聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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サブエピソード22「ベスト・パートナー」

サーシャとまふゆが過ごす一方、カーチャと華はホテルの一室で夜を過ごしていた。華はカーチャのアナスタシアによって縛られ、身体を銅線の鞭で存分に陵辱を受け続けている。

 

 

「あっ!いた……いたい、です。カーチャ、さま……」

 

 

久々の主人からのご褒美。奴隷の華には至上の悦びである……が、どこか声に張りがない。いつもなら絶叫し、快楽に浸る華。しかし、今日の華は様子がおかしかった。

 

 

「……ちょっと華。せっかく主人が貴重な時間を裂いて、わざわざお前の相手をしてあげているのよ?もっと悦びなさいよ」

 

 

「は、はいぃ……」

 

 

カーチャもいつもとは違う華に苛立ちを覚えていた。アナスタシアによるカーチャの調教タイムから約2時間。それだというのに華はこの調子である。一向に変わる気配がない。

 

 

まるで、魂の抜けた人形。主人の呼びかけに答えようとしない華に、カーチャはさらに調教に拍車をかける。

 

 

「―――――медь(銅よ)

 

 

カーチャの声に反応したアナスタシアが、縛っている華の身体をさらに締め付けた。銅線がありとあらゆる身体の部分に食い込み、華の感度を揺さぶっていく。

 

 

「ああ……ああーーー!いい、いいです……カーチャ、さま……」

 

 

一度は絶頂しかけたものの、華のテンションはすぐに元に戻った。結局何度やっても変わらない。カーチャの苛立ちは最高潮になっていく。これでは、物言わぬ人形を相手にしているのと同じだ。

 

 

そしてとうとう痺れを切らしたカーチャは、

 

 

「………やめよやめ。もういいわ」

 

 

呆れ果てて指をパチンと鳴らすのだった。すると華の身体を縛っていた銅線が緩み、解けてベッドの上へと落下する。

 

 

「全く、時間の無駄よ」

 

 

完全に興醒めしたカーチャは仰向けに倒れている華の背中に座り、足を組みながら華を見下ろすように視線を向けた。

 

 

「―――――」

 

 

華は何も答えない。目は虚ろで、感情が一切ない。きっと、カーチャにされている時もずっとこの状態だったのだろう。

 

 

華と京……このトラブルがあってからこの調子である。何があったのか、カーチャは聞き出したりはしなかった。というより、興味がなかった。

 

 

何があったかは知らない。ただ、ああ。そういう事……と、察しはついている。

 

 

「――――椎名京。成る程ね、お前が生意気にも説教を説いたものの、イジメをやってた事が露見して何も言い返せなくなった。そんな所かしら」

 

 

「―――――」

 

 

やはり、華は何も答えない。図星ね……とカーチャは確信する。華の様子がおかしいのはそれが理由か、と。

 

 

かといって、慰めるようなカーチャではない。奴隷に優しい慰めは要らない。慰めは時として人を傷つける。一時の甘い蜜であり、毒である。

 

 

「自業自得よ。お前はそれだけの行いをしてきた。隠そうとしてもいつかは必ず暴かれる。今更自分の罪から逃れようなんて、醜いだけよ。犬以下だわ」

 

 

「…………」

 

 

カーチャの侮蔑を込めた罵りが、華の心を追い詰めるように棘を刺していく。いつもなら快楽に感じるのに、今は痛みしか感じなかった。

 

 

ああ、自分は隠そうとしていたのか……今になって気付く。隠し続けて、向き合わなかった自分。それが今報いとなってのし掛かっている。

 

 

―――――“楽しかった?弱い人間をいじめて楽しかった?私には全然理解できない。そんなの理解したくもない”

 

 

京の言葉が、華の脳裏に浮かぶ。虐めていた人間に、虐められていた人間の気持ちなんて分からない。その痛みは、受けた人間しか分からないのだ。

 

 

まふゆと燈を虐めた時も、ただ面白いからという私利私欲でやってきた自分。その行為が、どんなにまふゆや燈を傷付けたか。自分には分かるはずもない。そんな資格すら、ない。

 

 

「………う、だよな」

 

 

小さく、弱々しく華が声を漏らした。声は震え、そしてその目には涙。

 

 

「華……?」

 

 

「そうだよな……当然だよな。アタシが……アタシみたいなヤツが、あいつの気持ちを分かってやる資格なんて、ねぇよな」

 

 

独り言のように呟く華。まるで自分自身を苛むように、華は話を続ける。

 

 

「ずっと……ずっと、アタシは楽しんでたんだ。織部も、山辺も。父親が失踪してるって、知っててアタシは……ずっと、最低だ……これじゃ犬にもなれねぇよ。はは、笑えるぜ」

 

 

泣きじゃくりながら、自分がしてきた一つ一つの事を、悔やむように思い返していた。カーチャはそれを黙って聞いている。

 

 

「……なあ、笑ってくれよ。アタシは犬になれない上に、小さい女の子が好きで、虐められて感じる変態なんだぜ……考えてみりゃ、アタシが虐められればよかったんだ……いたぶられて、ヘラヘラしてさ……アタシは―――――」

 

 

「華」

 

 

突然、カーチャの冷たい声が華の言葉を遮った。カーチャは華の首に付けた首輪を引っ張り上げ、後ろから華の乳首に手を延ばし、指で思いっきり抓り上げた。

 

 

「ひゃううううううううううううううぅぅ!?」

 

 

「自分で自分を罵るなんて、随分と生意気になったものね。言っておくけど、あんたを罵っていいのは、主人の私だけよ」

 

 

「か、カーチャ、様……」

 

 

華は涙を拭い、カーチャを見る。カーチャは笑っていた。いつものように、自分を蔑むような、女王の高貴なる笑みで。

 

 

「それで、結局お前は何がしたいの?まあ、聞くまでもないでしょうけど」

 

 

華が一番しなければならない事。それは自分自身がよく分かっているとカーチャは諭す。

 

 

「アタシは……アタシは、京に一言……謝りたい」

 

 

京に謝って和解したい。それが華の気持ちであり、やらなければならない事だった。

 

 

それは、自分がしてきた罪と向き合うためでもある。

 

 

「偽善ね。謝ったら、それで終わり?虫がいいにも程があるわ。そんなものはただの自己満足よ」

 

 

あえて厳しく接するカーチャ。京に今更謝った所で、何かが変わるわけではない。華が今までしてきた事が、消えるわけではない。

 

 

「んな事分かってる。けど、何もしないよりは………ずっといい」

 

 

自己満足かもしれない。偽善者かもしれない。それでも、ただ何もしないのは、逃げているのと同じだ。華は、もう逃げたくはないと誓う。

 

 

それを聞けたカーチャはふぅん、とつまらなそうに笑い、

 

 

「お前がそう思うなら、好きにするといいわ………それより、」

 

 

華の顎を掴み、ぐいっと自分の顔に近付けた。

 

 

「今の口の聴き方は何?私に向かってタメ口なんて、奴隷の分際で生意気よ」

 

 

「あ、そ、それは……」

 

 

ついカーチャの前だった事を忘れ、うっかり敬語を使わなかった華。言い訳を頭の中で探し出そうとするが……いや、探す必要はない。

 

 

むしろ今の華にあるのは、痛ぶってほしいという、マゾヒズムな感情。

 

 

「華。お前は私の奴隷なんだから、さっきみたいな腑抜けた声で欲しがるなんて許さないわ。余計な事は考えないで、今は私だけを見てればいいの」

 

 

雑念はいらない。ただ主人であるカーチャを見ていればいいと、華に言って聞かせる。それはカーチャなりの愛情表現なのだろうと華は理解した。

 

 

「か、カーチャ……様!」

 

 

カーチャの心遣い(勝手な解釈)が嬉しく思ったのか、突然カーチャに抱きついてキスを迫ろうとした。その目は、まさに獣と呼ぶに相応しい。

 

 

「ちょ、ちょっと離れなさいよ!この……どうしようもない雌犬ね―――――ママ!」

 

 

カーチャの呼び掛けに、再びアナスタシアが動き出す。アナスタシアはキスを迫る華を捉え、宙吊りにして銅線で身体を鞭打ちする。華は絶頂し、喘ぎながら快楽に溺れていた。

 

 

「ああっ!あああああぁぁぁ!す、好きです!カーチャさまあああああああぁぁ!!!」

 

 

さっき落ち込んでいた華はどこへいったのやら。単純な上にどうしようもない変態だとカーチャは思った。

 

 

でも、それでこそ“桂木華”。それでいいのよと、心の中で笑うカーチャ。するとカーチャは立ち上がり、宙吊りにされた華を見上げた。

 

 

「変態でどうしようもない桂木華には、お仕置きが必要ね――――ふふふ。このまま、朝まで打ち続けてやるわ!」

 

 

カーチャのその手には、鞭。ニヤリと笑うその姿は、まさに女王。

 

 

これから長い長い、二人の夜が始まろうとしていた。

 

 

 

 

「あーーーーーー!いい!いいです!もっと、カーチャさまああああああああああああああああああああ!!!」

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