聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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36話「銀の籠城」

サーシャの前に現れた、無数の水銀人形(シルバードール)。水銀人形は武器を構え、サーシャという“侵入者”を排除しにかかる。

 

 

「うおおおおぉぉぉ!!」

 

 

襲いかかる水銀人形を、突貫しながら大鎌を振りかざし、薙ぎ払った。水銀人形の身体はバターのように切り裂かれ、水銀が血のように飛び散って崩れていく。

 

 

騎士、戦士、狂犬……サーシャは次々と人形を破壊し尽くした。

 

 

だが、飛散した水銀は再び収束を始め、水銀人形へと形成して再生される。終わる事のない無限再生が、幾度となく繰り返す。

 

 

(くそ、キリがない……!)

 

 

いくら水銀人形を倒しても、一向に終わりが見えない。消耗戦へ持ち込まれるだけである。そうなればサーシャの聖乳が切れる事は目に見えていた。

 

 

恐らく、この水銀人形は大規模な元素回路の術式によって動いている。そのコアを潰さない限り、水銀人形は無限に再生を繰り返すだろう。

 

 

まずはコアを探し出さなければならない。ここは強行突破するしかないだろう……サーシャは大鎌を構え、水銀人形が群れる廊下を突っ切ろうとした時だった。

 

 

「―――――避けろ、サーシャ!」

 

 

廊下の奥から声が聞こえる。何か大きな気配を感じ取ったサーシャは廊下の隅へと退避した。そして次の瞬間、

 

 

「か・わ・か・み・波ーーーーー!!!」

 

 

膨大なエネルギー砲が、一直線に廊下を突き抜けていった。廊下に群れていた水銀人形はエネルギーに焼かれ、次々と蒸発して消えていく。

 

 

その廊下の奥にいた人物―――――それは百代だった。

 

 

「今の内だ、逃げるぞ!」

 

 

ここから抜け出さなければ、また水銀人形が再生し増殖を始める。サーシャは頷いて、百代のいる方角へと駆けていった。

 

 

 

 

百代と合流したサーシャは学園内を駆け回り、襲い掛かる水銀人形を蹴散らしながら前へと進んでいく。

 

 

「サーシャ。一体何なんだこいつらは!?」

 

 

走り抜け、水銀人形を拳で弾き飛ばしながら百代は問いかけた。

 

 

「見ての通り、意思の宿らない水銀の傀儡人形だ。元素回路を使った大規模な術式で動いているんだろう。恐らく、こいつらをし掛けたのは――――」

 

 

水銀を操る能力。そして大規模な術式。心当たりがある人物は一人しかいない。以前、ミハイロフでも同じような状況に遭遇した経験があった。

 

 

クイックシルバーの魔女と呼ばれた、水銀のクェイサー。

 

 

「まさか、まゆまゆを襲ったエヴァ=シルバーって奴の仕業か!?」

 

 

緊急集会で明らかになったエヴァの存在。百代の問いにサーシャは頷いた。

 

 

彼女がこの学園に潜入し、どこかに潜伏している……となれば、まずこの大規模術式を破壊し生徒達を救出し、エヴァ=シルバーを倒す事が最優先である。

 

 

「まずは、この術式を作動させているサーキットのコアを探し出す」

 

 

走り、水銀人形を薙ぎ払いながら百代に提案するサーシャ。コアを見つけ出し、それを破壊できればこの術式を解除される。

 

 

同時に学園内に仕掛けられたトラップ、そして水銀人形の機能は全て停止する筈だ。

 

 

「で、そのコアとやらはどこにある?」

 

 

「こっちだ」

 

 

サーシャは左耳のイヤリングが強く反応を示す方向へと足を進める。進む度に、イヤリングの反応が強くなっていく。

 

 

そして、強い反応を示しているエリアに辿り着いた先に、待ち構えていたように水銀人形が出現し、サーシャと百代を取り囲むように包囲した。

 

 

これ程の数が配置されている……この先に、サーキットのコアがある事は間違いない。だが、囲まれている以上、下手な動きはできない。

 

 

「……なあサーシャ。水銀の弱点ってなんだ?」

 

 

拳を構え、サーシャと背中合わせになりながら話しかける。

 

 

「水銀の凝固点はマイナス38.83度だ。それで水銀は固体になる」

 

 

水銀の凝固。固体にして攻撃をすれば水銀人形は砕け散り、再生すらもできないだろう。だが、数が多くサーシャの鉄による分子振動で熱を奪ったとしても水銀を凝固させる範囲には限界があった。

 

 

「なるほど。よく分からんが、ようするに凍らせればいいんだな!」

 

 

百代は拳を鳴らしながら、目の前の水銀人形を見据えている。そういう事か、とサーシャは察した。

 

 

「――――百代。俺が分子振動で周囲の熱を奪う。その瞬間に打て」

 

 

技を放つタイミングを伝えるサーシャ。サーシャの意図に、百代はすぐに気付いた。

 

 

「分かった。じゃあお互い――――派手にいくぞ!」

 

 

「ああ!」

 

 

互いの合図と共に、百代は気を集中させ、サーシャは鉄を操作して分子振動を発生させる。次第に周囲の温度が低下し、サーシャ達に迫ってきた水銀人形が凍り付き始めた。

 

 

だが背後から襲いかかる水銀人形は止められず、武器を構えてまるで銀の波のように押し寄せてくる。そして水銀人形とサーシャ達の距離が近付き、武器を振りかざした瞬間、

 

 

「―――――行け、百代!」

 

 

サーシャの合図で気を溜めていた百代が動き出す。百代は左腕の拳を床に叩きつけた。

 

 

「くらえ!川神流―――――“万華鏡・雪達磨”!!!!」

 

 

絶対零度の冷気が波動となり、周囲の水銀人形を次々と固体にした。さらにサーシャの分子振動も加わり、凝固を加速させながら気で作り上げた氷柱上の槍を生成し、水銀人形の身体を貫いていく。

 

 

貫かれた水銀人形の身体は即座に凝固点に達し、その場で凍り付き砕け散った。

 

 

氷の槍は広範囲に及び拡散し、サーシャ達を包囲した水銀人形は、一瞬にして全て氷の彫刻と化していた。その表面からはサーシャ達の姿が反射して映し出されている。まるで、万華鏡のように。

 

 

故に、万華鏡・雪達磨。絶対零度の、大地に返り咲く雪の花。

 

 

「―――――はあああっ!」

 

 

そしてサーシャの大鎌が、二度再生できないように水銀人形を一閃した。氷の彫刻となった水銀人形は粉々に砕け散る。

 

 

「先へ進むぞ、百代!」

 

 

「ああ!」

 

 

止まってなどいられない……サーシャと百代は再び先へと進み出した。

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