聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!   作:みおん/あるあじふ

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55話「双子と聖乳と同性愛者 2」

1-C教室にて。

 

 

「今日から転入した黛由香里だ。みんな、よろしく頼むぞ」

 

 

HRの時間。教壇の前に立ち、とびきりの笑顔で自己紹介を始める由香里。第一印象は完璧だが何を仕出かすか分からない為、由紀江には不安で仕方がなかった。

 

 

戸籍上は由紀江の双子の妹で、地元から転入したという事になっている。事情を知っている人間はごく一部だが……この情報が漏れる事はまずないだろう。

 

 

また保護観察と言う事もあり、由紀江とカーチャのいるクラスに転入している。それは、由紀江と由香里の要望でもあった。

 

 

「あ、あの子だよ!モモ先輩と戦おうとしてた子!」

 

 

「黛さんの双子の妹だって。すごいそっくり……」

 

 

百代との一件は既にクラス中に知れ渡っていた。今まで目立たなかった由紀江も注目を浴びる。悪い気はしないが、少しだけ恥ずかしかった。

 

 

―――もう由紀江の噂は、既に消え去っている。話題は由香里の事で持ちきりだった。

 

 

同志と認め合い、すっかり美少女好きと宣言してしまった由香里。百代と並ぶ程にまで人気を獲得した彼女だったが、これはまだ序の口に過ぎなかった。

 

 

これから由香里によって、由紀江は振り回される事になろうとは知る由もない。

 

 

 

 

HRが終わり、早速クラスメイト達が由紀江と由香里を囲うように集まり始めた。沢山のクラスメイトに囲まれ、由紀江はこれまでにない経験に戸惑っていた。いつかこんな日があったらいいと思っていたが、いざそれが現実になるとつい困惑してしまう。

 

 

一方の由香里はというと、由紀江と腕を組みながらニコニコと笑っている。自慢の姉ですと由紀江を賞賛していた。まるで有名人にでもなったような気分である。

 

 

「ねえ由香里ちゃん。お姉さんの事は何て呼んでるの?」

 

 

「“ゆっきー”だ」

 

 

「“ゆっきー”だって、可愛い!黛さん、私もゆっきーって呼んでいいかな?」

 

 

「え……はい。もちろんです!」

 

 

いつの間にか、由紀江もクラスに溶け込むようになっていた。

 

 

今までクラスに馴染めなかった由紀江。それがこうして話せるようになってきている……それは由紀江自身が成長した証なのか。それとも由香里がフォローしているからなのか。

 

 

しかし、どうにも緊張してしまう。手汗をかき、うまく言葉が出てこない。すると、そんな由紀江の心境を察したのか、由香里は由紀江の耳元に優しく息を吹きかけた。

 

 

「ひゃああああああああああああああああう!?」

 

 

教室中に素っ頓狂な由紀江の声が響き渡る。そんな由紀江の反応を見て由香里は笑う。

 

 

「な、なななななななにするんですか由香里!?」

 

 

「私なりに緊張をほぐしてみた」

 

 

由香里なりの気遣いだったらしいが、突拍子過ぎて対応ができない。他の方法でしてくださいと少しムッとする由紀江。

 

 

「む、そうか……じゃあ、耳たぶを甘噛みした方がよかったか?」

 

 

「み、みみみみみみみ耳たぶ!?」

 

 

そんな事をされれば先程以上のリアクションになるだろうが、クラス中どころか学園全体に由紀江の悲鳴が響く事になる。ある意味で有名人になれるだろう。

 

 

由紀江はもう、と顔を膨らませたが……不思議とおかしくなってしまい、自然と由紀江の表情が笑顔に変わっていく。周囲にいたクラスメイト達も、つられて笑い合った。

 

 

由紀江の自然の笑顔を間近で見たクラスメイト達は、こんな顔もするんだ……と、由紀江の新しい一面の発見に喜ぶのであった。

 

 

そんな微笑ましい光景を、自分の事のように見守る生徒がいた。伊予である。それとは逆に詰まらなそうに眺めているカーチャの姿もあった。

 

 

「由香里ちゃん、か。前にあった時とは全然雰囲気違うね」

 

 

ふふ、笑いながら感想を漏らす伊予。カーチャは別にどうでもいいわと興味を示さないが……内心はちやほやされて気に食わない部分があるのだろう。伊予はあえてカーチャに言わないでおく事にした。

 

 

―――伊予が出会った由香里は、元素回路の影響で作られた人格。半ば強姦紛いの行為をした事は、今の由香里の記憶に引き継がれていた。由香里はHR前に伊予と会い、謝罪をしたのである。

 

 

もちろん伊予は彼女を許した。そして由香里を迎え入れた。伊予の大事な友達として。

 

 

「――――伊予ちゃん!」

 

 

伊予を呼ぶ由紀江の声が聞こえる。人間として一回り成長した由紀江と、新しい友人の由香里。伊予も笑みを返しながら、二人の元へと歩き出すのだった。

 

 

 

 

昼食の時間になり、由紀江と由香里、伊予はクラスメイト達と一旦別れて教室を後にする。これから食堂へ行こうとした、その矢先だった。

 

 

「2-Fに行くぞ」

 

 

由香里が突然、そんな事を言い出したのである。これから大和達のいるクラスへ行こうと言うのだ……問題はないとは思うが、一年上のクラスに足を運ぶのは少し気が重い。

 

 

由紀江も伊予も遠慮しているようだが、由香里はどうしてもと頼み込んだ。

 

 

「心配するな。もし何かあったら私が全力で二人を守る!」

 

 

そこまで意気込まなくても……と由紀江と伊予。是が非でも行くつもりらしい。由紀江と伊予は仕方なく、由香里を先頭に大和達のいるクラスを目指した。

 

 

 

 

 

そして、2-F。

 

 

「たのもーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

((えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?))

 

 

声を張り上げ、大和達のクラスの扉を開ける由香里。後ろにいた由紀江と伊予が青ざめていた。これでは喧嘩を売りにきたようなものである。教室にいたクラスの全員が、一斉に由香里達に視線を向けた。

 

 

「おっ、珍しいな」

 

 

「まゆまゆにゆかりん?それにまゆまゆの友人の……」

 

 

「ってか、お前ら何しに来たんだよ?」

 

 

由紀江達に手を振る大和と、昼食のいなり寿司を頬張るクリス。プロテインをがぶ飲みする岳人の三人。

 

 

「たのもーって……」

 

 

「喧嘩じゃねーんだから……」

 

 

「アホだろお前ら」

 

 

しょーもないと冷たい視線を送る京と、苦笑いする華。呆れ返る忠勝。最もである。

 

 

「あ、まゆっちとゆかりんのお弁当だわ!」

 

 

「いや、そこじゃないから!」

 

 

「ああ、一子ちゃんはそっちなのね……」

 

 

持参したお弁当に反応する一子。ツッコミを入れる卓也。一子らしい、とまふゆ。

 

 

―――突然の由紀江達の来訪。歓迎する大和達だが、気に入らない人間もいるようだった。

 

 

一年生が堂々と、しかも喧嘩腰で入ってきたのだ……クラスの一人の羽黒黒子が立ち上がり、由香里を睨みつけながら近づいてくる。

 

 

「ちょっと、アタイらの教室に何しに――――」

 

 

すると、由香里は彼女の言葉を遮るように黒子を抱きかかえる。一瞬の出来事で、黒子自身は抵抗すらも許されなかった。

 

 

「そのチョコレートのような肌、素敵だ……君を、私の熱で溶かしてしまいたい」

 

 

戸惑う黒子に微笑みながら口説きに走る由香里。一見口説いているように見えるが、言っている事はほぼ変態に近い。由紀江と伊予は急いで由香里に駆け寄り、黒子から引き離して謝りを入れてから連れ戻した。

 

 

「…………」

 

 

呆然と立ち尽くす黒子。彼女は今放心状態である。千花が駆け寄り黒子に話しかけるが、反応がまるでない。

 

 

そしてしばらくして、

 

 

「……アタイ、あいつになら抱かれてもいい系」

 

 

「えぇっ!?」

 

 

何を血迷ったのか、黒子はそんな事を言い出したのだった。千花が隣で信じられない、というような表情をしている。

 

 

由紀江とは違った、積極的で行動力のある由香里。由紀江のクローンとは思えない程性格が正反対である。そんな由香里を見て、華は由紀江の肩を叩く。

 

 

「……なあまゆっち。お前少しはゆかりんを見習った方がいいぜ?」

 

 

「うぅ……返す言葉もございません……」

 

 

あんな風になれたら、と由紀江は思う。しかし、到底それはできそうになかった。

 

 

 

 

クラス内で騒動はあったものの、由紀江達は大和達と共に昼食を取る事になった。皆それぞれ昼食を取りながら賑やかな時間を過ごしている。

 

 

「……お前、一体何が目的だ」

 

 

サーシャは昼食を口にしながら由香里の真意を探る。由香里は未だ保護観察扱い。まだ完全に味方であると決めた訳ではないのだ……一体何を考えているか分かったものではない。

 

 

だが由香里自身も特に目的は無いらしかった。来たいから来た、ただそれだけである。

 

 

「ただのスキンシップだ。ほら、サーシャ。あ~んしろ」

 

 

言って、自分の弁当から卵焼きを箸でつつき、サーシャの口に近づけた。サーシャは自分で食べれるからいいと言って断る。

 

 

「面白そうだから私も参加する。はいサーシャ、あ~ん」

 

 

今度は京が箸をつついて、ミートボール(激辛仕様)を近づける。

 

 

「んじゃアタシからもやるぜ。ほらよ、あ~ん」

 

 

続いて、華が面白がって唐揚げを差し出し始めた。

 

 

「アタシもサーシャに少し分けてあげるわ!はい、あ~ん!」

 

 

さらに一子までもが自分のおかずをサーシャの口元へ。

 

 

「ふふ、じゃあこれは私とまゆっちから。あ~ん♪」

 

 

「え……あ、あの。よかったら、その、どうぞ。あ、あ~ん………」

 

 

由紀江と伊予からも手作りのおかずが。

 

 

「む。何か自分だけあげないと言うのも義に反するな……サーシャ、自分からもいなり寿司をやろう。口を開けろ、あ~んだ」

 

 

そしてクリスからもいなり寿司のお裾分け。周囲から取り残されたまふゆ。負けてはいられない……先を越されたくない気持ちでいっぱいだった。

 

 

「さ、サーシャ。あたしからもあげる!ちゃんと食べなさいよね。ほら早く、あ~んして!」

 

 

最後にはまふゆのおかず。四方八方からのおかず責めである。断るに断れない……困り果てるサーシャ。

 

 

武士娘とまふゆ達の手料理。誰もが羨むシチュエーションだが、こんなに入らない。一体どれから食べようか迷っている間もなく、全員一斉にサーシャの口へと詰め込んだ。もごっと口を塞がれる。

 

 

最終的には美味しく頂いたが、サーシャは完全に沈黙した。

 

 

そんなやりとりをしながらランチタイムを楽しむファミリー一同。しばらくしてキャップが戻ったぜー!と声をあげながら教室へと入ってきた。

 

 

「何だ、お前らも来てたのか!俺もまぜろぉ!……お、そうだ。サーシャ、ボルシチ味のお好み焼き買ってきたんだけどよ、食うか?」

 

 

「………もういい」

 

 

 

 

 

放課後の夕暮れ時。

 

 

川が鏡のように夕日が照らし出される土手を、由紀江と由香里、伊予は歩いていた。たまには三人だけで帰るのも悪くない。

 

 

今日も一日、色々な事があった。長いようで短い一日が、ようやく終わる。

 

 

思えばどうなるかと思っていた由紀江だったが、何事もなく……いや、あった。由香里が美少女好きで、耳に息を吹きかけられ、大和達のクラスに乗り込み……数えたらキリがない。

 

 

大変ではあったが、今日と言うほど充実した一日はなかったと由紀江は思う。これからも、こんな毎日が続いたらいいなと願いながら。

 

 

すると、

 

 

「……ようやく見つけたぜぇ!」

 

 

由紀江達の前に、複数人の不良達が待ち構えていた。一体誰だろうか……よく見てみると、朝に遭遇した不良達であった。由香里にボコボコにされ、その復讐の為に現れたのだろう。表情は怒り狂っていた。

 

 

懲りない奴らだな……と由香里は溜息をつく。このまま無視しても構わないが、そうもいかない。仕方なく由香里は由紀江の身体を抱き寄せた。

 

 

「へ?」

 

 

「ゆっきー、聖乳(ソーマ)が足りない。力を貸してくれ」

 

 

「えぇえええ!?ままま待ってください、伊予ちゃんの前でそんな事――――」

 

 

心の準備ができていないと由紀江。由香里は一応断りは入れたぞと言って、由紀江の制服と下着をたくし上げ、露わになった乳に口付けをした。

 

 

「ちょ、ちょっと由香里ちゃ……うわわ……」

 

 

扇情的な光景に、目を覆い隠す伊予。だが好奇心がそそられ、思わず見てしまう。

 

 

「ん………あああぅ……!」

 

 

自分の中の聖乳が、由香里によって吸い出されていくのが分かる。力強くも優しい、由香里の吸引。由紀江も声を出さずにはいられなかった。

 

 

「んくっ……ん……よし。後は私に任せろ」

 

 

ぐったりした由紀江を伊予に預け、水銀(シルバー)ロッドを手に不良達へと視線を向けた。不良達は由紀江と由香里のやりとりを目の当りにし、鼻の下を伸ばしている。

 

 

由香里は目を細めながら、不良達に向けて宣言した。

 

 

「貴様ら、よくもゆっきーの乳を覗き見したな。その罪、死をもって償ってもらうぞ!」

 

 

「え!?ってかそっちが先に始めたんじゃ――――」

 

 

「酌量の余地なし!いざ―――――!」

 

 

由香里が疾走し、不良達に制裁を与えようと水銀ロッドを振るう。宙に舞う水銀が、まるで生きているかのようにうねり出した。

 

 

「――――お前達の血は、私が銀色に染める!!」

 

 

その処刑宣言とともに、不良達は一方的に水銀の餌食となり、死なない程度に叩きのめされていた。まさにずっと由香里のターン、とはこの事である。

 

 

「由香里ちゃん、すごい……」

 

 

由香里のクェイサーとしての戦いぶりに、思わず魅入ってしまう伊予。聖乳を吸われ気絶状態にあった由紀江も目を覚まし、伊予の腕の中でうっすらと笑う。

 

 

「はい……私の、自慢の妹ですから……」

 

 

由紀江にできた、もう一人の妹である由香里。少しエッチで騒がしい所もあるけれど、強くて頼り甲斐のある、由紀江の大切な家族。

 

 

由紀江と由香里との日常は、まだまだ始まったばかりだった。

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