仮面ライダーウィザード FANTASTIC DAYS 作:青空野郎
ブリオッシュ・ダルキアンの敗北は、観戦者や放送関係者、そして戦参加者敵味方問わず大きな衝撃を与えた。
『な……な、なん、なんということでしょうか!誰もが認める!一騎当千の強さを誇る!あの!あのブリオッシュ・ダルキアン卿がまさかの敗北に喫してしまったああああああああああああッ!!』
耳をつんざくような実況が引き金となってかつてないほどの歓声がフロニャルドの空を大きく震わせた。
『これが魔法使いの実力なのか!果たして!果たして一体誰がこの展開を予想できたでしょうか!?想像を大きく上回る番狂わせに会場も盛り上がっております!!』
『ダルキアン卿が撃破されたことにより、騎士団長撃破ボーナスとしてガレット獅子団に大量のポイントが加算されます。さあさあ、点差は切り離されていく一方!果たしてビスコッティ騎士団逆転なるのか!?』
エリータとジャンのボルテージが最高潮に達した実況が響く中、瞬く間に注目を浴びることとなった晴人本人はというと………
「ふぃ~」
いつものように勝利の一息をこぼしていた。
しかし一仕事終えて変身を解除した束の間、ふと晴人の脳裏に過去の記憶が過った。
それはいつぞやのレオンとの一騎打ちの記憶。
フロニャ力が満ちる場所では死ぬことはないが、代わりに防具破壊という、一定のダメージをくらうと衣服が弾け飛んでしまう現象がある。
事実、晴人も故意ではないにしろレオンの衣服を完膚なきまでに破壊してしまった。
まったく、一体どんな仕組みなのだろうか。
「いやはや、完敗にござる」
ひとり問答していると、背後から聞こえる声に嫌な予感に冷や汗をかきつつ晴人は恐る恐る後ろを振り向いた。
「…………」
予感が的中し、落胆が滲んだ声音が漏らしながら咄嗟に目を覆う。
煙が晴れて晴人の目に飛びこんできたのは一糸纏わぬ姿となったブリオッシュだった。
「しかし、さすがにこれは恥ずかしいでござるな………」
大事な部分は手で隠しているが、豊満な乳房、程よく引き締まった腰の括れやほっそりとした美脚、染みひとつない白い肌にさらには三つ編みに束ねていた髪もほどけており、女神のような美裸身が目に映る。
大陸最強と謳われたビスコッティ自由騎士も、今ではたおやかな女性だった。
羞恥でわずかに頬を染めて身を捩る姿がなんとも艶かしかった。
『おっとおっとこれは!ダルキアン卿のセクスィーショット!滅多に見ることのできない貴重な瞬間です!魔法使いさん、素敵なプレゼント、ありがとうございます!』
「ウソぉ.........」
茶々を入れてくる実況席に晴人は再び大きなため息を吐くのだった。
☆
そんな光景を当然レオンもルージュが差し入れてくれたグラスを片手に観戦していた。
「………………………」
パリィンッ!
無言のままレオンは持っていたグラスを握りつぶした。
甲高い破砕音を立てて葡萄色の飲料がレオンの手を汚すが本人は特に気にする様子はなかった。
しかし、逆にその物静かな後ろ姿が不気味だった。
今も晴人がドレスアップでブリオッシュの衣服を生成する映像が流れている。
「レ、レオさま……?」
粉々に砕け散ったグラスだった残骸に目に暮れる余裕もなく、ルージュはレオンの背中に慎重に声をかけた。
「…………チッ」
ルージュの声が聞こえたかのかどうかは分からないが、レオンの舌打ちが妙にはっきりと聞こえた。
背を向けているレオンはきっと、今自分が軽く涙目になっているとは微塵も気づいてはいないだろう。
それでもルージュは自らを奮い立たせて、再度声をかけた。
「あの、レオさま。もしかして、………怒っていらっしゃいますか?」
ルージュの問いかけにくるりとレオンは振り返り――そして彼女は言葉を失った。
「おかしなことを訊くではないかルージュよ。―――なにゆえワシが怒りを覚える必要があると思うてか?」
それは天使のような微笑と悪魔のような双眸の両面を併せ持った表情だった。
後半部分の声音のトーンがわずかに下がったように聞こえたのは果たして気のせいか。
「そ、それは………」
「もしかしてハルトがダルキアン卿の裸体に無様に鼻の下を伸ばしておることを言っておるのか?ハッハッハ、それはまたおもしろいことを言うではないか。別にワシは怒っているわけではないぞ。現にハルトはダルキアン卿を撃破し、戦況を有利に運んでくれたではないか。これでまた我がガレット獅子団は勝利に一歩近づいた。奴の働きに称賛することはあっても怒りを感じるなどお門違いも甚だしいではないか。いやなに、ただ少しばかり苛立ちが募っておるだけじゃ。ああそうだとも何もおかしい事はではない。ただ腹立たしい事この上ないだけじゃ」
その感情を世間一般で怒っていると言うのだが、言葉を選ぼうとしたルージュをレオンは淡々と早口な口調で遮った。
とても素敵な笑顔であるにもかかわらずまったく笑っていない双眸。
そして全身から放たれる黒く禍々しいオーラで白銀の絹髪が揺れるその姿はまさにブラックレオン。
やつ当たり以外の何物でもないのだが、レオンの絶対零度の視線に射抜かれて青ざめるルージュが指摘することなどできるはずもなかった。
『ヘッキシッ!』
しかしレオンの心情を知ってか知らずか、空中に浮遊する巨大ディスプレイで呑気にくしゃみをする晴人が映し出されていた。
そんな火に油を注ぐような行為にレオンの機嫌が悪化しないわけがなかった。
「しかし、ワシの次はよもやダルキアン卿に手をかけおるか。故意ではないとはいえ、うら若き乙女の衣服を剥ぎ取った上、公衆の面前で羞恥を晒させたのもまた事実じゃ。そんな無礼を働く愚か者には相応の報いを受けなければならんな。のぉ、ルージュ?罪には罰をじゃ。――――ハルトめ、あとで覚えておくがいい……」
どうやら晴人の知らないところで死刑執行書に判子が押されてしまったようだ。
苦笑を浮かべるルージュはこの場にいない晴人に同情することしかできなかった。
―――しかし、戦の最中だというのになぜこんなにも腹立たしく思ってしまうのかとレオンは秘かに表情を真剣なものにつくり直してひとり考えていた。
大将が冷静を欠かすなど本来あってはならない事態である。
不謹慎であることは頭で理解できているが、事実レオンは感情が抑えられないでいた。
なぜか胸のあたりがモヤモヤする。
今までにない心境に戸惑いすら覚えるがルージュに悟られないようにするのがやっとだった。
だがいくら思考を巡らせてもこの時のレオンが答えに辿り着くことはなかった。
さて、そろそろ自分も気を引き締め直さなければならない。
余計なことを考えてる暇はないと頭を振って思索を一時中断する。
「すまぬがルージュ、ビスコッティの連中がここに到着した時に起こしてくれ」
「かしこまりました」
ルージュもレオンの様子が変化したことを察して重々しく頭を下げる。
来たるべき時に備えてレオンは天蓋の下に設置されていた座席に腰を下ろして目を閉じる。
そいてそのまま意識を眠りの世界に沈めていった。
☆
ブリオッシュの敗北という悲報にグラナ砦への道を進んでいくシンクたちも動揺を露にしていた。
「まさかダルキアン卿が負けるなんて………」
そう呟いたのはエクレールだった。
ミルヒも同じように信じられないといった面持ちを浮かべている。
晴人の魔法を目の当たりにしたシンクに至っては隣を走るエクレールに訊かずにはいられなかった。
「ねえエクレ、さっき魔法って言ってたけどアレも紋章術なの?」
「いや、おそらくは違うだろうな。確か奴はお前と同じ世界で召喚に巻き込まれたんだったな?」
「うん。そうだけど、それがどうかしたの?」
「くわしいことは私にもわからんが、前にユキカゼから聞いた話では奴は元の世界でもあの魔法とやらを使っていたと言っていた」
「―――え?」
エクレールの返答にシンクは。
晴人も自分と同じようにフロニャルドで紋章術を習得したものと予測を立てていた。
フロニャルドのフロニャ力を輝力に変換しなければ紋章術を発動することはできない。
だがもしもエクレールの言うとおりならば晴人の便宜上魔法と呼ばれた紋章術は文字通りの存在ということになる。
しかしシンクの世界、地球では科学が発展し魔法はフィクションの概念として認識されている。
紋章術も一種の魔法であると認識しているシンクにとっては、今までの常識を覆しかねないエクレールの言葉に半信半疑な心境で眉根を寄せた。
「結局、正体はわからないままで気味の悪い奴だが実力は本物だ。ダルキアン卿が敗れた今、奴を止められる者はいないだろうな。まったく、ガレットもとんだ隠し玉を用意してくれたものだ」
皮肉を漏らすエクレールの表情は明らかに強がる色が見て取れた。
そしてエクレールの言葉に後ろから追随する騎士たちにも焦りと緊張が伝播していくのがわかった。
「しかし、まだ戦は終わったわけではない。我々は我々のやるべきことを果たさなければならない。足を止めてる暇はないぞ勇者!」
言い知れない不安に気持ちが落ち込みかけたが、すぐに自身を奮い立たせたエクレールに喝を入れられた。
さすがは長年に亘って親衛隊の隊長を務める人物だけのことはある。
ちらりと後方を振り向けばミルヒも揺るぎない決意を瞳に宿していた。
「オーライ!」
同調し、昂ぶる意志に背中を押されてシンクは力強く頷いた。
『はーい、こちらグラナ浮遊砦前! ビスコッティ二番隊、いよいよ砦のゲートキーパーとの交戦距離に入ります!』
そうこうしているうちに、シンクたちの目の前にグラナ浮遊砦が姿を現したところでビスコッティ側のリポーターであるパーシーの実況が辺りに響く。
『本陣を守る部隊には、レオ閣下の作戦により特選装備部隊が配置されています!!』
「特選装備部隊?」
明らかに気になる言葉に思わずシンクは復唱した。
名前からしてやはり普通の兵士ではないと予想できる。
「姫さま、皆の中央に」
警戒するエクレールが一度ミルヒを下がらせて騎士たちに指示を飛ばす。
「第一射来るぞ!開放陣形、散開前進! 姫を守れ!」
『はっ!!』
エクレールの号令に合わせて騎士たちがミルヒを守るように周囲をを囲み、前進する前方に例の特選装備部隊の姿が見えた。
特選装備部隊の党派は大砲に砲弾を投入する砲術士隊と散弾銃を構える銃兵隊にわかれバリケードの影でシンクたちを待ち構えていた。
「銃!?大砲!?」
すでに狙いを定められていることを認識し、慌てふためくシンクにエクレールが確認する。
「勇者!この間教えた紋章術、間違いなく出せるな?」
「え?この間ってどれ?槍の奴?盾の奴?」
「盾だ!キサマが防げ。私が斬り込む!」
「了解!―――-ディフェンダー!!」
紋章術を発動させて作り出した身の丈に及ぶ巨大な盾を左腕にシンクは銃弾からミルヒを守りながら突き進む。
砲術士隊の大砲から砲弾が発射された。
白煙を引いて飛来するミサイル型の砲弾が飛来するがシンクは慌てる素振りを見せることはない。
棒形態でパラディオンを発動し、飛んでくる砲弾の軌道を冷静に見定める。
「たああああああぁぁぁりゃああああああっ!」
全力で振り切ったパラディオンが砲弾を捉えた。
「なッ!」
「まぁ…!」
「「「はあッ!?」」」
順番にエクレール、ミルヒ、砲術士隊。
それぞれが間の抜けた声を漏らした。
そしてそのままカキーンと打ち返されてきれいな放物線を描く砲弾は何もない空中で爆発した。
『な、何ィイッ!? 勇者シンク、迫撃砲弾を弾き飛ばしました!』
シンクの型破りな行為に中継していたパーシーも驚いた様子だった。
「どうよエクレ!」
正にしてやったり。
ドヤ顔で振り返るシンクだったが、根が素直でないエクレールは眉の間に皺を寄せる面持ちを作った。
「ハン、派手好きめ………だが、上出来だ!!!」
吠えるエクレールがセルクルを加速させて高く跳躍する。
そのまま一気にシンクの頭上に飛び越えると、さらに自らも宙空へと身を投げた。
重力に逆らう逆風を全身で感じ、背中に携えた双剣を抜き取りながら見下ろす先にはグラナ砦の前を陣取る特選装備部隊。
「閃空……大一文字!」
双剣に集中させた輝力を一気に開放、発射された一対の斬撃が特選装備部隊に襲来した。
特選装備部隊の面々が事態を理解した時には、すでにけものだまとなって戦線から脱落してしまうのであった。
「騎士一同!残敵掃討!」
『おおおおおおおおおおお!!』
着地を決めたエクレールの一声が騎士たちの士気をさらに高めて、シンクたちとともに雪崩れるようにグラナ砦へと乗り込むのであった。
『すんごいすごい! 勇者シンクと親衛隊長エクレール!ゲートキーパーを瞬時撃破!砦内部に潜入と相成ります!』
興奮気味な実況を送るパーシー。
その横で中継カメラがシンクとエクレールの勇姿をディスプレイに投射していた。
『おや、お天気変わりでしょうか? 東の空から若干雲が出て参りました』
パーシーの指摘どおり、どこからともなく発生した暗雲がグラナ砦を見上げる晴天の空を塗り潰していった。
☆
―――――星も見えぬ曇天というのに、嫌な絵が見えよる―――――
暗闇にレオンの声が響いた。
レオンはこれが夢であることを悟った。
―――――これは、この砦の武闘台か?―――――
暗闇の中でぼやけた視界がはっきりすると、曇天の空をあてもなく漂う武闘台の中央にひとりの少女の姿が見えた。
見間違えるはずはない、少女はミルヒだ。
顔が黒い影で覆われており表情が読み取れないが、レオンはミルヒの頬に涙が伝っているのを認めた。
なぜミルヒが泣いているのかはわからない。
だがレオンは声をかけずにはいられなかった。
―――――泣くな、泣かんでくれミルヒ―――――
胸が張り裂けそうな痛みを押し殺してレオンが声をかけるが、想いも虚しくミルヒには届かない。
それでもレオンは声をかけ続ける。
―――――お前を悲しませるようなことは―――――お前を苦しめるようなものは!―――――
瞬間、レオンの視界が紅く染まった。
血飛沫を浴びたレオンの目の前にはミルヒ血溜りに沈んでいた。
その光景はレオンが星詠みで見た絶望の未来そのものだった。
そして凍りついた表情で呆然とその場に立ち尽くすレオンの前には彼女に絶望をもたらした元凶が立ちはだかっていた。
それは魔獣。
狐を思わせる頭部は生気を感じさせない骸のような外皮に覆われている。
四肢から伸びる5本の尾が特徴的な巨体からドス黒い瘴気を辺りに撒き散らしている。
ヴォロロロロオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!
禍々しい光を放つ複眼のような両の眼でレオンを見下ろす魔獣が咆哮し、邪悪な牙を剥いた。
「―――――ハッ!?」
心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖に中でレオンは目を覚ました。
悪夢から覚醒した顔色はひどく悪く、全身からも嫌な寝汗が噴き出ている。
夢であったことに安堵の息を吐くが、いつの間にか視界を覆い尽くす空模様が油断を許さなかった。
そんなレオンの様子にルージュも心配に揺れる表情を浮かべていた。
☆
砦内に潜入したシンク達が階段を駆け登ってレオンの元を目指していた。
やがて見えてきた扉を勢いよく開け放った。
『―――まったく、待ちくたびれたぞ。そこに居るのは勇者と垂れ耳じゃな』
到着を既に察知していたのか、突然レオンの声が広間全体に響く。
シンクたちが足を踏み入れたのは大きな広間だった。
外の天候のせいもあってか石造りの空間から妙に薄暗く冷たい印象が受けてとれる。
警戒を強めるシンクたちの前、広間に立てかけてあった映像板にレオンの姿が映し出される。
『ワシは今、この砦の最上部、天空武闘台に居る。ここまでたどり着いた褒美に貴様らに一騎打ちのチャンスをくれてやろう』
映像の中でレオンは宝剣、魔戦斧グランヴェールを見せつける。
『グランヴェールもエクスマキナもここにある。ダルキアン卿を撃破されたとはいえ、これを奪えばポイント的に貴様らの勝利は確定といってもよいであろうな』
レオンの挑戦的な物言いに誰もが息をのむ。
『無論、一人ずつでは相手になるまい。二人まとめてでかまわん故、仲良くかかってくるがよかろう。ワシは貴様らを倒しパラディオンを奪い、その後ミルヒの陣をぶちのめしに行く!さあ、上がってくるがよい!』
そして声高らかな宣言を最後に通信は終了した。
「…………ふぅ」
場所は移って天空武闘場で通信を終えたレオンは大きく息を吐いて心を落ち着かせた。
演技とはいえレオンの表情にはどこか悲痛な色があった。
「レオさま……」
レオンの憂慮を察したルージュが声をかける。
「なに、問題ない。待っていれば勇者と垂れ耳がおとなしくパラディオンを運んでこよう。それだけでも星が変わるやもしれん」
「はい……」
レオンの言葉にルージュは小さな返事で頷くことしかできないでいた。
ルージュから目を逸らし、武闘台の端に立つレオンは暗い曇天に視線を向けた。
「それにしても、国の大戦の日というのに、嫌な空じゃ」
暗雲はすでに雷雲となり迸る雷の轟音がさらに不安を掻き立てる。
そして待つこと数分、武闘台へと運ぶ昇降機の駆動音が鋭い表情を浮かべるレオンの耳朶を叩いた。
誰が来るのかは考える必要はない。
何があってもこの戦だけは負けるわけにはいかない。
ただ全力を持って返り討ちにするだけのこと。
そして一刻も早くパラディオンを手に入れて、星読みで見た未来をなかったことにする。
ひとり意気込むレオンの前で昇降機の扉がゆっくりと開かれた。
「お邪魔いたします、レオンミシェリ閣下」
「――――ッ!?」
聞こえてきた静かな声音に耳を疑い、レオンは大きく目を見開いた。
レオンの前に姿を現したのは―――ミルヒだった。
リコッタの制服から着替えたドレスの上に騎士の鎧を身に纏った姿のミルヒが一本の大剣を携えて、たったひとりでレオンの前に馳せ参じたのだった。
しかし、この展開はレオンにとっては計算外の事態である。
先刻の悪夢の光景が脳裏を過ぎり、レオンは声を忘れるほどの衝撃を受けた。
「レオ様が国の宝剣をかけて戦うというのなら、私も宝剣を手にこの場に来なくてはいけないと思い、失礼ながら勝手に推参いたしました」
覇気が込もった声音でミルヒが言葉を紡ぐ。
「バカな………!なぜ……なぜ!?」
しかし、ミルヒを前にレオンは愕然とし、受け入れがたい現実に返す言葉を見失ってしまっていた。
血の気が引く思いに動揺はさらに激しくなりただただその場で呆然と立ち尽くしてしまう。
「レオンミシェリ閣下、どうかお聞かせください。この戦の本当の理由、レオ様のお心の真実の在り処を!」
ミルヒが見せつけるように突き出す右手には赤と桜色、それぞれの宝石が埋め込まれた小さな2つの指輪が嵌められていた。
その2つの指輪こそがビスコッティの神剣と宝剣、パラディオンとエクセリードである。
ミルヒがこの2つの剣を持って参上したことが彼女の意志の表れを証明している。
だがしかし、そんな覚悟はレオンを追い込んでしまうことをミルヒは知る由もない。
その時、レオンとミルヒ、2人の間に割りこむように駆け出す人物がいた。
距離を詰めてミルヒの眼前に躍り出たのは―――ルージュだった。
隠し持っていたナイフを振るうルージュに反応したミルヒは大剣で受け止めた。
「ルージュ!私は今、レオ様と!」
「お叱りは後でいくらでも!ですが、今は説明を差し上げている時間がございません!」
ナイフと大剣が火花を散らしながら競り合う最中でルージュの声は悲痛で震えている。
だが、戸惑いを振り切るようにナイフを持つ手に力を込めてミルヒの大剣を弾き払った。
ミルヒの体勢を崩したルージュは彼女が指に嵌める2つの指輪を見る。
―――これを奪えば!
2つ指輪を視界に捉えたルージュが心のうちで叫ぶ矢庭に手を伸ばした。
だがしかし、ルージュの指が指輪に触れようとしたその瞬間――――
ルージュを拒絶するかのように桜色の宝石の指輪から閃光が解き放たれた。
曇天の下で輝きを放つ眩い光にルージュは悲鳴を漏らしながら大きく弾き飛ばされてしまう。
そして光が止む。
それがミルヒの意思なのか、はたまた偶然なのかは定かではないが、ミルヒの手にはピンクを基調とした短剣―――宝剣エクセリードが握られていた。
「宝剣が必要なら、事情を説明していただければ、いくらでもお貸しします」
エクセリードを向けて至極真剣な表情を作るミルヒがわずかに怒気を孕んだ声音で問い詰める。
「なのに、どうしてレオ様は私に何も教えてくださらないのですか?」
至極真剣な眼差しでレオンを射抜くミルヒだが、彼女の想いとは裏腹にレオンは表情をさらに曇らせるだけで何も答えない。
「昔はあんなに仲良くしてくださって……。いつも優しくしてくださって―――宝剣のことだけじゃないです…このところの戦のことだって………」
紡ぐにつれて涙ぐんでいくミルヒの言葉のひとつひとつがレオンの胸に深く突き刺さる。
ミルヒの言うことはもっともである。
彼女の言うとおり、素直に打ち明けることができたらどんなにらくだったであろうか。
しかし、それでも真実を打ち明けることはできなかった。
星読みで見た最悪の未来が、レオンが一歩踏み出すことを許さなかった。
現に、今も動揺に揺れる瞳で見つめることしかできないでいる。
一方で沈黙を選ぶレオンにミルヒは苛立ちを募らせる。
「レオ様は……レオ様は、そんなに私のことをお嫌いにッ…………!」
最後の力を振り絞るように、ミルヒが嘆きと怒りが入り混じった叫びをあげた。
爆発した感情が涙となってとめどなく溢れてくる。
それを見たレオンは、今までに自分がしてきた行いがどれだけミルヒを傷つけてきたかを悟った。
レオンが苦しんでいたように、ミルヒも苦しんでいた。
頭では理解していたのだが、レオンは涙をこらえることしかできなかった。
心が痛くないわけがなかった。
怒りをぶつけるミルヒと悲しみに揺れるレオン。
レオンもミルヒも、互いに胸に秘めた想いは違えど、両者とも幼き日の記憶を思い返していた。
笑顔が溢れ、幸せに彩られた思い出を共に過ごしたあの頃の自分たちはこれからも平穏で夢のような未来が続いていくことを無邪気に信じていた。
きっと、心がすれ違ってしまう未来など想像すらしていなかっただろう。
「ワシは………」
しかしレオンの言葉は暗雲を駆け巡る轟音に掻き消されてしまうのだった。
そうしている間に、空を見上げれば不穏な空気を感じ取れるほど暗澹たるものとなっている。
『グラナ浮遊砦攻略防衛戦に参加中の皆様にお知らせします。雷雲の影響か、付近のフロニャ力が若干ですが弱まっております。また、落雷の危険もありますので皆様、いったん戦闘行為を中断してください。繰り返します―――――』
無機質で事務的なアナウンスが戦闘の一時中止を参加者たちに知らせる。
皆が妥当な判断だと納得し、退去に行動を移していく。
当然アナウンスは彼女たちにも聞こえている。
「あの、お二方ともどうぞあちら、屋根のあるところへ」
ルージュが促し、とりあえずレオンもミルヒも彼女に続く。
幾ばくか緊張の糸が緩みかけたその時だった。
ズシン…………ズシン…………ズシン………
何の前触れもなく発生した地響きがフロニャルドの大地を揺るがした。
ズシン…………ズシン…………ズシン………
ズシン………ズシン………ズシン………
ズシン……ズシン……ズシン……
地響きは一歩一歩近づく足音のごとく、徐々にその感覚が短くなっていく。
ズシン……ズシン……ズシン……
しかし、妙なことに地響きは下からではなく上―――レオンたちのいる武闘台よりもはるか上空から聞こえてくる。
ズシン……ズシン…ズシン…………………
そして地響きが止んだと誰もが思ったその刹那――――
―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!
悲鳴を上げる間もなく、先ほどの地響きとは比べものにならない規模の揺れが少女たちを襲った。
まさかの三・連・続・投稿!
どうも、最近の趣味はゲーセンで仮面ライダーのDXF集めの青空野郎です。
なんかノッてたんです。
間開いちゃってしまったけどノッてた方なんです。
今回は晴人の出番がほぼ皆無な第11話。
しかぁし!今回の見どころ、いや読みどころ?まあ、なんでもいいや。
それはやっぱりヤンデレ気味のブラックレオ閣下(作者命名)。
どうっすか?個人的にこういうキャラめっちゃ大好きです(笑)
…………………………クウガの方も頑張ります………。
私の嫌いな探偵、というドラマに晴人役の白石さんが出演されているということで見ているんですけど………………今回の白石さんの役、なんか瞬平っぽい………。
さてさて、最近になって4月の劇場版の宣伝が始まりましたね。
今回は藤岡さんや半田さんが出演されるようなんで、かなり期待感が持てる作品になりそうですね。
Xの人も出るし、翔太郎なんか白いし、久々のライダー大集合!
スーパー戦隊と絡ませる必要があるのかはさておき、本編もジンバーレモンの登場で盛り上がりつつありますね。
果たして、真実を知った時紘太はどうなるのでしょうか?
いよいよこの先の展開がめっちゃ楽しみになってきました。
やっぱ仮面ライダーっていいっすね。