聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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サブエピソード21「背中合わせの二人」

川神院――――まふゆの部屋。

 

 

月明かりが照らす夜空の下、まふゆは縁側で星々が煌めく夜空を眺めていた。

 

 

「―――――」

 

 

縁側にある柱に背を預け、考え事に耽るまふゆ。京と華の事である。

 

 

緊急集会の途中で、京と華の間にトラブルがあったらしい。きっと屋上へ行った時に何かあったのだろう。

 

 

あの後、戻ってきた京の表情は険しく、後から来た華は元気がまるでなかった。

 

 

何があったのかは大方まふゆには察しがついていた。京と華――――彼女らの境遇が、あまりにも対象的過ぎたから。

 

 

「――――眠れないのか、まふゆ」

 

 

ふと、まふゆの後ろから声をかけられる。振り向いた先にはサーシャがいた。何時の間に部屋に入ったのだろう、そう言う所は本当にデリカシーがないなぁと心の中で思った。

 

 

それでも、まふゆは彼を……そんなサーシャを慕っている。

 

 

「……ちょっとね」

 

 

「……座っていいか?」

 

 

「うん」

 

 

サーシャは、まふゆと背中合わせになるように柱に寄り掛かった。それから少しだけ沈黙が続く。

 

 

サーシャと二人でいると、どうもこの沈黙がもどかしく感じる。耐え切れないまふゆは、サーシャに話しかけた。

 

 

「考え事、してた」

 

 

「京の事だろう?」

 

 

「……やっぱり、サーシャには分かっちゃうんだね」

 

 

「お前の事だ、それくらい分かる。それに京の境遇は……あまりにお前に似ているからな」

 

 

京のイジメ。集会の後、大和からその事をサーシャは聞いていた。その過去が、京の人間関係を限定的にさせている。

 

 

身内以外の人間の関わりを持たない。これ以上の人間関係は築かない。今のままでいい。そこまで京の心は依存してしまっていた。

 

 

そして、大和の存在。京にとって彼は救いであり、想い人である。

 

 

「京の依存は異常だ。いつまでも他人の行為に甘え続ければ、いつかは壊れる」

 

 

他者への依存。それは結果として絶望しか生まない。その相手がいなくなれば、一体何を糧にして生きていけばいいのだろうか。生きたまま苦しい人生を強いられる事になる。

 

 

しかしまふゆは、

 

 

「……でも、あたしは京ちゃんの気持ちが分かる気がする」

 

 

京の依存が自分の面影と重なっていると感じていた。

 

 

「サーシャは知ってるでしょ?あたしが(とも)の叔父様に引き取られて育った事」

 

 

まふゆは語る。幼い頃飛行機の事故に巻き込まれて両親を亡くし、その後燈の父―――山辺雄大に引き取られて育った。

 

 

全てを失い、絶望の淵にいたまふゆにとって彼は救いであり、命の恩人である。

 

 

他人の行為に縋り、他人を信じてきたまふゆ。だからこそ、京の気持ちが彼女には少しだけ分かる気がした。

 

 

唯一まふゆと違うのは、仲間以外の他人を信じない事。ただそれだけである。

 

 

「京ちゃんにとって、大和君は救いだったんだよ。あの時ミハイロフに転入してきた……サーシャみたいに」

 

 

「…………」

 

 

まふゆは思い出す。雄大の失踪と共に、美由梨や華に痛烈なイジメを受けている最中、サーシャがやってきた時の事を。

 

 

始めは嫌な奴だ、と思っていたまふゆ。しかし、次第にサーシャという存在に惹かれていた自分がいた。

 

 

そしてアデプトとのサルイ・スーの生神女を巡る戦いに身を投じ、様々な経験を経てアトスの生神女(マリア)―――剣の生神女となり、今に至っている。

 

 

「今こうして……あたしがあたしでいられるのは、サーシャがいてくれたからだよ」

 

 

「まふゆ……」

 

 

こうして改めて感謝されると、反応に困るサーシャ。しかし逆もまた然り、サーシャもまふゆの存在がなければ、今の自分はない。もし出会わなかったなら、今頃は戦うだけの復讐鬼と成り果てていただろう。

 

 

「サーシャ、あたしは――――京ちゃんを助けてあげたい」

 

 

言って、夜空に浮かぶ満月を見上げるまふゆ。聞こえは自己満足に過ぎないかもしれないが、それでもまふゆは京に変わって欲しかった。

 

 

“信じる事から始めてみよう”

 

 

確かに世の中はいい人ばかりではない。ただ、疑うだけの人生なんて寂しすぎる。

 

 

知ってもらいたい。人の心の暖かさを。優しさを。

 

 

「人の心は、そう簡単には変わらないぞ?」

 

 

「確かにそうかもしれない。けど、いつかきっと心を開いてくれるはず。だからあたしは京ちゃんを信じたい」

 

 

必ず変わる。まふゆの思いは何があろうと変わらない。相変わらずだなと、サーシャは思う。

 

 

先の事を考えない。無鉄砲な性格のまふゆ。けれどもそんなまふゆという存在に、自分自身も変わったのだ。

 

 

きっとまふゆならできるだろう。サーシャは振り返り、まふゆに顔を向けた。視線が合い、まふゆの胸の鼓動が高鳴る。

 

 

「お前がそう言うなら、きっと京の心は“震える”はずだ。お前は、俺が認めたパートナーだからな」

 

 

「えっ……」

 

 

急に突拍子もない事を言われて、まふゆは戸惑いを隠せない。

 

 

それでも、サーシャのその一言はまふゆにとって支えであった。サーシャは続ける。

 

 

「だから俺は、お前を信じる」

 

 

「サーシャ……」

 

 

信頼関係。互いにパートナーとして。そして―――いや、これ以上はいいとまふゆは考えるのをやめた。そもそも考える必要はない。その答えはもう、自分の中にあるのだから。

 

 

「……なあ、まふゆ」

 

 

「ん?」

 

 

サーシャが珍しく、視線を逸らしながらまふゆに話しかける。

 

 

「――――お前の聖乳(ソーマ)が、吸いたい」

 

 

「なっ………」

 

 

何を言い出すのかと思えば……まふゆは思わず言葉を失った。というより呆れ返る。

 

 

やっぱりサーシャはデリカシーというものがない。まふゆは溜息をついて、

 

 

「あんたって………本当にデリカシーがないんだから」

 

 

といいつつも、服をはだけさせながらサーシャに素肌になった胸を差し出すのだった。

 

 

「……サーシャ」

 

 

「……何だ?」

 

 

「強くなってね」

 

 

「――――ああ」

 

 

まふゆの願いを聞き入れ、サーシャはまふゆの乳首にそっと口付けをする。そして、まふゆに流れる聖乳をゆっくりと吸い出した。

 

 

「あっ!?んうぅぅ……!!」

 

 

こうして二人の………パートナーの夜は更けていく。

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