聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい! 作:みおん/あるあじふ
サーシャ達がFクラスに転入した同時刻。
カーチャも学園に到着し、転入先のクラスは1-Cに決定した。
サーシャと同様、飛び級で学園に転入してきたという手筈になっている。
「初めまして。エカテリーナ=クラエといいます。“カーチャ”って、呼んで下さい♪」
カーチャはスカートを広げ、とびきりの笑顔でクラス全員に一礼する。まるで妖精のようなその容姿は、1-Cの男子生徒全員の目を釘付けにした。
女子生徒達もカーチャのあまりの可愛らしさに、思わず抱き締めたいという生徒もいれば、いけない妄想に走ろうとする生徒もいる。
転入して早々、カーチャは1-Cのアイドルの座を獲得した。
「凄いですね……あんなに小さいのに、飛び級で留学だなんて」
感心し、カーチャに尊敬の念を抱く由紀江。
『何言ってんだよ。まゆっちだって成績優秀で、色々と頑張ってるじゃんかー』
松風が由紀江に励ましのエールを送る。と言っても、実際に喋っているのは由紀江なのだが。
そんな中、カーチャは松風と喋っている由紀江に視線を注いでいた。
(……ふーん)
ニヤリとカーチャの口元が吊り上がる。この瞬間、由紀江が奴隷候補にあがった。
そして昼休みの時間。
昼食を食べ終えた由紀江は、友人である大和田伊予と一緒にいた。
「というわけでイヨちゃん。私、カーチャさんに声をかけてみたいと思います!」
カーチャと友達になるきっかけを作る為に意気込む由紀江。まだ声すらかけていないのに、まゆっちは緊張して顔を強張らせていた。
ちなみに由紀江の友達100人計画は、まだ続いている。
「落ち着いてまゆっち。ほら、深呼吸深呼吸」
『そうだぜー、まゆっち。ここで挫けたら前に進めねぇー』
私も一緒に声をかけてあげるから、と伊予や松風も応援してくれていた。
「すー、はー、すー、はー……で、では、参ります!」
深呼吸して息を整え、由紀江はカーチャのいる席へと足を運ぶ。
「――――こんにちは、お姉さま方♪」
由紀江の視線の先には、無垢な笑顔を浮かべたカーチャの姿があった。
突然のカーチャの訪問に、由紀江の心臓が飛び跳ね、バクン、バクンと音を立てる。
「あ、あああ、えええっと、あのその……こここここここんにちは!!」
先に挨拶をされ、緊張が極限までに達したまゆっち。辛うじて挨拶は返せたが、顔は緊張して強張ったままであった。
そんな由紀江を見兼ねて、伊予が助け船を出す。
「こんにちはカーチャちゃん。私は大和田伊予。こっちは黛由紀江と松風。よろしくね」
『おう、よろしくなー』
「はい、よろしくお願いします。伊予お姉さま、由紀江お姉さま、松風♪」
カーチャは自己紹介の時のように、礼儀正しく一礼する。
(ほら、まゆっち)
伊予が肘で由紀江の脇を突く。本当ならば伊予が伝えてしまえば済む話だが、それではまゆっちの為にならない。
『いけー、チャンスだまゆっち。やるなら今しかねぇ。大人の階段を登るんだ!』
松風に後押しをされる。由紀江は意を決して大きく息を吸い込み、カーチャに伝えた。
「あ……ああああの、わ、わわわわたしとお友達に――――」
「聞いてくれ!転入してきたFクラスの留学生と、Sクラスの不死川先輩が決闘だってよ!」
同じクラスの男子生徒が声を張り上げる。クラス全員が一斉に教室を飛び出し、決闘の場である校庭へと向かう。おかげで、由紀江は言いそびれてしまった。
2-Fの留学生……それはサーシャの事だとカーチャはすぐに分かった。
(決闘……?はっ。
決闘のシステムはカーチャも知っている。いい退屈凌ぎになりそうだわと、心の中で笑った。
「カーチャ様、校庭へお連れ致します。行きましょう」
カーチャの前に現れたのは、男子生徒と女子生徒が数名。腕を後ろに組み、頭に『カーチャ様☆LOVE』と書かれた鉢巻きを巻いている。
カーチャのファンが増え、ついには親衛隊まで結成されていた。カーチャにとっては迷惑な話だが、今後役に立ちそうなので好きにやらせておく事にしている。
「ごめんなさい。カーチャ、呼ばれてるみたいだから行かなくちゃ」
カーチャはもう一度だけ由紀江達に一礼し、
「
ロシア語で言う、「またね」と言って、親衛隊と一緒に教室を出て行った。
「うう……言いそびれてしまいました」
せっかく勇気を出したのに……由紀江はガックリと肩を落とす。
『うわー……今のはさすがに切ねーよ、まゆっち』
同情する松風。
「だ、大丈夫だよまゆっち。まだチャンスはあるから」
元気を出して、と由紀江の肩を叩く伊予。しかし由紀江のショックは大きかった。
「ほら、私達も決闘を見に行こうよ。何か面白そうだよ!」
由紀江の手を引っ張る伊予。落ち込んでいても仕方ない……由紀江は気持ちを切り替える。
(そうです……ここで諦めてはダメ。よし、頑張れ私!)
決闘が終わったら、もう一度カーチャに声をかけよう。その決意を胸に、由紀江は伊予と共に教室を出て行くのだった。