。

 

 

黄色いフリルのブラウスにジーンズ。誰がどう見ても、普通の少女である。

 

 

だが、その少女は普通でありながら異質であった。少女は少し離れた建物の屋上でライフル型の機械を構え、スコープ越しにサーシャ達を伺っている。

 

 

そして、両手には黒いカラーリングの手甲を装着。腰にはスイッチが4つついた機械仕掛けの黒いベルト。明らかに普通ではない。

 

 

The target acquisition(目標を補足しました)

 

 

ベルトから聞こえる機械音声。人工知能を持ち合わせたデバイスが少女に語りかける。

 

 

「いや、ロックは外しといて。うっかり殺しちゃマズイからね」

 

 

そう言って少女はもう一度スコープを覗き込む。サーシャと一子は海岸を離れていく。そろそろかなと言って、ライフルのトリガーに手を掛けた。

 

 

「………風速、気温、温度確認。照準修正、っと」

 

 

ライフルの照準をサーシャと一子の位置に固定する。本体を狙うつもりはない。少女は心底楽しそうにしながら鼻歌を歌っている。

 

 

「初弾装填、安全装置解除」

 

 

Cartridge load(カートリッジロード)

 

 

ライフルから機械音が鳴ると同時に、デバイスの音声が響く。

 

 

そして、

 

 

「――――――撃・発♪」

 

『Plumbum Shooter』

 

 

少女――――松永燕はニヤッと笑い、ライフルのトリガーを引いた。

 

 

 

 

 

「―――――!?一子、伏せろ!」

 

 

遠方から殺気を感じ取ったサーシャは一子に声を掛ける。一子も察知していたのか、二人は即座に地面へと伏せた。

 

 

突然感じた殺気。その正体はサーシャの直ぐ側に、煙を上げながら砂浜に埋れていた。サーシャはそれを拾い上げる。

 

 

(銃弾……?いや、違う。こいつは―――――)

 

 

サーシャはそれが何なのか直ぐに理解できた。正体は銃弾……ではなく、鉛である。

 

 

遠方からの狙撃。音もなければ硝煙の匂いもしない鉛で生成された銃弾。サーシャの戦いの記憶が、鮮明に蘇る。

 

 

かつてサーシャが戦ったアデプト12使徒の一人、鉛のクェイサー。一“激”必殺的胡狼(いちげきひっさつのジャッカル)。倒した筈の敵が、どこかに潜んでいる。

 

 

「サーシャ、今のは!?」

 

 

一子も状況を把握できていない。ただ分かっている事は、サーシャと一子が狙われているという事だけである。

 

 

「気をつけろ。どこかに狙撃手がいる……それも相手は恐らくクェイサーだ」

 

 

「えっ!?」

 

 

クェイサーがいる……一子は周囲を見回しながら警戒を始めた。

 

 

(馬鹿な……奴は、この手で……)

 

 

ジャッカルはサーシャとの戦闘で倒されている。何故生きている……と思考に耽る暇はない。まずは狙撃手のいる位置を把握する事が最優先である。

 

 

現状で戦えるのはサーシャのみ。今の一子は模擬戦で体力を消耗している為、まともには戦えない。一子もそれを承知している。

 

 

それでも、一子はサーシャの足手纏いにはなりたくなかった。

 

 

「サーシャ……今のアタシじゃ、まともに戦えない。でも、敵の位置くらいだったら探れるかもしれない……!」

 

 

今の一子なら、敵の気配を察知できる。しかし、それには気の集中が必要……その間に狙撃されてしまえば意味はない。

 

 

ならば、一子が集中している間にサーシャが降り注ぐ銃弾を防ぎ切ればいい。サーシャは近くにあった鉄の破片を剣に練成させた。

 

 

「一子、俺が時間を稼ぐ。その間に敵の位置を探ってくれ」

 

 

「わかった、やってみる!」

 

 

互いに頷く二人。一子は気の集中を始め、サーシャは狙撃手の攻撃から一子を援護する。

 

 

未だ姿の見えない狙撃手は、身を潜め、サーシャと一子を狙っている。付近にいる筈だが、どこから狙撃されているかは分からない。少しでも気を抜けば鉛の銃弾の餌食となる。

 

 

今は一子が狙撃手の位置を察知するまで、この場を凌ぐしかない。

 

 

(―――――来る!)

 

 

再び銃弾がサーシャ達に向けて発射される。サーシャは軌道を読み取り、銃弾を打ち払う。

 

 

続いて第二射、三射……執拗なまでの狙撃。サーシャは一発も外す事なく銃弾を叩き落としていく。

 

 

(………妙だな)

 

 

その最中、サーシャはある異変に気付いた。これまで打ち続けられている銃撃は、どれもサーシャ達から僅かに離れた地点を狙っている。狙撃手にしては、的外れな射撃である。

 

 

ただがむしゃらに撃ち続けているのか。それとも、あえて外している(・・・・・・・・)のか。真意は見えないが、狙われているという事実だけは動かない。まずは敵を引き摺り出さなければ。

 

 

すると、敵の気を察知した一子がようやく狙撃手の居場所を突き止めた。

 

 

「――――!!サーシャ、感じ取れたわ!あの建物の屋上に誰かいる!」

 

 

気を察知し、敵の居場所を突き止めた一子が指差した先は……古びたビルだった。あの場所に、サーシャ達を狙う狙撃手がいる。サーシャは剣を再錬成し、ブーメラン状の武器へと再構築した。

 

 

一子の言う通り、ビルの屋上には小さな人影があった。サーシャの目でも視認はできたが、一子がいなければ気付く事はなかっただろう。

 

 

「震えよ―――――!」

 

 

ビルの屋上に向け、サーシャはブーメランを投擲する。狙いはほぼ正確。弧を描きながら回転するブーメランは次第に遠くなり、ビルの屋上にいる標的へ飛んでいく。

 

 

たとえ距離があろうと、姿を現した狙撃手など所詮は只の的でしかない。

 

 

ブーメランが屋上に到達した瞬間、その屋上で小さな爆発が起きた。攻撃は命中したが、敵がどうなったかまでは確認できない。仮に逃げられたとしても、そう遠くまではいけない筈だ。

 

 

「様子を見てくる」

 

 

言って、サーシャはビルに向かって走り出す。謎の元素回路の手掛かりが掴めるかもしれない。相手がアデプトなら尚更である。

 

 

 

……しかしサーシャはまだ気付いていなかった。その狙撃手が今、間近に迫っている事を。

 

 

「サーシャ、後ろ!!」

 

 

危険を感じ取った一子の声が、サーシャを引き留める。背後を振り返った瞬間、既にそれは(・・)サーシャとの距離を詰めていた。

 

 

「な―――――に、」

 

 

僅か一瞬。気付く暇も与えない程の速度。迸るブースターの稼働音。飛来した一人の影。

 

 

彼女―――燕という招かれざる来訪者が、サーシャ達の前に降り立っていた。

 

 

「一撃、必倒―――――!」

 

 

燕による強力な拳の一撃が、サーシャに叩き込まれる。装着された手甲は炎を纏い、腰に取り付けられた小型ブースターを加速させながら、サーシャの身体を押し出し吹き飛ばした。

 

 

サーシャの身体は海岸の堤防に減り込み、その衝撃で壁の一部が崩壊して崩れ去っていく。

 

 

「サーシャ!!」

 

 

呼びかける一子の声。百代クラスの凄まじい一撃……そして、堤防が破壊される程の衝撃。サーシャは無事だろうか。壁が崩壊して砂埃が上がり、その姿は見えない。

 

 

次第に砂埃が消え、サーシャの姿が見えるようになる。

 

 

「……貴様、何者だ」

 

 

サーシャは無事であった。先程の攻撃で多少の傷は負っているが意識はある。口にこびりついた血と砂を腕で拭い、燕を睨みつけた。

 

 

恐らく、彼女が狙撃手の正体。

 

 

「人に名前を尋ねる時はまず自分から………といっても、君の事は知っているんだけどね。“致命者”サーシャ君」

 

 

意味深に笑う燕。サーシャの事を知っているようだが……その陽気な表情からは、敵意も殺気も何一つ読み取れない。

 

 

危険な相手だ……サーシャは身構えると、大鎌(サイス)を練成し燕と対峙した。燕もそうこなくちゃね、と拳を構える。

 

 

「―――――松永燕。突然で悪いんだけど、手合わせしてもらえる?」

 

 

 

突如として現れた謎の少女、燕。二人の戦いの火蓋が、切って落とされようとしていた。

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