聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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31話「緊急集会」

風間ファミリーのメンバーが基地に集まり、キャップが全員揃った事を確認すると、早速緊急集会を始める為に号令をかけた。

 

 

「というわけで、これから新生・風間ファミリーの緊急集会を始めるぜ!」

 

 

勢いよく耳が痛いくらいに叫ぶキャップ。キャップらしいと言えばキャップらしいが、部屋が狭い分反響してかえって煩い。

 

 

何故ならメンバーにサーシャ達に加えて忠勝も参入した為、密度が高くなったからである。

 

 

「全く何が緊急集会よ。こんな所まで連れてきておいて、一体何を始めるっていうの?」

 

 

不機嫌そうに声を上げるのはカーチャ。下校途中にキャップに引き止められ、その勢いに断り切れず(断る暇さえなかった)基地へと連れ込まれていた。

 

 

この後は心をじっくりと調教する筈だったのに……予定が大幅に狂わされた。キャップのような自由人とは反りが合わない。

 

 

とは言いつつも、ソファに座り込みクッキーが出してくれたローズティーを啜りながら寛いでいた。満更でもなさそうじゃんと、誰もがそう思っただろう。

 

 

「そりゃあ決まってるだろ。エラメンタル……ん?エルメントラだったっけか?」

 

 

元素回路の事を言いたいのだろう。しかし中々言葉が出てこないのか、キャップは必死に思い出そうとしていた。そこで隣にいたクリスが助け舟を出す。

 

 

「キャップ。それはエルメントリアの事だろう」

 

 

「違うわクリ。エラマントルよ」

 

 

その横から一子。

 

 

「違うぞワン子。エリアントスだろ?」

 

 

さらに百代。

 

 

「おいおい、お前ら全然違うぜ。エロメルヘンだろ……おっ、何かいい響きだな」

 

 

「何か怪しい単語になってるよ!?あきらかに間違いでしょ!」

 

 

何やら偉い勘違いをして鼻の下を伸ばしている岳人。そしてツッコミを入れる卓也。

 

 

全員、何もかも違っていた。すると痺れを切らした忠勝が溜息混じりに答える。

 

 

元素回路(エレメンタル・サーキット)だ。ったく、どうやったらそんなに間違えるんだよ」

 

 

嫌々答えてはいるが、何だかんだ答えてくれる忠勝なのであった。

 

 

「そう!それだ、元素回路!俺たちがやるべき事はこの元素回路の根絶だ。そこで提案なんだけど……と、その前に」

 

 

キャップはそこで一旦話を止め、由紀江の方へと視線を向けた。他のメンバーも由紀江に視線がいく。由紀江の表情はどこか暗い面持ちだった。

 

 

「まゆっち、みんなに報告があるんだろ?」

 

 

「は、はい……」

 

 

この場を借りて、どうしても話さなければならない事がある。それは今後にも関わる事であった。そして由紀江はサーシャに視線を向ける。

 

 

「サーシャさん。一つお聞きしたいのですが……」

 

 

「何だ?」

 

 

「まふゆさんが話してくれた、アデプト12使徒の人達は……その、死んだんですか?」

 

 

恐る恐る尋ねる由紀江。ちちがしら温泉で語られた、アデプト12使徒。彼らは一部を除きサーシャ達の手によって倒されている。

 

 

しかしそれが何だと言うのか。疑問が残るサーシャだがとりあえず質問に答える。

 

 

「そうだ。俺が戦ってきたアデプトのクェイサーは、もう死んでいる」

 

 

全てこの手で葬ったとサーシャ。そう、生きている筈がない。にも関わらず、あの夜に由紀江は出会ってしまった。あれは夢か幻か、それとも……。

 

 

信じてもらえるかはさて置いて、伝えなければならない。アデプトのクェイサー、エヴァ=シルバーと遭遇した時の事を。

 

 

「実は、先日の夜襲撃を受けました。クイックシルバーの魔女―――エヴァ=シルバーに」

 

 

その由紀江の発言に、大和達は驚愕した。いや、一番驚いているのはサーシャ達であろう。倒した筈の敵が、由紀江を襲ったというのだから。

 

 

「そ、そんな!だってあいつはサーシャが……!」

 

 

まふゆも真近で見ているから鮮明に覚えている。エヴァはサーシャとカーチャに敗れ、二度と再生できないように斬り刻まれた。

 

 

存在するはずがない。見間違いではないかと思ったが、由紀江が嘘を言うとは思えない。

 

 

「私がエヴァ=シルバーの名前を口にした時、彼女は否定しませんでした。それに、水銀も自在に操っています。まふゆさんから聞いた話の通りなら、間違いないと思います」

 

 

『そうだぜ!まゆっちが嘘はつかねぇべよ』

 

 

言って、由紀江は左腕に巻かれた包帯を少しだけ解いて、傷口を見せた。

 

 

これは、エヴァと戦闘した時に受けた傷である。水銀爆発により肌を裂かれ、完治しつつあるが傷は生々しく残っていた。

 

 

エヴァ=シルバーの復活。これはサーシャ達にはかなり厄介な敵である。

 

 

「水銀の分身体。電子レベルの元素による疑似細胞生成でなければ完全な分身なんて作れない筈よ。まさか、これって……」

 

 

そこでカーチャは気付いてしまった。極微量の元素の精密な操作。そして、水銀による擬似体を作る為の細胞生成。これはつまり、

 

 

「第六階梯――――という事か」

 

 

エヴァが第六階梯に上り詰めている事を意味していた。サーシャの目が険しくなる。

 

 

――――第六階梯。至高の座とも呼ばれる、クェイサーの能力値を6段階に分けた内の最上位。極小の電子レベルからの元素を行使する事ができるクェイサーの到達点である。

 

 

エヴァが復活した経緯は分からない。だが、由紀江の言っている事が事実ならば、サーシャ達にとって危険な存在となる事は間違いない。

 

 

また、何故由紀江が狙われたのだろうか……理由は分からない。彼女を襲撃するメリットがあるならば話は変わるのだが。

 

 

(謎の元素回路、エヴァ=シルバーの復活……)

 

 

サーシャは一連の事件を記憶から掘り起こした。

 

 

 

まずは、一子が謎の元素回路を装着していた事。ワン子はアミュレットをフールによって譲り受け、元素回路が発動した。

 

 

後に一子から回収した物には、僅かだが元素回路の反応が見受けられた。この時点で、アデプトがこの一件に関わっている事は断定できる。

 

 

次に、エヴァ=シルバーの行方についてだ。由紀江を襲撃して以降姿を表していない。今の所学園周辺には異変はないが、謎の元素回路と同様に調査が必要になるだろう。

 

 

何故彼女が復活を遂げる事ができたのか……しばらく考えに浸っていると、さっきまで黙っていた大和が口を開いた。

 

 

「なあサーシャ。そのエヴァ=シルバーってやつは、自分のクローンを使って再生してたんだろ?なら、まだクローンがどこかで生きてて、また再生して復活した可能性はないのか?」

 

 

「その可能性はゼロだ。エヴァ=シルバーの身体は燃えて完全に消滅している」

 

 

エヴァの再生能力……確かに、それならば理屈は通る。だが、サーシャとの戦いでエヴァの身体は欠片も残されていない。再生など、できる筈がない。

 

 

「もしかして、死者を操る能力者とかいたりしてね。ほら、ゲームとかいるでしょ?そういう敵」

 

 

と、冗談混じりで発言する卓也。そんな能力者は現実には存在しないだろう。そんな卓也に対し大和達は失笑したが、サーシャ、まふゆ、カーチャ、華は卓也の言った言葉に注目するのだった。

 

 

死者を操る能力者……それはフールである。

 

 

フールはタロットカード型の元素回路を使い、サーシャによって倒された12使徒の面々を意思が宿らぬ傀儡として蘇らせている。

 

 

文字通り、“再生怪人”の異名を持つ男。彼ならば、12使途を復活させるなど造作もない。恐らく、エヴァを蘇らせたのは彼だろう。

 

 

「まさかあいつがアタシ達の敵だったなんて……よくもアタシを騙したわね!今度あったらぶちのめしてやるわ!!」

 

 

土手で優しく接してくれた外人の男性が、まさかサーシャ達の敵であったとは夢にも思わなかっただろう。一子は怒りを露わにしていた。

 

 

「知らない人から物をもらったお前にも責任はあるんだからな。反省しろワン子」

 

 

一子の頭をグリグリと拳で押し付けながら躾をする大和。

 

 

「うぇぇ~ん……ごめんなさい~」

 

 

そして一子は半泣きで大和に躾られるのだった。

 

 

 

 

まずやらなければならない事。一つは謎の元素回路の捜査。これは変わらない。

 

 

次にフール、エヴァの捜査。川神市に出没が確認できた今、彼らはまだ潜伏している可能性が高い。念入りに調査が必要だった。

 

 

それに伴い、土地勘のある大和達の協力も必要になってくる。危険と隣り合わせの調査だが、大和達は同じ仲間として身体を張ってサーシャ達を援護すると約束してくれた。

 

 

それに戦力も増えている。クェイサーではないが、十分に戦える戦力。

 

 

クリス、由紀江。一子、京。そして“武神”百代。彼女らという戦力が得られた事は大きい。

 

 

「そこでだ。話を戻すんだが……軍師大和、説明を頼む」

 

 

キャップが本題に戻し、大和に話を降る。大和は頷き、メンバー全員に説明を始めた。

 

 

「今後の活動においても、こういう作戦会議は必要になってくる。敵はどんな手を打ってくるか分からないし、対策を取らずに行動するのは自殺行為だ」

 

 

大和達が相手にするのは、平気で人の命を奪う異端者だ。そんな連中と戦うのだから、慎重に行動しなければならない。いくら百代やサーシャ達がいるとはいえ限界がある。

 

 

「キャップと話して考えたんだけどさ、この一件が片付くまで、いつもやってる金曜集会を取りやめて、作戦会議に使いたいと思うんだけど……どうかな?」

 

 

大和の提案はこうだ。毎週金曜にここへ集まり、月曜から木曜、そして土曜と日曜で集めた情報を整理し、対策を取る時間に当てる為の会議にするという事だ。

 

 

要するに金曜集会は形だけは残り、中身がごっそり変わるというだけである。

 

 

その提案に対し、ファミリー一同の反応はと言うと、

 

 

「自分は賛成だ」

 

 

「私も賛成です」

 

 

『オラもだぜっ』

 

 

何の迷いもなく、クリスと由紀江、松風は賛同した。

 

 

「私も賛成だ。面白くなってきたな……」

 

 

「アタシも賛成よ!待ってなさい、フール!」

 

 

百代はまだ見ぬ敵と一戦交えたいと心を踊らせ、一子はフールを討伐する為に闘争心を燃やしていた。何か違うような気もするが、目的は変わらない。

 

 

「俺様も賛成だぜ!」

 

 

「僕も。いつもの集会はなくなるけど、今は非常時だしね」

 

 

「好きにしろ。俺は構わねぇ」

 

 

快く承諾する岳人、卓也。そして忠勝。

 

 

「みんな……ありがとう」

 

 

大和達の協力に感謝するまふゆ。共同戦線……これほど頼もしい仲間はいない。金曜集会は作戦会議に一時的に変更……満場一致したかに見えた。

 

 

何故なら――――。

 

 

「私は……私は反対!」

 

 

声を荒げながら、立ち上がり、全員に反論するメンバーが一人。

 

 

――――――京だった。

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